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劣化ウラン蓄電池が開発される

安全保障
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これがまさに「再生可能エネルギー発電」だね。

世界初「ウラン蓄電池」を開発 原子力機構 劣化ウランを資源化 再生可能エネルギー推進

2025/3/13 18:28

日本原子力研究開発機構(原子力機構)は13日、ウランを使用する世界初の蓄電池を開発したと発表した。実用化すれば、天然ウランから原発の燃料を製造する際の副産物である「劣化ウラン」を資源化でき、再生可能エネルギーの普及にも貢献できるとしている。

産経新聞より

正直、理論的に放射性物質を電池に出来ることは分かっていたのだけれど、「どうやって安全に使うか」さえクリアできればという話だよね。

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利用出来る可能性は十分にある

二次電池に利用可能

ご存じの人は多いと思うが、「原子力電池」とか「アイトソープ電池」とか呼ばれる放射性同位体の発する熱を電力として使う電池は存在していて、心臓ペースメーカーに使われたり、宇宙開発に使われたりしている。

ボイジャー1号、2号なんかにも搭載されていて、打ち上げから40年以上経つ今でも利用可能である。

今回、画期的だったのは充電池(二次電池)に使えるという点である。

負極側の電解液にウラン、正極側の電解液に鉄をイオン化して溶かし、その電位差で発電する。幅約10センチの試作機は、電圧がアルカリ乾電池の1・5ボルトに近い1・3ボルトで、発光ダイオード(LED)を輝かせた。

充放電を繰り返しても性能や電極の状態に変化はなく、安定していた。構造上、リチウムイオン電池よりも大型化が可能で、実用化が進むバナジウム電極の大型蓄電池より高効率だという。

産経新聞「世界初「ウラン蓄電池」を開発」より

電解液にウラン(劣化ウラン)を用いているのだが、劣化ウランが放出するα線は弱いため、人体に及ぼす悪影響は高くはない。ただ、ウラン自身が重金属であることや、放射性物質であることは人体にとって有害である。重金属中毒の原因になるし、体内に取り込まれた状態で放射線の放出がなされれば、体外から放射線を照射されるより危険である。

沢山ある劣化ウラン

だから、民間で運用されるような二次電池には向かないのだが……。

劣化ウランは、核分裂が起きにくく安全な同位体が大半を占めるが、国内には使い道がなく、約1万6千トンも保管されている。今回の成果は、ウラン蓄電池として資源化する道筋を示した形だ。

産経新聞「世界初「ウラン蓄電池」を開発」より

今、国内に大量に存在することと、割と有用性の高い物質である事が分かっているので、再生可能エネルギー発電と組み合わせる系統用蓄電池に利用する分には結構良いんじゃないだろうか。

img

理屈は結構単純なんだよね。尤も、課題も沢山あるんだけども。

劣化ウラン蓄電池の課題はともかく、系統用蓄電池を作る話は進んでいる。

NTT、全国7000施設を再エネ蓄電拠点に 家庭に安定配電

2024年9月18日 18:00

NTTは2025年度にも配電事業に参入する方針を固めた。全都道府県に計約7000カ所ある通信施設を有効利用し、蓄電池を順次設置していく。太陽光発電などの再生可能エネルギーを地産地消する分散型電源を整え、大規模な地震や台風が起きた際も家庭に電気を安定供給できるようにする。

日本経済新聞より

ただ、収益性を得られるかについては葛藤があるようだ。

容量や安全性に関する課題はこれから

さて、割とキャッチーなニュースだとは思うんだけど、じゃあウランを活物質として二次電池を作った時に大容量化が可能なのかとか、寿命や安全性に関する研究はコレからの課題である。

重金属を用いるから、他の錫とか鉛とかそういうものの扱いと同程度には扱いが面倒ではあるんだけど、鉛は既に一般的な車に搭載される二次電池として使われている。劣化ウラン電解液の扱いはそれよりもうちょっと厄介ではあるけれど、それでも将来性はある。

今回試作したウラン蓄電池の起電力は1.3ボルトで、一般的なアルカリ乾電池(1.5ボルト)と近い値でした。充電後の蓄電池をLEDに繋ぐと、LEDが点灯することを確認できました(図3)。これは、蓄電池に貯めた電気を取り出せたことを意味します。また、今回充電と放電を10回繰り返しても蓄電池の性能はほとんど変化しませんでした。さらに、負極、正極とも電解液中に析出物はなかったことから、ウラン蓄電池では安定して充電と放電を繰り返せる可能性が示されました。

JAEAのサイトより

安定性は高そうだからね。

まあなんというか、処理に困っている物質を利用出来るのだから、性能が出せれば良いのかなと。政治的コストは高そうだけれども、とにかく技術的に使えるレベルにまで高めてあれば、利用価値はあると思う。頑張って欲しい。

コメント

  1. BOOK より:

    人類文明生き残りの最後の希望の原発燃料 「プルトニウム」の原料である劣化ウランを、
    たかが数十年の不良在庫処分として、電池に流用・処分とか 愚かにも程がある!!!

