なるほどねぇ、そりゃ選挙前に交渉が動かなかったわけだ。
日米で合意 相互関税15% 自動車の関税も15%【速報中】
2025年7月23日 9時28分
アメリカのトランプ大統領は、22日、関税措置をめぐる交渉で日本と大規模な合意を締結したと自身のSNSで明らかにしました。SNSでは日本への相互関税は15%になるとしています。
NHKニュースより
ある程度妥協が必要だとは見られていたし、これが妥協できるラインかどうかは今のところ良く分からないけれど。こりゃ、市場は荒れるな。
テストケースとして使われた模様
トランプ関税と税収
そもそもトランプ関税の最大のリスクは、アメリカ経済に大きな打撃を与えかねないことだ。
日本政府関係者によりますと、今回の日米の合意の中で、焦点となっていた自動車に対する25%の追加関税について、これを半分の12.5%とし、もともとの税率である2.5%とあわせて、15%とすることで合意したということです。
NHKニュース「日米で合意 相互関税15%~」より
相互関税で15%ということは、日本側もアメリカから輸入する製品に15%の関税をかけることになるのか?(恐らくそうではないと思うが、相互という単語がくっついているのが気になる)は懸念事項だが、今回のトランプ氏の発表に日本側としても否定していないので、少なくとも対米輸出をすると15%の関税が掛かるという意味である点は間違いないだろう。
そして、何故か80兆円の投資を約束したことになっているのだが。
投稿では、日本がアメリカに5500億ドル、日本円にしておよそ80兆円を投資するとしています。
そのうえで、トランプ大統領は「おそらく最も重要な点は、日本が自動車やトラック、コメやほかの農産物を含む貿易で国を開放することだろう」としています。
NHKニュース「日米で合意 相互関税15%~」より
実態がどうなるかまだ判明していないが、少なくともこんな内容が報じられたら選挙は吹き飛んじゃっただろうね。
日本側の反応から分かること
取り敢えず、分かっていることを整理しよう。
項目 | 内容 |
---|---|
自動車関税 | 日米で15%に統一(従来より軽減) |
鉄鋼・アルミ関税 | 現行の50%を継続 |
日本からの投資 | 約80兆円(5500億ドル)、利益の9割は米国へ |
自動車業界の対応 | 米国生産移転や現地パートナー強化 |
アメリカからの輸出 | 農産品(米など)が増加見込み |
これはトランプ氏側から出た話で、日本政府側も15%の関税は合意したという風に確認が取れている。
焦点となっていた自動車などについて、ことし4月以降に課された25%の追加関税率を半減し、既存の税率を含めて15%とすることで合意したとし「世界に先がけ数量制限のない自動車、自動車部品関税の引き下げを実現することができた」と述べました。
NHKニュース「日本への相互関税15%に~」より
当然ながら、2.5%だった関税が15%に引き上げられたのだから、自動車メーカーとしては大打撃である。
石破氏は「交渉に勝利した」というような表現を使っているが、確かに他国と比べて日本の関税が低いという事実はあるモノの、凡そ現実的ではない数字である。輸出額ベースでかなりのダメージを被ることは避けられないだろう。
日本はアメリカに対して15%の相互関税を支払う。 これはアメリカにとって特に日本との良好な関係を今後も維持する点で非常に喜ばしいことだ
NHKニュース「日米で合意 相互関税15%~」より
そしてどうにも違和感を覚えるのは、トランプ氏のSNSで書かれた内容が、「日本が15%の関税を支払う」となっていて、一般的な関税制度の理解と異なる点である。日本車メーカーとしては苦しいと思うし、輸出には影響が大きいと思うけれど、
巨額の投資は一体……
また、日本円にして80兆円相当の投資なのだが、ここは恐らくLNG絡みの話ではないかと推測している。
そしてトランプ大統領はアラスカ州におけるLNG=液化天然ガスの開発計画について、日本と合意することになると述べ、エネルギー分野での投資に期待感を示しました。
NHKニュース「日米で合意 相互関税15%~」より
ただし、これに関しては公式に認められた話ではないので、現段階では短なる憶測に過ぎない。
