いわゆる投資詐欺の類いにはご注意を。
トルコでレアアース巨大鉱床、海外に技術要請
2025年11月18日 5:00
中国や米国を中心としたレアアース(希土類)の争奪戦が続く中、トルコで巨大鉱床が発見された。トルコ政府は開発に向け海外に技術協力を求めている。
日本経済新聞より
先日、南鳥島沖の試掘には「頑張って」と書いた一方で、トルコの方には「投資詐欺に注意」と言うのは酷だと思う人もいるかもしれないが、理由はあるんだよね。
世界各国でレアアース開発が盛んに
シェア9割を独占
レアアース市場は、現状ほぼ支那の独壇場である。
レアアース精製で世界シェア9割の中国 世界の供給網は素通りできず、海底資源にも触手
2025/11/17 21:14
中国はレアアースに関して支配的なシェアを誇り、世界のサプライチェーンを左右するだけでなく、強力な〝外交カード〟にもなっている。中国のレアアース埋蔵量は全体の5割弱、採掘では7割弱と世界首位の座にある。さらに圧倒的なのは精錬能力だ。中国はレアアースの精錬で9割超を握り、世界のサプライチェーンは中国を素通りできないのが現状だ。
中国は国家戦略としてレアアースに関する存在感を高めてきた。
「中東には石油があり中国にはレアアースがある」
中国の最高実力者だった鄧小平は1992年、こう強調してレアアースの国家戦略物資としての位置付けを鮮明にした。中国政府が旗を振って開発や技術開発を推進。中国企業が主導する価格競争に加え、レアアースの開発に付き物の環境問題もあって欧米企業は撤退を余儀なくされた。
産経新聞より
戦略的に技術と生産を囲い込み、結果として成功したのが支那のレアアース政策だ。
産経新聞には「レアアースの開発に付き物の環境問題」と軽く書いているが、実はなかなか深刻な問題ではある。
環境問題とは
レアアースの採掘・製錬は、多くの国が距離を置くほど環境負荷が大きい。
レアアース問題で重視すべきなのは
2011年02月25日
昨秋、尖閣諸島沖での中国漁船と海上保安庁巡視船の衝突の問題に関連して、中国がレアアースの対日輸出を制限し、税関検査を厳格化するなどの報復措置を実施していると盛んに報道された。レアアースの名はこれにより一躍有名になったが、レアアースとは希土類17元素の総称であり、少量を加えることにより従来の製品の数倍の能力を引き出すものとして利用されることが多い。
~~略~~
以上のようにレアアースは、産業製品にとって欠かせない重要元素だが、その全世界の生産量のうち97%とそのほとんどを中国が担っている状況にある。ところが、実際の埋蔵量の状況を見ると、レアアースは中国にしかないわけではない。
大和総研のサイトより
2011年当時は生産の97%を支那が占めていた。埋蔵量は世界中にあるのに、開発しているのが支那ばかりだった理由は、次の一文に尽きる。

ところが、よく知られていることではあるが、実のところレアアースは世界中、様々なところにあるのだ。
だが、開発をやっているのは支那だけ。その最大の理由が環境問題である。
実際、中国でレアアースを採掘しているのは中小企業が多く、十分な環境保護設備を設けずに、廃液、固体廃棄物、排ガスなどが無造作に廃棄されるという事情を漏れ聞く。内モンゴルの包頭市では深刻な土壌汚染が広がっており、飲用水の取水口にまでレアアース工場の排水が及んでいるという報告もある。さらに、レアアース鉱石の多くがウランやトリウムなどを含有するため、その精製過程で放射性廃棄物が発生する。この処理に多大な費用がかかり、それらはレアアース価格に転嫁されるはずだが、中国ではその対策が不十分であるため価格が安く抑えられるという指摘もある。
大和総研のサイトより
陸上では、放射性廃棄物の問題は深刻だ。レアアースには放射性物質が結構な割合で含まれて、これを除去するのが大変なんだよね。だからこの処理費用を正面から負担したがる国は多くない。
では、支那はどうしているのかというと……。
