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こども家庭庁が「不要」だと叩かれる理由

政治
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割と叩かれがちなこども家庭庁が推進する政策、低調みたいだね。

こども家庭センター 未設置自治体の4割近く目標間に合わないか

2025年8月3日 12時26分

国が来年度中にすべての自治体で設置することを目標としている「こども家庭センター」について、まだ設置していない自治体のうち4割近くが、目標には間に合わない「再来年度以降」か、時期を「未定」としていることがこども家庭庁の調査で分かりました。

NHKニュースより

休日に扱うネタでもないと思うんだけど、この問題についてはいつもモヤモヤするんだよね。

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理解されていない理由

全国での設置率

まず、どうしても好きになれない「こども家庭庁」の話から。

名称に「こども」と「家庭」を混ぜて使う発想がまず理解できないし、どうして「こども」は漢字表記でないかも意味がよくわからない。何かの拘りがあるんだろうけど、独りよがりなこだわりに見えて仕方がない。

そして、「こども家庭庁」も何をやっている省庁か不明である。

こども家庭庁が掲げる理念は、「こどもまんなか社会の実現」です。
これは以下のような方向性を意味しています:

  • 政策立案や制度設計の際に、常に子どもの視点を最優先にする
  • 子どもの意見表明権や参加の機会を保障する
  • 子育て家庭を孤立させず、社会全体で支える

誰かわかる方がいたら説明して欲しい。そのレベルで意味不明である。これで、幼保一元化(保育園や幼稚園、こども園などを一元化する)を実現したならまだちょっと存在意義も分かるのだが、それにも手を付けてすらいない。小学校や中学校に関することをやっているかと思ったら、それは文部科学省の所掌なのである。

一体何をやっているのやら。

一応、大きな役目として、こども家庭庁は以下の行政について、横串を通す役目だとされている。

  • 教育 : 文部科学省
  • 医療・母子保健 : 厚生労働省
  • 福祉・虐待対応 : 厚生労働省+都道府県
  • 貧困・住宅 : 内閣府、国交省など

縦割り行政の弊害で、それぞれの行政に連携が取れていないという課題を解決するという話で設立されたのだが、じゃあ「横串って何」とか、実に曖昧なのである。自分たちがやるべきこと・やっていることをわかっていない節があるね。

地方丸投げの弊害

そして、やることが見えない中で進めようとしているのが、冒頭のニュースの中の「こども家庭センター」で、これを各都道府県に設置しようとしているのだ。

ことし5月時点の全国の状況を調査したところ、すでに設置した自治体は全体の71.2%にあたる1240自治体で、去年の同じ時期と比べて20.9ポイント増加しました。

NHKニュース「こども家庭センター 未設置自治体の4割近く目標間に合わないか」より

何がこのセンターの設置妨げになっているかというと、似たような機能を背負っているのが保健センターで、どうやら保健センターとは別組織にしたいようなのだ。

【比較表】こども家庭センター vs 保健センター

項目こども家庭センター保健センター
所管部局こども家庭庁+市区町村の福祉部局厚生労働省+市区町村の健康福祉・保健部局
主な目的子育て支援・福祉支援の総合窓口地域住民の健康管理と疾病予防
主対象妊産婦、乳幼児、育児中の家庭、要支援家庭妊婦、乳幼児、高齢者、成人(全世代)
支援内容妊娠・出産・育児支援、虐待防止、貧困・教育支援母子保健(妊婦健診・乳児健診・予防接種)、保健指導
強みソーシャルワーク的支援、児童福祉・教育との連携医療職による健康支援、感染症・精神保健対応

ところが、そこそこ役割が被ってしまう。

支援内容通常どちらが担当?備考
妊婦への支援・相談保健センターが主導、
ただしこども家庭センターも関与
地域によっては統合されている例もあり
乳幼児健診保健センターが主一部自治体では家庭センターが案内・予約管理
育児不安・発達相談双方が対応医療的視点(保健センター)と福祉的視点(家庭センター)の両面から介入することが理想
虐待リスクのある家庭の把握こども家庭センターが主導健診を通じて保健センターが気づき、連携するパターンが多い

