エネルギー関連で、赤澤氏も積極的に動いているようだ。
赤沢経産相「エネ市場の安定へ協調を」 日米豪など閣僚会議
2026年3月14日 19:16
日米両政府は14日、インド太平洋地域のエネルギー安全保障に関する閣僚会議を初めて開いた。赤沢亮正経済産業相は講演で、ホルムズ海峡の事実上の封鎖の影響に触れて「エネルギー市場の安定へ、各国で強力かつ協調的な対応をしていく」と話した。「日米で議論を主導して史上最大の4億バレルの石油の協調放出が実現した」と成果も述べた。
日本経済新聞より
この記事自体は目新しい話ではないが、今回取り上げる理由は別にある。
日本ではほとんど話題になっていない一方で、韓国では「日本との会談が実現した」と大きく報じられているためだ。
「LNGスワップ」などと理解させるべきではない
会談自体は存在する
先ずは、毎日経済の記事から。
政府、日米とエネルギー供給網の協力強化、ハンファ·エアロ、米国LNGの年間150万トンを受け取ることで韓日、供給網を害する行為を自制することで合意
2026-03-15 17:01:00
中東事態でエネルギー需給の懸念が高まっている中、韓国政府がインド太平洋地域の国々とサプライチェーン協力を強化している。 韓国と日本政府はエネルギー供給網協力のための協約を締結した。 さらに、韓国の民間企業は米国のエネルギー企業と長期エネルギー供給契約を結んだ。
毎日経済より
へー、そんな会談があったんだね。
ちょっと気になって確認したら、確かに経済産業省のサイトには「二国間協議の1つ」として紹介していた。
(2)大韓民国のキム・ジョングァン産業通商部長官との会談
赤澤大臣とキム長官は、両国が原油及びLNGの主要な消費国であるとの認識の下、エネルギー協力や通商協力について意見交換しました。また、サプライチェーン・パートナーシップ協力覚書に署名するとともに、日本のJERAと韓国のKOGASが合意したLNG運用の最適化に関する覚書の披露に立ち会いました。
経済産業省のサイトより

日本のJERAと韓国のKOGASの合意ね。確かに、意見交換はしたようだ。
問題は、その中身の受け取り方だ。
LNGスワップ……だと?
注目すべきはこの部分。
韓国ガス公社とJERAは協約を通じて安定的で効率的なLNG需給管理など、エネルギー安保のための実質的な協力体系を強化することにした。 また、これを土台に具体的な需給管理協力と共同対応方案を議論するための定例会議も開催する計画だ。
産業部の関係者は「韓国ガス公社とゼラは早いうちにLNGスワップなどを施行し、実質的な協力を拡大しLNG需給安定に寄与していくことにした」と話した。
韓国ガス公社とJERAは世界1~2位のLNG購入者だ。 両社はこれに先立ち、2023年にLNG分野協力のための了解覚書(MOU)を締結して以来、持続的に協力してきた。 昨年6月には日本で開催された「2025LNG生産者-購買者カンファレンス」でのLNG物量交換事業まで成功裏に完了した経緯がある。
毎日経済より
「LNGスワップ」とは一体何なのだろう?
JERA、LNG安定供給へ韓国ガス公社と連携 有事に融通を検討
2026年3月14日 20:28
国内火力最大手のJERAは14日、韓国ガス公社(KOGAS)と液化天然ガス(LNG)の安定供給へ覚書を交わしたと発表した。LNGの受け入れ状況について年に2回ほど情報交換するほか、どちらかでLNGが余ったり、足りなくなったりしたときに融通できるよう検討する。中東情勢の悪化などで調達リスクが高まっていることに対応する。
日本経済新聞より
日本経済新聞などが報じるところを見ると、現物を融通しあうようなシステムを導入するように読め、韓国の報道を踏まえると、韓国がLNG不足に陥った時に、日本の輸入分を融通する「かのように」読める。
だが、それだと日本側の利益が何処にあるのか良く分からない。
JERAのサイトを読むと、その違和感が明確になる。
JERA、LNG事業における協力強化のためKOGASと覚書を締結
2026/03/14
株式会社JERA(以下「JERA」)は本日、日本と韓国のエネルギー安全保障の強化を目的として、韓国ガス公社(以下「KOGAS」)とLNG事業における協力強化に関する覚書(MOU)を締結したことを発表しました。
本覚書に基づき、両社はLNG輸送およびターミナル運営を最適化するための枠組みを構築する。協力分野には、需給動向の協議や、LNGターミナルネットワーク全体におけるポートフォリオの柔軟性と物流効率を高めるための貨物交換の検討などが含まれる。
JERAより
つまり、JERAのサイトを読む限り、本件は以下のような整理がなされている。
- 無駄を省くための交換: 船の経路最適化を図り、例えば、日本行きの船が韓国の近くを通り、韓国行きの船が日本の近くを通るような場合、荷物を入れ替えた方が燃料代や時間の節約になる場合に融通し合う
- 在庫調整の手段: 「タンクが満杯で船を受け入れられない」あるいは「急な寒波で在庫が足りない」といった場合に、お互いの船の行き先を融通し合うことで、ロスを防ぐというビジネス上の判断
つまり、有事における緊急対応を含んでいるようには読めず、物流・商業上の合理化に過ぎないと読める。
更にJERAは、「検討などが含まれる」と、かなり婉曲的な表現に留めている。
貨物交換が成立するのはビジネス上の利点がある場合のみ
JERAが覚書(MOU)を締結するにあたって「検討」に留めた背景には、韓国ガス公社(KOGAS)側の施設が貨物交換に足る規模かを疑っている可能性が高い。
日本は国内に100基以上のタンクを分散保有して、LNGの運用をしているが、概ね民間企業が運用するものである。JERAは東京電力と中部電力が共同で作ったエネルギー調達・発電の中枢企業ではあるが、民間企業であることには変わりない。
一方で、韓国のKOGASは公的な性質があって、韓国国内のLNGの取引をほぼ独占的に取り扱う組織である。JERAと同等の設備を持っていないのもそうだが、JERAとは組織の前提が違う。その辺り「利益に繋がるか」を慎重に見極めたいという意図があるのだろう。
つまり、日本のJERAと韓国のKOGASでは、
- 設備規模
- 運用思想
- 意思決定構造
いずれも前提が異なる。
この状況で無条件の「融通」を前提にするのは、ビジネスとして成立しにくい。
まとめ
韓国メディアの報じ方と日本側の温度差を中心に取り扱ったが、日本政府としては韓国政府がこの様な受け取り方をしているのだとしたら、しっかりと訂正しておくべきだろう。
日本経済新聞に対しても、釘を刺しておかねばならない。「中東情勢の悪化などで調達リスクが高まっていることに対応する。」は、どう見ても記者のお気持ちなのだから。
韓国では「マイナス通帳」という文化があって、今回のMOUがそれに繋がるような取り扱いが出来るものだと「誤解」させたなら、それは国益には繋がらないのだから。
であれば、日本政府としては、最初から誤解の余地を潰しておくべき案件だろう。



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