    – – – の ような気が^_^;

    石油ウラン等、各種エネルギー資源 例えばA,B,Cの枯渇時期は現状消費トレンドに基づき試算されてますが、この計算には落とし穴があります。

    すなわち、資源Aが枯渇すると「残りB,C 資源の消費速度が加速し枯渇が早まる」
    訳ですが、 これを考慮した試算を見たことがない。 そこで独自試算すると

    最も悲観的な予測(ワーストケース)だと 何と 70年後 2095年には、
    全ての化石燃料とウラン(ウラン235、核分裂に使えるウラン)も枯渇します!!!??

    その時頼れるものは? 核融合間に合ってれば良いけどギャンブル過ぎ。

    実績からすると劣化ウラン(高純度ウラン238)への高速中性子照射で作れるプルトニウム239が最後の原発燃料、

    天然ウランの有効利用と見做せば、ウラン資源が約60倍に増えることに相当

    問題は、このプルトニウム合成に用いる高速増殖炉が頓挫気味なこと
    だけど、次世代進行炉、あるいは核融合-未臨界炉はプルトニウム合成炉に使えて、
    特に 後者は高速増殖炉より格段に安全で、核融合開発・産業化にも貢献し、、、

    だから劣化ウランは大切、無駄使いしちゃダメ(^-^;

    • BOOK より:

      で また^_^; 純技術的に2次電池として見れば、コレ正直ゴミ^_^;

      なので、劣化ウランをフランスに送れとか? の売国的騒ぎ?(あるのか?)に抵抗して有用性を宣伝し、国内に留める 高度な陰謀なの?

      陰謀なのだったら日本政府も捨てたモノじゃ無いけど(^-^;

      – – –
      ゴミと考えた理由

      これはレドックスフロー電池で、揚水発電所の代替に使う
      バナジウム・レドックスフロー電池

      https://sumitomoelectric.com/jp/products/redox/ranges

      がコンペチターになるはずだけど

      この劣化ウラン電池は電解液に 数万円/mL と激烈高価なイオン液体使ってたり、
      数100回やっても手間殆ど変わらない充放電サイクル試験を10回分だけ公表とか、
      まずは10数回で壊れるのでしょうね。

      コスト、寿命とも、基礎段階から お話しになりそうに無い。

      • BOOK より:

        現状低性能であることを ゴミと表現したことは、私の思い上がり、不適切な発言でした。 不快な思いをされた方にはお詫びいたします。

      • 木霊 木霊 より:

        バナジウム・レドックスフロー電池は、数年前にかなり期待が持てるなと思って記事をみていた記憶がありますが、コスト問題がネックなのか余り進んでいない様子・
        NAS電池も期待していましたが、イマイチ導入スピードが遅く、来年からという噂もあるものの増えている感じではありません。

        今回のこの劣化ウランのヤツは、未来の技術的な話なので、レドックスフローやNASよりも更に先の話でしょうね。

        • BOOK より:

          バナジウムの資源問題が、火力発電所の回収ボイラー煤から沢山取れるので解決したのでコスト下がるて話を私も聞きましたが どうなったのでしょうね?

          >未来の技術的な話なので、レドックスフローやNASよりも更に先の

          結局現状モノになってるのは古き良き(苦笑)^^; 揚水発電所だけ、

          ハードSFオタク的には その次の本命が、超伝導 蓄電&送電 :完全無損失なんですが、

          この手って核融合しかり 物凄い勢いで進歩して夢の実現は目の前
          と思ったら突然数十年停滞とか

          なかなか世は思い通りには^_^;

    • 木霊 木霊 より:

      この、ウラン蓄電池ネタって、過去にも何度か見かけたんですよね。
      割と定番らしいです。
      そして、なかなかモノにならない技術のようですね。

      実は今回取り上げた理由って、「再生可能エネルギー発電」に繋げたいという発想が面白かったからです。結構な無駄遣いになりそうですから。