近況は「お知らせ」に紹介するようにしました。「注意して下さい」もお読み下さい。
スポンサーリンク

火災拡大と人民の動揺を懸念する当局

中華人民共和国ニュース
この記事は約7分で読めます。

先週末の話で申し訳ないのだが、支那においてはかなりセンシティブな話になりつつあるようだ。

香港火災は「煙突効果」で急速に拡大か…竹製の足場に可燃ネット、専門家「パニックも想定される」

2025/11/27 12:28

香港北部の大埔区の高層マンションで26日に火災が発生した。計7棟が燃えて消火活動は難航し、27日午前現在も鎮火していない。

讀賣新聞より

11月26日に発生した高層マンション火災は、深刻な被害をもたらした。まずは、被害に遭われた方々にお悔やみ申し上げたい。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

火災の原因調査は進まず

原因は現時点では不明

火災が発生したのは香港北部の高層マンションで、31階建て8棟の住居ビル宏福苑(ワン・フク・コート)である。

火災がどこから発生したかは、現時点でハッキリ分かってはいない。

公益財団法人「市民防災研究所」理事で、マンション火災に詳しい元東京消防庁麻布署長の坂口隆夫氏(78)は、「修繕中のマンションが竹製の足場や燃えやすいネットで覆われていたことで被害が拡大していたのではないか。日本の工事でこのような素材を使うことはなく、日本で同様のことが起こるとは考えづらい」と指摘している。

讀賣新聞「香港火災は「煙突効果」で急速に拡大か~」より

こんな言及があるが、竹製の足場そのものが問題だったかは不明。ネットは激しく燃えたようだけれど。

そして、この火災は26日2時に発生して28日10時まで40時間も燃え続けた。鎮火後も内部が高温で、全域の調査は難航した。

足場やネットに責任が押しつけられそうな流れもあったが、改装工事の現場からの出火が疑われている。仮に外壁が難燃素材なら、ここまでの延焼はしづらいはずで、何らかの不正の可能性が疑われるのは自然だろう。

調査するつもりもない

ところが、当局は原因究明より騒ぎの拡大を抑える方に神経を尖らせているようだ。

香港火災、説明責任求めた住民拘束 オンライン署名も削除

2025年11月30日 17:06

香港住民のマイルズ・クワン氏は、これまでに128人の死亡が確認されている市内の集合住宅で起きた大規模火災についての説明責任を訴え、駅前で通勤客に声を掛けてビラを配っていた。報道によると、クワン氏はその後、当局に身柄を拘束された。

24歳学生のクワン氏はAFPに「今の(香港の)状況に私たちは皆、満足していない。少しでも良くなってほしい」と話し、駅前でビラ配りをし、火災についての独立調査を求めていた。

AFPより

「火災についての独立調査を求める」というのも不思議な気がする。

日本ならば、消防による現場検証が行われ、警察立ち会いの下に事件性があるかどうかも調査されるのが普通である。

ところが、香港では「公正な調査が行われるか不安だ」と訴えた人が、逮捕されたようだ。

「香港はいま、内外ともに欠陥だらけだという現実を率直に受け止める必要がある」と訴えていたクワン氏らの要求は、オンライン署名活動へと広がり、1日足らずで1万筆を集めた。

しかし、香港メディアは29日夜、クワン氏が扇動の疑いで、香港国家安全部に身柄を拘束されたと伝えた。オンライン署名の文章も削除され、中国政府の厳しい監視下で、異論の声がどれほど素早くかき消されるかを示す形となった。

AFP「香港火災、説明責任求めた住民拘束~」より

今回の惨事を利用して「社会の分断をあおり、当局への憎悪を煽っている」と国家安全部が非難した直後の出来事だ。

集会を恐れる当局

どうやら、反政府勢力の活動があるという具体的な懸念があっての逮捕というよりは、怒りが広がって抗議行動に発展することそのものを恐れた構図らしい。

香港火災、数千人が追悼 中国は抗議活動「厳正に処罰」とけん制

2025年12月1日

26日に大規模火災が起きた香港北部・新界地区の高層住宅群周辺では30日、数千人が犠牲者追悼に訪れた。一方、中国当局はいかなる「反中国」の抗議活動も取り締まると警告した。

火災の原因は現在も調査中だが、市民の間では火災のリスクに関する警告が見落とされたことや、不適切な建設作業慣行に対する怒りが高まっている。

ロイターより

ただ、この逮捕劇には事前の苦情申し立てなどが関係しているようだ。

当局は火災に関連して汚職や修繕工事における危険な資材使用の可能性を捜査しており、これまでに11人を逮捕した。

香港の労働当局によると、高層住宅の住民は昨年、修繕工事による火災の危険性について苦情を申し立てたが、当局から火災の危険性は比較的低いと告げられたという。

ロイター「香港火災、数千人が追悼~」より

このようなビル住民からの修繕工事に関する労働当局への訴えは、無視された結果、火災に発展してしまった。それに対して「当局は何をやっている」「汚職による癒着があったのだろう」という、訴えが出てきたのは当然の流れではあるが。

