アメリカと韓国との温度差が感じられるニュースである。
在韓米軍機が中国機と一時対峙 黄海上で異例訓練、けん制か―韓国報道
2026年02月20日16時28分配信
在韓米軍のF16戦闘機約10機が18日、黄海上空での訓練中に中国の防空識別圏に接近したところ、中国の戦闘機が出撃し、一時対峙していたことが分かった。複数の韓国メディアが20日までに報じた。
時事通信より
この記事を読むとアメリカ軍と支那人民解放軍が対峙して危なかったというような印象を受けるが、そこまで騒ぎ立てる話だろうか。
効果測定の色合いが強い
「温度差」が付いた理由
先ずは、時事通信から引用しておこう。
在韓米軍が中国の防空識別圏近くで訓練を行うのは異例という。MBCテレビは「中国をけん制したようだ」との韓国軍消息筋の見方を伝えた。
時事通信「在韓米軍機が中国機と一時対峙~」より
なるほど、在韓米軍が支那の防空識別圏近くで訓練をやっていた、ねぇ。
この件に関して、支那側の主張を確認してみる。
黄海における米軍の活動は、祝日中の緊張を高めることを目的としたものかもしれない。人民解放軍は国家安全保障を守る強い決意を示している:専門家
2026年2月20日 午後7時55分
環球時報は金曜日、関係筋からの情報として、米軍が最近、黄海上空の中国に面する空域で航空機を組織し、活動を行ったことを報じた。中国人民解放軍(PLA)は、法令に基づき、海空軍を組織し、活動全体を通して監視と警戒を行い、事態に効果的に対応した。
~~略~~
聯合ニュースは金曜朝、複数の韓国軍筋を引用して、在韓米軍が黄海上の国際空域で航空訓練を行っていた際、中国が戦闘機を派遣し、米中両軍の間に短時間のにらみ合いが生じたとの報道を掲載した。
Global Timesより
ほうほう、成る程ねぇ。どうやら環球時報は在韓米軍と韓国政府との「温度差」を強調したいようだ。在韓米軍の行為について「危険な火遊び」と指摘する一方で、韓国軍側の抑制的な対応を評価している。
環球時報は、支那共産党の広報誌の色合いが強いため、この認識は支那中央政府の認識と理解すべきだろ。そして、在韓米軍に対するソレと韓国軍に対するソレには露骨な「温度差」が感じられる。
韓国軍に対しては「配慮できて偉いねぇ」と、評価したと言うことだろう。
韓国軍には正確に伝えられなかった
ここで興味深いのは、在韓米軍のこの動きについて韓国軍には詳細に伝えられていなかったことだ。
ソウルの軍当局は、在韓米軍(USFK)が韓国軍に対し、計画されている訓練飛行について事前に通知していたと指摘した。しかし、作戦目標を含む演習の具体的な詳細は明らかにされなかった。
UNITED24 MEDIAより
事実がどうかは不明だが、少なくとも環球時報もそのように判断しているようだし、UNITED24もそのように報じている。

この情報もなかなか興味深い。
韓国政府が米国が提案した日米韓合同航空演習を拒否したことを受け、日米は16日と18日の両日、東海と東シナ海で合同訓練を実施した。米軍の主要戦略兵器であるB-52戦略爆撃機4機が参加した。グアムから展開されたB-52は18日、済州島南部周辺の東シナ海と台湾方面への北方訓練を行い、一時西海にも進入した。
The Chosunより
韓国軍は日米韓合同航空演習をアメリカから提案されて、これを拒否。そして、在韓米軍の演習が行われたと。
日米共同訓練の実施について
2月18日(水)、護衛艦「はるさめ」、OP-3C、EP-3及びUP-3Dが、四国南方海空域において、EA-18G、E-2D、F-18とともに日米共同訓練を実施しました。なお、米海軍の参加部隊のうちF-18及びE-2Dは、本訓練初参加です。訓練を通じて、海上自衛隊の戦術技量の向上及び米海軍との相互運用性の向上を図りました。
自衛艦隊のサイトより
日本側の発表では「日米共同訓練」ということになっているのには苦笑を禁じ得ない。日本側は配慮したようだね。
そして、同時期に行われた在韓米軍の軍事訓練に関しては、韓国には詳細情報が伝えられなかったと。
米国側は今回の訓練について韓国側に直前に通知したとみられる。在韓米軍が空軍を通じて関連内容を伝達したが、訓練の規模や目的については詳細に明らかにしなかったという。韓国政府ではこれを事実上の無通知と認識する雰囲気もある。安圭佰国防部長官と陳永承合同参謀議長が相次いでブランソン在韓米軍司令官と電話をして韓国側の懸念を伝えたのは、こうした背景が作用したとみられる。
中央日報より
これについて韓国側からアメリカ側に懸念を伝えたらしいのだが、アメリカにしてみれば「訓練に参加しないっていったよね」という感じになるだろう。
一方で、消極的に見える韓国軍の一連の対応について、環球時報が評価したというのが好対照に見えるね。
効果測定の目的
人民解放軍はどの程度機能するのか
在韓米軍がなぜこのタイミングで黄海上空の訓練を行ったのか、公式説明はない。だが、恐らくは人民解放軍の対応能力を測る「効果測定」の意味合いが強かったのだろう。
