コメントで教えてもらって、半信半疑だったのだが。
米財務長官「造船会社の株式を保有する」…MASGA投資の韓国企業が緊張
2025.08.29 10:51
米財務長官が造船会社の株式を確保する可能性を示唆した。インテルに補助金を支給する代わりに株式10%を米政府が確保したように、造船会社に対しても似た形で株主の地位を得るということだ。米国造船業の再建を支援する「MASGA」プロジェクトを推進中の韓国造船会社に緊張感が流れている。
中央日報より
お隣の事情なのであまり気にすることはないんだが、アメリカが結構えげつない事を考えているっぽいので。でも日本だって日本製鉄の件で似た話があったね。この記事では日本の実情の触れるつもりはないが、他人事ではないんだよね。
韓国造船業の苦悩
全てはアメリカの利益に
さて、アメリカ側の言い分を見ていこう。
ベッセント米財務長官は27日(現地時間)、フォックス・ビジネスのインタビューで 「トランプ大統領はエヌビディア株の確保も考慮するのか」という質問に対し、「エヌビディアに財政支援が必要とは見ていない」とし「しかし造船業のように我々が再編しようとする産業は株式確保の可能性がある」と明らかにした。
続いて「造船業は米国で自給自足するべき非常に重要な産業だが、20-40年間放置された」とし、造船業を米国政府が直接主導するという立場を表した。
これは米国政府が経済安保レベルで半導体企業株の取得を推進するのと似ている。実際、最近インテルに提供した補助金を投資性格に変えて株式10%を確保し、これをサムスン電子・TSMC・マイクロンなどグローバル半導体企業にも要求する可能性が提起された。
中央日報より
なるほど、主導権は渡さないということだな。
アメリカ政府が主導して造船業の復活を進めたいということらしいし、ある程度はそれは理解できる。韓国の業界もこのシナリオは予想していたらしい。
ある造船業界の役員は「米国は徹底的に自国の利益を中心に判断するため、彼らの要求通りにむやみに現地に投資すれば投資金を回収するのが難しいという懸念があった」と話した。
中央日報より
アメリカらしい話ではあるが、韓国だって徹底的に韓国の利益になるように動くだろうに。
関税協定の要
とはいえ、韓国のアメリカへの造船業への出資話だが、ベッセント氏が触れたようにアメリカにとっても重要な話であると同時に、韓国にとっても関税協定の要になる重要な話。
ここで「やっぱりなかったことに」なんてことは出来ない。リスクはあっても、リターンは薄くても、やらねばならないだろう。一応、整理しておくか。
1. 韓国が得られるメリット
- 関税回避の“切符”
米国市場アクセスを維持するための政治的バーターとしては有効。関税の全面回避を実質的に確保。 - 米国内拠点の獲得
フィラデルフィア造船所など実資産を通じて、米軍・米旗船の需要に直接アクセスできる。 - 軍需・補助艦分野の新規案件
修繕・補給艦・沿岸警備隊船など、米国が自力で回せない領域に入り込める。 - 「米韓同盟の経済版」的アピール
政治的には米国との同盟強化カードとなり、支那牽制にも役立つ。
2. 韓国が抱えるリスク
- 経営裁量の制約
米政府が株式保有や経営監督を通じて、事業判断を横槍できる。 - 軍事技術分野の“天井”
機微技術(原潜・先端兵装)はブラックボックス化され、利益率の高い領域には参入できない。 - 高コスト構造の固定化
米人件費・バイアメリカン条項・工期遅延がコスト競争力を削ぐ。 - 政権サイクル依存
トランプ政権では推進力があるが、政権交代で一転「不良資産」と化すリスクも高い。
3. 韓国の“勝利条件”と現実的限界
- 勝利条件
- 巨額投資で米国内生産能力を拡充
- 韓国式システムを現地に定着
- 労働力を安定確保
- 軍需中心に受注拡大
- 限界点
→ 軍需は米国が独占する部分が多く、韓国は「補助艦・修繕・外殻部分」の請負に限定されやすい。
→ よって「投資規模の割に薄利」、しかも「米国の政治的都合で振り回される」可能性が大。
4.総合結論
韓国にとってMASGA投資は、
- 通商面では有効なカード(関税回避・米市場残留)
- 経営面ではハイリスク・ローリターン(米政府の統制下での請負化)
つまり、「関税交渉の地雷を除去するための国家的コスト負担」 であり、純粋なビジネス案件としては割に合わない。それと、リスクだけ抽出して纏めておくが、ややリスクが多めである。
- ニーズとのミスマッチ
米軍は「安くてまあまあ」ではなく、「高くても安全・確実」な船を欲しがる。韓国造船業界の傾向とは真逆である。 - 国家賠償リスク
もし構造欠陥や事故が発生すれば、米国防総省契約は巨額の違約金や補償を求めてくる可能性が高い。韓国造船業はOINK判決に慣れているため、 - 信頼性ハードルの高さ
米国は兵器体系に関して「信頼できるパートナー」以外は排除する傾向があるため、韓国造船が少しでも設計不備を見せれば、一気に排除されかねない。
うーん、ハードモードだ。これで、アメリカ政府の監督付きってことになっているのだから、韓国造船業は戦々恐々だろうなぁとは思う。
半導体業界の懊悩
半導体に纏わる「許可」
さて、リスクの多い造船業の話はさておき、韓国の稼ぎ頭の半導体の話も注目しなければならない。
米国「サムスン・SK、米半導体装備を中国に搬出なら件別許可を」
2025.08.30 13:20
