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ガソリン暫定税率廃止ならCO2排出量が凄く増える!たいへん!

環境技術
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まだ、無駄な研究をやっているなぁ。

ガソリン暫定税率廃止ならCO2排出量が610万トン増加…国立環境研が試算

2025/09/02 08:52

国立環境研究所は、ガソリンや軽油の暫定税率が廃止された場合、2030年の国内の二酸化炭素(CO2)排出量が610万トン増加するとの試算をまとめた。政府が国連に提出した温室効果ガス削減目標の達成に影響する恐れがあるという。

讀賣新聞より

ガックリしてしまった。

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無意味な計算

環境研究なら別のことヤレよ

このブログでも何度か言及しているので、今更なんだけど、僕自身は理系出身の人間である。そして、研究の大切さというものもそれなりには知っているつもりだ。だが、「必要の無い研究」というものも世の中には存在する。

讀賣新聞の記事をみて「これは大変だ!減税はダメだ!」と思った方がどれだけいるのかは分からないが、政府が国立環境研究所にガソリン暫定税率の廃止をした場合の二酸化炭素排出量増加量を計算させたんだそうな。

環境省の依頼を受けた国環研の試算によると、26年から暫定税率が廃止されて燃料価格が低下すると、ガソリンや軽油の消費量が増加するほか、電気自動車(EV)などのエコカーの普及が遅れる。さらに輸送コストの低下で企業の生産量などが増えると、30年の排出量は610万トン増える。

讀賣新聞「ガソリン暫定税率廃止なら~」より

まさに無駄な試算である。

この試算、どれだけの研究費を使ったかは知らないが、まさに政策の正当性を示すためだけの無駄な研究である(大切な事なのでry)。

年間の二酸化炭素排出量

このブログでは、日本の二酸化炭素排出量削減は「無駄」だと諄いほど言ってきた。それを覆す説得力のある話を見つけられないので、その方針は変わっていない。

だが、この「無駄な試算」というのは、そういう話ではないのだ。

日本の温室効果ガス排出量、23/24期は4%減で過去最低に

25 Apr 2025 01:04:45

東京:2024年3月期の日本の温室効果ガス排出量は4%減少し、過去最低を記録したことが、金曜日の政府発表で明らかになった。

環境省が発表したデータによると、2023/24年度の二酸化炭素排出量は、前年の11億1600万トンから10億7100万トンに減少した。

ARAB NEWSより

2024年の日本の年間二酸化炭素排出量は10億7100万tである。2030年に610万t増えたら、全体の何%増えるのか?といえば、0.51%である。

これで世界の平均温度が何℃変わるのかといえば、ChatGPTに計算して貰ったが、約0.0005℃なんだそうだ。

なお、一般的な家庭用温度計の誤差は約±0.5℃〜±1℃である。研究で用いるような高精度の実験用温度計でも誤差は約±0.01℃程度なので、どうやってもその成果は計測できない。

如何に無駄かが分かると思う。

数字を大きく見せたい

で、讀賣新聞も流石にそこを正直には書けないので、どんな表現にしているかというと。

23年度の日本全体のCO2の排出量は10億7100万トンに上る。政府は、30年度に7億6000万トンまで減らすという目標を国連に提出。削減目標のうち自動車などを含むエネルギー部門は6億7700万トンを見込み、増加分610万トンは、その1%に相当する。

讀賣新聞「ガソリン暫定税率廃止なら~」より

2030年の二酸化炭素排出量の目標値を掲げ、そこから増加分610万tを計算させて、1%に相当すると。

それは間違ってはいないんだけど、それが影響が大きいと考えるのか、小さいと考えるのかは皆さんにお任せしたい。

浅尾環境相は先月29日の記者会見で「(排出量増加は)かなりのインパクトがあり、環境への影響も踏まえた検討が必要だ」と述べた。

讀賣新聞「ガソリン暫定税率廃止なら~」より

流石、環境大臣。「かなりインパクトがあった」らしい。でも、環境への影響は皆無といって良いだろう。

無駄な研究に金使ってないで、さっさとガソリン暫定税率を無くせよ。早く。

追記

コメントでお答えした試算について、分かり易いように整理しておこう。

武漢ウイルスの時期に得られた効果計測

武漢ウイルス感染症の影響があった期間2019年12月~2023年5月における世界経済の動向。

  • 2020年の一時的な減少
     武漢ウイルス感染症パンデミックにより、2020年には世界全体でCO₂排出量が前年比で約5.4%減少した。これは、航空機の運航停止や交通量の減少など、経済活動の大幅な縮小が主な要因である。
  • 2021年のリバウンド
     しかし、この減少は一時的なものであり、2021年には排出量が急速に回復し、2019年の水準にほぼ戻った。2021年には、世界のCO₂排出量が前年比で約6%増加し、過去最大の増加幅を記録。この増加は、主に化石燃料の使用増加、特に石炭の使用増加によるもの。前年5.4%減なので、ほぼ2019年の水準に戻ったと言える。
  • 2022年の躍進
     2022年には、CO₂排出量が前年比で約0.9%増加し、2023年にはさらに約1.1%増加して、過去最高の37.4億トンに達した。

というわけで、武漢ウイルス感染症による経済的落ち込みで、二酸化炭素排出量が前年比マイナス5.4%。この減少では濃度変化はごくわずか(1〜2ppm程度)。

予算規模とその効果

一方、2020年の世界経済は前年GDP比マイナス3.5%であった。2020年の実質世界GDP総計は約100兆ドルなので、言い換えると3.5兆ドル使うと二酸化炭素排出量前年比5.4%減少の効果が得られるという計算が成り立つ。随分と杜撰な計算であることはお断りしておくが、規模感だけ分かって頂ければ良いと思う。

