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データセンター分散設置時代に求められる再エネ発電利用の在り方

環境技術
この記事は約7分で読めます。

データセンターが大量の電気を喰うのは、既に知られている話である。今更という気はするんだけどね。

データセンター、AIで需要急拡大 課題は巨大IT企業依存と莫大な電力消費

2025.9.18

この記事の3つのポイント

  1. 大量のデータやシステムを管理・運用するデータセンター
  2. 米国や中国の大手テック企業が日本での投資を促進している
  3. データセンターの集中で、電力不足が懸念されている
日経ビジネスより

ここのところ、急速にAIの利用が拡大してきて、スマホでもAIを利用するような人が増えているようだ。

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電力需要は増えている

データセンターは必要

僕自身もAI利用をしていますよという話を、このブログでもチラホラと挟んではいるんだけど、仕事でもプライベートでも「使えない」では困るので積極的な利用をしている。多くの人が、AIを利用する時代になっているんじゃないかな。

そうなると、データセンターの重要性が高くなる。

AIを利用するには、巨大なデータを利用して計算を行う必要があるので、日本語のデータが沢山あるのが望ましいのだ。

データセンターの世界市場規模は、2024年の時点で約35兆円。32年には84兆円に達すると見込まれている。日本国内だけを見ても、24年には3兆円を超え、28年には5兆円に達する見通しだという。特に巨額の投資を表明しているのは、マイクロソフトなどの米大手テック企業だ。

日経ビジネス「データセンター、AIで需要急拡大~」より

日本国内にデータセンターの数はまだまだ少ないのだけれど、積極的に増やしていく必要はあるだろう。

政府の議論もそういった流れになっている。

ここでは、データセンターは民間企業が主に経済合理性に基づき整備し、現状では東京圏・大阪圏に集中しているけれど、災害発生などのリスクを見込んで地方分散が不可欠であるという話になっている。つまり、単に増やすだけじゃなくて分散化しようぜという話になってきている。

電力需要の拡大

しかし、そうなると安定的な電力供給は必須なので、再生エネルギー発電とは実に相性が悪い。

一方、データセンターには深刻な課題もある。膨大な電力を消費するAIの発展により、「電力会社にとって経験したことがないレベル」の電力需要が発生しているのだ。たとえば「東京・大手町を起点として50キロメートル圏内に集中するデータセンター」から申し込まれた37年度までの電力容量は「一般的な原子力発電所の9基分」に相当するという。

日経ビジネス「データセンター、AIで需要急拡大~」より

安定的な電力供給で一番筋が良いのは原子力発電なのだが、これがなかなか都内にデータセンターを構えることを前提にすると、難しい話となる。

そこで、再生エネルギー発電の利用も検討はしているようだが、そんな上手いこと行くのか?というのが正直な感想である。

データセンターが集中することで、都市部では電力の逼迫が懸念されている。その解決策となりうるのが「ワット・ビット連携」だという。具体的には、NTTグループの次世代情報通信基盤「IOWN(アイオン)」などを活用して、再生可能エネルギーが豊富な地域にデータセンターを設置するというものだ。

日経ビジネス「データセンター、AIで需要急拡大~」より

技術革新によって効率の良い再エネ発電の利用を実現しようというのが「ワット・ビット連携」ということになっているんだが、これにも疑問を感じるのである。

再エネ発電は調整用電源に

無駄な調整に計算を割くのは止めよう

ここで、「ワット・ビット連携」の話を説明している三菱総合研究所の記事を紹介しておく。これもまた不思議な議論をしている。

ワット・ビット連携とは何か?

2025年03月13日

2025年2月に閣議決定された「GX2040ビジョン※1」や同月開催の「デジタル行財政改革会議」で、国内のデータセンター(DC)整備を念頭に「ワット・ビット連携」を進める方針が示された。

MRIより

おかしなコトを説明していると思ったら、官僚の仕込みなのかぁ。

そのため、急速に技術進化するビット側、つまり計算処理側での調整機能の確保に期待がかかる。例えば再エネの出力変動をAIで予測し、発電出力の多い時間帯に計算処理をシフトしたり、超分散コンピューティングで計算負荷を広域調整したりするなどの方法がある。ただし、機器制御など遅延要件の厳しいユースケースでは適用が難しいほか、DCの平均稼働率が低くなるなど欠点もある。地域の再エネ事情やユースケースに応じてワット側とビット側の調整機能を組み合わせ、最適運用していくことが求められるだろう。

MRI「ワット・ビット連携とは何か?」より

この説明で矛盾を感じない辺りが、ちょっと終わっている気がする。

ワット(電力)側の脱炭素電源の有効活用と、ビット(情報通信)側のAI用DC適地確保という要請に応えつつ、さらにAIを活用した地域振興・経済成長にもつなげるのが、ワット・ビット連携の狙いである。記事ではここに再エネ発電を絡ませようという努力の跡が見られる。が、無理筋議論だよね。

発電の地産地消化というのは僕もアリだとは思っている。その為に発電地の分散をするのだけれど、地方であればメガソーラー発電の利用は有用なケースがあるかもしれない。そこまでは良い。

だけど、再エネ発電を利用するためにAIで「再エネの出力変動を予測する」って本末転倒も良いところだろう。AI利用そのものは否定しないのだが、そんなことに電力を費やすのはバカバカしくないだろうか。

