ああ、なるほど?まあ、一理はあるんだけど。
「テスラやBYDの電気自動車、ガソリン税取れない」国民民主・玉木氏、暫定税率廃止主張
2025/5/6 13:12
国民民主党の玉木雄一郎代表は6日、東京都内で街頭演説し、所得税が発生する「年収の壁」の178万円への引き上げやガソリン税の暫定税率の廃止といった手取りを増やす経済政策の実現を訴え、夏の都議選や参院選での支持を呼び掛けた。
産経新聞より
そもそもね、この話はもうちょっと根本から見直すべき話だと思うんだ。
自動車産業を支える話
ガソリン税の話
先ずは、玉木氏が何を言っているのか整理しておこう。
自民、公明、国民民主3党の幹事長が合意しているガソリン税の暫定税率廃止については「時期が決まっていない。政府与党からは来年度や再来年度などいろいろな声が出てくるが、違う。やるなら今でしょ」と述べた。「50年前に決めたときは2年限定で、『道路を作るから増税させてくれ』と、当時贅沢品だった車を持っている自動車ユーザーにお願いしたのが、もともとの暫定税率のスタートだ。それがはや51年目。道路以外にもその税金を使いまくってきた」と批判した。
さらに玉木氏は、電気自動車(EV)大手の米テスラや中国の比亜迪(BYD)に言及。「テスラやBYDといったEVが出てきている。EVは1滴もガソリンを入れないから、テスラやBYDに乗っている人からガソリン税は取れない」と指摘した。そのうえで、「同じように走れば重量があるから道路を傷める。道路を改修・補修する負担はみんなで分かち合わないといけないが、今の制度のままなら、ガソリンを入れる車に乗っている人だけが負担をすることになる。税の公平性の観点からもおかしい」と述べた。
産経新聞「テスラやBYDの電気自動車、ガソリン税取れない」より
言っていることは間違っていないと思う。
- ガソリン税の暫定税率廃止を訴える
- 50年前に決めたときは2年限定で決定した
- EVからガソリン税をとれないのもおかしいよね
ガソリン税ねぇ。


色々不満はあるんだけど、そもそもガソリン税は老舗の旅館のように色々な税金が積み上がって4割以上の税金がかけられている。
嗜好品である煙草にかけられたたばこ税が65%~70%でトップ、次に高いのが酒税だが、これは品目によってはたばこ税より高く、例えばウイスキーなどは8割くらいが税金(アルコール度数の高さで税率が変わり、700mlで40度の商品だと37円×40度で1,036円の酒税がかけられるため、販売価格1,300円の約8割が税金という計算になる)となり、ビールなどは10%程度、日本酒やワインは1%、焼酎は乙類が27%、甲類が52%と様々である。
なお、これに消費税が加算されるので、税率は更に高くなる。
嗜好品なので仕方がないという割り切りをするというのなら、この次に高いガソリン税はそういう説明が付かない商品だ。寧ろ、生活必需品に近いガソリン、軽油、灯油などに高額税率をかけるのは明らかに悪手である。
暫定税率
そして、ガソリン税には上の図に示すように、ガソリンの原価82.29円であった場合に本来の28.7円に暫定税率の25.1円が上乗せされている。
この暫定税率分は、本来であれば1974年から2年限定の時限立法であり、すぐに廃止されるはずであった。ところが、政治家の都合で延期が繰り返される。
更に問題なのは、道路特定財源の話に関連している。本来、税金は受益者負担の原則から、道路利用者に負担して貰うのが原則である。そのため、道路特定財源はガソリン税や自動車重量税が財源として充てられていた。
ところが道路関係四公団が2005年に民営化された時、道路特定財源制度は廃止されるはずであったにもかかわらず、道路財特法の成立(2007年)によって2009年からは国費分が一般財源化している。
つまり何が言いたいかというと、暫定税率は既に建前が失われて久しく、ガソリン税に関しても本来一般財源化して使うというシロモノではなかった。
ガソリン税廃止なら…新潟県知事「埋め合わせを」 減収分123億円に上る
5/5 (月) 09:15
ガソリン税を廃止した場合、地方財政に影響が出ないよう国に対応を求めました。
ガソリン税には、本来の税率に加え、暫定税率としておよそ25円が上乗せされています。
新潟県の花角英世知事は暫定税率が廃止された場合、「県民の負担軽減となり、そのこと自体は望ましい」と話す一方で、県の減収分が123億円に上ることを明らかにしました。
KHBより
ところが、減収分が多額になるからと反対する勢力がいて、なかなか改善がみられない。尤も新潟県知事は暫定税率廃止そのもに反対している訳ではないので、その辺りは注意しなければならないが、減収する事実は事実として受け容れるしかない。
そもそも、地方行政は地方交付税交付金で不足分が補填されるため、一時的に困ることはあっても減ったから行政サービスが出来なくなる(一時的な凍結は有り得る)ことはない。一時凌ぎのために地方債発行の必要はあるかもしれないが。
だから、地方のことは気にせず廃止にしてしまえば良いと思う。減税によって経済が活性化することがあれば、その分税収が増えるのだし、その上で足りない分を補填で良いのでは?
二重課税
そもそも、ガソリン税は二重課税の疑いが濃い。
ガソリン価格の“疑問” 4人の専門家に聞く
2023年10月23日
1リットルあたり180円を超えたレギュラーガソリン価格。
9月に過去最高値を更新したあと、国の補助金延長によって値下がりを始めましたが、今も高値が続いています。
~~略~~
“二重課税”は、消費者側として納得しにくい面があるのは事実。ただ、こうした“二重課税”状態はガソリンに限ったことではなく、税体系全般に関する論点として議論する必要があり、簡単に結論が出せる問題でない。
その観点から、「二重課税廃止」は今のガソリン価格の高値に対する現実的な解決策とは言い難いと思う。
NHKより
ロジック的には、税金として課されるガソリン税や暫定税率、或いは石油石炭税、温暖化対策税が課税された上で、消費税がかけられている。
しかし、そもそも石油石炭税と温暖化対策税って別々にとって良いものなのか?という疑問はあるし、暫定税率は上に言及した通りおかしい。更にはガソリン税そのものの意義もおかしいのである。
別に税金をかけるなとは言わないが、税法を作った時の状況が変化したのであれば、法律を作り直して適切な形で課税し直すべきなのである。
そして、税金に対して課税するのは、原理的には二重課税になる。国税局は、これに対して、「課税資産の譲渡等の対価の額」に含まれるので、消費税を課すのは二重課税ではないなどという詭弁をしているが、これが許されるなら消費税に消費税をかけても同じ理屈が通用することになる。バカも休み休み言えよ。
そもそも、ガソリンに課税される税金は地方税と国税それぞれに分けられているのだけれど、それに纏めて消費税がかけられるのも理屈としてはおかしい。
課税資産の譲渡等の対価の理屈を持ち出すなら、最低限地方税まで。国税に国税を重ねてかけてどうするのだ。
自動車に対する課税
とまあ、そんな感じて国民民主党の主張はおかしい訳ではないのだが、そもそも日本では自動車にかかる税金が高すぎる。

