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もがみ型護衛艦輸出を批判する人々

報道
この記事は約6分で読めます。

引用するのも嫌なのだが、東京新聞は相変わらずの内容である。

ついに軍艦を輸出する国になった日本 武器「3原則」なし崩し、官民一体でセールスをかける戦後80年の風景

2025年8月6日 06時00分

(読む価値なし)

東京新聞より

タイトルだけでお腹いっぱいなので、内容の引用は控える。そもそも会員限定記事なので、最後まで読むこともできないしね。

  • 「武器輸出三原則」の歴史的経緯と2014年の「防衛装備移転三原則」への転換を解説
  • 2023年の移転指針緩和により、完成品輸出や非殺傷装備の範囲拡大が可能に
  • 東京新聞の批判は制度的事実を無視したもので、情緒的レッテル貼りにすぎない
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事実は正確に把握しようね、という話

「なし崩し」という嘘

このニュースは、前の記事との関連事項なのだが、前日の記事の追記にするのも汚らわしいので、新たな記事とした。

昨日、オーストラリア政府から「日本製のもがみ型護衛艦の導入を決定」したという発表がなされた。

この記事の最後には「武器輸出三原則の見直し」について言及したのだが、これは正確ではなかったのでお詫びしたい。

本日はこの武器輸出三原則というのは一体何なのか?について、整理していきたいと思う。

武器輸出三原則(1967年)

佐藤栄作内閣が表明した外交方針で、以下の3つの条件に該当する国々には武器を輸出しないとしたもの:

  1. 共産圏諸国(当時は冷戦下)
  2. 国連決議で武器禁輸対象となっている国
  3. 国際紛争の当事国、またはその恐れのある国

当時の佐藤栄作内閣は、上記の3態様に当てはまる国家には輸出しないことを表明している。

当然、この水準から考えればオーストラリアに兵器を輸出するのは何ら問題がない。

この方針が微妙に変化したのは三木内閣の時である。

三木武夫内閣の時代、次のように原則を拡大適用した:

「三原則の対象地域以外にも、武器の輸出は慎む」

……慎むって、なんと曖昧な。

なお、この答弁は法律による規制ではなく、内閣の政策判断である。つまり、法的拘束力を伴うものではなく、運用上の自粛方針にすぎない。

しかし、このような曖昧な基準では国際的な協力体制の中で支障が生じる場面も出てきたため、2014年、安倍内閣がこの三原則を正式に廃止し、新たに「防衛装備移転三原則」を打ち出すこととなった。

防衛装備移転三原則

2014年4月に政府が閣議決定した新原則の構成は以下の通り:

移転を認めない場合(原則禁止)

  • 日本が「移転を禁止すべき」と判断した国への移転は禁止。
  • 具体的には:
    • 国連安保理決議等に基づく武器禁輸対象国
    • 国際紛争の当事国またはその恐れがある国
    • 日本が独自に輸出を自粛すべきと認めた国

移転を認める場合(例外許容)

  • 第1の条件に該当しない国で、平和貢献・国際協力・安全保障上の意義があると政府が判断した場合に限り許容
  • 日本政府が案件ごとに慎重に審査し、閣議で個別判断。

管理の徹底

  • 移転先国での最終用途・再移転の制限第三国移転の可否などについて、日本政府が管理・確認できる体制を義務化。
  • 適切な契約・モニタリング・政府間協定などを通じて追跡。

このように、2014年に武器輸出三原則は正式に撤廃され、防衛装備移転三原則が新たな政策として確立された。 この変更は当時も広く報道されているし、国内外に向けて明確に公表された。

運用指針の一部改訂

さらに2023年には、岸田内閣によりこの三原則の運用指針が一部改正されている。

ライセンス生産品の完成品輸出許可

  • 外国でのライセンス供与を受けて国内で製造した装備について、完成品のままライセンス供与元の国への輸出が可能に。
  • さらに、供与国の同意があれば第三国への再輸出も許可されるように。

非殺傷用途の装備についての緩和

  • 「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」の5類型に該当する装備であれば、装備が殺傷能力を持っていても輸出が可能となった(例:武器搭載可能な艦艇も含む) 。

武装されていても援助対象となる新たな輸出対象

  • 非殺傷装備(防弾チョッキなど)や、国際法違反などの侵略を受けている国への支援装備の輸出も拡大される(旧規定ではウクライナに限定されていた支援装備の提供が拡大)。

共同開発品の維持整備部品の第三国移転

  • 他国と共同開発した装備について、保守・整備用部品は第三国に提供可能に。ただし完成品の再移転は一部先送りされた。

より明確にしたわけだね。

今回のもがみ型護衛艦の輸出は、こうした法制度の枠内で行われた合法かつ政策的判断に基づくものであり、「なし崩し」などという批判は明らかに事実誤認である。

にもかかわらず、さすが東京新聞である。サヨク御用達のアジビラと呼ばれるだけはある。事実に基づかない批判はお手の物だ。

お決まりの「平和国家からの転落」「死の商人」といった批判を繰り広げているのだが、誰の心に響くのかという。

韓国紙の論調にソックリ?

