内藤氏が批判していたことと、これに関して主張しているのが山本一郎氏だということで、やや情報収集に時間をかけていたのだけれど。
参政党念頭か、ロシア工作で「特定政党言及の投稿拡大」 平将明氏が衆院予算案で持論展開
2025/11/10 10:04
自民党の平将明前デジタル相は7日の衆院予算委員会で、専門家の分析を基に持論の「外国勢力による影響工作」を論じ、7月の参院選で外国による選挙介入が行われ、特定政党に言及したSNS投稿が拡大したと述べた。参政党を指しているとみられる。
産経新聞より
ある程度は整理できたので、記事にしていこうと思う。
ロシア工作説の「現実」と限界
ボットによるトレンド操作
まず、平氏の主張の中核部分を確認しておく。
平氏は、外国勢力がSNSで大量アカウントを生成し、ボットで情報を拡散させていると説明した。これはX(旧Twitter)のトレンド形成アルゴリズム(短時間の急増=注目トピック)を逆手に取った典型的手口で、別に珍しい話ではない。
平氏は外国勢力がSNSアカウントを大量に作成していると指摘。それらは投稿を自動的に拡散する「ボット」と呼ばれるプログラムで「人間ですらない。わーっとアカウントがあって人間のふりをしている」とした上で、「このあいだ有名なアカウントが凍結されたが、よく見たら人間じゃなかったというのが、よくある話だ」と述べた。
産経新聞「参政党念頭か、ロシア工作で「特定政党言及の投稿拡大」~」より
SNSの場合、短時間に多数のアクセス、リポストなどが行われると注目トレンドとして取り上げられるアルゴリズムが組まれている。なので、これを利用して特定の言論に対するボットブーストをかけて、言論の方向性を操作しようという試みがあるよという話なのである。
海外でも「通信装置を利用した情報操作拠点」が発見されている。
NY周辺に大量の通信妨害機器、米高官標的の恐れ-外国関与の疑いも
2025年9月23日 23:50 JST
米政府高官を脅かす目的でニューヨーク市周辺に設置された大量の通信機器類が、連邦捜査官に発見され、無効化された。米大統領警護隊(シークレットサービス)が23日発表した。外国の関与が疑われているという。
発見されたのは300台を超えるSIMカードサーバーと10万枚のSIMカードで、ニューヨーク市から半径35マイル(56キロメートル)以内の複数の拠点に設置されていた。国連総会で各国首脳らが集まっている時期であり、何らかの攻撃があれば深刻な事態になる恐れがあったため、シークレットサービスは迅速に行動したという。
Bloombergより
これはK-POP界隈でも“トレンド爆上げ装置”として知られていた手口の拡大版みたいなもの。やろうと思えば誰でもできる。
こうした“能力”が存在する以上、日本国内の政治議論が影響を受けていないと確実に言い切ることは難しい。
手口は割れているが、証拠は当然「公開されない」
米シークレットサービスも、関与国・標的・攻撃内容を公表していない。
シークレットサービスは標的とされた政府高官や国の特定を控えた。計画されていた脅威の内容や、関与が疑われる国についても公にしなかった。国連総会をめぐる外交上の配慮がその理由の一部だとしている。
Bloomberg「NY周辺に大量の通信妨害機器~」より
ただ、平氏はそれに関してこんな風に表現していた。
参院選で、外国勢力が自国のナラティブ(物語として構成されたメッセージ)を拡散し、日本の情勢を不安定化させるために反グローバリズムや排外主義を狙ったと指摘。「特定の政党やそのスローガンに言及した投稿が公示後に急拡大した。この拡大は通常のトレンドの拡大と異なり、人工的なトレンド形成の可能性があるという分析をアナリストがしている」とした。
産経新聞「参政党念頭か、ロシア工作で「特定政党言及の投稿拡大」~」より
この話は「一般人には無関係」という話ではなくって、SNSに触れている人であれば、かなり体感的に納得できる部分はあるだろうし、自分のポストも影響を受けた可能性を考えねばならない部分でもある。
ただし――。
産経記事が指摘するように、これは「言論の自由」「SNS規制」への波及の危険を伴う。メディアが神経質になるのも分かる。
「外国勢力による影響工作」を巡っては、明確な証拠がなく、ロシア以外の工作にほぼ言及されていない上、対応策がSNS規制につながる恐れが指摘されている。
産経新聞「参政党念頭か、ロシア工作で「特定政党言及の投稿拡大」~」より
割と危険なことでもあるんだよね。
参政党の反論と“論点のすれ違い”
これに関して、ほぼ名指しされた状態の参政党だが、「我が党は無関係だ」と主張をしている。
