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新潟日報は熊害対策を住民に押しつける

社会
この記事は約6分で読めます。

偶にはこんな記事も。

クマ被害相次ぐ 遭遇しない対策が不可欠

2025/8/24 6:00

いつ、どこでクマと遭遇してもおかしくないと認識したい。出合わぬよう一人一人が警戒と対策を強め、被害を防がねばならない。

新潟日報より

新潟県でも熊害はあるんだろうね。

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不十分な対策

熊害対策は県任せ

さて、世の中には「にいがたクマ出没マップ」なるものがある。新潟県におけるクマ出没情報を纏めたサイトなのだが、県民に注意を促す意味では意義があるとは思う。

ただ、調べてみたら、各自治体で独自に情報を出しているらしい。

世間でこれだけ問題になってるんだから、この情報フォーマットくらい統合しても良さそうなモノだけれど、その辺りの連携は未だやられていないらしい。

ともあれ、かなりの件数のクマ出没情報があって、新潟日報はその辺りを警告しているという意味では、価値はあると思う。だが、人類が武器を持たずにクマに遭遇してしまったら、もはや逃げるしかない。

そういう意味で、非常にイマイチな記事に仕上がっている。

クマの成功体験?

記事の中には無責任な部分が散見される。情報の整合性もイマイチ怪しい感じだ。どんな人がこの記事を書いたのやら。

例えばこの部分。

クマは学習能力が高い。迷い込んだ人里で食べ物にありつけば、成功体験として記憶し、人に慣れ、人間を怖がらなくなる。

クマに人里での成功体験を与えないことが肝心だ。行動範囲をこれ以上広げさせてはならない。

そのために私たちができることは、クマを引き寄せる生ごみや餌となる柿の実を放置しないといった管理の徹底のほか、隠れ場所や移動経路となる耕作放棄地、やぶの草刈りなどだ。

新潟日報「クマ被害相次ぐ~」より

これは確かに「やった方が良い」ということなんだけど、「できてない理由」を考えればあまりに無責任である。

クマの餌になる「生ゴミ」を放置しないというのは、ゴミ回収ステーションの改善をしろってことなんだろう。でも、これ、地域の住民が出すゴミについて、「手を出さないような覆いを作れ」ってことで、地域住民の財布から対策しろという意味になる。

クマの攻撃に耐える程度の設備となると、かなり高額になるので現実味が薄い。

「柿の実を放置しない」の方は、そもそも人が住んでいない民家が増えているので、誰がどうやって手入れをするのか?

結局「言うは易く、行うは難し」を地で行く指摘だ。

クマを警戒せよ

他にも、こんな記載がある。

本県では4~7月に、過去10年の平均を上回る4件の人身被害が起きている。

山に入る際は、クマ鈴や撃退スプレーの携帯が不可欠だ。複数人での登山も心がけたい。

新潟日報「クマ被害相次ぐ~」より

で、個人で防衛してねということらしいんだけど、クマ鈴や撃退スプレーにどれだけの意味があるのやら。

せめて、「複数人での登山を心掛ける」よりも、クマ出没情報を参考にして、目撃が相次いでいる場所には出かけないように呼び掛けるべきではないか。

ハンターとの軋轢

で、更に看過出来ないのはこちら。

改正鳥獣保護管理法が来月に施行され、自治体の判断で市街地での「緊急銃猟」が可能となる。環境省はガイドライン(指針)を公表し、市町村に緊急銃猟の判断や、職員の役割分担、ハンターの確保を求めた。

指針に基づいて訓練を行う自治体もあるが、住民の安全確保や銃猟の担い手育成など課題は多い。

新潟日報「クマ被害相次ぐ~」より

このクマとハンターの問題は、北海道で随分と揉めている話だ(北海道にはヒグマが出没して、本土のツキノワグマとは危険度の度合いが異なる。だから、北海道の事情を持ち出しても、単純に比較するのは宜しくないと思うが)。

どんな話かと言えば、こちら。

クマ出没しても発砲拒否OK 北海道猟友会が支部に苦渋の通知へ

2025/8/20 18:35(最終更新 8/21 14:46)

