ここのところ、この手のニュースが急に増え始めたね。
習近平の「鉄道崛起」は巨大なブラックホール、判明した負債は1兆4600億ドル
2025/06/25 08:03
過去およそ10年の間に雨後のたけのこのように増えた中国の都市地下鉄が、地方財政を圧迫する巨大なブラックホールになった…という報道が中国国内で相次いでいます。
朝鮮日報より
支那の鉄道事業がやばいことは何年も前から分かっていた話で、何故、今になってそんなニュースが色々出てくるようになったのだろうか?
最初から無理だというのは分かっていた
高速鉄道がもはや壊滅的
何度か触れている話で、端的な記事はこちら。
去年5月の記事だが、この時は高速鉄道の94%が赤字路線だったという話であった。支那高速鉄道は、北海道と同じで営業距離がやたらと長い割に利用客が少ないという問題があって、保線などには天文学的な維持費がかかる。
そして、こちらの記事でも触れたが、政治的理由でやたらと駅が作られる。にも関わらず利用者は増えないという悪循環である。
利用料金を上げるという話もあるのだが、かなり格安に設定している高速鉄道の値上げをすれば、金持ちだけしか利用できなくなってしまい更に収益性は悪化する。
本来であれば、都市間の高速移動などに使うか、貨物輸送のために鉄道を作れば良かったのだが、そうはならなかった。高速鉄道の建造技術は多少上がった為にインドネシアへの輸出を成功させるなど、成果がなかったとは言わないが、収益化するとは思えない。
未だに路線拡大の方針が掲げられているが、現状維持を続けても赤字を垂れ流すような状況なので、泥沼状態が続くのは避けられない。
地下鉄事業は
では、地下鉄は?というのが本日のテーマである。
昨年は深センで7.7兆ウォン(現在のレートで約8100億円。以下同じ)相当、北京で4.1兆ウォン(約4300億円)相当の赤字になるなど、経営実績を公開している28都市のうち26都市が大規模な赤字を出しました。29都市の地下鉄の負債規模も、2023年末現在で4兆3000億元(約87兆円)になりました。
朝鮮日報「習近平の「鉄道崛起」は巨大なブラックホール」より
当然赤字になる。
何しろ、首都北京の地下鉄ですら赤字垂れ流し状態なのだから、地方都市で黒字化するわけもない。その理由についてはこのように言及されている。
中国は、全国55の都市が地下鉄を運営していますが、このうち1キロ当たりの1日利用客数が1万人を超えて重要が十分にあるところは北京・上海など7-8カ所に過ぎないといいます。にもかかわらず、各都市は巨額の資金を投じて地下鉄を建設しました。
朝鮮日報「習近平の「鉄道崛起」は巨大なブラックホール」より
北京や上海は1日利用客が1万人を超えているとか、それでも赤字なんだそうな。
赤字体質になる理由
更に不穏な話が書かれているが、北京の地下鉄についてもう少し掘り下げよう。
中国26都市の地下鉄が巨額赤字に―香港メディア
2025年6月3日(火) 17時0分
2025年6月2日、香港メディア・香港01は、中国本土の26都市で地下鉄が巨額の赤字を抱えていると報じた。
記事は、重慶市で先月29日に公聴会が開かれ、05年の開通から20年間2元(約40円)だった地下鉄の初乗り運賃を3元(約60円)に引き上げる提案が示されたと紹介。この20年で営業距離が13キロから約500キロに拡大したのに伴い運営コストも増大しており、23年は総収入30億元(約600億円)に対して運営コストが111億元(約2200億円)に上り、政府補助金の約43億元(約860億円)を差し引いても巨額の赤字が残る状態に陥っていると伝えた。
RecordChinaより
実は、北京地下鉄の初乗り料金は3元(約60円:6kmまで)で、段階的に4元(6~12km)、5元(12~22km)、32kmを超えると20kmごとにプラス1元という価格設定である。東京メトロは6kmまでで170円の設定で、大阪が190円(3kmまで)、名古屋が210円(3kmまで)、ワシントンDCは距離にかかわらず最初の数駅が2.25USD(350円程度)なので、圧倒的に安いことが分かる。