【解説】参政党躍進に“ロシア系bot”疑惑、証拠なく“自民党の情報操作”との見方も
2025.07.18
参議院選挙の目前に控えた7月16日、青木一彦内閣官房副長官は「わが国も影響工作の対象となっている」と定例記者会見で語った。
~~略~~
参政党を巡る一連の指摘の中で取り沙汰されているのが、ロシア政府系メディア「スプートニク」の記事が拡散に利用されているという疑惑だ。ロシア寄りの記事が多いスプートニクの情報を、日本のボットとみられるアカウントなどが広めているという。その拡散の重要な役割を担っているのが「Japan News Navi」というWebサイトだと指摘されている。
All Aboutニュースより
「ロシアから資金提供を受けていない」「そんな証拠もない」というのは事実なんだろうけれど、見当違いな反論だといえる。
参政党は……、アレな党だからロシアとの関係があっても不思議はない。だがそれを割り引いても、議論している部分が違う。
影響工作の主流は、 ・対象国に金を流さない ・勝手に“使いやすい言論”をブーストする ・ターゲットは気づかないまま“利用される” という形だからだ。
参政党がロシアと無関係であっても、 “ロシアにとって使いやすい材料だった” というだけの話で十分成り立つ。
日本版CIAと、避けて通れない「防諜」の話
国家情報局構想の本格化
さて、そんなわけで、過去にはこんな記事も書いていたのだが、最近になって具体的に動き出している。
日本版CIAとして「国家情報局」の創設が検討され始めたのである。
最近は、ロシアからの工作について、外国でも様々言われるようになっている。
ロシアのSNS工作を警告 「反移民」で分断あおる―豪情報機関
2025年11月04日20時59分配信
オーストラリアの情報機関「保安情報機構(ASIO)」のバージェス長官は4日、シドニーで講演し、ロシアがSNSを通じて「反移民」などの宣伝工作に関与し、豪社会の分断をあおっていると警告した。捜査当局と連携し、違法行為には厳正に対処する方針を示した。
時事通信より
こうした話、根拠がある話なのかそうでないかは不明だが、オーストラリアの場合はASIOというそれなりの規模の情報機関があって、分析はなされているハズ。その上での発言なので、根拠がないということではないのだろう。
日本だって、そういう意味では情報収集と分析をやらねば、オーストラリアと同じステージにすら立てないのである。
カウンターインテリジェンス
現在、日本国内には複数の情報収集機関があるが、何れも制限がある。
- 防諜機関が事実上存在しない
- 公安調査庁は権限も情報力も弱い
- 警察庁は捜査機関であり情報機関ではない
- 自衛隊情報部は“国外限定”で縛られている
- 内閣情報調査室は規模が小さく取り扱える情報量に限りがある
複数の情報調査機関はあるんだけど、それぞれバラバラで限定的な機能しか持っていない。カウンターインテリジェンスというのは、他国の諜報活動や妨害活動を妨害しつつ、自国の情報や安全を守るための防諜活動のことを意味し、そもそもこの必要性について日本国民に浸透していない点が問題である。
報道の自由とか表現の自由を盾にして、反対する勢力がいるのと、そもそも敗戦後にそういった組織が出来上がらないようにGHQが色々画策したこともあって、日本国内にはかなり忌避感の強い概念である。だが、戦前は存在したんだよね、結構優秀な諜報機関が。
結局、安全保障という観点では防諜活動というのは、非常に大切な概念である。また民間にも広めることが大切で、割と他人事でもない。国民を教育するという意味でも、防諜活動の大切さを広めていく必要がある。
そのうえで、法整備と既存の枠組みを強化・連携させた組織を作っていくことが不可欠。概ね内調に機能を集めていくというのが理想的なんだろうね。
まとめ
そんなわけで、平氏の国会質問の話。
内容を鵜呑みにする必要はないが、世界で実際に現在進行系起っている事案であり、そんなに新しい概念でもない。にも関わらず、
・それを分析し、把握し、防ぐ体制が日本に存在しない というところが問題なのである。
ロシアの手法は昔から変わらないが、SNS時代は民間が直接巻き込まれる。そのリスクを考えると、国家情報局(日本版CIA)とカウンターインテリジェンス体制の整備は、もはや避けて通れない。
日本が「影響工作を受けているのか“すら”分からない国」でいるのは、さすがに限界に来ている、という話だ。





コメント
ロシアのハッカが暗躍してますからね
日本もあちこち影響が出てますし
どうにかしないと駄目ですね
日本はこんな事が弱すぎるので
もっと国民に知ら示す必要がありますね
中国で活動している北朝鮮部隊もハッキングしている