イマドキ、オモチャでも車輪が抜けたりしないものだが。
【走行中に脱輪する『韓国版ハンビ』・・・それでも乗り続ける?】
記事入力2020.10.17 午後9:42 、最終修正2020.10.17 午後10:22
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韓国軍で運用されている車輪型装甲車と小型戦術車両で欠陥が発見され配置車両の半分のリコールが決定されました。
走行中に車輪が外れたり、突然エンジンが停止する事故が相次いでいますが、より大きな問題は、軍がリコール対象車を継続して運行をしていることでしょう。
将兵の安全は、このままで大丈夫でしょうか?
「NAVER」より
このニュースを説明する前に、韓国版ハンヴィーについて説明した方が良さそうである。
あ、そうそう、先にネタバレをしておくが、「走る、曲がる、止まる」は車の基本性能として必須の点なのだが、韓国版ハンヴィーは、その必須機能の「止まる」ではなく、困ったところが止まっちゃうんだよねぇ。
2016年に導入された新しい車体
韓国の指揮車は不遇
記事にも説明されているが、この車体、4年前に量産を初めて実戦配備された。

何処かで見たような形状だが、そもそも韓国陸軍はアメリカ陸軍のお下がりを貰って運用するような辺りからスタートしている。実際に、ジープなど運用していた経緯もあって、「似たような車両が欲しい」という潜在的な要求はあるのだろう。
この他にもK-131と名付けられた1/4tトラックも存在する。

これ、起亜自動車が製造したジープもどきなのだけれど、複数のバージョンが存在するようだね。で、冒頭の「小型戦術車両」などと勇ましい名前が付けられているK-151は、このK-131の後継という位置づけのようだ。
ちなみに、起亜自動車はアメリカのフォードモータ社が製造するM151(ケネディジープとの非公式な愛称がある)に関する技術供与を受けているようで。
ガッカリ性能のK-151
ところで、既にブログでも説明しているが、このK-151は登場した後、残念な機能が発覚してしまう。
車両 | K-151(KM-1) | M998(HMMWV) | M1151(装甲強化型) |
---|---|---|---|
全長 | 4.9 m | 4.6 m | 4.93 m |
全幅 | 2.19 m | 2.16 m | 2.31 m |
全高 | 2.1 m | 1.8 m | 1.99 m |
重量 | 約 5.4 t | 約 2.4 t | 約 6.1 t |
最高速度 | 130 km/h | 113 km/h | 113 km/h |
乗員数 | 1+3名(最大8人) | 1+3 – 4名 | 1+3 – 4名 |
折角なので、形状の似ているアメリカ軍採用のハンヴィー(HMMWV)とその装甲強化型のスペックの比較を紹介しておく。
サイズ感もほぼハンヴィーそっくりなのだが、その重量がなかなか。なお、K-151の重量に関しては過去に報じられたニュースを参考にしているが、複数のバージョンがあるのでその重量も5t~6tの間で設定されている模様。
で、この大きさと重量が禍してこんなニュースが。
韓国期待の「国産ハンヴィー」、大きすぎて使い物にならず?=韓国ネットから批判の声
配信日時:2018年10月29日(月) 23時40分
2018年10月26日、韓国・ノーカットニュースは「韓国型ハンヴィー」と呼ばれる小型軍用車(KM‐1)が「前方部隊から後方部隊に追いやられた理由」について報じた。
~~略~~
最高速度は時速130キロ、走行距離500キロの性能を保有し、最高出力も225馬力で最大トルクは50キロに達する。なお、コランドスポーツ以前に導入された指揮車「レトナ」は130馬力に最大トルクが18キロ。韓国陸軍は16年から韓国型ハンヴィーの配備を開始し、3分の1ほど普及が完了しており、22年までに約4000億ウォン(約400億円)を投入して計2000台を生産・配備する計画という。
「レコードチャイナ」より
ほほう。

