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「緊急事態対応、自衛隊の明記を最優先」と言及した石破氏

安全保障
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それを実現できたら、マジ、見直すわ。

石破茂首相、改憲派集会に「緊急事態対応、自衛隊の明記を最優先」とビデオメッセージ

2025/5/3 17:42

日本国憲法の施行から78年となる憲法記念日を迎え、東京都内で3日、集会が開かれた。石破茂首相は改憲派の集会に寄せたビデオメッセージで「緊急事態対応、自衛隊の明記を最優先に取り組みたい」と意欲を示した。

産経新聞より

口だけってことではなく、夏までに法案作って解散総選挙をやってくれ。

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緊急時対応できる体制構築は必須

緊急事態対応

このブログではこの手の話題は何回か取り上げているので、今更という感じもする。が、改めて整理しておくことにしよう。

そもそも、「緊急事態」とは平時ではない状態を指す。憲法も民法も刑法も、およそ日本の法律は緊急事態が発生することを想定していない。通常の法律運用では上手くいかない事態を迎えた時に、非常事態として特別な仕組みを使うという考え方が、緊急事態対応というやつなのだ。

したがって、「非常事態を生じさせないよう努力すべき」とか、「現行憲法下で解釈によって必要な措置をとる」とか、そういった寝言では話にならない。

防災などでも、非常時に如何に対応するのかというルールを定めることで、災害発生時に対処できるようにすることが基本的考え方であるため、「考えない」のは最悪の選択肢だと言える。

分かりやすい事例を出すと、例えば映画「シン・ゴジラ」では、ゴジラに対応するために自衛隊を「治安出動」で出すか「防衛出動」で出すか悩むシーンがあるのだが、結果的に防衛出動を選択。

ゴジラ退治に、自衛隊は「防衛出動」できるか

2016.9.5

話題沸騰の映画「シン・ゴジラ」を封切り直後に、夏期休暇でたまたま帰省中だった防衛大学校生の長女と一緒に鑑賞した。

「もはや怪獣映画ではない。これは国防映画である」--8月8日に生出演したニッポン放送のラジオ番組「ザ・ボイス」で、そう評した。加えて、官邸のシーンや自衛隊が活躍する場面に高いリアリティを感じたとも語った。

~~略~~

だとすれば、いくつか専門的な疑問が湧く。ここでは「防衛出動になるか、治安出動になるのか」、そこにこだわりたい。防衛出動は国際法上の自衛権行使、つまり武力行使を可能とする、言わば切り札である。他方、治安出動は国内法上の警察権行使であり、武力行使が許されない。

日経ビジネスより

しかし、現実的に法に照らして考えると、防衛出動を出すのには無理がある。武器使用を考えるとどうしても防衛出動をせざるを得ないのだが。

ゴジラで防衛出動が許されるなら、「存立危機事態」でも出動できる(よう法整備した)のは至極当然である。もしゴジラ来襲で超法規的出動が許されるなら、国民の生命が根底から覆される明白な危険のある場合(存立危機事態)の出動は当然であろう。

日経ビジネスより

それは「超法規的措置」であり、通常想定される法律行使では事態に対処できないからの決断であると理解される。そして、その超法規的措置が許される仕組みが「緊急事態対応」なのである。

平時の統治機構を以て対処不能

国家緊急権とは、「戦争・内乱・恐慌・大規模な自然災害など、平時の統治 機構をもっては対処できない非常事態において、国家の存立を維持するために、 国家権力が、立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限」をいう。

その設定をすると何が起きるのか?というと、反対派は「明文の規定を設けることにより、かえって、権力濫用の危険が生ずるおそれがある」と宣うわけである。

しかしこれは鶏が先か卵が先かという話だ。憲法の条文の中に憲法の効力を一時的に無効化する停止ボタンを設けると、有効化するまでに「権力乱用の危険がある」というのだが、寧ろ、平時から見たら権力乱用に映る判断が出来るように整備するという意味であり、その非常時においても「絶対にやってはいけないこと」を明文化して、それ以外はOKという状態を作り出すことこそが、「緊急事態」の設定なのだ。

これには最強の反論があって、保守勢力にとっては「民主党政権のような政権下で非常事態を迎えたら、とんでもない権利の濫用が起きる」という殺し文句を言われると、「うむむ」と悩まざるを得ない。それほどまでに、あの時の鳩山由紀夫と菅直人は酷かった。

こちらの記事と同じ話になってしまうので、具体的言及は避けるが……。

いや、東日本大震災が発生して以降、根拠なく全国の原子力発電所を停止させて、安全性の確認をして、今なお多くの原子力発電所を法的根拠なく再稼働させていない実態を考えると、これはむしろ「緊急事態」の設定が必要であったと言えるかもしれない。