だが、これが住民の怒りとして集まっていくと、火災のように反政府感情として燃え上がる可能性が高いと判断されたようだ。

香港の汚職摘発機関はこれまでに、宏福苑で進行していた改修工事を請け負っていた業者の幹部を含む11人を、火災関連で逮捕した。香港労工処によると、当局は業者に対し、適切な防火措置を講じるよう繰り返し書面で警告しており、火災の1週間前にも警告を出していた。

Bloombergより

実際に問題があると当局も判断はしているようだけど、改修工事業者を大掛かりに摘発すると、それはそれで問題が発生するのだろうね。

人民の不満は溜まる

白紙革命のトラウマ

支那としては、武漢ウイルス感染症を全国どころか全世界に拡散してしまったという失敗を経験している。

そしてその影響で発生したのが「白紙革命」と呼ばれる抗議活動である。

中国ゼロコロナ政策に抗議の「白紙革命」 政権批判、プロパガンダ成功が招いた皮肉

更新日:2022.12.05 公開日:2022.12.05

これまでにもコロナ対策への不満が抗議集会や暴動につながった事例は何件も確認されている。「白紙革命」が一線を画するのは全国的に拡大したこと、そして「習近平下台!共産党下台!」(打倒習近平!打倒中国共産党!)との政権批判のシュプレヒコールが上がったことに由来している。

GLOBE+より

この構図も、支那当局の判断ミスで被害が拡大。多くの人民の人命が失われたという結果になり、抗議活動が拡大したということになる。

で、今回も不満が噴き出して、抗議活動として広がることを恐れたということのようだ。

膨らむ治安維持費

実は近年、中国の治安維持費はずっと増加傾向だ。

中国 2025年の治安維持費が大幅増 相次ぐ無差別殺傷事件受け

2025.03.05 14:34

中国の治安維持に関する予算案が、去年より7.3%増加したことがわかりました。

中国の全人代=全国人民代表大会に提出された2025年の予算案によりますと、国内の治安維持やスパイの摘発など「公共安全」に関わる予算が前年に比べ7.3%増の2428億元、日本円でおよそ4兆8560億円になったことがわかりました。

TBS NEWS DIGより

2014年以降、治安維持の経費を公開しない時代が続いたけれど、2020年代以降は「公共安全」という項目で公表するようになっている。

で、2025年には2,428億元(4兆8,560億円)になったと。

ただし、これがどのような予算なのかはハッキリしていない。中央政府の予算の数値だといわれているが、地方政府やその他の組織が負担する治安維持関係支出に関してはここに含まれないようだ。

数字を信用できるかという話はさておき、増加傾向にあるという意味合いはかなり意図があると見て良いだろう。国際社会に対して治安維持費が「増えている」=「安全に配慮している」というようなメッセージだろうと予想される。

一方で、実際に治安維持に気を遣わねばならないような社会情勢になっていると言うことも、理解しなければならないわけで。

まとめ

人民の集結や抗議活動への発展に繋がるのを恐れるあまり、取り締まりを強めてしまうところが如何にも支那らしいが、この流れは最近のこんなニュースにも既視感を覚える。

対応があまりに過敏すぎるのである。

支那共産党は、それほど余裕のない状態だ、ということなのかもしれないね。

コメント

  1. 砂漠の男 より:

    火災が大規模化した要因は、耐火性の低い防護ネットと外壁の発泡断熱材にあったらしいです。マンションの火災報知器が作動していなかったとも。
    https://shorturl.at/rnA8T

    火元が不明ですが、大方の見立てでは、作業労働者の火の不始末だろうと。
    管理会社が経費節減のために、支那本土の労働者を使ったという話もあるようです。支那に侵食されると、こういうことが起こるよという教訓でしょう。

    • 木霊 木霊 より:

      火災報知器は切っていたという噂もありますから、まだまだ闇はありそうですね。
      調査がしっかり行われるかは怪しいそうですが、我々が心配しなければならないのは、我が国への影響ですね。
      支那企業が受注した案件が、適切に工事されるかなどのチェックは改めて重要だということ、認識を新たにしなければなりませんね。

  2. 軍事オタクより より:

    砂漠の男さんのおしゃられてる通り火災の原因はそうみたいですね
    被害者の方々の食料を供給するボランティアの方も何か排除したみたいですね
    反政府勢力が何とかかんとかで
    いつまで力で押さえつける事ができるでしょうかね
    近い将来戦国時代になりそうですね

    • 木霊 木霊 より:

      当局は集会を危険視しているので、ボランティアの活動も怖い面があるのでしょう。
      全ての救済事業は当局を通じて行え、と。そんなところでしょうか。

  3. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    火災の原因究明より先に、吊す首を探す。
    ある意味、四千年不変の中華帝国のありように安心する次第です(安心するとは言ってない)。

    さすがに「死者36人」の壁を護ることは出来なかったようですが……

    ※英国は、香港を手放した責任を取った方がいい。