かなり気合いを入れて複数バリエーションを計画していて、実際にこんな感じのごつい車両が出来上がっている。

この写真からもかなりデカいことは伺えるのだが、もうちょっと分かり易い写真があるので紹介しておく。

こんな感じだ。かなり圧迫感があるね。
韓国型小型戦術車群で指揮官用に使用されるレトナベースのK-131を交換するモデルで、単純に指揮官車の役割を超えて兵力輸送はもちろん、装甲の調査車、従軍搭載車、RCWS搭載車、観測番車、通信車、維持車など1¼トン車の役割まで拡張されたモデルである。
「レコードチャイナ”韓国期待の「国産ハンヴィー」、大きすぎて使い物にならず?=韓国ネットから批判の声”」より
韓国の国土は割と山がちで狭隘な場所が多い。このため、K-131でも立ち回りに苦労する場所があるという風に記事にも指摘されている。なお、後継車K-151が登場した後もK-131が引退できずに愛用されている背景には、「デカイ」「重い」「鈍い」を地でいくこのK-151の運用に困るシーンが多いからに他ならない。
そんな事情で、「後方任務」を命じられる始末だというのだが……。
脱輪が増える
悲哀の運命を辿っているK-151だが、冒頭のニュースで示される様に脱輪するケースが増えているとのこと。
ところが最近不合理な事故が相次いでいます。
昨年4月から走行中の車輪が丸ごと抜ける事故が続いているのです。
原因は車軸と車輪を接続する部品であるハブの欠陥。
配置車両の半分の1,400台のリコールを決定しました。
「NAVER”【走行中に脱輪する『韓国版ハンビ』・・・それでも乗り続ける?】”」より
通常、「脱輪」というとタイヤが側溝に落ちるなどの事情で道路から外れる事を意味する訳だが、このK-151は文字通り車輪が輪軸から脱落してしまう事故を起こしているようだ。どうやら、車軸と車輪を接続する部品であるハブに欠陥があることが確認されているわけだ。

これは引用した記事に付いている動画からキャプチャーしたものだが、何というか残念な図だね。
走行中にタイヤが外れてしまうと搭乗者の命に関わると思うのだが、そんな深刻な欠陥が発覚すれば、運用停止になりそうなものだ。
当然、リコールになった。が、リコール対象になった後も継続運用しているらしい。
運転中にエンジン停止
更に、エンストしてしまう問題があるようだ。これがタイトルの「止まる」のところである。
1兆ウォン台の事業費をかけて、最近3次量産に入った車輪型装甲車は走行中、突然エンジンがオフする欠陥が発見されました。
配置された装甲車の半分がリコール対象に、来年上半期まで順次行われます。
この場合にも、陸軍は、起動が切れる状況に備えた緊急措置だけ教育したまま運行を続けてするように指示しました。
~~略~~
過去5年間に軍では交通事故で毎年20人が命を失った。
「NAVER”【走行中に脱輪する『韓国版ハンビ』・・・それでも乗り続ける?】”」より
正直、タイヤが脱落するよりはマシな欠陥ではあるが、それでも運転中にエンストすると焦ると思う。もちろん、リコールの対象となったということなんだが、事故につながるリスクは高い。
実際に、韓国軍では交通事故死がそれなりに多いようで、毎年20人も殉職者を出してしまうという始末。ただでさえ、でかくて重い車両を運転するのは大変なのだけれど、時々エンジンが止まったり車輪が外れたりする特徴があると、そりゃねぇ。
もちろん、このK-151だけが交通事故を起こしているわけではないのだけれど、欠陥が発覚した後でもそのまま使い続けるのはどうかと思うぞ。
追記
気がつかずにスルーしていたのだが、K-151「現馬」と名前の付けられた韓国版ハンヴィーだが、ポーランド陸軍に採用されたようだ。
重歩兵戦闘車およびロソマクとホンケルの後継機の契約
2023/08/14 12:59
2023年8月14日月曜日、マリウシュ・ブワシュチャク国防大臣は、ポーランド軍の新しい軍事装備に関する非常に重要な契約3件を承認しました。これらは、重歩兵戦闘車両、新型装輪装甲兵員輸送車(NKTO)および軽量4輪駆動偵察車両に関する枠組み合意です。
Defence24より
重歩兵戦闘車両「KTO ロソマク」はフィンランドが設計したパトリアAMVの系譜で、日本の自衛隊が近年配備を決定したヤツなのだが、ポーランド陸軍では2004年から採用されている車両だ。これを敢えて韓国製の無限軌道車に更新するというから意味が良く分からないのだが、今回はコレが重要ではないのでさておく。
ええと、軽量4輪駆動偵察車両の「ホンケル」の更新をK-151で行うと言うことらしい。ポーランド陸軍はアメリカからハンヴィーも購入しているのだが、K-151を選んだのは安かったからだろうか。
直近の合意は、軽四輪駆動の偵察車両に関するもので、それによると、2024年から2030年にかけてポーランド軍に数百台の車両を納入する計画となっている(現時点ではおそらく約400台)。これらの車両は、韓国のKIAが生産しているKLTV車両のポーランド改良版となる。ポーランドではRosomak S.A.の工場で生産される。契約金額は12億PLN。
ルーフにはターンテーブル付きのハッチが設けられ、口径7.62mm機関銃、口径12.7mm機関銃、口径40mmグレネードランチャーなど、さまざまな兵器を搭載できるようになる。また、KLTVの購入と関連して、個々の部品の生産がポーランドに徐々に移管される技術移転も行われる。
Defence24より
いや、どうやらポーランド国内での製造を許可されたことが大きかったようだね。KIA製造のものの品質が良いかどうかは不明だが、ポーランド国内の生産ラインで製造できるのであれば意味があると考えたのだろう。
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