今年の1月にこんなニュースが報じられたことを記事にした。
軍部のトップ不在という異常事態になっている人民解放軍だが、中枢を掌握していた張又侠氏の不在は、指揮系統の安定性や即応体制に疑問符が付く状況を示唆する。このため、事前通告なしの訓練にどのように対応するのかという点をアメリカ軍は知りたかったのではないだろうか。
もともと支那側は、東シナ海や南シナ海、あるいはオーストラリア周辺の排他的経済水域(EEZ)において、事前の通告なしに艦艇や航空機を接近させたり、自衛隊機に対してレーザー照射やフレア放出を行ったりと、散々「グレーゾーン事態」を仕掛けてきいる。
故に、やり返されたという色合いが強い。しかし、今回の在韓米軍の狙いとしては、意趣返しよりも別に目的があったと考えるのが妥当だ。イラン方面でも騒ぎになっているから、牽制の意味合いは強いのだろう。
平常運転に見えて焦りが散見される
一方、どの口で批判するのかは良く分からないのだが、支那の外交部であればいつもの平常運転となるはずだ。だが、環球時報を見るとちょっと慌てている印象が強い。
両専門家は、このような活動は中国の海上・空中安全保障に直接的な脅威をもたらすと指摘した。張氏は、「国際慣行に従い、中国は通常、軍用機、艦艇、その他の部隊を派遣して、米国の偵察機を追跡、監視、警告、そして追い払い、国家主権と領土安全保障を守っている」と述べた。
Global Times「黄海における米軍の活動は~」より
支那の人民解放軍は適切に対処できたと胸を張っているのだけれど、在韓米軍は訓練を途中で止めたわけではなくて、しっかりと最後まで完遂したようだで、本当に追い払ったかは疑わしい。
それを認めるのが業腹なので、「米国の偵察機を追跡、監視、警告、そして追い払い、国家主権と領土安全保障を守っている」としたのだろう。
結局、韓国軍に詳細を伝えなかったことも、支那には事前通知しなかったことも、効果測定の色が強いように思える。そして、その結果は人民解放軍の動きは十分なものではなかったことを伺わせる。
何故なら、環球時報がやたらと「適切に対処」とか、「国際慣行に従い」とかルール通りにやったことを強調しているからだ。
米韓同盟の間に隙間風
一方で、韓国軍の動きはちょっと気になるところ。
韓国、防衛費をGDP比3.5%に 米国と合意文書、原潜建造明記
2025年11月14日18時07分配信
米韓両政府は14日、慶州で10月29日に行われたトランプ大統領と李在明大統領の首脳会談の合意内容をまとめた共同文書を発表した。韓国が早期に防衛費を国内総生産(GDP)比3.5%に引き上げると表明し、米国はこれを歓迎した。ただ、具体的な達成時期は明示されなかった。韓国国防省によると、今年度の防衛予算はGDP比2.32%。
時事通信より
去年11月に米韓の関係の良好さを演出する為に、韓国は防衛費の引き上げを約束した。現状、GDP比2.32%のところ、3.5%まで引き上げると発表した。
ただし、上に紹介したようにFIOP(Free and Open Indo-Pacific:自由で開かれたインド太平洋)は、関連の合同軍事演習には、韓国軍は頑なに参加することを拒んでいる。更に、米韓合同軍事演習「フリーダム・シールド(自由の盾、FS)」の調整も難航しているようだ。
米韓演習、発表を延期…野外訓練巡り足並み乱れか=韓国
2026/02/23 06:25
韓国政府が米韓合同軍事演習「フリーダム・シールド(自由の盾、FS)」に伴う陸海空軍の機動訓練の延期を提案し、米軍側との全体的な日程調整が難航している。これを受け、両国が共同で予定していた演習実施計画の発表も見送られたことが分かった。
Wowkoreaより
ニュースでは北朝鮮との関係に配慮するみたいなことを書いてあるが、どちらかというと支那に配慮した色が濃い。経済的にも依存度の高い支那に対して、どうしても強く出られないのが韓国なのだが、台湾有事に関してもFOIPに関しても他人事のような顔をしている。
だからこそ在韓米軍の演習に関する詳細情報が伝えられなかったと見ることはできるが、どちらかというと支那側の反応を図る上では、事前の情報共有を最小限に抑えた方が効果が高いと判断したのだろう。米韓秘密保持協定があるとはいえ、情報漏洩リスクがある国だしね。
まとめ
今回の訓練を「異例」と強調する報道は多い。だが、より注目すべきは米韓の足並みの乱れと、支那人民解放軍の対応能力がどこまで実効的だったのかという点だろう。
韓国が経済的現実を考慮するのは理解できる。だが、安全保障で曖昧な態度を取り続ければ、同盟の信頼は静かに削られていく。台湾有事に関してもFOIPに関しても他人事では済まないんだが。
戦時作戦統制権の返還が具体化していく中で、日本としてはいよいよ日本海が最前線になる準備を加速する必要があるだろう。




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