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ハンガリーのスパイ網がウクライナに浸透していたことが発覚

東欧
この記事は約7分で読めます。

あまり騒がれていないのだが、結構大きなニュースであると思う。

ウクライナ、ハンガリーのスパイ網を摘発と発表 国境地域で活動か

2025.05.10 Sat posted at 15:30 JST

ウクライナは9日、ハンガリーのスパイ網がウクライナの国境地域で国防上の機密を入手すべく活動しているのを把握したと明らかにした。こうした活動の発覚をウクライナが発表するのは初めて。

CNNより

ハンガリーはオルバン氏が首相をやっていたんだっけ。

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ハンガリーのスタンドプレイ

独特な立ち位置のハンガリー

先ずは、ハンガリーについて少し。

ウクライナと国境を畝するハンガリーだが、首相をしているのはオルバン氏。

ハンガリーがEU議長国に オルバン首相の動向に注目

公開:2024年7月3日(水)午後5:28

7月からEU(ヨーロッパ連合)の議長国を務める一方、ウクライナ支援に反対するなどロシア寄りの姿勢を示しているハンガリーのオルバン首相がロシアによる軍事侵攻後初めてウクライナを訪問しました。会談したゼレンスキー大統領がEUによる支援の継続の必要性を強調した一方で、オルバン首相は、一時的な停戦と和平交渉の開始を検討するよう促したことを明らかにしました。

NHKニュースより

オルバン氏は右派政党を率い、2010年から首相を務めている人物であり、ポピュリズム政策を次々と打ち出している。移民に頼らない人口増加を重視し、少子化対策をする一方で反LGBT政策を打ち出す姿勢には共感できる部分もあるんだけど、ロシアと支那に擦り寄っているんだよね。

どちらかというと、独裁国家を目指す傾向にあるのが現在のハンガリーだ。

そして、ウクライナ支援に反対し、ウクライナのEU加盟にも反対している。どうやら、ロシアや支那、あるいはトルコに準じた非自由主義的な国家をハンガリーに建設することを目指している(本人談)らしいのだ。

平和の使者?

長らく首相の座に留まっているようだが、結構な勘違いヤローのような印象を受ける。

ハンガリーのオルバン首相、計画なき自己流の「平和の使者」に

2024年7月13日

ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相は、独自の平和案を持たないまま、ここ2週間というもの、キーウ、モスクワ、アゼルバイジャン、北京、ワシントン、さらには米フロリダ州のマール・ア・ラーゴまで、矢継ぎ早に歴訪して回った。その単独の行動に、欧州連合(EU)やアメリカの首脳たちは激怒している。

「ロシアとウクライナの戦争は、放っておいても平和は自然と実現するというものではない。誰かが平和を作らなくてははらない」。オルバン首相はフェイスブックに連日投稿する動画で、こう繰り返している。

オルバン氏はEUと北大西洋条約機構(NATO)の結束を破り、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領や中国の習近平主席にすり寄っていると、EU首脳部とアメリカ政府はどちらも、その行動を厳しく非難している。

BBCより

スタンドプレイがお好きなようだが、アメリカやEUからは批判の声が挙がっているようだ。

アメリカはあまり感心しなかった。

「ウクライナの主権を尊重する必要があり、ウクライナの領土保全を尊重する必要があると、ロシアに明確に示すための、中身のある対ロ外交はもちろん歓迎する。しかし、今回の訪問はまったく、そういうものではなかったようだ」と、米国務省のマシュー・ミラー報道官は述べた。

BBC「ハンガリーのオルバン首相、計画なき自己流の「平和の使者」に」より

中道左派政権が権力を掌握していたハンガリーにとって、オルバン氏が首相になったことで右派政権の誕生として国内からは歓迎されたようだが、ここのところ景気が後退していてオルバン氏の権力にも陰りが見える。

ハンガリーの貿易投資年報

2024年9月25日

  • 2023年の実質GDP成長率はマイナス0.9%と2年連続のプラス成長から転じた。
  • 貿易収支は道路走行車両や電気・電子機器の輸出増加で、91億7,300万ユーロの黒字。
  • 対内直接投資は中国が最大の投資国。
  • 対日貿易は輸出入ともに増加、輸出は通信・録音機器、輸入は道路走行車両が大きく伸びた。
JETROより

ハンガリーは2004年にEU加盟を果たし、それ以降、安価な労働力と公共事業投資が行われることで、一貫して経済は上向きであった。法人税率が低く、投資誘致政策を推進していたことで、外資の流入が起こっていたためである。

