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使用済み太陽光パネル再利用義務化を断念するダメな政府

環境技術
この記事は約6分で読めます。

断念しちゃった!政府はバカなの?

本来ならリサイクル費用は、購入者や製造業者に負担させるのが筋だろう。それを決められないまま「断念しました」では、問題解決の放棄に他ならない。

政府が使用済み太陽光パネルの再利用義務化を断念 費用負担決まらず、大量廃棄の懸念も

2025/8/27 21:09

政府は、使用済み太陽光パネルのリサイクル義務化を断念する方針を固めた。

産経新聞より

議論のスタート地点は「2030年代以降に大量廃棄を迎えるパネル対策」だったはずだ。ところが費用負担をめぐる押し付け合いで立ち消え。再エネ発電が「環境保護のため」という大義は、一体どこに消えたのか。

というわけで、似たような記事が連続するが、お付き合い願いたい。

  • 太陽光パネルのリサイクル義務化から逃げるな
  • 無責任な業者だけが儲かる構図
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自然破壊を推進する再エネ賦課金

廃棄問題の本質

この問題については、以前にこのブログでも触れた。

当然、リサイクル義務化は必要だと思っていたのだが、費用負担者を決められずに、今回それを断念すると報じられた。驚きである、政府はやる気あるのか?これ、国民にツケを支払わせる積もりだろう。

2030年代後半以降に大量のパネルが寿命を迎えて廃棄される見通しのため、義務化を検討してきた。だがリサイクル費用を誰が負担するかの法的な整理がまとまらなかった。代替策として、リサイクルの実施状況の報告をメガソーラーなどの大規模発電事業者に義務付ける制度の創設を検討する。関係者が27日明らかにした。

産経新聞「政府が使用済み太陽光パネルの再利用義務化を断念」より

一応、大規模発電業者には「報告義務」を導入するらしいが、実効性は疑わしい。そもそも出発点は「大量廃棄に備えること」だったはずだ。

政府は当初、リサイクルを義務付ける法案の国会提出を検討し、製造業者と輸入業者が費用を負担する内容だった。

産経新聞「政府が使用済み太陽光パネルの再利用義務化を断念」より

製造業者と輸入業者が費用を負担――これが筋の通った解決策だ。今からでも遅くない、さっさと法整備しなさい。

違法太陽光発電

これは去年の記事だが。

違法太陽光発電149件、2割是正されず 指導後9年経過も

2024年1月28日 17:00

森林の無許可開発など法令違反の太陽光発電施設が固定価格買い取り制度(FIT)の認定を取り消されぬまま稼働し続ける事例が相次ぐ。森林法違反は少なくとも149カ所に上り2割が是正されていない。行政の連携不足から情報が国に共有されないケースも多く、運用改善が不可欠だ。

日本経済新聞より

悪質な業者が、無許可で森林を切り開いて太陽光を設置――そんな事例がこれだけある。そして摘発されても改善されない。

さらに問題なのは「放置ソーラー」だ。

「草ぼうぼうの太陽光パネル」各地に出現の危うさ

2024/11/12 18:00

なぜか、「草ぼうぼうの太陽光発電設備」があちこちに出現している。長かった酷暑で草木が成長し、管理が追い付かないだけなのか。

メガソーラーをめぐり発電事業者と地域住民の紛争が続く各地で人々が懸念しているのが、「固定価格買い取り制度の期間終了後、太陽光パネルが放置されてしまうのではないか」という問題だ。太陽光パネルのリサイクル義務化に向け、政府の検討が急ピッチで進む。地域住民の不安を払拭できるのか。

東洋経済オンラインより

作るだけ作って、管理もろくにせず放置。時々草刈りされることもあるようだが、基本的に杜撰。これで真っ当な発電が続くわけがない。

こんな状況でらしいよ。

釧路の乱開発問題

その延長線上にあるのが、釧路湿原の乱開発だ。

釧路湿原周辺の太陽光発電施設建設“再調査要求は適切”文化庁

08月27日 17時09分

釧路湿原の周辺で大阪の事業者が進める太陽光発電施設の建設をめぐり、釧路市教育委員会が、事業者に環境への影響調査を再度行うよう求めることは適切だとする見解を、文化庁が伝えていたことが、NHKの取材で分かりました。

NHKニュースより
img

こんな状況で「環境保護」だと言われて喜ぶ国民がどれだけいるのか。

恐らくは、安く仕入れた土地を原野商法まがいに開発してパネルを並べただけ。真っ当に管理するつもりなど端からないだろう。しかも送電線の整備は北海道電力任せ。結局、その費用は再エネ賦課金として国民に回ってくる。

バカバカしい話だが、そういう構造なのだ。だったら、せめてその資金をリサイクル方面に使えよ。

リサイクルはやっぱり義務化すべき

結局、国民負担で業者が儲かり、廃棄は野ざらし――そんな再エネ政策を誰が支持できるのか。

少なくとも、使用済みパネルのリサイクル義務化ぐらいは最低限やるべきだ。

もしかして、それができないのは支那に配慮しているからなのでは無いか?と、そんな邪推すらしてしまう。だって、太陽光パネルの大半は支那に依存しているのだ。リサイクルされたら儲からないし、リサイクル料金が載っても困るのだろう。再エネ利権の大半が支那に繋がっているというのは、あまりに陰謀論に偏りすぎているが……、影響が全く無いとも思えないんだよね。

