あんうん……だと?
インドネシア火力発電の廃止計画に暗雲 先進国からの資金提供が停滞
2025年11月18日午後 2:26
インドネシアでの気候変動対策として、同国の石炭火力発電(発電容量6.7ギガワット)を2030年までに段階的に廃止する計画に暗雲が垂れ込めている。先進国からの資金提供が滞っているためだ。発展途上国で石炭からクリーンエネルギーへの移行を支援する先進国の連携した取り組み「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)」のインドネシア事務局長がロイターに明らかにした。
ロイターより
いやいや、最初から止める気はないよね。
環境問題は「金次第」
積極的に石炭火力発電の推進を
最近、確かインドネシアの記事書いた気がするんだ。
で、この中で、日本が過去に石炭火力発電(IGCC)の輸出を推進して、支那に持って行かれてしまったというお話を紹介した。
インドネシア:海外での石炭火力への融資停止を約束した中国がインドネシアにおける石炭火力発電所の新設を行う矛盾
掲載日:2025年5月9日
2025年4月29日付地元報道によると、中国が2021年に海外での石炭プロジェクトへの融資を停止すると約束しているにもかかわらず、中国企業がインドネシアで石炭火力発電所の新設を続けている。これは、米国のシンクタンクによるBRICS諸国へのエネルギー投資の分析結果による。同シンクタンクによると、中国は7.7GWの新規石炭火力発電所の建設に関与しており、その多くはインドネシアのニッケル製錬所の電力に使われている。
JOGMECより
JOGMECなどは、恨み節的な記事を紹介していて面白いのだが、実際、石炭火力発電所の新設が続いている。

定期的にこんなニュースが出てくるが、結局のところ、インドネシアでは今でも石炭火力発電が主力で、提供しているのは支那だ。
インドネシア:中国神華能源、南スマトラで石炭火力発電所を稼働
2025/07/15 19:59
中国石炭最大手の中国神華能源は14日、南スマトラ州で新たな石炭火力発電所の商業運転を開始したと発表した。超臨界圧方式の発電所で、350メガワット(MW)のタービン2基を設けるうち1号機を稼働。
Aseanより
これで「インドネシア火力発電の廃止計画に暗雲」とか言われても、説得力を感じない。むしろ積極的に推進しているのではないか?
資金的な問題
そもそも、この話はおかしい。
JETPは22年、インドネシアの石炭火力発電廃止計画を支援するために向こう3-5年にわたって計200億ドルの資金を調達すると約束した。JETPの資金拠出国は当初、米国、欧州連合(EU)、日本など10カ国・地域だったが、米国はその後JETPから離脱した。
国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)に出席するためブラジルを訪問しているJETPのインドネシア事務局長、ポール・ブタルブタル氏は「石炭火力発電の段階的廃止のための資金提供でどの国からの確約も得られていない」と発言。「仮に石炭火力発電の段階的廃止に快く資金を提供する国が全くなければ、われわれは段階的廃止が実際に最善の選択肢なのかどうかを考えなければならない」と述べた。
ロイター「インドネシア火力発電の廃止計画に暗雲~」より
JETPの事務局長は、「金を出してくれなければ段階的廃止をしない」と述べているが、一方で、石炭火力発電所建設には金を出して貰っている。
説得力が皆無である。
そりゃ、JETPの資金拠出国に名を連ねている残り9カ国だって、アメリカのように離脱を考えるよ。
「廃止計画」の中身は?
そもそも、その「廃止計画」ってどんな中身だったかが凄く気になる。
インドネシア:米国のパリ協定再離脱がJETPに与える影響
掲載日:2025年2月7日
1月31日付けの地元メディアによると、インドネシアの気候・エネルギー担当特使であるハシム氏は30日に開催された2025 Beritasatu Economic Outlookフォーラムにて、インドネシアの石炭火力からの脱却に向けた国際協定である公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP: Just Energy Transition Partnership)は、就任初日にパリ協定離脱を決定したトランプ大統領により破棄されることが「確実」であると述べた。ハシム氏は「米国の特使と会ったが、この計画は、2022年の署名以来、ほとんど進展していない」と述べた。一方で、インドネシア政府にとって、米国のパリ協定再離脱がJETPに与える影響はほとんどないだろうと述べた。「JETPグリーン支援パッケージの石炭火力発電所の廃止に充てられる資金は、主に日本から拠出され、これまでも米国からの拠出はされておらず、全て口先だけである」と語った。
JOGMECより
金は日本からしか出ていなかったというところも気になるところではあるが、それも無に帰そうとしている。
インドネシア側のスタンスは最初から一貫していた。
「石炭火力は止めない。止める気はない。止めるとしても“金をもらえれば考える”。」
これだけで全て説明がつく。 JETPの事務局長がロイターに対して語った「資金提供がなければ段階的廃止が最善の選択肢なのか考え直す」という台詞は、「廃止を考えたこともない」と同義である。
実際、インドネシアは電力需給の主力を石炭火力に依存しており、ニッケル精錬の需要増でむしろ“もっと電気が欲しい”状況。そこに中国が発電所を作ってくれるのだから、廃止どころか増設が止まるはずがない。
結局のところ、
- 石炭火力をやめると電力が足りない
- 国内産業(特に資源系)が回らない
- 中国は安い金で設備を作ってくれる
- 先進国の資金提供は遅れるどころか消える
こうした環境で「段階的廃止」の実効性を信じる方が無理というものだ。
“気候正義”にも“脱炭素”にも見向きしない現実
インドネシアが金に汚く、約束を守らない国というのは既に日本は学んできた。高速鉄道の受注案件は、本当に嫌な事件だったね。
結局この高速鉄道、巨大な赤字を生み出すだけの装置に成り下がっていて、路線拡大の目処も今のところは付いていない。
火力発電所の話だって同じだ。
火力発電量が世界第7位で、東南アジア最大の経済国であるインドネシアで起きている今回の問題は、気候変動対策の資金調達を巡る懸念が発展途上国全体にとってもひとごとではないことを浮き彫りにしている。
インドネシアでの石炭火力発電廃止計画についてドイツと調整している日本はコメント要請に返答しなかった。ドイツの報道担当当局は「JETPの目標を達成する最も効率的かつ政治的に実現可能な手法」を見いだすためインドネシアと取り組んでいるとした。
ロイター「インドネシア火力発電の廃止計画に暗雲~」より
ロイターはこんな風に結論付けているが、偉そうなことを言っているドイツだって、何か具体的な計画を出すわけでなし、金を出すわけでなし。
結局のところ、JETPの存続に暗雲が垂れ込めているだけで、インドネシアに取っては痛くも痒くもない話。「で?誰が金出してくれるの?」と、それだけがインドネシアの興味なのである。





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