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追い込まれるロシア経済

ロシアニュース
この記事は約7分で読めます。

ウクライナ側は辛くないかと言えば、そんなことはない。だが、ロシアは支援してくれる国が少ないので、あれだけの大国とはいえ流石に追い込まれている。

ロシアで未払い賃金急増 1年で3倍超 高金利で企業の資金枯渇、深まる景気後退の兆候

2025/7/1 08:45

ロシアで企業による従業員への賃金未払いが拡大している。5月の未払い賃金は計約16億6千万ルーブル(約30億5千万円)に上り、1年前から3・4倍に増加した。

産経新聞より

「大国」と表現したが、面積が広いだけで経済力は韓国と大差ないんだけどね。

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戦争経済は続けられない

企業継続が危うい

参考までにGDPランキング2024年版を紹介しておこう。

ロシアはGDPランキングで世界11位。韓国経済が凹んでいるのでそこそこ差があるように見えるが、規模は似たようなものだ。国土面積に見合わない経済規模ではあるが、それでもまあまあ善戦している理由は、鉱物資源が豊富に採掘できるからである。

とはいえ、以前も指摘したが政策金利を高水準に維持してきた為に、流石に経済は疲弊する。

よくもまあ20%維持を続けるモノである。維持せざるを得ない事情があるとはいえ、あんまりだ。

去年辺りはメディアが「ロシアは好景気に沸いている」みたいな記事を書いていたが、バカも休み休み言えよと突っ込みをいれた。あの頃ですら既に苦しかったのだ。

だが、とうとうトップも「チョット苦しい」と漏らしたというのが冒頭のニュースである。

主な要因は、ウクライナ侵略を背景として露中銀が設定してきた20%以上の政策金利により、利子の支払いに追われて手持ち資金が枯渇する企業が増えていることだという。未払い賃金の増加は景気後退の兆候といえ、プーチン政権は危機感を募らせている。

産経新聞「ロシアで未払い賃金急増」より

で、その高金利政策を続けると、企業の資金繰りが悪化する。お金を借りて事業継続する時に、借りた分の金利以上の儲けが出ないと苦しいと、そういう理屈だ。

未払い賃金と需要増

当然、儲けを出せないと賃金が支払えないのだが、高金利なので銀行から借りて賃金を支払うという一時凌ぎも難しい。

インタファクス通信によると、露統計当局は6月25日、5月末時点の未払い賃金額を発表。企業の未払い賃金は4月から約1億8千万ルーブル増えて計16億6120万ルーブルとなった。業種は建設業が46・8%で首位。以下は製造業(11・5%)▽水処理・ごみ回収業など(9・3%)▽不動産業(7・6%)-と続いた。賃金未払いの主な理由は「企業の自己資金不足」だという。

産経新聞「ロシアで未払い賃金急増」より

特に建設業界がキビシイようなのだが、これは建設資材の高騰が原因だろう。

ロシア、24年は4.3%成長に上方修正 建設部門が大幅伸び

2025年4月14日午後 2:53

ロシア連邦統計局(ロスタット)は11日、2024年の国内総生産(GDP)伸び率を従来の4.1%から4.3%に上方修正した。第4・四半期の成長率が4.5%に上方修正されたためという。

24年のGDPは201兆2000億ルーブル(2兆4100億ドル)だった。

修正の一因として、建設部門の成長率推計が2.5%ポイント引き上げられて4.2%になったことを挙げた。

ロイターより

こういった記事を見ると、ロシアの建設業界って好調なのでは?と勘違いしてしまう。しかし実態は資材高騰と人手不足が原因で賃金が増えており、使用者側は儲からない構図になっている。

戦争で建物が破壊されるので、需要は加速度的に増えてそれに対応出来ない建設業界が金払いの良いところに優先的に仕事を熟すので、結果的に単価が上がると。碌なものではないね。

こういった構図は、建設業界だけではないようだが。

インフレ抑制

そもそも、高金利を継続する理由は、国内経済がインフレ気味なのでその影響を軽減させるためだとしている。

23年夏以降の利上げはインフレ抑制が目的だ。この時期、ロシアでは軍需産業の活況に伴う人手不足を受けた賃金増や、欧米による「制裁逃れ」対策の強化に伴う物流の複雑化などで毎年10%程度のインフレが進行。政権側はインフレが国民の不満を強め、ひいては軍事作戦への支持率を低下させる事態を危惧した。

産経新聞「ロシアで未払い賃金急増」より

しかし、インフレは需要と供給のバランスが崩れて発生しており、完全に供給側が追いつかない状況にあるので、多少金利を上げたくらいでなんとかなる訳がない。

そこで20%という高金利を設定したことで、物価高騰を押さえ込んでいる。

(図表1)ロシアの消費者物価上昇率/(図表2)ロシアのインフレ率

とはいえ、中身は然程褒められたものではない。

インフレ率を大分類別に見ると、4月の前年比伸び率は食料品が12.66%(前月:12.42%)、財(非食料品)が5.43%(前月:5.93%)、サービスが12.76%(前月:12.87%)となり、食料品は上昇したものの、非食料品の財やサービスは低下した。

前年比寄与度では食料品が4.9%ポイント程度、財(非食料品)が1.8%ポイント程度、サービスが3.5%ポイント程度と見られる(図表1)。

産経新聞「ロシアで未払い賃金急増」より

消費が冷え込んでも食料品だけは減らすことが難しいので、値上がりするよね。

そふとらんでぃんぐ?

