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非核三原則の見直しを求める元政府高官

安全保障
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所詮は言葉遊びなんだけど、日本はおかしな原則が多いからなぁ。

「『核持ち込ませず』は間違い」米核配備検討を訴え 元政府高官ら拡大抑止巡り提言

2025/6/2 21:33

笹川平和財団は2日、同盟国である米国の核兵器を含む軍事力によって日本への攻撃を他国に思いとどまらせる「拡大抑止」の実効性向上へ向けた提言を公表した。

産経新聞より

日本の掲げるおかしな原則といえば、非核三原則に武器輸出三原則、専守防衛の原則とかある(あった)のだが、何れもなかなか荒唐無稽である。

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実は5原則

核共有議論?

で、今回のこの話はその原則に切り込むもので、ちょっと前だったら、大騒ぎになっただろう。

提言は兼原信克元官房副長官補や山崎幸二前統合幕僚長、武居智久元海上幕僚長、尾上定正元航空自衛隊補給本部長らがまとめた。3月に日米の元高官らで開いた会合での議論を基にしている。

提言では、平時から日米で運用調整を行う「同盟調整メカニズム(ACM)」に戦略面での拡大抑止協議の枠組みを創設▽非核三原則のうち「持ち込ませず」を「撃ち込ませず」に変更▽米の核持ち込みや日米の「核共有」を検討▽核廃絶を掲げ続け、国民の理解を得る-などを盛り込んだ。

産経新聞「「『核持ち込ませず』は間違い」米核配備検討を訴え」より

ただ、おかしなことは「おかしい」と言えない世情の方がおかしいのである。元自衛隊関係者の3人がこうしたことを言及できることは喜ばしい。

そういえば、田母神氏は航空幕僚長の職にあった時代に、懸賞論文を出して更迭されていたので、未だ現職の自衛官やその関係の職にある方が発言するのは宜しくないのかもしれないね。個人的には田母神氏の論文の内容には疑問を感じる部分はあるのだが。

ともあれ、今回、核共有の必要性を検討しろという主張をされるのは、実に真っ当なことである。

ところで、核共有とはそもそもどういうことなのか、について少し言及しておきたい。やや誤解される向きもあるが、基本的には核共有とは、自国に核兵器を持たない国が核兵器使用に関与することができる関係になることである。

誤解があるのは「日本が核兵器のボタンを持つのだ」という話だが、残念なことにアメリカと核共有できることになっても、核兵器のボタンを貰えるわけではない。

じゃあ、何をして貰えるのか?というと、誤解を恐れずに言えば核兵器を日本に落としても良いという許可を予め出しておく話なのだ。そういう意味では、核共有と「撃ち込ませず」はどうにも馴染まない気はしている。

NATOの核共有

何処かでも解説した気はするんだが。

そうそう、ドイツの核武装の話であった。

NATOには核保有国が3カ国あって、それがアメリカ、フランス、イギリスなのだが、現状、核共有国はドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、トルコであり、アメリカから核兵器の配備を受け容れている。

各国ともアメリカとの約束で、B61核爆弾を投下できる航空機を各国の空港に常駐できる体制を整えているので、ロシアなどから進行された場合に核兵器を投下して貰えると期待される。ただ、ロシアに報復する前提なのか?というとそうではない。

nuclearsharing_map

作戦に投入される戦闘機は現状、F-16とトーネードIDSなのだが、F-16の戦闘行動半径は1250km、トーネードIDSは1390kmと言われていて、これがこういうことになる。

ちょっと大雑把ではあるが、それぞれの戦闘行動半径を1500kmと仮定して円を描くと、こうなる。

何れもロシア領内に届かないのだ。いや、トルコからならギリギリ領内に届くが、モスクワには届かない。

核の傘の議論でもあったのだが、アメリカはアメリカの利益になる軍事行動しかしないのは当然の選択であって、この核共有という選択も「そういう意味」なのである。

核保有国に囲まれる現状

そして、日本なのだが、こんな状況にある。

ロシアからのICBMによる攻撃範囲にあり、或いは支那からのICBMによる攻撃範囲にあり、北朝鮮は核弾頭の開発に成功したかは不明ではあるが、いずれにせよ日本を攻撃範囲に収めていることには変わりが無い。

それらに対抗する為に、ということになるとは思うんだけど、果たしてアメリカはこの核共有の考え方に共感してくれるかは不明だ。

日米で少数の特別チームをつくり、米国の核戦力と日米の通常戦力を組み合わせた具体的な作戦を検討するよう提案した。核を運用する米戦略軍などに日本の自衛官を派遣し、核戦略や作戦計画に精通する専門家を育成する必要があるとも説いた。

核共有にも言及した。核ミサイルを搭載した米軍の原子力潜水艦の寄港や、自衛隊の戦闘機を活用した米軍の核兵器の運用を検討すべきだと踏み込んだ。

日本経済新聞より

だが、何ができるかできないのかは、当然ながら議論した上で詰めていくべきであり、未だにこの発言をする段階であるというのが残念なことではあるが、少しでも議論を前に進めていくしかないと思う。