市街地に出没したクマとイノシシを銃駆除できる「緊急銃猟」制度が9月1日に始まるのを前に、北海道猟友会は20日、現場で状況に応じて発砲を断って良いと道内の全71支部に通知する方針を固めた。緊急銃猟により人身被害などが起きた場合の補償制度が設けられておらず、ハンターが発砲の責任を負う可能性があるためという。

~~略~~

通知では、環境省から十分な回答が得られていないとして、各支部に慎重な対応を求める。道猟友会の堀江篤会長は「市町村から要請があった場合、協議の段階で出動を断ることもあり得る」と話す。

毎日新聞より

そもそも、9月1日からクマ対策として導入される「緊急銃猟」制度だが、致命的な問題が存在する。

それは、依頼されてクマ撃ちを行うハンターが、発砲したことで発生したトラブルは、全部ハンターが解決しろという話になっている。そうすると、ハンターは以下のようなことに対処しなければならない。

  • 発砲した際に、事故や人的被害が出た場合の補償
  • 逃がしてしまった場合に、それに付随した損害が発生しても、ハンターは免責される保証がない
  • クレーマーからの妨害活動への対処
  • 金銭的負担(手当てを出す自治体は多いが、総じて安く、交通費や弾代にもならない)
  • 協力体制も不明、交通封鎖や地域への説明などの支援が十全に行われるかが不明

流石に、ボランティアで撃てというのには無理があるだろう。ただでさえハンターの高齢化が進んでいるうえ、クマを駆除した経験のあるハンターは少ない。にもかかわらず、駆除も責任もハンターに押しつけるのは無理があるよ。

連携に課題

そして、記事にはこんな感じに触れているのだけれど、中身に踏み込めていない。

人員や予算の面から対応が限界だという自治体もある。複数の市町村が連携し、専門人材の雇用や育成を図ることが必要だろう。国の財政支援も欠かせない。

新潟日報「クマ被害相次ぐ~」より

ハンターの不在に加えて縦割り行政が対策の遅れに拍車をかけている。県境を超えてしまうと、ハンターへの駆除依頼というのも効果が出ない。

市街地に降りてきたヤツだけを撃って欲しいといわれても、クマが山に逃げ帰って県境を超えてしまった場合に、「誰が責任を持つの?」という話になると、ハンターにお鉢が回ってきてしまう。

それだけでも不味いのに、自治体毎に取り組みが異なるので更に混乱に拍車をかけてしまう。クマの行動範囲に地方自治体の区切りは関係ないので、そこを統一するくらいのことをやらないでどうする?という話となる。

上でも紹介したが、データの蓄積や警戒情報の出し方すら統一できていないのだから、仕方がないのかもしれない。

でも、本来て対策を考えるのであれば、広域で対策する組織を立ち上げるべきで、広域連携が出来ないというのであれば国家の枠組みで対応するしかあるまい。

共生?!

そして、本当に酷いのは最後の一文だ。

凶作の秋は人身被害が増える傾向にある。十分に警戒し、共生していきたい。

新潟日報「クマ被害相次ぐ~」より

今年は凶作になると言われていて、熊害が懸念されているのは事実である。

県内ブナの実 2年ぶりに「大凶作」の予測 クマ出没のおそれ|NHK 秋田県のニュース
【NHK】東北森林管理局は、クマのエサとなるブナの実のことしの秋の実りの予測について、2年ぶりに「大凶作」が見込まれると発表しました。この予測は、…

この記事は東北森林管理局の予測であり、秋田県に熊害が発生する可能性を言及しているが、どうやら傾向としては全国的な傾向のようだ。

今年は全国的に森林が凶作で、だから餌に困った熊が出没する可能性が高い。だから「熊に注意してね!」「ゴミを放置しないで」「柿の実を放置しないで」という論理展開であれば未だ説得力はある。

だが、新潟日報の記事では徒に不安を煽って自助努力を促した挙げ句、その上で「共生」という……。クマに対して人間の生活圏に出てくるなということであれば、それは「共生する」ということにはならない。それは「棲み分け」である。本気で「共生」を主張するのであれば、寧ろクマに餌を提供して街に住んで貰うという話になるだろう。そうでなければ、避けるべき言葉だ。

ハンターに「駆除」を依頼しながら「共生」しろという。論理矛盾にも程がある。

ただでさえ、住民に自衛を呼び掛けながら、更に「共生しろ」とは。寝言は寝てから言い給え。

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