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情治国家韓国で「黄色い封筒法」、企業に何を強いるのか

大韓民国ニュース
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凄いこと言い始めたな。

在韓国欧州企業「黄色い封筒法は企業人を潜在的な犯罪者にしかねない」

2025.07.29 06:33

韓国に進出している欧州企業が、与党・共に民主党が強行しようとしている黄色い封筒法(労組法第2・第3条改正案)について「企業人を潜在的な犯罪者(potential criminals)にしかねない」とし、強い反対の声を上げた。法施行によって法的リスクが高まれば、韓国市場から撤退する可能性もあると明らかにした。

中央日報より

韓国がおかしな法制度を導入するのは今に始まったことではなく、この「黄色い封筒法」については、何度も取り沙汰されては頓挫してきた“因縁の法案”である。

しかし、流石はミョンミョンである。現職韓国大統領の権力を余すことなく発揮して、早速手を付けたのがこの法案だとは恐れ入る。

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今の韓国国会にはストッパーがいない

過去にも提出されたがなんとか拒否

皆さんご記憶にあるかどうか分からないが、2023年末に前韓国大統領のユンユンが大統領権限で否決したのがこの法案である。

「黄色の封筒法」などが国会で可決 尹大統領が拒否権行使か

Write: 2023-11-10 11:44:26/Update: 2023-11-10 15:43:50

労働者によるストライキの権利を保護するための法律、いわゆる「黄色の封筒法」の成立と、放送局に対する政権の影響力を弱めるための放送法の改正について、この実現を目指す野党と反対する与党の間で激しい対立が続くなか、国会で採決が行われ、法案は、議席の過半数を占める最大野党「共に民主党」の主導で可決されました。与党「国民の力」は、尹錫悦大統領に拒否権の行使を要請する方針です。

KBS WORLDより

当時与党だった「国民の力」は猛反発し、「国を亡ぼす悪法だ」とまで言い放っていたが、2023年末に共に民主党が再び提出、そしてまさかの国会通過。

ユンユンは、最後の切り札を使うしかなかった。

そもそも「黄色い封筒法」とは、労働組合のストライキによって発生した損失について、企業側が労働者に対し多大な損害賠償を請求することを制限する内容が盛り込まれたものである。

韓国では労働争議が盛んに行われ、労働者がストライキを行って工場が操業停止になるのは毎年のように見かける光景である。当然、工場の操業が停止してしまえば、様々な問題が発生する。納期に間に合わなくなったり、装置のトラブルに繋がったり(大抵の製造装置は稼働開始時と停止時に動作が不安定になりがちである)。

こういった、意図的に引き起こされた事象により発生した損害に関して、企業側からストライキを打った労働者側に損害賠償請求できるというのが一般的な社会で行われている。そうでなければ労働者の主張が強くなり過ぎるのだ。

サンヨン自動車の損害賠償と黄色い封筒

実際に、韓国で起こったトラブルにより、損害賠償が労働者側に求められたケースがあって、この事案から「黄色い封筒法」と呼ばれるようになった。

2014年に双竜(サンヨン)自動車のストライキに参加した労働者たちに対して、総額47億ウォンの損害賠償を命じる判決が出されたことをめぐって、ある市民が4万7000ウォンを入れた黄色の封筒をメディアに送り、寄付運動のきっかけを作ったことにちなんで、「黄色の封筒法」と呼ばれています。

KBS WORLD「「黄色の封筒法」などが国会で可決~」より

日本でも、黄色の封書は債権回収の時に使われることが多く、警告の段階によって赤色になったりするのだが、韓国のソレは市民運動が切っ掛けになったとか、なんとか。

割とどうでも良い話ではあるが、韓国左派はこの「黄色い封筒法」こそ、労働者の人権を守るものだと信じて疑っていない。

[寄稿]黄色い封筒法こそ「真の」労働改革です

登録:2023-11-21 03:05 修正:2023-11-21 08:17

「黄色い封筒法」が紆余曲折の末、国会本会議で可決された。政府与党と財界は「国を亡ぼす悪法の強行」と激しく非難し、大統領に拒否権行使を求めている一方、野党と労働社会団体は30年あまりかかった法制定であるだけに、直ちに公布・施行することを求めている。「黄色い封筒法」の運命は、尹錫悦大統領が拒否権を行使するか否かにかかっている。

ハンギョレより

もう、寝言は寝てから言えレベルの話なのだが、これが韓国の実態なのである。

実際に、黄色い封筒運動を主導してきた市民団体「手を取って」によれば、1990年から2023年にかけて197件の損害賠償・仮差押さえ事件で3160億ウォンが請求され、これらの事件の94.9%が労働者個人を標的にし、彼らの暮らしと家庭を深刻に破壊したことが確認できる。多くの企業が損害賠償・仮差押さえを武器に労組の無力化を試みる過程で、2003年の労働者ペ・ダルホさんをはじめ数十人の「労働者烈士」を生み出してもいる。

ハンギョレ「[寄稿]黄色い封筒法こそ「真の」労働改革です」より

「労働者烈士」とは、要は労働争議の果てに命を落とした方々のことである。それはなかなか不幸な話ではあるが、しかし得てしてこういった問題は双方に原因があるものだ。韓国における労働争議はかなり過激で、社長を軟禁したり、経営陣に暴力を振るったりという実例も散見される。使用者側もチンピラを雇って労働者側を襲撃するような話もあって、どっちが悪いというか、争いは同レベルでしか発生しないというか。

では、この問題の根っこは一体何処にあるのだろうか。

元請けも責任を取れ!

