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国連総会、ついに「法の遡及」を踏み越える 問われる法治の原則

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外交
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国連総会の決議が、いよいよ危うい領域に踏み込んできた。

「奴隷貿易は人道への罪」賠償求める国連決議に日本棄権 107年前は人種差別撤廃リード

2026/3/27 12:05

国連総会は25日、過去の奴隷貿易を「人道に対する最も重い罪」と宣言し、賠償を求める決議を123カ国の賛成多数で採択した。米国、イスラエル、アルゼンチンの3カ国が反対した。日本は、長年にわたって奴隷貿易を行った歴史のあるポルトガル、スペイン、オランダ、英国、フランスなど51カ国とともに棄権した。

産経新聞より

この話は、結構ヤバい話で、法治国家であれば看過できない「法の遡及」が「人道」という言葉で糊塗されている、いわば情治国家へ続く道(判断)なのである。

「人道に対する罪」に騙されてはいけない

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奴隷貿易に反対

先ずは、どんな話かを整理しよう。

奴隷貿易は15~19世紀、欧州商人がアフリカ西岸で得た黒人を南米、北米大陸やカリブ海に奴隷として強制連行し、農園などで過酷な労働を強いた。1200万人以上が連れ去られ、1割以上が奴隷船で輸送中に死亡したとされている。

決議案はガーナが提出を主導。加盟国に対して、賠償に向けた誠実な対話に取り組むよう求めている。持ち出された文化財や美術品の返還も要求した。

産経新聞「「奴隷貿易は人道への罪」賠償求める~」より

決議に賛成した国(123カ国)

  • アフリカ諸国・カリブ海諸国: 過去の被害当事国として、謝罪だけでなく具体的な「賠償」を強く求める。

棄権した国(日本を含む主要先進国52カ国)

  • 日本、イギリス、フランス、ドイツなど:
    • 理由: 奴隷制が「人道に対する罪」であることは認めるが、「過去の行為に対して現代の国家が法的・金銭的な賠償責任を負う」という前例を作ることに強く抵抗
    • 日本政府は「文言に法的問題がある」として棄権

反対した国(米国、イスラエル、アルゼンチン)

ザックリ説明すると、奴隷貿易の話を蒸し返した国家がいたよということだね。棄権した国は、「奴隷制度は問題だった」「でも、賠償金はむり」という判断だ。

法治国家としての問題点

で、このロジックが問題で、決議を主導したガーナは、過去に奴隷貿易で搾取されたことについて「人道に対する罪」であるから、過去に遡って損害を受けた国家に賠償をしろという主張を行った。

まあ、法治国家であれば、この「過去に遡って」が如何にヤバい発言か分かるのだが、国際社会ではこの手の話はまあまあ起こりがち。

例えば、極東国際軍事裁判だが、この裁判は「裁判という名の吊し上げ」で、敗戦国の反論はほぼ受け容れられなかった。弁護すらしてもらえなかったのだから、裁判として呼ぶのも烏滸がましい。

そして、この時も、「平和に対する罪」「人道に対する罪」をあげつらったが、この罪状はニュルンベルク裁判(1945年~1946年)で定められた基準である。つまり、遡及法なのだ。

当時は合法であった手段が後に違法になった場合、その立法措置以降の行為が問題になるのであればともかく、立法前の事件に対する判断に適用されてしまえば、後からなんとでも違法性を問えるという、法的安定性を欠く結果となるため、法治国家ではこれを禁忌としている。

「平和に対する罪」や「人道に対する罪」に関していえば、成文法ではなく慣習法の世界で、「当時も問題視されていた」というロジックが確立されてしまえば、事後法だとはいわれなくなる。日本人としてはこの考えには激しく違和感をかんじるのだが、そういうもののようだ。

つまり、奴隷貿易が「人道に対する罪」にあたるとしても、賠償責任は問われないというのが法治国家としての考え方なのだ。最大遡って第二次世界大戦前までってことだね。

今の価値観で語ることの愚かしさ

そもそも、当時は奴隷貿易は違法ではなかったし、国家事業的な側面すらあった。それが良いか悪いかは、現代の価値観で判断すべきではないし、したところで、「今後はしないように」というしかないのだ。

当時は合法でも今は違法なことなんて、幾らでもある。それを「人道」という魔法の言葉で全て許容してしまうと、とんでもないことになる。

例えば、ロシア。現在進行形で人道に関する罪を犯し続けている犯罪国家ではあるが、歴史上はもっと凄惨な粛正をやっている。とてもではないが、今の価値基準で正視できるような歴史ではないのである。

例えば、支那。もう、残虐も残虐な世界観を持ち得る国家として有名である。当然、文化大革命とか、天安門事件とかを引用するまでもなく、過去に幾つもの民族を滅ぼしてきた国家である。

歴史的にヤバいことをやっている国家は、山ほどあるのだ。

だから、「人道に対する罪」などを持ち出すと、過去に遡って、何度でも賠償請求可能だし、国境を越えて賠償請求し放題になる。

日本は1919年のパリ講和会議で、国際連盟の規約に人種差別撤廃を盛り込む画期的な提案を行い、米国に阻止された歴史がある。

産経新聞「「奴隷貿易は人道への罪」賠償求める~」より

産経新聞はこんな風にまとめて、日本に対して人種差別に配慮しろという空気を滲ませたが、日本こそ極東軍事裁判の結果を受け容れてしまった愚を繰り返すべきではないのだ。

法治国家の最大の禁忌である、遡及的な法適用を容認すべきではない。

まとめ

人道に対する罪を遡及させると、現代に十字軍の亡霊が蘇ったり、マケドニアの王が蘇ったりするだろう。下手したら旧約聖書の時代からソドムとゴモラが蘇ることすら考えられる。もちろん、ナポレオンは訴追されるし、アーサー王だって訴追されるだろう。

織田信長も豊臣秀吉も他人事ではなくなってしまう。

それはもはや法ではなく、現在の価値観で過去を裁き続ける終わりのない訴訟空間だ。

この話は、そういう荒唐無稽な話なのだ。

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