そして「『関税より投資』と、ことし2月のホワイトハウスでの首脳会談で 私がトランプ大統領に提案して以来、一貫してアメリカに対して主張し、働きかけを強力に続けてきた結果だ。守るべきものは守った上で日米両国の国益に一致する形での合意を目指してきた。トランプ大統領との間でまさにそのような合意が実現することになった」と成果を強調しました。
NHKニュース「日米で合意 相互関税15%~」より
何らかの投資をすることは暗に認めているので、恐らく、総額はともかくとして巨額投資を約束した可能性が高いのは間違いない。
そして、これは日本製鉄の話も絡んでいると思われるので、
さらに半導体や医薬品といった経済安全保障上、重要な物資については、仮に将来、関税が課されることになった場合、日本が他の国に劣後する扱いとはならないよう確約を得たことも明らかにしました。
NHKニュース「日米で合意 相互関税15%~」より
トランプ氏との「約束」が何処まで有効かは不明だが、まあ、ある程度の指標にはなるんだろう。
コメと鉄アルミに関して
気になる鉄鋼・アルミニウムに関する話は、交渉の場には出ていたのだけれど、今回の話題には出ていなかったというか、決めきれなかったようだ。
一方、コメについてはアメリカからミニマムアクセスと呼ばれる枠内で、輸入割合を実質的に拡大するほか、鉄鋼製品とアルミニウムに課されている50%の関税は変わらないということです。
NHKニュース「日米で合意 相互関税15%~」より
鉄鋼やアルミニウムに関して、現状は50%関税そのままだったという状況だったようだ。
恐らくは、後回しになったんだろうと思う。
またコメについては既存の「ミニマムアクセス」と呼ばれる仕組みの枠内で、日本のコメの需給状況なども勘案しながら輸入割合を増やすとした上で、農業を犠牲にする内容は一切含まれていないとしています。
NHKニュース「日本への相互関税15%に~」より
コメに関する分野は、トランプ氏は「完全解放していくだろう」みたいな意図で書かれているが、現状では「ミニマムアクセス」の枠を増やす方向で、徐々に輸入拡大する余地を示すよと言うところで妥結したらしい。
赤澤氏の手腕
というわけで、いそいそと赤澤氏がアメリカに出かけていったときに、「また、無駄なことを」と思っていたのだけれど。
赤澤経済再生相 ワシントン到着 ベッセント氏らとの会談を調整
2025年6月27日 2時32分
アメリカの関税措置をめぐり赤澤経済再生担当大臣は、閣僚交渉を行うため日本時間の26日夜、ワシントンに到着しました。ベッセント財務長官らと会談したいとして調整を進めており、隔たりのある自動車の関税率の扱いで歩み寄れるかが焦点となります。
NHKニュースより
事前情報ではベッセント氏と会合すると思われていたのだけれど、トランプ氏と会談して、サックリと交渉を纏めたようだ。
関税交渉 赤澤経済再生相 トランプ大統領と会談か
2025年7月23日 11時35分
アメリカ・ワシントンを訪問している赤澤経済再生担当大臣は、日本時間の23日朝、ホワイトハウスでトランプ大統領と会談し、関税措置をめぐって意見を交わしたものとみられます。
NHKニュースより
この辺りは非常に巧かったと思う。
恐らくは事前に選挙後、8月1日前に大きな決断をできるような形で発表したいという意向がアメリカ側にもあったらしく、一方日本側の事情として参議院選挙があって、日本側が対応しにくい事情があったために、この時期にしたいということだったと思う。
「無駄に、アメリカに行きやがって」という心ない批判が渦巻いていたし、僕自身も「交渉カードなしに、無理だろう」と思っていただけに、結果を出したという意味では、赤澤氏は素晴らしかったと思う。
細かい部分を見ると、なるほど日本にとっては損な部分も大きいのだけれど、ズルズルと30%関税を飲むよりはマシだったとも言える。言わば、トランプ氏のメンツを立てた形になったのだ。
結果的には、トランプ氏に「してやられた」格好なんだけど、ダメージはある程度抑えられたのではないか、と。不満に思う人も多いとは思うんだけどね。良かったか、悪かったかと言えば、これは何とも判断し難いのだけれど、赤澤氏は最善を選択したのだと思う。
まあ、それはそれとして、石破氏にはこれをお土産に退任して欲しい。ね、アメリカとの交渉は終わったから。え?まだ退陣否定している?困ったヤツだな。
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