そうすると、金利の引き下げをするしかない訳なんだけど、実のところ金利を下げたところであまり効果は出ない。

政権側も露経済の先行きを警戒している。レシェトニコフ経済発展相は19日、露経済が「景気後退への瀬戸際にある」と指摘。プーチン大統領も20日の露主催の国際会議の演説で「一部の専門家が景気後退のリスクを指摘している。そうした事態はいかなる状況でも許されない」と表明した。27日の記者会見でも「われわれはインフレと闘い、経済をソフトランディング(軟着陸)させようとしている。この問題に適切に対処する」と述べた。

産経新聞「ロシアで未払い賃金急増」より

結局、一定の需要があるところで供給不足に陥っているのが問題で、その供給を支える人材を確保できない状況が続いている。

これが残念なことに侵略戦争を止めたところで、解消しないんだよね……。

今のところ、戦争経済で「潤っているように見える」のだけれど、現実はそうではない。インフラも痛んでいるし戦場に出た兵士が戻ってきたところで労働力にカウントできるかというと、かなり怪しい。

経済をソフトランディングというのは、口で言うほど簡単ではないのだ。

いつまで続けられるのか

で、いつまで続けられるか?という点なんだけど、先ずはこちらの記事を。

ロシア戦時経済の憂鬱(8) 急増する企業倒産や廃業

2025年1月15日 5:00

ウクライナへの侵略を始めた2022年を唯一の例外として、ロシア経済はプラス成長を維持しています。大型の財政出動、軍事関連産業の特需、輸入品の国産品への代替が景気を下支えしているとされます。商店に物不足の兆候は見られず、人々も通常の消費生活を送っているという報道も、ロシア経済の好調さを印象付けています。

日本経済新聞より

相変わらず日本経済新聞は大切な部分が読めないので引用した意味はあまりないのだが、見かけは好調に見えるけど、企業倒産や廃業が増えているので継続性は薄いよという内容である。

ついに見えてきたプーチン王朝崩壊の兆し、早期停戦なければ今年前半にも

2025.2.8(土)

ロシア(露)経済は「油上の楼閣」であり、油価依存型経済構造です。

世界の原油需給は均衡しており、短期・中期的には(地政学的要因以外)油価が上昇する要因は存在しません。ゆえに油価は下落傾向に入っており、今後さらに下落することでしょう。

JB Pressより

時期を同じくして、「原油価格の下落が続けば今年前半にも危うい」との分析が出ていたが、幸か不幸かイスラエルとイランがおっぱじめてしまったので、ロシア的には一息つける状況を迎えた。しかしそれでも「ソフトランディングが必要」と言い始めたというのが冒頭のニュースである。

多くの経済の専門家の分析では概ね1年が限界だと試算しているが、外的要件を加味しておらず僕自身はもっと早いと予想している。原油価格が高値で安定するとロシアとしては有利になるように思えるけれども、そもそも原油の精製やタンカーの老朽化が足を引っ張って輸出が難しくなっている。

ついでに戦線を支えてきたイラン製のドローンの購入が難しくなっていて、イスラエルとイランの停戦は何とか実現したモノの、ロシアへ実機供給や部品供給が滞りがちになっている。ロシア国内での生産能力を高めているとはいえ、全てをロシア国内で製造する体制ではなく、部品の供給を受けなければならない状況ではあるため、先行きの不透明さが増しているといったところ。

案外、早いタイミングでの崩壊が進む可能性が出てきたようだ。

コメント

  1. 山童  より:

    20%……。そりゃあ企業も破綻するわね。
    木霊様の記事を読む限り、実質の継戦は
    あと一年とみた。
    ウクライナ粘り勝ち?
    勝ったところでウクライナもボロクソで、とうせまた日本に金出せと言う。

    • 木霊 木霊 より:

      政策金利20%で、市場がそれについて行けていないという。
      まあ酷いんですが、コメント頂いた後にチョロッと書き足しましたが、1年保たないんじゃないかな?というのが僕の感想です。
      ウクライナは「勝ち」というよりも、負けないだけですかね。勝利と言うには余りにも代償が大きすぎますよ。そして、既に日本からお金を出す話にはなっていますね、復興に。

      • 山童  より:

        利益は少ないけれど、世界秩序と安全保障を考えると……。
        ウクライナとロシアの穀物輸出量の合計は、世界一USAと同じ。肥料のリン鉱石の6〜7割がロシア産。
        中東諸国のほとんどと、アフリカ諸国の少なからずが、この2国の安い穀物に頼ってる。このメシ問題かあるので、とりあえず戦争を終える事や、農地の地雷や土壌汚染を取り除く作業は、中東を安定させる事に繋がります。なので出さないとは言わない。ただEUと米国が利用してうまい汁を吸う為の触媒にされたらたまらないというお話であります。

  2. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >経済力は韓国と大差ない

    とはいえ、地下資源持ってるのは強いですよね。
    逆に言うと、それしかない。
    工業製品の輸出は、兵器以外に何がありましたっけ……
    ※とはいえ、基本的に、資源無い国は資源持つ国にケンカ売ってはいけない。

    ああ、ウクライナに潰された空軍機を再生産すれば、ちっとは経済に貢献するのでは?(すっとぼけ)

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      地下資源売るだけで経済が成り立つというのは、まあ、何というか。
      工業製品は兵器以外に……、無いですねぇ。兵器も微妙なんですが。