火力を「ピーク調整用」として追いやる誤り

更に、最近の政策や報道を見ていると、やたらと「火力発電はピーク調整用」と位置づけられているが、それにも違和感を感じる。

確かに、LNGやLPGを燃料とする火力発電は出力の調整が容易であり、変動対策として使いやすい。しかし実際には、そんな単純な話ではないんだよね。

LPG火力の場合、高圧貯蔵タンクを使い、圧縮・減圧による熱ロスを常に抱える。だからこそ、頻繁な起動・停止よりも、ある程度の連続運転で安定消費する方が望ましい

出力を上げたり下げたりを繰り返すことは、燃料的にも機器的にも非効率なのだ。

石炭火力に至っては、さらにその傾向が強い。高圧燃焼によって高効率を実現している以上、運転停止と再稼働を繰り返すのは論外。

「ピーク調整用」などという扱いは、燃焼制御の理屈を知らぬ机上の政策論に過ぎない。

こうした歪みは「再エネ発電を主電源に位置づけよう」という所から始まっていると言って良い。

「主力電源」としての再エネ発電利用は誤り

再エネ発電が主力電源になれない理由は、すでに技術者の間では自明だ。太陽光・風力ともに出力が不安定で、制御不能な電源である。

「天気次第で変動する電力」がどうして主力を担えるのか。

更に問題なのは、その変動を火力側で補わなければならないとしていることだ。

結果として、再エネが増えれば増えるほど、火力発電が小刻みに出力調整を要求されるようになる。これが発電開始と停止を繰り返すようになると最悪である。燃料の立ち上げロス・熱応力・設備摩耗――。

結局のところ、“クリーン”な再エネが火力を汚す構造になっているのだ。

再エネ発電は「調整電源」としてこそ活きる

再エネ推進派がよく使うのが、「せっかく発電した電気を捨てるのはもったいない」というロジックである。

一定の理はあるように思われるが、「電力は貯蓄しておくことが困難である」という現実に目を向けると、このロジックが誤りであることに気がつくのだ。

電力は、需要と供給が常に一致していなければ、系統が不安定になるという特性がある。

だからこそ、寧ろ再エネ発電を調整用として位置づけ、必要なければ発電させないという運用にすべきではないだろうか。

つまり、再エネ発電で発電した電力を、系統に流すか否かを柔軟に決めることで、調整用電源として利用するのである。

経済合理性を優先させるべき

結局、発電に求められるのは電力の安定供給であり、発電方法によって様々な特性があるのだから、その電力安定供給を第一に考えて、最適になるように発電手法を組み合わせていくことこそが大切だと思う。

各地にデータセンターを分散して設置することは、これからの時代必要で、電力需要は増える。でも、データセンターが必要としているのは「安定した電力」であって、再エネ発電とは相性が悪い。

であれば、やはり再エネ発電拡大の方針を改めざるを得ないのである。

そもそも、「自然を利用した発電」であるハズの再エネ発電は、いつの間にか再エネ発電を活かすための発電を求める主体に変わってしまっている。再エネ発電を「利用」すべきところ、いつの間にか利用される側に回っていることに、そろそろ気がついた方が良い。

コメント

  1. 匿名 より:

    再エネ自体を盲信的に突き進む輩がいるせいで世間一般の人間に皺寄せが来てるって事を国が知らぬ存ぜぬ状態をこれから高市総理には是正して貰いたい。
    まあ新総理はメガソーラー反対の立場っぽいのである程度は期待が持てますが…
    一般家庭で蓄電器有りなら自分的には災害時のバックアップとして有用だと思いますが、経年劣化した太陽光パネル等のリサイクルも宙ぶらりんだしそこら辺も、下手したら再エネ割賦金に上乗せされそうなんですよねえ。
    我が家の近くの○部電力の前で毎週共産党の下部組織が太鼓叩いて原発反対運動してますが、それだけには飽き足らず再エネ割賦金下げろとか我儘放題叫んでます…
    お前らの望んだ再エネじゃねえかと…

    • 木霊 木霊 より:

      再エネ発電の在り方を見直す切っ掛けになるのが、高市首相誕生になったとすれば、みんな大歓迎しそうですがね。
      日本は二酸化炭素排出量削減を捨てて、二酸化炭素回収技術を磨いていく!といって、その辺りを推進して欲しいものです。
      再エネ賦課金は、そういう意味でも本当に使い道を考え直して欲しいですね。

  2. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    ・調整用電源:
    調整用なら、揚水発電が一番!
    さあ!バンバンダム造りましょう!
    原子炉をガンガン焚いて、あまった電気でどんどん揚水しましょう!

    ・データセンターは電気を食う
    ちょっと前「韓国は電気安いからデータセンターとか韓国に持って行ってうんたらかんたら」って言ってた人達が居たような。
    持って行ってたら、UPSが燃えてこうなる、ってのを身をもって示してくれましたね>韓国
    ※まだ復旧してないんですよね……つか、そもそも出来ないか……

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。
      揚水発電って、ダム建設よりも用地の選定という意味では難易度が高いらしいですよ?
      そう簡単には作れない模様。
      まあ、原子炉の再稼働するしかとは思っています。

      データセンターの建設推進は必須ですから、そこを真面目に考えて欲しいですね。

      • 七面鳥 より:

        わあ、ネタに突っ込まれてしまった(笑)
        揚水発電は、都合二つの、それなりの容量を持つダムを高低差を付けて作る都合上、確かに用地選定は難しいですよね。
        ただでさえ、ダム反対派の人達が脊髄反射で以下略。

        データセンターを原発に隣接して作って、二重の意味で防衛上の要地なのでパトリオット常駐、なんなら陸自空自も駐屯させて……なんてやってくれたら大喝采なのですが。
        ※高射部隊は空自の所属なのですな。