平時に戻った判断をした時には、全て正常化させるという判断ができる可能性が高いが、明確なルール化なしに物事を進めると、有益な状態に戻すことに法的な根拠を求められてしまう。

だからこそ、憲法を規範とする法律などに対する非常停止スイッチと、復帰手順は定めておく必要がある。

自衛隊明記に反対する

フルスペックの軍隊

一方で、憲法に自衛隊を明記するという点には異論がある。

ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルのガザ攻撃など混沌とする国際情勢を踏まえ、双方の集会で安全保障の在り方が議論された。

産経新聞「石破茂首相、改憲派集会に~」より

戦争が起きた時に、自衛隊の隊員が「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえる」と服務宣誓に則った行動をする事を求められるが、しかし例えば捕虜になった際に、自衛隊が「軍隊」であることと「軍隊ではない」ことで隊員の扱いには大きな差が出てしまう。

また、有事対応においても、現在採用しているポジティブリスト方式では、行動に大きな制約が課される可能性がある。

加えて、隊員の行動が有事対応であるにも関わらず、民法や刑法で裁かれるような事態になれば、目も当てられない。

つまり、憲法に「軍隊ではない」ことを明記すべきではなく、明記すべきは国家が必要な防衛力補を持する義務を追うことである。そのための軍事力を保有することこそが、明記されるべきなのだ。

改憲案は加憲が望ましいが

そこでこの条文が問題となる。

第二章 戦争の放棄

〔戦争の放棄と戦力及び交戦権の否認〕

第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

衆議院のサイトより

パヨク大好き憲法9条だが、この条文は日本語としてもかなりイケていない。是非とも改憲すべき部分ではあるのだが、ではどのようにすれば良いのかといえば、一番スマートなのは3項の追加だろうか。

3 前2項の規定にかかわらず、日本国政府は日本国民を防衛する目的で、軍事力を整備する義務を追う。

弊ブログの私案

本来であれば、1項、2項共に改正するのが望ましいのだが、政治コストを考えるのであれば、この程度の条文を追加するに留めるのが次善の策であると思う。3項は、法律の条文は矛盾しないように読むのが原則であるので、1項の「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄」に対応する「国権の発動たる戦争」と「武力による威嚇又は武力の行使」に内包される自衛権の行使を、国連憲章の規定に基づいて許されることを確認する規定となる。

そうすると、事実上2項は死文化されるわけだが、国際法に基づいて考えると、武力を以て国際紛争を解決することは原則禁止であり、自衛権の行使など特定の状況下でのみ認められるのであるから、国家の機能として自衛権の行使手段を持つことは、国家の義務である。そうすると、そもそも2項の規定は「前項の目的を達するため」という部分は、「国の交戦権は、これを認めない」にもかかる必要がある。日本語としてはおかしいが、そうでなければ国家の責務である「国民の生命と財産を守る」ということを果たせないのである。

憲法9条は努力義務である事を示すために、9条の2という新たな条文を置くことも考えられるが、ここでも「自衛隊」という軍隊かそうでないかよくわからない組織ではなく、明確に軍事力を持つことを定めることが望ましいと、そのように思っている。

ただし76条2項、テメーは駄目だ

ただ、確実に改憲する必要がある部分はもう1箇所あって、ここは条文を加えるようなやり方が馴染まない。

〔司法権の機関と裁判官の職務上の独立〕

第七十六条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。

3 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

衆議院のサイトより

76条2項はどう考えても無理があるのだ。「特別裁判所は、これを設置することができない」とは、軍法会議(軍事法廷)の設置を否定した規定である。

しかし、有事における裁判を民間人が担当することは極めて不適切である。何故なら、日本の法律は有事を想定していないからだ。そして、裁判官は軍事的な常識が一切ない。法律は知っていても、軍事的な知識の裏付けがなければ、判断できるはずもないのである。

平時における裁判であれば、知的財産の分野における知財高裁のように軍事に特化した下級審を置くことで対応可能かもしれないが、有事においては例外的に裁くシステムを採用しないととてもではないが機能しない。

軍隊を作る以上は、軍法会議の設置は避けられない。

いや、厳密に言えばドイツ、オランダ、スウェーデン、ノルウェー、デンマークのように軍隊を持っていても軍事法廷制度を完全廃止してしまった国も幾つかある。だが、専門家の支援体制を整備するなどの手当は行っているし、自衛隊法のような特別法の設置で対応はしている。そして、有事においては特別に対応する制度(戦時条項の設置)を設けているのだが……、残念なことに日本には「緊急事態(有事対応)」の設定がないために、それもない。

ここいらに手をいれるということであれば、石破氏を応援するんだけどね。

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