先日触れたように、JICAの『ホームタウン認定』がSNSで移民政策の始まりと誤解される騒ぎが起きている。
ホームタウン認定 “政府やJICA発信の情報入手を”外務政務官
2025年8月28日 14時09分
国内の自治体をアフリカの国の「ホームタウン」に認定する交流事業をめぐり、誤解に基づく情報が広がったことについて松本外務政務官は日本政府やJICA=国際協力機構が発信する正しい情報を入手してほしいと呼びかけました。
NHKニュースより
政府は「誤解だ」「SNSが間違った情報を広めたせいだ」と釈明しているが、背景を見れば一筋縄ではいかないよ。
政府の発表や報道を見ながらどういうことなのか整理していこう。
国際会議に先立って
国際移住機関(IOM)との関係
今回、アフリカ開発会議(TICAD 9)を横浜で開催するにあたって、日本の外務大臣はIOM事務局長と会談をしているんだね。

この会談自体はそんなにおかしな話ではないんだ。
横浜で国際会議をやるのに、日本の外務大臣が関連機関との会談をしただけだからね。
が、そもそもIOMは「国際移住機関(International Organization for Migration)」のことで、国連の関連機関として、人道的かつ秩序ある人の移動(移住)の促進を主導する政府間機関である。
つまり、IOMは正規の移民を推進をしている機関なんだよ。外務大臣がIOMとの協力を確約したのであれば、「協力=移民」の構図は直ぐに繋がる。
正規ルートを通じた
そして、事件は起きた。
外務大臣が、移民推進に積極的だった。そのために「ホームタウン」を4つ用意してくれたのだ、という話に繋がるんだよね。
Why Japan name Kisarazu as di hometown for Nigerians and which visa dem wan give dem
2025年8月23日
日本政府は、木更津市をナイジェリア人が日本に住み働くための故郷として指定しました。
BBCより
BBCは「ホームタウンをナイジェリア人向けに指定」と簡潔に紹介したが、「日本に住み働くための」という修飾子を「ホームタウン(故郷)」に付けたからといって誤報と言えるのだろうか。
インタビューが
そもそも、このIOMの事務局長であるエイミー・ポープ氏、毎日新聞の取材に応じてこんな回答をしている。
IOM事務局長「労働者受け入れへ環境整えて」 アフリカと需要「一致」
2025/8/21 17:10(最終更新 8/21 17:13)
アフリカ開発会議(TICAD)に出席するため訪日中の国際移住機関(IOM)のエイミー・ポープ事務局長が20日、横浜市内で毎日新聞の取材に応じた。少子高齢化と深刻な労働力不足に直面する日本と、若年層の雇用創出が課題のアフリカ諸国のニーズは一致していると述べ、「働き手の公正な待遇と報酬を確保し、コミュニティーの一員として参加できる環境を整えることが不可欠だ」と訴えた。
毎日新聞より
ポープ氏は、「少子高齢化」「深刻な労働不足」の日本と、「若年層の雇用創出が課題」のアフリカ諸国のニーズは一致として、「コミュニティーの一員として参加できる環境を整えることが不可欠」と説明している。
その上で、岩屋氏は「IOMに日本として協力する」と確約したのだ。
通常の理解力であれば、「ああ、移民のことなんだね」となるよね。
本当に誤解に基づいた情報?