ただ、コレにソックリな記事があったので、そちらを紹介しておこう。

オーストラリア「新型護衛艦事業優先対象者に日本」…衰退する「平和国家日本」

入力 2025.08.05.午後4時12分 修正 2025.08.05.午後4時27分

オーストラリア政府が新型護衛艦導入事業優先交渉対象者として日本を選択した。日本の初護衛艦輸出事例だ。ただし日本が武器輸出を禁止した平和主義を自ら崩しているという批判も出ている。

~~略~~

しかし今回の輸出は日本が第二次世界大戦以後維持してきた平和憲法を弱めた後に得た結果だ。日本は憲法9条が規定した「平和主義」に基づいて国際紛争を助長しないという理念を守ってきた。日本が長い間武器輸出を禁止した理由だ。

平和憲法の価値は安倍晋三政権の時である2014年から揺れ始めた。当時、武器輸出禁止を規定した「武器輸出3原則」を一部目的に限って装備輸出を許容する内容の「防衛装備移転3原則」に改正した。 2023年には、かなり緩んだ防衛装備以前の3原則運用指針の規制を大幅に緩和する方向に改めて修正した。

NAVERより

……真っ当に武器輸出に関しての経緯に触れているよ。「似ている」と書いたけど、東京新聞よりよっぽどマシだった。

「平和主義の崩壊」的な表現はあるが、経緯や制度変更についてはむしろ的確に説明している。批判はしていても、東京新聞よりはよほど筋が通っている。

おそらく、オーストラリアへの装備輸出に韓国企業も提案していたけど負けちゃったよという事情もあるのだろう。 だからこそ、悔しさをにじませる論調にはなるが、これは仕方のない部分だ。

「死の商人」などという安易なレッテルで済ませるな

というわけで、東京新聞がいかに酷いかという情けない話になってしまったのだけれど、論じるべきはそこではないんだよね。

日本の安全保障において、今回の輸出確定は非常に大きな意味を持つ事件なので、今後の方針を如何にすべきかという話について考えていかねばならない。

相も変わらず「アベガー」「戦後レジームガー」と叫び、「死の商人」とか非難する。もうアホかと。

もはやそんな平和な時代ではないのである。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    ・自分達の主張が通らなかった裁判の判決:不当判決
    ・自分達の意見が認められなかったディベート結果:疑惑は深まった
    ・自分達の意見を採用しない政府:民意ガー

    彼らのやる事は、大体これで説明がつきますね。
    あとは、その主張を補強するための資料作り。
    統計的に意味が無かったり、母集団が偏っていたり……
    そう言えばずっと前「声なきサイレントマジョリティを鑑み、こっちが正解!」みたいな記事書いて炎上したアホンダラが居たのを思い出しました。サイレントマジョリティ、一時期流行りましたよね、ネットミームで。

    ※余談ですが、キヨタンが「もがみ型は失敗作!」って記事書いてて「ああ……」ってなりました。失敗作なら、どうして米国の経済誌フォーブスが「フリーダム級はこうするべきだった」とか言うのかって話ですが。
    ※「清谷 もがみ級 失敗」で検索すると出るわ出るわ……
    ※「米メディア、海自の「もがみ型護衛艦」はLCSサイズで柔軟性と攻撃力の両立に成功」
    https://grandfleet.info/japan-related/us-media-mogami-class-escort-ship-succeeds-in-achieving-both-flexibility-and-attack-power-in-lcs-size/

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      皮肉な話ですが、批判するだけで良いというのはなかなかに幸せな話ですよね。
      キヨタンの記事も読むに値しないので放置気味ですが、案外イイ商売かもしれません。さも物知り顔で兵器のダメなところを解説したところで、公式に「それは違う」とは言われないのですから。
      サイレント・マジョリティですかぁ。サイレント魔女・リティなら知っていますよ?(苦笑

  2. 七面鳥 より:

    連投失礼。

    航空万能GFさんの所で、詳細なレポートが出てますね。流石だ……
    「豪州のフリゲート艦入札、日本勝利の要因は納期に対するリスクヘッジか」
    https://grandfleet.info/japan-related/japans-win-in-australias-frigate-tender-risk-hedging-against-delivery-dates/

    >「もがみ型改の耐久年数はMEKO A-200よりも10年長く1年あたりの運用維持が安価」「垂直発射システムのセル数がMEKO A-200の2倍」
    ……納期以外でも、勝負になってなかったかも……

    • 木霊 木霊 より:

      ええ、航空万能論さんのところは納期に対するリスクヘッジが勝利の要因だとしていましたね。
      その背景に、某国の潜水艦の話があったのは皮肉と言えば皮肉な話。
      まあ、MEKO A-200は当て馬だと言われていましたから、案外妥当な結果だと言えるのかも知れません。オーストラリアとしてはアメリカ製の兵器を使う前提でしたので、結構手を入れる必要のあるドイツ製は都合が悪いというのは、アンザック級を使っていた実績を踏まえても妥当でしょう。
      というか、イタリアや韓国は当て馬にすらなれなかったのがちょっと哀れですね。