特に支那や韓国からの投資を多く受け容れていて、EV関連企業の誘致を積極的に行っていたことが近年まで好景気を牽引する理由になっていたらしい。

ただ、現在は20%前後のインフレが起きていて、賃金上昇の速度が速まっていただけに、ここのところハンガリーのアドバンテージは失われつつあるようだ。オルバン氏の支持が低下している背景には、そういった事情があるらしい。

スパイ摘発

そういった状況のハンガリーがやらかしていたというのが、冒頭のニュースである。

ウクライナ保安局(SBU)は、ハンガリーの特殊機関要員2人を拘束したと述べた。2人はハンガリー軍諜報部に報告を行いつつ、国境を接するウクライナ南西部ザカルパート州の防御の脆弱性を探っていたという。

SBUは声明で「現在包括的な措置を講じ、ハンガリーの諜報網に属する全員を裁きにかけようとしている」と述べた。

この知らせに端を発し、9日は外交上の応酬が繰り広げられた。

上記の拘束を受け、ハンガリーは首都ブダペストにあるウクライナ大使館の職員2人を追放。シーヤールトー外相は自身のフェイスブックへの投稿で、スパイ2人が「外交を口実に」大使館で活動していたため退去を命じたと明らかにした。

この後、ウクライナは自国に駐在するハンガリー大使を召喚し、外交官2人に対して48時間以内の国外退去を命じた。

CNN「ウクライナ、ハンガリーのスパイ網を摘発と発表」より

ウクライナ国内でハンガリー諜報部に関連するスパイ2人を摘発、外交官2人を国外追放する事態に発展した。

下手をすると戦争開始である。

シーヤールトー外相はX(旧ツイッター)への投稿で「過去3年で明らかになったように、ウクライナでの戦争は戦場だけでなく情報空間でも繰り広げられている。反ハンガリー的プロパガンダが一切の根拠もなく頻繁に利用されている」と主張。「我々はハンガリーを戦争に引きずり込みはしていないし、今後も引きずり込むつもりはない。まさにそのために、我々は標的にされ続けている」との見解を示した。

CNN「ウクライナ、ハンガリーのスパイ網を摘発と発表」より

うーん、ハンガリー外相の指摘に一理はあるのだが、「反ハンガリー的プロパガンダ」とは。

ウクライナの政治が腐っていて、汚職が蔓延。そしてロシアに擦り寄って行こうというところに登場したのが、コメディアンから大統領になったゼレンスキー氏である。ウクライナの山本太郎と揶揄されるだけあって、パフォーマンスには定評があるが、政治手腕はかなりアレである。実際、開戦前の支持率は絶望的な低さになっていた。「アイツは何も出来ない」と。

そんなわけで、ウクライナが善なる者と言うつもりは毛頭ないのだが、しかしハンガリーがそうかというと……、オルバン氏の動向を見て分かるようにかなりのコウモリヤロウである。言ってみれば、こちらはヨーロッパの韓国といった位置付けだろうか。

おそらくはロシアの工作員になっていたハンガリー出身のスパイがいたというのは、疑いようのない話で、その規模がかなり大規模であったというのが今回のニュース。外交官もスパイ行為に荷担していた疑いが強いのだ。

ウクライナのSBUはハンガリーのスパイについて、軍の安全保障に関する情報収集と住民の認識の調査を担っていると指摘。この他、ハンガリー軍がザカルパート州に侵入した場合の「行動シナリオ」の検証も行っているとした。

CNN「ウクライナ、ハンガリーのスパイ網を摘発と発表」より

下手するとハンガリーはロシア側で参戦する可能性すらあった。

外交官の追放合戦に

なお、事態は緊迫しているようで、ハンガリー側も報復に動いたようだ。

ウクライナ、ハンガリーのスパイ拘束 互いに外交官追放

2025年5月12日午前 11:36

ウクライナ保安庁(SBU)は9日、ハンガリー情報機関の工作員となりスパイ活動を行っていたとして、元ウクライナ軍人の2人を拘束したと発表した。

ハンガリーのシーヤールトー外相はウクライナによる「プロパガンダ」だと反発し、「ブダペストのウクライナ大使館で外交官を装って勤務するスパイ2人」を国外追放したと発表。

これを受け、ウクライナのシビハ外相はハンガリー大使を呼び出し、大使館員2人を48時間以内に国外退去させるよう要求した。

ロイターより

ハンガリー諜報機関の工作員をやっていたのが元ウクライナ軍人だったという衝撃の事実が報じられているが、このニュースではハンガリーからウクライナの外交官(を装ったスパイ)を国外追放したと報じている。