自動車関係諸税としてはこんな感じの課税状態なので、なかなか購入する際にも維持する上でもコストがかかる。
アメリカ 自動車に25%の追加関税発動 日本に打撃も
2025年4月3日 20時22分
アメリカのトランプ政権は輸入される自動車に25%の追加関税を課す措置を日本時間の3日、発動しました。アメリカに多くの車や部品を輸出する日本の自動車産業への打撃となるだけでなく、世界経済への大きな影響が懸念されます。
NHKニュースより
アメリカは自動車の輸入に関して25%の追加関税を課すという方針であり、日本の基幹産業である自動車産業に多大なダメージが予想される。
政府はまさか基幹産業が打撃を受けるのを無視する気だろうか?外交努力だけで何かが緩和できるわけではあるまい。
自動車購入時に課される税金体系を見直し、日本国内における新車販売価格を下げることができれば、自動車産業への後押しに繋がるハズだ。それくらいのことはやれば良いのである。
車検の際に多額の税が徴収されるのもどうかと思う。民間の産業が盛んになるように調整する一方で、課税は出来るだけシンプルに、無駄は削るべきだ。
減税と税収は別に考える必要が
減税する話をすると、財源の話を唐突にし出したり、行政サービスが悪化すると激高するのだが、それはまた別の話。
トヨタやホンダが業績悪化したら、お膝元の愛知県豊田市や東京戸港区の財政が一気に悪化するよ?あ、ホンダはどちらかというと、埼玉県の寄居工場、狭山工場、鈴鹿製作所のある都市の税収に響くのかも知れないけれど。
財務省は抵抗するだろうけれど、恒久財源としてトヨタ、ホンダ、ニッサン、スズキ、マツダなど各社の業績は大変重要だろう。そして、日本国内における自動車販売台数は減少の一途を辿っている。

だからこそ、自動車会社は海外への販売台数を伸ばす傾向にあるのだが、国内の状況が更に悪化すれば業績は当然に悪化する。海外販売分の全てを国内で補填するのはどだい不可能ではあるが、焼け石に水でも国内の需要が高まった方が良い。
財務省は「そんなことは別の省庁が考えることだ」と突っぱねそうだが、だったら経済産業省が財務省に圧力をかけるべきところで、目先の利益よりももっと大きな絵を描く仕事をするのは政治家の役割である。
そして、玉木氏の議論はそういう意味ではちっちゃい議論なのだ。
えぇ?ガソリン税の話と、自動車産業の話は無関係だ?
それはその通りなのだが、直接的な関連性が薄いのであって因果関係はある。なにしろ、日本は未だ当面ガソリン車が優勢なのだから。そして、EV化はそういう意味でも悪手なんだよねぇ。
将来税制を含めて、日本の自動車産業の在り方を考えるべき時に来ていて、ガソリン税の話もそこには大いに関係する。EVにガソリン税は関係ないからね。
コメント