追記

今回、論旨があっちこっちに行ってしまうことを嫌って、2つ程言及しなかったことがあったけれども、コメントで見事にその辺りの点を指摘されてしまったので、その辺りの僕の考えに少しだけ言及させて貰う。

太陽光発電は推進すべきか

色々な問題点が複雑に絡み合うので単純に結論を出せないのだが、僕自身はこれ以上必要なのか?という点に関して懐疑的である。

中国の太陽光設備業界、上期損失が急拡大 供給過剰で価格下落

2025年8月27日午後 3:20 GMT+92025年8月27日更新

中国の主要な太陽光パネルメーカーの大半は2025年上半期の損失が拡大した。供給過剰や貿易摩擦が影響した。

ロイターより

今や、日本の太陽光パネルの敷設面積は、国土の0.25%程度。世界レベルでトップはシンガポールの1.6%だが、次点のドイツ0.26%と同等の国土占有率である。

日本は農地に利用可能な面積が広くないため、ドイツのように国土の3割ほどが農地に転用可能な国家と比べて随分と太陽光パネルの敷設を進めているようだ。それでも日本において農地に利用可能な土地に太陽光パネルが敷設されている率は6%程度だと見込まれているので、まだ拡充可能だと言われている。

だが、結局の所、放置されるリスクが高まることを考えれば、これ以上の拡充には反対。

ただし、公共施設の屋根に太陽光パネル設備を設置し、蓄電できるような二次電池設備(出来ればナトリウムイオン二次電池が安全の観点からも望ましい)を併設することで、利用促進すべきだとは思っている。政府の導入目標合計は2030年までに6.0GW(公共施設での電力需要の2割程度)を目指すそうなので、もうちょっと強力に推進してくれても良いのでは?

他に、寿命の問題や設置の方法などに未だ課題はあるものの、ペロブスカイトももっと積極的に開発すべきだと思っている。公共施設の壁面を利用して開発テストを兼ねて実証試験を広げるべきだろう。

安全保障的な観点

リサイクル(都市鉱山)に関して、経済性は極めて怪しいとは考えている。

ただし、安全保障的な観点から言えば、ある程度リサイクル手法を確立しておくことにはメリットがあると思う。特に太陽光パネルに関しては、微量のレアメタルも含む他、処理時に問題となる重金属なども回収可能である点を鑑み、政策的に進めていく必要があると考えている。

大切な事なのでもう一度言うが、経済性は極めて怪しい。

したがって、ある程度公的な性格のあるリサイクルの仕組みを採用するしかなく、その原資として製品に価格転嫁するという必要があるとは考えている。リサイクル義務化しろという話は、そういう意味合いが強い。

正直、民間に丸投げしたところで上手いこと行くとは思えないんだよね。

コメント

  1. BOOK より:

    リサイクルを言い換えた都市鉱山ってコトバ。。。タメイキ。。。
    。。。PCやスマホは金鉱石やレアメタル鉱石より金やレアメタルの含有量が多い。。。
    。。は事実だけど採算には乗ってないようで。。。

    太陽電池だって、高純度ケイ石の炭素還元・電解還元を経て作られる「金属シリコン」より、素で数桁、高純度なシリコンなんで「(技術者用語)原理的」にはリサイクル出来るはず。

     しかしレアメタルもシリコンも どちらも製品に使えるほどの高純度化には結構な設備投資とランニングコストがかかる。

    ここが天然鉱山に負ける1点。 例えば供給が不安定なとこ(?)

    長期的視点に立てばリサイクルは良いはずなんですが。。 天然鉱山に伍する供給≒膨大なバッファー。を真面目に抱えると、ウマイことする天然資源に大負け大損する可能性が高い、
     リサイクルからの資源バッファーは「国」ぐらいの規模でやるか義務化
      (ex.自動車部品・原料)
     して抜け駆け禁止にしないと、短期的には大抵は負ける。自動車は何とかリサイクル正常に動いてますよね?

     長期的視点に立つのは、民間より持久力に勝る「国」の仕事のハズ
     ホント、今回の政府(石破政権?)の決断はバカ、賛同します。

    余談
     それでもリサイクルせざるを得ない窮乏世界?極論:北斗の拳のロステク世界、では太陽電池からのシリコンリサイクルは無理です。しかし太陽熱ボイラーなら?頑張りゃ何とかなる。
     またロステク時代じゃなくても、太陽熱ボイラー となると火力発電所と同じく技術者常駐が必須(ソーラーは無人なのがガン)で修理・延命は日常になる。
     
     これが以前に太陽熱推した理由でもあります。

    • 七面鳥 より:

      横合いから失礼します。

      本当に、
      「長期的視点で、短期的には採算割れ確実だが必要な技術開発」
      においては、
      「国による潤沢な資金の補助」
      が必要だと何度言ったら、ってヤツですよね。
      もちろん、それだけだと『資金使いまくって結果出さないクズ』を量産する危険もあるのですが。
      そこの所の上手い匙加減ができる政治家、ないし官僚は、いないものか……

    • 木霊 木霊 より:

      「都市鉱山」スバラシイ言葉ですね。実現できれば、の話なんですが。
      現実的には回収効率が実にアレなので、なんというか、副次的に期待する程度ならばともかく、リサイクル前提に制度設計するのは正直厳しい。
      不法投棄対策で「やらざるを得ない」というのが実情なんだと思っています。利益なんて出るわけがないんですよ。