そして、冒頭のニュースにも書かれているが、ウクライナからハンガリーの外交官を国外追放している。

SBUによると、容疑者2人を指揮していたのはハンガリー軍情報部門の将校。2人はウクライナ南西部ザカルパチア州における同国の防空システムなど軍事能力の詳細を伝えるのが任務だったという。

ロイター「ウクライナ、ハンガリーのスパイ拘束」より

世界のあっちこっちで、きな臭い空気が感じられる。

コメント

  1. 匿名 より:

    オーストリアもハンガリー同様にEU加盟国なのにロシア寄り

    • 木霊 木霊 より:

      オーストリアは、確かに。
      とはいえ、そろそろ「ロシア寄り」の立ち位置を維持するのはキツくないっすかね、関係各国がどのような判断をするのかは興味深いところ。

  2. 山童  より:

    オルバンはねぇ……木霊様評価の「まんま」なんてすけれど。その方針に賛成なものはあるんだけど……何をしたいのか?
    いやシナやロシアと組んで枢軸国に入りたいなら、そういう方向で国民を説得してきけば良いのに。やる気配ないでしょう?
    こう、旗色がネズミ色というかコウモリ色というかキムチ色というか。
    この手のタイプは独断専行できる権力者である所に意味かある。
    「半端な壊し方ならやるな!」というのが、彼のよくわからない「ハンガリーの立ち位置」なんですね。

    • 木霊 木霊 より:

      オルバン氏、やる気は感じられませんね。
      もうちょっと色々調べて見たい面白そうな人物ではありますが、所詮小者。地政学的に最適な選択をしているのかは不明ですが、印象的にはあまり優れた政治手腕は感じられません。

  3. 砂漠の男 より:

    ハンガリーやスロヴァキアあたりの欧州内陸部は、ウクライナ戦争のあおりで、天然ガス不足に陥っていましたけど、解決したんでしょうか。
    ドイツのSEFEがロシアの幽霊船団を使って、しこたまロシア産LNGを輸入していますから、購入は出来ると思うのですが。

    • 木霊 木霊 より:

      天然ガス……そういえば。
      そういった切り口でも、少し追いかけてみたいと思います。

      • 砂漠の男 より:

        因みに、オーストリアは昨年新たなガス田を発掘して鼻息荒いみたいです
        https://forbesjapan.com/articles/detail/64950

        オーストリアって、小ながら天然ガスの輸出国なんだそうで..(70へぇ)
        昔の誼で、ハンガリーも恩恵に預かれるのかも

      • 砂漠の男 より:

        アー、スミマセン。
        ↑の記事は一昨年の記事で、↓の記事と取り違えていました。
        折角なので、合わせてご参考にしてください。

        オーストリアの総合エネルギー企業OMVは、国内の天然ガス田発見に続き、
        ノルウェー沖でも大規模天然ガス田を発見
        https://tinyurl.com/46xzhkus

        • 木霊 木霊 より:

          おー、ありがとうございます。
          オーストリアのガス田開発ですか、なかなか。
          地理的なアドバンテージが得られた話なんですが、これの開発が本当に出来るのかはまた別の話なのでしょう。何処まで本気でやれるのか?という感じですね。

  4. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >オルバン氏は(略)ロシアと支那に擦り寄っている
    朱に染まれば赤くなる、ですね。
    ……元からか?

    >ハンガリーは2004年にEU加盟を果たし
    獅子身中の虫ですね。
    ……獅子か?

    地理的に、ウクライナにとってハンガリーから攻められるのは非常にキツいので、先手を取って出鼻をくじいた感があります。
    というかあのあたりは、南北に見てみると、フィンランドとバルト三国、ポーランドまでは良いとして、そこからトルコ・ギリシャまでの間はイマイチ信用おけない感じですからね……

    EUとしても、腹くくる(各国の旗色を明らかにする、いろんな意味で内部で綱紀を改める)時期に来てるんじゃないかな?って思いますが、さて、EUのエラい人的にはどう思ってるんでしょうね?

    https://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/international/spw/general/eu/images/figure01_eu_b.jpg
    国土交通省の「各国の国土政策の概要」より
    https://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/international/spw/general/eu/index.html

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      登場時点では随分と保守よりの設定だったんですが、今や独裁よりですからどちらかというと、紅い国家と親和性が高い感じですね。
      ウクライナにとっては挟まれてはたまらないし、国内で野暮やって貰っては困るということなのでしょう。
      EUは本当に態度をハッキリしろと。