過去に「雷雨喘息」のニュースを扱ったことがあって、一時期この記事にはかなりアクセスいただいた。
「雷雨喘息」は内モンゴルでの事例が多く、「ウラン鉱脈の影響ではないか」という推測を紹介した。レアアース開発の影響も噂されているが、これはあくまで因果関係不明な話として受け取って欲しい。
とはいえ、支那が環境対策を度外視して開発しているのは事実だ。レアアース開発に踏み込めば、こうしたリスクを必ず考えなければならない。
トルコでのレアアース開発
では、トルコの話はどうなんだろう?ということなんだが。
先ずはこちらのサイトを確認いただきたい。
トルコ鉱業投資セミナーのご案内 ―トルコのレアアースについての紹介―
トルコ共和国はレアアース、ホウ素、アンチモン、マンガン、ベースメタル等多様な鉱物資源の探鉱・開発活動が行われています。
今般、12月17日(木)に鉱業投資セミナーを駐日トルコ共和国大使館及び経済産業省共催、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)主催にて、Webinar形式で開催します。
JOGMECより
これは2020年の投資セミナーの案内で、主催はJOGMECであった。これより先の2019年にはトルコで大規模なレアアースの鉱床が見つかったというニュースがあった。
トルコ大統領「レアアースに投資を」
2019年7月2日 2:00
20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)に合わせて訪日したトルコのエルドアン大統領は1日、都内で経団連と懇談し「レアアースと(一般的な金属である)ベースメタルの分野に日本からさらに投資してほしい」と呼びかけた。
日本経済新聞より
トルコでは試験工場が稼働しており、試験的な採掘・供給は始まっている。しかし本格生産にはまだ数年必要とされる。
このタイミングで「巨大鉱床発見!」と打ち出してきた背景が、
- 開発が順調で、規模拡大のために投資を呼び込みたいのか
- 開発が難航しており、追加の資金を必要としているのか
この見極めは非常に重要だ。
海洋開発の話
なお、こちらの記事の「追記2」で触れたが、日本の海洋レアアース開発には大きなメリットがある。
支那が放置し、おそらくはトルコが苦戦しているだろう放射線問題だが、海洋資源開発を行う場合には、これがおきにくいというお話。
- 主に酸化物やシリカ質の微粒子にレアアースが吸着した形で分散している
- トリウムやウランの含有率は陸上鉱石の1/10〜1/100程度と非常に低い
- 放射線測定で、自然背景放射線にほぼ近いレベルだと確認されている
ご存じの通り、「水」は減速材として優秀で、放射性物質が含まれていたとしても、水自身が放射線の遮蔽物となる。そして、海底は膨大な海水によって希釈されるために、もし微量の放射性物質が溶出しても即座に希釈され、環境中の線量上昇には繋がりにくい特徴がある。
まとめ
そういうわけで、もしレアアース分野に資金を投じるのなら、トルコの“話題性”よりも、日本の海洋開発の方がよほど見返りが期待できる。実際にはJOGMECが主体となって判断するのだろうが、個人的にはこちらを応援したいところだ。





コメント
ブリュッセル(欧州委員会)がトルコをEUに加盟させるかどうかでEUの本気度が測れる
欧州委員会、決定が遅い団体ですから、なかなか直ぐには答え出せないでしょうね。
トルコのレアアース鉱床については、「疑わしい」と見る向きもあるみたいです。トルコの自己宣伝はさておき、果たして投資先として採算が取れるのか、取れないのか。
そういえば、いま金市場価格が青天井状態のため、日本国内の閉鎖された旧鉱山の再開発が始まっているそうですね。
そうみたいですね。
トルコはまあ何というか、やっぱり独裁の部分が結構足を引っ張っている感じです。
そして、国内の金鉱山のニュースを何処かで見かけましたが、実際に採掘できるかどうかは。
鉱山開発はなかなかリスクも増えますからね。