近況は「お知らせ」に紹介するようにしました。「注意して下さい」もお読み下さい。
スポンサーリンク

国保で前納制度採用へ ――背景は外国人未納対策ではなく“追いかける手間”

社会
この記事は約4分で読めます。

この程度の制度改革は、最初からやっておけば良いのにとは思うんだけど。

国民健康保険の加入時、外国人らの保険料「前納」可能に…未払い防止へ厚労省通知

2025/11/01 05:00

厚生労働省は、外国人らが国民健康保険(国保)に加入する際に保険料を前納させることができるよう、関連する条例の改正例などを示した通知を自治体に出した。外国人による医療費や保険料の未払いを防ぐ狙いがある。市区町村ごとに必要性を判断し、早ければ来年4月にも導入される。

讀賣新聞より

だけど、この程度のことすら手を付けられていなかったのは、反対する層が多かったと言うことなのだろうか。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

未納対策には弱いが

未納率14%

とりあえず話を整理していこう。

皆さんご存じ国民健康保険だが、本来は「日本で暮らす住民」を対象とする制度として出発しており、外国人の長期加入は制度設計上“主要前提”ではなかった。

国保料滞納245万世帯

2020年7月27日(月)

全国の市町村が運営し、自営業者や多くの非正規労働者、無職の人たちなどが加入する国民健康保険制度(市町村国保)で、2019年度に保険料・税(国保料)を滞納していた世帯は、全加入世帯の14%近い約245万世帯であることが、厚生労働省の調査で分かりました。また、国保料を滞納している3割の世帯は、滞納を理由に正規の被保険者証(国保証)を取り上げられていました。

しんぶん赤旗より

しんぶん赤旗によれば、令和2年(2020年)の段階で滞納率が14%。

彼らは「保険料が高すぎる」から、国民健康保険のために公費1兆円を投入して、社会保険並みに値下げする必要があるのだとか。それは解決策なんだろうか……??

国民保険料は高すぎるのか?

社会保険と国民保険の価格は、制度構造次第で見え方が変わるだけであって、絶対額で「雲泥の差」があるわけではない。

 国民健康保険社会保険
運営団体・市区町村・全国健康保険協会 ・健康保険組合
被保険者・社会保険、船員保険、共済組合、後期高齢者医療制度に加入していない方 ・生活保護を受けていない方・適用事業所に雇用されている正社員 ・適用条件にあてはまる短時間労働者
保険料の計算方法・市区町村が計算 ・前年の所得に応じて変動・会社が計算 ・給与額に応じて変動
保険料の負担全額本人が負担会社と従業員が折半
保険料の支払い自分で支払う給料から天引き
扶養制度の有無なし (保険の加入者の合計で保険料が設定される)あり (一定の条件下で配偶者や子どもなどの家族を保険に加入可能。負担額は増えない)

高いと感じる理由は、全額自分で負担するからなのだが、それは正確ではない。

社会保険の会社が半分負担するケースでは、その負担分は結局本人の給料が支給されずに保険料に充てられているからに過ぎず、独身者の場合は負担は変わらない。

ただし、国民健康保険は加入する世帯の所得と加入者数によって保険料が決まるため、扶養する家族が多くなれば負担もその分増える。社会保険の場合はそうではないので、そこで負担感が変わってくるわけだ。

負担を軽減する方法も用意されているので、一概に高いと決めつけられないのだけれど、結果的には割高に感じる人は多いのだろう。

だから負担軽減をしろという。

前納制度を採用

というわけで、制度そのものに手を付けなければならないけれど、ようやくその一歩目を踏み出した感じだ。

10月29日付の通知によると、前納の対象者は、保険料を課す前年度の1月1日時点で日本国内に住民登録をしていない人が世帯主の場合。国籍による差別とならないよう、日本人も含む。導入する自治体では、最大1年分の保険料を前払いさせ、支払期限を過ぎても納付がなければ、対象者の財産を強制的に差し押さえる「滞納処分」を進めることも可能になる。

讀賣新聞「国民健康保険の加入時、外国人らの保険料「前納」可能に~」より

滞納対策の一助となるのであれば、まあ有りかな。

2023年度の国保の加入者のうち、外国人は4%(97万人)。同省が150市区町村を対象に実施した調査によると、24年末時点で外国人の国保の納付率は63%にとどまり、日本人を含めた全体の納付率(93%)より低かった。

讀賣新聞「国民健康保険の加入時、外国人らの保険料「前納」可能に~」より

既に全国の国民保険加入者のうち外国人は4%。でも、納付率は63%と低めである。外国人が増えることで未納率が無視できない規模になってきたという意味だね。

前納制度のメリット

で、この前納の何が良いかというと、未納率の低減が目的と言うよりは、徴収のための人件費を削減できることだ。

滞納者相手の徴収作業の人件費は、自治体の国保担当の最大負荷である。

役所は“催告書を出すだけ”では終わらない。

訪問、電話、文書、差押の準備……。これらにかかるコストは、回収額を上回ってしまうことが多く、そこの負担軽減だけでも行政にとっては大きなメリットとなる。

つまり、前納は“滞納リスクごと省略できる”コスト削減策になる。

まとめ

というわけで、社会保険制度そのものに手を付けなければならないけれども、先ずはなんとか現状の歯止めになる制度を導入しようという意図だと思われる本制度。

しかし前納だけでは歯止めとしては弱い。

制度疲労はもう放置できない段階なのだから、ここからさらに“制度そのもの”の見直し議論に入ってくれないと困る。

高市政権には、ここまで踏み込んだ制度改正を議論して欲しい。

コメント