さて、冒頭のニュースでは外務政務官の松本氏が、「誤解だよ」と吠えている。でも、OM Japanのサイトには前述したように、「正規のルートを通して、人としての権利と尊厳を保障する形で行われる人の移動は、移民と社会の双方に利益をもたらす」 という基本理念が謳われ、移民のサポートをしていることが紹介されている。
そして、日本における国連IOMという項目ではこうも説明している。
国連IOM駐日事務所は、1981年に開設されました。当時は日本で一時的に保護され、米国・カナダに定住するインドシナ難民の渡航手配、健康診断などの出発前支援を実施し、その後インドシナ難民への支援は日本への家族呼び寄せ支援に拡大しました。
OM Japanのサイトより
これは正規サイトの情報だ。
まあコレは一例で、他にもホームタウン認定された各都市の情報には、「定住」とか「外国人材の活用」とか、そういった一定の方向性のある記事が紹介されているし、積極性を感じる。大原則として「移民は推進しない」という政府方針があるにせよ、それは過去の話なんじゃないの?と理解しても不思議はない。
そうすると、政府が『誤解だ』と釈明しても、組織理念や過去の実績を踏まえれば、今回の騒ぎは必然だよね。
つまり、TICAD9での発表は「移民政策開始の号砲だ」とBBCには映ったのだ。ナイジェリアの政府の発表もあったし、コレは間違いないと。それを「誤解だ」と逃げるのは無責任じゃないかな。
追記
既にご存じの方も多いかも知れないが、ナイジェリア政府の都合に関するnoteを見かけたので、リンクを貼っておく。

残念ながらこの情報の裏をとることは僕には難しいのだけれど、UAEに関する話は別の記事によって報じられていたので、ある程度事実なのだろう。
旅行の混乱の中、ドバイがナイジェリア人に対するビザ政策を厳格化:知っておくべきこと
2025年10月
アラブ首長国連邦(UAE)がナイジェリア人旅行者のビザ申請要件を更新したことを受け、旅行代理店、航空関係者、そしてナイジェリア航空業界の関係者は懸念を表明している。トランジットビザを申請する人々に大きな影響を与えるこの変更は、火曜日に旅行代理店に正式に通知された。UAEはナイジェリア人トランジット旅客に対する96時間の入国期限を正式に終了し、ドバイを定期的に経由する多くのナイジェリア人旅行者に影響を与えている。
UAEは数十年にわたり、ナイジェリアからのビジネスと観光の主要な渡航先となってきました。しかし、今回のビザ制限の改正により、ナイジェリア人にとってドバイへの渡航はより複雑になり、特に対象年齢層の人々にとってその影響は顕著になります。
TTWより
UAEとナイジェリアの間で政治的混乱によりビザ発給が行われていないことや、政権側がビザ発給が行われるとアナウンスしたのは少なくとも事実のようだ。
それに関する詐欺が行われた可能性はあると思う。
つまりナイジェリア政府は広報で嘘を垂れ流した前科があったわけだ。
今回の日本のホームタウン騒ぎに関して、似たような事を想定していた可能性はある。よって日本側がナイジェリアに振り回された構図というのは、あったのだと思う。
だが、BBCが便乗した理由は、別にもあったのだと思う。つまりIOMとの関係だ。まあ、この辺りは推測の上に成り立つ話なので、話半分で良いとは思う。だが、ナイジェリア人が日本に詰めかける可能性というのは実際にあったわけで、全てを外国の責任にして看過すべきことでもない。
追記2
ついでに、今治の事情についても言及しておこう。
「今治造船」技能実習生計画取り消し 5年の受け入れ停止処分も
2025年3月25日 15時51分
出入国在留管理庁などは、技能実習生を受け入れている愛媛県今治市の「今治造船」が、現場の労働者の安全管理などを怠っていたとして、認定していた2000件余りの実習計画を取り消し、今後5年間、実習生の受け入れを停止する処分を行いました。
NHKニュースより
日本の造船業が苦境にあって、今治造船が「安い労働力」を欲している実態があったのは事実である。
当然、今治市当局もこの問題は深刻に捉えていたことは想像に難くない。税収にも影響するからね。
そうすると、ホームタウン認定は渡りに船であった可能性が高い。今治市が外国人材を積極登用する気があったのは間違いないし、移住だって歓迎している。動機は十分だよね。

現状、今治市が「移民を推進してはいない」と否定しているのも事実ではあるんだけど、「労働力だけ欲しい」というむしの良い話が通じるわけではないので、やや整合性に欠ける発言だよね。
ただ一方で、SNSではデマを積極的に拡散しているアカウントも結構目立つ。情報の取り扱いにはくれぐれも気をつけていきたいと思っている。
コメント
こんにちは。
元々「島国」ですから、部外者に厳しいのは当たり前なのが我が日本国。
この炎上騒ぎで、あっちこっちの問題にも火が付いて、どっかの誰かが大やけどしてくれることを祈るばかりです。
こんばんは。
どうにもIOMの件は保守派を名乗る方々には都合が悪いのか、全く無視するかコメント削除などするようですね。偶然だと思いますが。
ただ、ナイジェリア側の話はどうにもナイジェリア政府の悪意というか政治の悪意というか、そういうものがありそうです。
これ、下手に触ると火傷する案件なので、ホームタウン認定を先ずは取り下げ、それを大々的に宣伝すべきだと思っています。
裏でIOMが動いているとか..