3.5兆ドルは日本円にして約525兆円(1ドル150円換算)。日本の国家予算は115兆円(令和7年度概算)で、アメリカの国家予算は7兆2,660億ドル(2025年概算)なので、ザックリアメリカの国家予算の半分を注ぎ込む計算になる。

年間3.5兆ドルの予算を二酸化炭素排出量削減に注ぎ込んで、それを10年継続したとしよう。

そうすると、35兆ドルの予算を注ぎ込み世界の年間二酸化炭素排出量は約 36〜37ギガトン削減が可能だと計算できる。だが、IPCCの簡易推定の数字を使って計算してもこの予算と時間を注ぎ込んで得られる温暖化抑制効果は 0.01℃未満の温度低下であると推計される。

つまり、温暖化への影響はほとんどゼロに近い。

しかし、2020年の短期でも世界経済の影響は多大であって、各国の財政は悪化した。とても10年継続出来るとは思えない。

そもそもこの二酸化炭素排出量削減のモデルは、全世界が裏切らず誠実に履行することが前提であるのに、その効果が絶望的だという点で既に計画そのものが破綻しているといって良い。

コメント

  1. 匿名 より:

    政府試算は突っ込みどころ満載だけど、それを無視したとして、CO2削減なら原発2基位稼働すればおつりがくる。つまり金目が、、、、と言うこと。

    • 木霊 木霊 より:

      そうですねぇ、今必死に稼働しようとしている、柏崎刈羽原子力発電所が稼働すれば、どうということはないという。
      ここを突破できれば余裕が出来そうなんですよね。

  2. 匿名 より:

    私は日本として二酸化炭素排出量削減自体はやるべきだと思ってますが、今政府などがやろうとしていること、やり方には問題が有ると思っています。
    また、地球レベルでは中国アメリカなどが一番影響していて、日本が国内でできることは限られていると思ってます。

    変な話、コロナのときには二酸化炭素排出量削減が進みました。
    景気が停滞すれば削減できるでしょう。

    じゃあと言って太陽光発電はと考えた場合、設置の仕方によっては、かえって二酸化炭素が増えるのは目に見えています。

    政府(・・とか東京都とか・・)幼児の議論見ているみたいで大丈夫か?と思う次第。

    国環研もはいはいと試算するだけでなく、政府にガツンといってやらにゃきゃ。

    • 木霊 木霊 より:

      二酸化炭素排出量削減自体は目指して良いと思うんですよね。
      ただ、それを第一目標に据えてくれるなと言う話でありまして。

      それと「コロナの時に」という話なんですが、2020年だけは前年比で約5.4%二酸化炭素排出量が減少しています。ただし、気候変動には何ら優位な影響は得られませんでした。
      2020年の世界のGDP合計額は100兆ドル程度で、その3.5%ですから3.5兆ドル程度(約525兆円相当)使っても効果無し。それを10年程度続けても、0.01℃程度の温度低下効果しか得られないという風に試算されています。

      二酸化炭素排出量削減自体は否定しませんが、大金を使ってそれを目指しても効果はほぼ得られないと。ほぼ自己満足に過ぎないんですよね、今の方針って。
      今の政府はそういった冷徹な計算結果を受け容れるべきなんですよね。

  3. 匿名 より:

    醜い政治的試算ですね。がコレ皆に「計算根拠出せ!」と叩き巻くって貰って
    「根拠データと計算過程を白状させてくれ!」
    てな内なる声?が聞こえる気も?

    だって最近聞き覚えのある試算だもの(つд`)

    最も単純なCO2排出量の低減手段:GDPや経済成長率を下げる≒不況にすればCO2排出が減る。
    コロナ禍の不況率XでCO2増加ペースがY減った

    この試算で使った最新の計算式を使うのが一番手っ取り早い。

    「暫定税率の廃止で景気はX向上する」このXからCO2排出量Yを計算した。

    即ち
    「暫定税率の廃止で、どれだけ景気が向上するかX」
    の試算が計算過程として先にあるのが自然(笑)

    これこそ公表して欲しいすね(爆笑)

    • 木霊 木霊 より:

      計算根拠が出たら、阿鼻叫喚の世界でしょうね。
      別のコメントにも書きましたが、二酸化炭素排出量削減って割と意味がなく、経済的悪影響だけが積み上がる方針なんですよね。
      そりゃ減らせばいいわけですが。

      逆に、多少増えても経済が回るという逆説的な計算結果にもなるんですが、それは公開できませんね。きっと。

  4. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    理系なら誰もが知ってる、
    「数字は嘘をつかないが、数字を使って欲しい結果は演出出来る」
    ですよね。

    これにつきます。

    • 木霊 木霊 より:

      おはようございます。

      間違っているのは数字ではなく解釈だってヤツですね。
      「数字は嘘をつかないが嘘つきは数字を使う」とは良く言ったものです。

      今回腹立たしいと思ったのは、政策のための数字つくりだと言うことです。ガソリンが安くなったらEV普及率が下がる?いやいやご冗談を。

      • 七面鳥 より:

        >ガソリンが安くなったらEV普及率が下がる?

        官僚は、よほど「資本主義における市場原理」がお嫌いなのでしょう。

        • 木霊 木霊 より:

          官僚は、社会主義を目指しているかも知れません。俺達が管理してやる!と考えているかも?
          冗談ですよ。