前大統領のユンユンは、大失敗した戒厳宣言を行ったのだが、あれ、あと一歩のところで成功した可能性はあった。共に民主党としては、それは脅威だったらしい。
戒厳時に軍・警察の国会立ち入り禁止へ 戒厳法改正案を可決=韓国国会国防委
2025.06.25 17:14
韓国の国会国防委員会は25日、「非常戒厳」宣言後の軍や警察の国会への立ち入りを禁じる内容の戒厳法改正案を可決した。
聯合ニュースより
で、戒厳法を改正することにしちゃった。
何のための改正なのか
骨抜きになった戒厳令
なるほど、どんな内容なんだろうか。
改正案には、非常戒厳の宣言後に国会議員や国会に所属する公務員が国会に出入りしたり会議を行ったりすることに対する妨害を禁じ、国会議長の許可なしに軍や警察が国会に立ち入れないようにする内容が盛り込まれた。また、これに違反した者に対する罰則も新設された。
国会が非常戒厳の解除を要求するために本会議を開催する場合、現行犯逮捕された国会議員も会議に出席できるようにする内容も含まれた。
また、改正案は非常戒厳の宣言について閣議で審議する際に議事録を作成し、国会に通知する際に提出するよう定めた。
国民の基本権保障を強化するため、現行法で明示された戒厳司令官の特別措置権の対象から「居住・移転」を削除したほか、非常戒厳の解除後に軍事裁判所の裁判権を1カ月延期できる権限も削除した。
聯合ニュース「戒厳時に軍・警察の国会立ち入り禁止へ」より
ええと、なかなかすごいな。
- 非常戒厳の宣言後、国会議員や国会に所属する公務員が国会に出入りしたり会議を行ったりすることに対する妨害を禁じる
- 国会議長の許可なしに軍や警察が国会に立ち入れない
- 本会議を開催する場合、現行犯逮捕された国会議員も会議に出席できる
- 非常戒厳の宣言について閣議で審議する際に議事録を作成し、国会に通知する際に提出するよう定めた
国会議員の権限がかなり強化されたようで。
要は、国会議員の仕事を邪魔してはいけないという特権を与えたような感じなんだけど、これって平時も似たような格好になっている。国会議員には、それほど強い特権が与えられているわけである。
ところが、戒厳令が出された状態では何を求めているのかというと、非常時だからとにかく権限を集中させて判断を早くしようという事をやりたい。そのためには国会議員は邪魔だから排除したいということになる。
非常時に議会機能を残してしまうと、反対派がこぞってご活動するので話が進まないという状況を招く。今回の改正法の恐ろしいところは、そこを総て覆すものになっている。
それどころか国会の権力強化を図る
平時において、国会議員は強力な権利を持ちつつもそれなりの制約を受けるものなんだけれども、今回の改正案では相対的に国会議員の権力強化を図った。
58件の戒厳法改正案を発議した韓国野党、一体何が気になっているのか【コラム】
2025/02/07 07:05
昨年12月3日以降、野党は戒厳法改正案を58件も発議した。国会議案情報システムに登録されたものだけで、この数だ。第一の骨子は、「戒厳」を大統領ではなく事実上国会が宣言・解除できるようにしようというものだ。「戒厳の宣言は国会の事前同意を経ること」「国会への通告に問題があった場合には、戒厳を無効とする」「国会が解除を議決すれば国務会議(閣議)の審議を経ずに即座に(戒厳解除を)履行する」などだ。戒厳は形式的には大統領の権限だが、実際には事前・事後の手続きにおいて国会が全権を握れるようにするというわけだ。
第二の骨子は、いかなる場合でも国会議員には指一本触れさせないようにしようというものだ。幾つかの改正案を見ると「戒厳令下でも殺人・暴行などの現行犯でない限り、国会議員を逮捕することはできない」「議員や一般国民の国会への立ち入りを禁止することはできない」「戒厳解除の議論が行われる際には、逮捕・拘禁された議員も会議に出席できる」「大統領と戒厳司令官が国会の機能を妨害できないよう、明確に規定する」などの内容が含まれている。極端に言えば、国会議員が殺人を犯しても、戒厳解除を議論する本会議には出席できるようにしようということだ。
朝鮮日報より
こちらのコラムは2月のものだが、この頃から色々と戒厳令について改正しようと画策はしていたようで。
今回改正した部分は、この頃にほぼ網羅されているように思える。
大統領に対する裁判所の内乱罪裁判や憲法裁判所の弾劾審判で、事実上の検事の役割を果たす野党の立場から見ても、法律の解釈や手続きにおいて何か釈然としない点があったため、事後的な対応として大量の戒厳法改正案を提出したのではないか。憲法77条第3項と戒厳法第9条に明記された特別措置権について、野党側の法曹関係者も「あっ」と思ったのだろうか。野党は「今後このような戒厳が二度と起こらないようにするための立法措置だ」と言うだろうが、裏を返せば、現行の憲法・戒厳法・刑法では大統領を断罪するには議論の余地があることを自ら認める反証になっているのではないか。
朝鮮日報「58件の戒厳法改正案を発議した韓国野党」より
そしてコラムが指摘する通り、「戒厳令出されたらやばいね」と思えるポイントがあったからこそ色々手を入れたのだろう。
ただ、もはやこの頃には大統領選挙で勝つ見込みが高かったはずで、与党になることも想定していたはずだ。
そして与党になっても似たような内容の法律を通したというのが、答えなのでは?とは思う。つまり、与党にいても野党にいても議員の立場で大統領に対抗できる法律にしたかったということなんだと思う。
国民の基本権保障
更にこんな所にも手を入れちゃった。
国民の基本権保障を強化するため、現行法で明示された戒厳司令官の特別措置権の対象から「居住・移転」を削除したほか、非常戒厳の解除後に軍事裁判所の裁判権を1カ月延期できる権限も削除した。
聯合ニュース「戒厳時に軍・警察の国会立ち入り禁止へ」より
ちょっと何がしたいのか良くわからない。
ただ、これをやってしまうと不法占拠などに対処するためにも法的手続きの手順を踏む必要があるので、実質的な戒厳令の弱体化には繋がると思う。
軍事裁判所の裁判権の狙いはちょっとよくわからないのだけれど……。ChatGPTに調べてもらったら、どうやら「軍が一般市民を軍事裁判にかけることが可能」ってところがポイントのような感じだ。「非常戒厳の解除後に軍事裁判所の裁判権を1カ月延期できる権限を削除」というのは、そういう意味では妥当なのかもね。
韓国大統領選の最有力候補、戒厳令発動を困難にする憲法改正提案
2025年5月30日午後 4:32
韓国大統領選(6月3日投開票)の最有力候補である革新系野党「共に民主党」の李在明氏は30日、尹錫悦前大統領によってもたらされたような政治危機を防ぐため、戒厳令の発動を一層困難にする憲法改正を提案した。
ロイターより
多分、ミョンミョンは戒厳令法そのものを無くしたいんだろうね。ただ、憲法で規定されているのですぐには無くせない。だから、先ずは無力化する方向性で改正しているんだろう。
確かに、韓国の戒厳令の法律構成はかなり大統領に大きな権限を付与していた側面が強く、そういう意味での戒厳法改正による大統領権限の弱体化というのには一定の理があるようにも思われる。
しかしながら、それは国会が正常に機能するという前提があるわけで、そもそも正常な国会でなかった韓国の実態は改められないままである。国会の暴走は止められない状態のままで、なおかつ国会機能が麻痺して大統領だけが生き残っても権原を代行できなくなってしまったのが今回の法改正の実態でもある。
戦争中の国なのに、呑気な話だな。
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