そのIOM事務局長さんは、優秀なキャリアを積み重ねているようですが、そんな人がなんでUNへ行くんですかね。謎。
それはさておき、JICAは今年1月、「アフリカ地域(広域) 日本の地方部との連携によるアフリカ人材受け入れ・育成のための情報収集・確認調査」を公示し、その目的を地方活性化と”定住者の獲得”を図るためと明記した。
https://www2.jica.go.jp/ja/announce/pdf/20250129_245925_1_02.pdf
この「ホームタウン・プロジェクト」とは、日本へのアフリカ移民パイロット事業です。うまく行けば、拡大して本格的にやるという趣意の事業ですよ。
さて、日本政府はどうしても日本で”多文化共生社会”とやらをやりたいらしいのだが、それが日本にとって、どんなメリットがあるのか説明責任がある。
英国や独国、スウェーデンなどの惨状を見て言っているのだろうか?
産業界の要請でJICAは移民政策の下準備をしている感じなのかなという印象です。
安倍政権の時代から移民政策は否定し続けていますが、推進している感じかなと。
保守派を標榜する方々も、「移民するしか無いんだ!」「移民は正義なんだ」と。
各業界で人手不足が深刻なのは知っているけれど、移民を入れたら「大丈夫」という発想は理解が出来ないんですよ。
会社で日本人の新人教育ですらまともに出来ていない時代に、外国人の新人教育とか誰ができるんだという話。不思議な話ですよね。
IOMが気になって少し調べてみたら、今回のTICAD9に先立つ7月にこんな発表が!
【国連IOM・JICA共催 TICAD9テーマ別イベント】シンポジウム
「人の移動がつなぐ、アフリカ人財と日本企業がともに拓く未来」(7/23)
https://japan.iom.int/event/TICAD9_sympodium
で、前フリにこんなことが書かれていた。
「日本における外国人労働者は230万人(2024年10月、外国人雇用状況)で過去最高を記録しているが、今後必要とされる労働力と国内で対応できる労働力とのギャップを鑑みると、2040年には、現在日本で暮らす外国人住民数のほぼ倍の688万人の外国人労働者が必要になる。」
ほうほう、15年後にはいまの3倍の外国人労働者が必要ですよと。
(倍じゃなくて、3倍ですよ。計算は正確に!)
これが石破首相の口癖の『国難』? これは流石に自民党がもちませんわ。
立憲の野田代表が参院選の最中にうっかり言っちゃった『国籍を無くす!』
立憲の政策目標に合致しそうな話にもみえる。
SNSには様々な国民の意見があり、中でも「どうせまた失踪したり、日本人への暴行など社会犯罪や生活保護が増えるだけ」は、かなり起こり得そうな未来だと感じる。日本政府のこれまでの外国人移民政策は失敗続きだからね。
IOMは移民推進を主業務にしているので、まあ当然というか。
しかし、政府がIOMと手を組むということは、すなわち合法的に移民を推進すると取られるのが普通なわけでして。