フィリピンとの関係強化、既定路線ではあったけれど物品役務相互提供協定(ACSA)までこぎ着けられたか。
日フィリピン、物品役務提供協定に実質合意
10/26(日) 17:31配信
高市早苗首相は26日、フィリピンのマルコス大統領とマレーシアで会談した。両首脳は、両国間の「物品役務相互提供協定(ACSA)」が実質合意に至ったとして歓迎した。
Yahoo!ニュースより
なるほど、これは良いことだね。
シーレーン防衛にも必要
石破政権からの宿題
流石、高市政権!とやりたいところだが、これは石破政権の時からの流れなんだよね。
石破首相とフィリピン大統領、安保協力の強化で合意-中国を視野
2025年4月29日 22:55 JST
石破茂首相は訪問先のマニラでフィリピンのマルコス大統領と会談した。中国の海洋進出という共通の課題を抱える両国は、安全保障面での協力を強化する計画を発表した。
両首脳は29日、共同記者会見に臨み、会談では物品役務相互提供協定(ACSA)の締結を目指した協議を開始することで合意したと発表した。
Bloombergより
僕の中では評判がた落ちの石破氏ではあるが、首相としての仕事はやっていたわけで。まあ、個人的に批判しているのは自民党総裁としての仕事が杜撰だったこと。
ともあれ、ACSAの準備は今年の4月に行われていたのである。
で、冒頭のニュースでは「実質合意」と書かれているが……。
首脳会談での決定なので、後は条件調整をして調印すれば良いということにはなりそうだ。
ACSAとは
なお、ACSA(物品役務相互提供協定)とは一体何か?というと、国際的な安全保障協力の分野で使われる略称で、日本の自衛隊と他国の軍隊との間で、物品や役務(サービス)を相互に提供するための取り決めである。
コレを締結しておくと何が出来るかというと、過去にはこんなことも。
「銃弾が足りない。助けて欲しい」PKOの現場で、韓国からのSOS まさかの結末
更新日:2022.04.13 公開日:2022.04.13
13年12月当時、南スーダンには、日本など50カ国以上の約7600人で構成される国連南スーダン派遣団(UNMISS)が駐留し、平和維持活動にあたっていた。首都ジュバで同月15日、クーデター未遂事件が発生。反乱軍が各地で蜂起し、治安が急速に悪化していた時、事件は起きた。
GLOBE+より
この記事はことの顛末が詳細に分かって素晴らしいのだけれど、箇条書きでまとめておこう。
- 2013年12月22日、南スーダンPKOに派遣されている現地自衛隊が韓国軍部隊長から「銃弾を貸してくれ!」と緊急要請を受ける(当時は事態が緊迫していて、各国軍隊の南スーダンからの撤退が模索されてた)
- 当時、日韓の間に物品役務相互支援協定(ACSA)は結ばれていなかった
- 内閣法制局が抜け道を見つけてGO
- 事後に外務省ルートで、「韓国が顛末を話すな」と要望が出ているとの連絡
- 2014年1月10日、韓国軍は自衛隊から無償譲渡を受けた弾薬1万発を、UNMISSに返還(UNMISSから自衛隊に後に返還される)
この話は、韓国の悪事ばかりが目立つが、ACSAが結ばれていれば特に問題なく譲渡が可能だったところ、ACSAがないばかりに形式的に国連(UNMISS)を介したやりとりになったという話となる。
条約がないと兵器の融通も円滑に出来ないという事例であった。なお、ACSAは未だに日韓の間で結ばれてはいない。
日本がACSAを締結している国家は以下の通り。
- アメリカ :2017年4月25日発効
- オーストラリア :2013年1月31日発効
- イギリス :2021年1月19日
- カナダ :2019年5月28日発効
- フランス :2018年7月29日発効
- インド :2020年9月9日発効
- ドイツ :2024年1月29日署名
- イタリア :2024年11月25日署名
現状、フィリピンとの締結が急がれているが8カ国といったところである。軍事作戦を行う上では、こうした協定を締結しておかないと様々なトラブルが起きるのだ。
GSOMIAも
なお、今年4月の報道ではACSAの他に軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の締結への導線が引かれていた。
情報保護協定を早期締結 ACSA交渉入りで日比首脳合意―石破首相「米関税よい解決目指す」
2025年04月29日22時13分配信
石破茂首相は29日(日本時間同)、フィリピンのマルコス大統領とマニラのマラカニアン宮殿で約1時間半会談した。
~~略~~
日本は近年、フィリピンとの関係を「準同盟」級と位置付け、防衛協力を加速させている。両首脳が議論開始で合意した協定は、機密情報を共有するための軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が念頭にある。日本政府内では、GSOMIAを締結すれば、中国艦船などの航行情報を共有できるようになると期待する声が出ている。
時事通信より
GSOMIAは、韓国と結んで胸くそ悪い話となった協定だが、本来はああいうことは起こらない、軍事機密情報を共有する際に、情報漏洩を防ぎ、第三国へ渡らないよう秘密を保持するための取り決めである。
日本とのGSOMIA締結している国家は以下の通り。
- アメリカ:1954年の日米相互防衛援助協定(MSA協定)に含まれる。
- フランス:2016年5月に協定を締結。
- イギリス:2013年4月に協定を締結。
- オーストラリア:2012年5月に協定を締結。
- インド:2020年9月に協定を締結。
- イタリア:2017年12月に協定を締結。
- ドイツ:2022年3月に協定を締結。
- 北大西洋条約機構(NATO):2010年4月に協定を締結。
- カナダ:2023年5月のG7広島サミットで、GSOMIA交渉を開始することで合意。
- フィリピン:2025年4月時点で、早期の協定締結に向けて最終調整に入っていると報じられた。
え?韓国?知らない子ですね(注:2016年11月に締結したが不安定な状況である。実質ないものとして扱った方が無難)。
軍事協定は作戦実行に必要
ここでいつものシーレーンの話をするのだが。

日本のシーレーンを防衛する上でいくつかの試みをやっているのだけれど、上に並んでいる国家は西側国家が多い。
この理由はFOIP(自由で開かれたインド太平洋)に賛同する国家が作戦をやる上で必要だからという意味合いが強い。
ただ、日本としてはこの中に直接関係する国家も巻き込みたいのが本音で、具体的にはフィリピンや台湾、インドネシアなど沿岸国の賛同も得たい。
こちらはFOIPに関わる説明なのだが。

環太平洋の経済圏に関してはCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)で抑えつつ、軍事的にも連携できるところを増やしていきたいのが本音である。
まとめ
最近はニュージーランドとの連携の話題も出始めているので、頑張って欲しいところ。
そういう意味でも、フィリピンとのこの協定は意義ある協定になると思う。だから、今後も色々な国との関係を深めていくことで、日本の安全保障の強化に繋げて欲しい。



コメント
左の方々は自国の周囲数百キロしか見えないのかそんな遠くの国に武器弾薬をおくるのはけしからんって言いますけど、地政学的に陸続きのランドパワー国家と四方が海に囲まれてシーパワー国家の違いを分かって無いと思いますな。
フィリピンやらあの辺りって海運にとってチョークポイントの一つだし、今現在支那の暴走できな臭い状況になりつつあるから日本の物流にとって味方を増やす為に必要なコストだと思います。
韓国…まあチョークポイントでも無いし、別に優先的に協力する必要無いんじゃ(笑)
協力した所で助けるのが当然って言って後で逆恨みされるし
シーレーン防衛に関して理解していない一般人がいても仕方がないとは思いますが、政治家まで理解していないのはかなり問題が。
今の内閣はわかっている人が多いので安心ですね。