重複業務をピックアップしてみたが、なかなか混乱している。これの業務整理を地方に丸投げというのが、こども家庭庁のスタンスらしい。

出産前から子どもが成長するまでの切れ目ない支援」とのスローガンを掲げながら、こども家庭庁がやりたいことは地方任せというのが現状である。「制度だけ設計して、あとはよろしく」は行政の悪いクセだ。担当者だって「保健センターでできることを、なぜ別建てにするのか?」と戸惑っているはず。

「支援」の名のもとに、家庭へ静かに入り込む行政

最近の政府や自治体の動きを見ていると、子育て支援と称して家庭の中に行政が入り込もうとしている構図がよく見える。「こども家庭センター」「家庭訪問支援」「サポートプラン作成」——どれも言葉だけなら立派だが、実態が見えてこない。そもそも支援とは、誰が、誰のために、何をするものなのか。定義が曖昧なまま理念だけが先行している。

特に気になるのは、「出産前から子どもが成長するまでの切れ目ない支援」というスローガン。何が“切れ目”で、何が“支援”なのか。福祉行政の現場ですら混乱している中で、全国の自治体にその整備を丸投げしているのが現状だ。

一方で、
▽令和9年度以降が38
▽未定が157にのぼり、
まだ設置していない自治体の4割近くが目標に間に合わない可能性があるということです。

設置が進まない理由について、自治体からは母子保健と児童福祉の知識を持つ統括支援員の確保が難しいといった声が上がっているということです。

NHKニュース「こども家庭センター 未設置自治体の4割近く目標間に合わないか」より

そりゃ、地方行政は人手の足らない中でやっているんだから、よくわからないものの設置に躊躇するのは無理もない。

歴史的に、「家庭への政治の介入」は疑念を招いてきた。

  • 明治期の「良妻賢母」教育
  • 戦後の「標準家庭」モデル(サラリーマン父+専業主婦母)
  • 近年では「児童相談所の過干渉」批判や、「学校と家庭の線引き問題」も頻出

こども家庭庁がやろうとしているのは実は、そういった話と通ずる部分があるのだ。家庭とは本来、国家からある程度自律した“個人の領域”で、行政も民事不介入を原則としてきた。

そして、その匙加減を地方行政に丸投げって、そりゃ怒るよ。

方向性が見えないのが問題

結局のところ、わからないが問題なのである。そういう意味では、「わかりやすさ」でという意味であれば、明治期の「良妻賢母」政策はわかりやすかった。

明治期「良妻賢母」教育の役割:国家の礎としての家庭

要素内容
人口政策近代国家としての兵力・労働力を再生産する必要性(=少子化対策的要素)
国民教育の基礎国家に忠誠を誓う臣民を育てるための母親の役割が重要視された
社会の安定化家庭内での役割分担(父は外、母は内)により秩序と道徳の浸透を図る
近代家族制度の構築欧米的な「家族国家」の模倣を進めつつ、日本独自の「家制度」に収束させた

一言でいえば、「家庭を国家の最小単位」と位置づけ、母親=家庭内での国家機能の担い手としたわけだ。

現代の社会的な背景の下でこんなことやり始めたら、とたんにバッシングの嵐なのだろうけれど、現代の育児で保護者が困るのは「何が良い育児なのか」「誰が責任をもつのか」が明確じゃないからなんだよね。

家族や母親に育児の中心を担わせるなら、その価値観や役割を国家として明示し、誇りを持てる形で支援するべきだ。中途半端な自由自己責任の中で、親にだけ過重な負担を押しつける現状こそ、最も不誠実だ。

多分、こども家庭庁の設立理念自体は良いことだと思うんだ。でも、もっとわかりやすく方向性を示すような努力をしないと、本当に国民に理解されないまま税金を浪費する省庁だという評判は払拭できないよ。

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