なお、何れの地下鉄事業も赤字だった時代があり、運賃の値上げなど営業努力によって黒字化を果たしている状況にある。
当然、支那の地下鉄利用料金は激安設定なので、黒字化するわけもない。2014年12月まではどこに行くにも一律2元だったが、それはあまりにもということで運賃改定はなされた。でも、相変わらず格安で、かつ支那全土で似たような料金体系が維持されている。地域性すら加味せずに安値の営業運転を続けているのだ。
だが問題はそれだけではなく、今なお路線拡大を際限なく続けている状況なのが問題なのだ。当然、路線を伸ばせばそれだけコストがかかるわけで。
その上で、地下鉄の建設費用が1キロ当たり5〜10億元(約100〜200億円)かかると言われ、人件費の上昇に伴って日常的な運営コストも高まっていることが各地の地下鉄経営を圧迫していると伝えたほか、1日の旅客輸送密度を1キロ当たり7000人以上とする国務院の要求を満たしている都市はわずか17都市にとどまっていることを指摘した。
RecordChinaより
建設コストが延々増え続ける状況で、かつ運賃を格安に設定しているので、利益が出るわけがない。ただし、北京はそれでも首都であり利用者増加が継続的に見込めるからまだマシな状況で、上海をはじめとした地方都市でそれなりの人口密度を維持しているところですら、巨額の赤字を抱える状況は同じである。
そこに拍車をかけたのが不動産乱開発であり、採算の取れる見込みのない都市建設をやったばっかりに負債ばかり膨らむ始末。
中国の地方政府は、政府所有の土地を不動産開発業者に売ることによって財政の半分を賄います。地下鉄の路線を新設して駅勢圏周囲の土地を高く売れば十分だ、と考えたのです。ところが不動産バブルがはじけたことで、状況は変わりました。地方政府は土地売却収益の急減のせいで、ただでさえ財政状況が厳しいのに、地下鉄維持のために巨額の補助金まで支払わなければならない状況に直面しました。
朝鮮日報「習近平の「鉄道崛起」は巨大なブラックホール」より
ついには赤字に耐えられずに営業をやめるところもチラホラと。
報道が出始めた
というわけで、悲惨な状況を伝えたわけなんだけれども、こんな話はさほど珍しい話でもないし、今に分かった話でもない。
北京の地下鉄事故に関する記事だが、なかなか酷い事故だったようだ。詳しい状況の分析などは結局報じられず終わってしまったが、状況的には雪が降ってきた中、鉄道の地上区間でブレーキ関連のトラブルがあったということで。
しかし、日本の地下鉄であれば、まずこんなことは起こり得ない。自動ブレーキシステムなど安全に関わるシステムが導入されていることもあるが、何より天候の影響によって鉄道運行の停止が徹底されているため、早めに対処し、安全が確認されてから運行が再開されるからだ。
そのような運行をするためには、十分なリソースが必要となるのだが、おそらくはそこが支那地下鉄の一番のネックになっているのだと思われる。つまり、資金繰りが厳しいので安全面が疎かになっているということだ。
そして、北京の地下鉄ですらこれだということが問題である。
でも、そういった話は今までは殊更大きくは報じられなかったのだが、ここへ来てEVの話や二次電池の話。そして鉄道の話などが取り上げられるようになってきた。そして、これが尽く習近平氏が力を入れて推進した政策だったというところがポイントである。
やや陰謀論めいた結論に着地するのは申し訳ないのだが、最近似たような記事を幾つか書いた。
一つ一つはこれまで説明したので取り上げないが、これらの話がどこに繋がっていくのかというと、こちらである。
今年の夏か、秋頃までに習近平氏は失脚させられるのではないか?というシナリオが囁かれるようになったが、本格的にどうにも危うくなってきた気がして仕方がない。
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