できないのであれば、できないなりに何か考えなければならないしね。

というわけで、非核三原則などは嘘だ。今までは「言わせず」というスタンスだったので四原則、「考えてもいけない」という五原則であった。

核武装「言わせず」「考えてもいけない」 変わらない「非核5原則」

2024/8/8 01:00

「非核三原則を堅持して、核兵器のない世界の実現に向けて努力を着実に積み重ねていくことは、唯一の被爆国であるわが国の使命だ」

岸田文雄首相が6日に広島市で行われた平和記念式典でこうあいさつするのを聞きつつ、日本は現在から18年前の平成18年から変わっていないなと感じた。

~~略~~

この年12月に中川氏にインタビューすると、一連の騒動についてこう語った。

「私は最近は(日本は)非核三原則に『言わせず』を加えた非核四原則どころか、『考えてもいけない』という非核五原則だと言っている」

産経新聞より

故中川昭一は、不審死で56歳でこの世を去っている。平成18年といえば中川昭一が自民党の政調会長を務めていた時期であり、酒に纏わる失敗を多数していることから「中川(酒)」と揶揄された人物でもある。

とはいえ、その思想は故安倍晋三に盟友と言わしめた程であり、この時の非核五原則というのも、18年前から何も変わっていなかった。

そういう意味でも、せめて「言わせず」と「考えてもいけない」というのは、流石にそろそろ脱却して欲しい。それを口にした安倍晋三も暗殺されてしまっただけに、何とも複雑な気持ちになるのだけれど。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    まず大前提として、七面鳥は核兵器が大嫌いです。
    爆発して終りの通常兵器と違い、生化学兵器同様、地域の汚染と被害者の後遺症がありますから。
    ※通常兵器だって、男の子としてはアレですが、人殺しの道具としては無い方が良いに決まってる。

    その上で、「撃つ側が量産していて、撃たれる側が自縄自縛」という今の体勢はどう考えてもおかしい。
    そもそも論で、今の日本が他所の国に打って出る理由が無いのに。
    特亜の世迷い言は、国連の敵国条項と共に葬るべきとも思ってます。
    じゃあ日本が核兵器持つ必要があるかというと、相互抑止としてはアリなんですが、現実には持たなくてもいい。
    ただし、一朝事あらば「相互抑止」で「集団的自衛権」が発動してアメリカの核が火を吹くぜ!ってのを明文化しておいた方が絶対にいい。
    非核三原則を言うなら
    「造らせない・持たせない・撃たせない」
    でしょう。
    本当に、自縄自縛は利敵行為に他ならない。

    >「中川(酒)」

    七面鳥は、今でもあれはマスコミの女に一服盛られたと思っています。
    思うだけなら問題ない。
    思うだけでも問題なのは、隣の赤い国(二つ+α)

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      核兵器は破壊力の面でも後遺症の面でもロクデモナイ兵器ですよね。
      そういう意味でABC兵器の何れも碌でもないけれども、そのカナでも突出しているのが核兵器ではあります。

      とはいえ、核兵器は既に存在しているのでありまして、それに対処することを放棄するのは、責任放棄でしかありません。やはり、対処することを考えるしかなく、核兵器生産を忌避するのであれば、もはやアメリカの核兵器をアテにするという選択肢しか無いのであります。

      中川昭一、安倍晋三と、どうしてそうなってしまうのかという政治家は多いのですが……、どうしてその死について真剣に捜査しないんですかねぇ、我が国の警察は。

  2. 砂漠の男 より:

    「核共有」のために、「核を持ち込ませず」は不都合ですね。ですが、自民党はやるやる詐欺政党ですから、今回の議論も暇つぶしかマッチポンプと見ています。

    個人的には、いま安全保障問題(核共有)を議論するよりも、尖閣諸島に護衛艦を貼り付けるほうが、(支那が過剰反応するので、)よほど国民へのインパクトになると思います。

    政府・自民党は参院選で大負けしたくはないでしょうけど、国民の意識は『米』と『増税』と『外国人優遇』に向いており、そもそも安全保障問題は選挙争点になり辛い。

    小泉米劇場も、自民党議員たちが期待するほど政府・自民党の支持率回復には役立たないでしょうし、すでに”石破後”で党内が割れているという話も聞こえています。

    • 木霊 木霊 より:

      マッチポンプでも、議論しないよりはマシだと思っております。

      尖閣諸島に関するアプローチは、何が良いのか分からないのですが、少なくとも環境調査をやるべきだと思っています。
      ただ、今やると政治的に荒れるんで、やらないのでしょうねぇ。

      「石破後」がいつになるのか、が、心配ですね。早いに越したことはありません。

  3. 山童  より:

    文学でも陸自のAH1Sの操縦していた砂川文ニ氏が芥川賞を取ってますね。
    文庫に流れた「小隊」はロシアと北部方面隊の死闘を描いていて、当地に勤務した者から観てもリアルです。
    芥川賞はやたらとマイノリティに受賞させたがる節があり、それ自体は構わないけど、そういう左派に媚売る選考委員が大嫌いですが、元自衛官が戦闘を描いた作品を候補(小隊は受賞作ではない。翌年に別作品にて受賞)にした事は評価できます。昭和なら元自衛官の対露モノというだけで無視や潰しに来ましたから!
    喜ばしい風潮とは言えます。