先ずは、韓国の労働争議の実態から少し解説していかねばならないと思う。

欧米や日本の常識では、「使用者」とは「労働者」と雇用契約を結んだ者を意味する。だから、下請け労働者が元請に団体交渉を求めるなどという展開は、少なくとも法的には筋違いだ。

だが、韓国では違うらしい。

どうしたことか、これまでも労働者は元請けに対して労働争議を仕掛けるというようなことが頻発するのだ。そして、団体交渉を要求して元請け側から、「そんな義務はない」と蹴られる。

だが、今回の法案が通ってしまえば、裁判所によって元請けが労働環境を「実質的に支配している」と認定されれば、元請けと労働者達との間に雇用関係がなくとも交渉義務が生じることになる。

何となく理があるような話のようにも思えるが、しかし実態を加味するとそうでもない。この理屈が通るなら、物流を依頼しただけのスーパーが、トラック運転手の労組交渉する義務を負う、なんて展開も有り得るのだ。

関係各社が「雇っていない従業員との交渉」に追われる未来は、なかなかにシュールだ。

韓国経営者総協会も同日、声明を出し「労組法の改正によって下請け労組のストライキが頻発するようになれば、産業生態系の崩壊とともに雇用の減少など、我が国の産業競争力は深刻に低下する」と述べた。

中央日報「在韓国欧州企業「黄色い封筒法は~」」より

一応、韓国経営者協会も声は上げたようだが、もはやこの流れは止まらないだろう。

拒否=犯罪?──言論の自由はどこへ

だが、韓国のこの法案の怖さは、もう一歩先にある。

なんと、「団体交渉を拒否したら刑事罰の対象になりうる」のだ。拒否権があるように見えて、実は一歩間違えると“犯罪者”にされる構造となる。これを何と呼ぶべきか、僕の知識にはない。

ILO(国際労働機関)は、こういった刑事罰適用に慎重であるべきと繰り返している。だが韓国においては、韓国政府は企業が法律に違反しているかどうかよりも、労組に嫌われるかどうかの方が問題らしい。

過去の労働争議の実態は、悲惨な面があるのは確かなのだ。

黄色い封筒キャンペーンは、2003年の斗山重工業のペ・ダルホさん、韓進重工業のキム・ジュイクさんら、多くの労働者が企業による過酷な損害賠償請求や仮差押さえに勝てずに自ら命を絶ったことを想起させ、自然と労組法改正の動きへとつながった。

ハンギョレ「『黄色い封筒法』は書くのに20年かかった反省文」より

例えば、2003年の労働争議に関して言えば、件の労働者は焼身自殺をしている。何とも過激なことだ。

しかし、その一方で、金属労組の傘下支部のうち、その規模が最も大きい斗山重工業では、「産別交渉への移行」などをめぐる労使紛争が長引き、11月23日にはついに経営側による「労働協約の一方的な中止」が効力を発する事態に発展するなど、労使交渉は難航を極めている。(注:斗山重工業の前身は発電設備メーカーで公企業の韓国重工業。通貨危機後5大財閥間のビッグディールの一環として三星重工業と現代重工業から発電設備事業が移管され、2000年末には民営化計画の一環として斗山グループに買収された。その後、1200人の雇用調整や人事制度の改革などの構造改革を経て、2001年には黒字に転換した。)

労働政策研究・研修機構のサイトより

色々な背景があったようで、斗山重工業側にもかなり大きな問題はあったらしいことは分かっている。企業側の事情として、雇用調整や人事制度の改革などを進めて赤字体質の企業体制の転換を図る必要があった時期だとは言われている。

労働者側からしてみれば、そんな事情は知らんから待遇改善をしろということだったようで、長期(47日間)のストライキをうった。企業としては体質を変えよという発想で、バンバンと労働者を切った時代でもあったらしい。

どちらがより正しいかなど意味のない議論であり、どのように改善していけば良いのか?という議論が必要なんだと思う。

外資が見限る日は遠くない

そこで問題になってくるのは、外資系企業や外国人投資家である。この韓国社会の実情はさておき、外資にとっては韓国で儲けられるかどうかが重要である。ところが、韓国に出資したとしても、こんな法案ができてしまうととんでもない損失を抱えることになりかねない。

ECCK(欧州商工会議所)もアムチャム(在韓米国商工会議所)も、この法案に強い懸念を表明している。とくにECCKのコメントは「企業家を潜在的な犯罪者にする法律で、どうやって健全な投資環境が成立するのか」と秀逸だ。

そりゃそうだろう。契約書よりもプラカードが強い国で、まともな商売ができると信じる方がどうかしている。

また「特に、企業の投資判断、事業所の移転、構造調整(リストラ)など、高度な経営判断事項にまで団体交渉・争議行為の対象が拡大されるのであれば、急激に変化する産業環境への対応が困難になるばかりか、国家経済にも悪影響を及ぼす」と指摘した。

中央日報「在韓国欧州企業「黄色い封筒法は~」」より

それでも進出を続ける企業があるとすれば、それは慈善事業と呼ぶべきかもしれない。

もはや法律というより感情論

黄色い封筒法は、理念としては美しいようにも見える。労働者の権利を守ろうというのは、割と健全な発想ではある。

だが今回の「黄色い封筒法」は、制度としては、労組が神となり、企業が罪人となる構図を制度化したものに他ならない。

韓国の法制度は、今や労働者の“情”で動き、国際的な“常識”からは大きく逸脱しつつある。まさにOINK(Only In Korea)案件と言えよう。

こうした空気の中で、外資が韓国市場から撤退しない理由を探す方が難しいのではないか。

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