トランプ米政権が、サムスン電子とSKハイニックス、インテルが中国国内の半導体生産施設に米国産の半導体製造装備を供給する際、件別に許可を受けさせる方針だ。
29日(現地時間)の米連邦官報によると、米商務省産業安全保障局(BIS)はグローバル半導体製造企業のサムスン電子とSKハイニックス、インテルに対し、中国内の生産施設に米国産半導体製造装備を供給する際その都度許可を受けなくてもよい「包括許可」を廃止する方針だと明らかにした。こうした措置は官報掲示日(米東部時間29日)の120日後から実行される。
中央日報より
サムスンとSKハイニクスは支那に工場を持っている。サムスン電子は西安と蘇州で、SKは無錫と重慶、大連で大規模な半導体工場を運用している。
「インテルに騙された」とされる案件なんだけど……。
ワケありだった中国工場、インテルは韓国SKハイニックスにババを掴ませたのか
2023.3.6(月)
~~略~~
特に、2020年10月20日に90億ドルで米インテルのNANDフラッシュメモリ事業を買収したSKハイニックスの先行きはかなり厳しい。そして、この買収は、もしかしたらインテルの策略によって、SKハイニックスがババをつかまされたのではないかと勘繰っている。
JB Pressより
当時は結構騒がれたんだけど、結果的にはインテルはもうNANDフラッシュメモリの業界から足を洗いたがっていたタイミングだったので、たまたまSKハイニクスがババを引いた感じになってしまっただけのようだ。真相は不明なんだけどね。
お目溢ししてもらえる予定だった
というわけで、結構需要な工場を支那に作っちゃったサムスンとSKハイニクス。「作ってから言われても」と文句を言おうが、安全保障に必要なことであるのでアメリカも譲れない。
まあ、それでも、お目溢しはしてもらったんだよね。
米国、サムスン・SKの中国内半導体工場を製造装置輸出規制の適用外に
登録:2023-10-10 06:00 修正:2023-10-10 08:09
米国政府がサムスン電子とSKハイニックスの中国半導体工場に、別途の承認なしでも米国製半導体製造装置の供給を認めることにした。韓国大統領室が発表した。韓国半導体メーカーらは中国での半導体生産と投資の不確実性がかなり解消されたという立場を示した。ただし、中国工場の増設は依然として米国の規制に阻まれている。
チェ・サンモク大統領室経済首席は9日、ブリーフィングで「米国政府がサムスン電子とSKハイニックスの中国工場に対して別途の許可手続きや期限なしに米国製半導体製造装置を供給することを最終決定した」と伝えた。米政府は昨年10月、中国の半導体企業に対する先端半導体製造装置の輸出を事実上禁止する一方、サムスンとSKの中国工場に対しては輸出規制を1年間猶予している。サムスン電子は中国の西安と蘇州で、SKは無錫と重慶、大連で半導体工場を運営している。
ハンギョレより
バイデン氏の時代に、「まあ、特別な」という感じで期限付きでOKを貰ったんだが。残念ながらこの工場では最先端の半導体の製造は出来ないことになっていた。
これとは別に、米政府は最近、補助金を受ける半導体メーカーの中国内工場の生産能力を10年間で5%以上拡張できないようにする「半導体法ガードレール」(安全装置)規定を最終確定した。韓国政府と企業が要求してきた増設基準の緩和は受け入れられなかった。
ハンギョレより
そして、「これ以上作るな」と。
これが、2023年の話で、今年になってこれが厳しくなってきたってことだね。
韓国の産業通商資源部は今回の措置について「政府はその間、米商務省とVEU制度調整の可能性について緊密に意思疎通をし、我々の半導体企業の円滑な中国事業場運営がグローバル半導体サプライチェーンの安定に重要であることを米国政府に強調してきた」とし「政府はVEUの地位が撤回されても韓国企業に対する影響が最小化するよう米国政府と引き続き緊密に協議していく計画」と明らかにした。
中央日報より
韓国としては流石に譲れないので、もうちょっと粘る積りらしい。
そりゃ、年間1,000件も輸出申請許可が必要となってしまうという事態を迎えるのは、事務手続きだけでコストが上がってしまうので避けたいだろう。それどころか、これまでほぼスルーされてきた内容が審査されるので、通過しない案件が出てくることも。
何より、審査遅れが出てくると深刻なことに?まあ、詳細は分からない。案外、大して審査しない可能性もあるしね。
まとめ
というわけで、造船と半導体。共にアメリカの管理の下で生産をすることになった。
- 韓国にとっては、造船業と同様に 米国との管理下での活動が避けられない構図。
- 半導体では利益率が高く、技術的な価値も大きいため、「ある程度の監督を受け入れてでも商売を維持したい」という心理が働く。
- ただし半導体業界は開発速度が早いため、輸出申請許可はかなり深刻な問題を引き起こす可能性がある。
- 造船業の方は、軍事分野の船舶をできるだけ安価にという要望と、安全性を両立できない可能性が高いので、そのうち訴訟陸を抱えるのでは、と。
- つまり、政治的・通商的カードとしてのメリットはあるが、自由裁量は大幅に制約される、という構図は造船業と並行する。
アメリカを商売相手に選ぶ以上は受け容れざるを得ないのが韓国の辛いところではあるが、まあ仕方がないだろう。アメリカに不利益を与えない範囲で、多少のリスク覚悟で商売を続けていくんだろうね。
コメント
トランプ政権は中央政府が民間を管理する、いわば社会主義型の経済モデルを目指しているのでしょう