まあまあ愉快な事件だったので、紹介しておこう。
南シナ海で妨害行為の中国船同士が衝突、「危険」とフィリピン
2025年8月12日午後 5:24
フィリピン外務省は12日、11日に南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)付近で中国船が「危険な行動と不法な妨害」を行ったとして、深刻な懸念を表明した。
ロイターより
南シナ海のスカボロー礁で嫌がらせを繰り返している支那の船舶がやっちまったニュースである。
世界に恥を晒すことに
船首破損
まずは、動画を見て欲しい。
事故を起こしたのは中国海警局の船(CCG-3104)で、フィリピン沿岸警備隊の巡視艇「スルアン」(BRP Suluan、MRRV-4406)が漁業関係者に補給活動をしていたところ、海警局の船が登場、放水をしながら作業を妨害し始め、逃げるMRRV-4406と追いかけるCCG-3104という展開に。

手前右側がフィリピン沿岸警備隊の巡視艇「スルアン」、奥で放水しているのが中国海警局のCCG-3104だ。

完全にスルアンの左舷にぶつけに来ているのだが……。
そこに登場したのが中国人民解放軍海軍の052D型駆逐艦「桂林」(DDG-164)。

動画を見ると、唐突にスルアンと追いすがるCCG-3104の間に桂林が割って入ってきているように見える。

その結果がこの有り様なのだ。
動画でははっきりしたことは分からないが
なぜこんな事になったのかは不明だが、052D型駆逐艦「桂林」の方にもダメージが。

船首部分に穴が空いているように見える。
フィリピン外務省は声明で、「中国側の行動はフィリピンの職員と船舶に重大な危険をもたらしただけでなく、2隻の中国船の不幸な衝突を招いた」と述べた。中国側に対し、医療や、損傷した海警局船の曳航を含むその他支援を申し出たという。
中国国防省と在マニラの中国大使館は、コメント要請に応じていない。中国海警局は11日、スカボロー礁付近でフィリピン船を追い払うために必要な措置を取ったと述べていた。
ロイターより
きっと、事故を起こすことは「必要なこと」だったようだね。
ここで軽く説明しておくと、支那は海洋進出をしてフィリピンやベトナム、マレーシアの領海を「俺の海だ」と主張している。

なぜこんな頭のおかしい主張をしてしてしまっているのかといえば、これも尖閣諸島に対する主張に似ていて、結局のところ資源確保と他国のシーレーンを支配下に置きたいという欲なのである。
しかし、今回のような危険行為に支那が及んできたということは、事態をエスカレートさせてきたことを意味するわけで。日本もこの件についてしっかり抗議すべきだと思う。尖閣諸島で全く同じことを起こしかねない。
追記
コメントに頂いたけれど、どうやら「スルアン」は日本が供与した巡視船のうちの1隻だったみたいだね。
日本供与のフィリピン巡視船が南シナ海で中国海警局の船と対峙 双方が自国の権利を主張 フィリピン側が映像を公開
2025年8月5日(火) 02:16
中国とフィリピンの双方が領有権を争う南シナ海の海域で、日本が供与したフィリピンの巡視船が中国当局の船と対峙し、フィリピン側が映像を公開しました。
フィリピン沿岸警備隊は4日、フィリピン北部・パンガシナン沖の南シナ海で巡視船「テレサ・マグバヌア」が中国海警局の船に警告を出したと発表しました。
「テレサ・マグバヌア」は日本が円借款を通じて3年前、フィリピンに供与した巡視船です。
TBS NEWSDIGより
テレサ・マグバヌア型巡視船は、確かにくにがみ型巡視船の発展型でヘリコプター甲板から格納庫に加えてレーダーなども備えているなかなか優秀な船のようだ。

随分と好評らしく、次の支援も決まったとか。
フィリピン、日本から巡視船5隻追加調達へ 17日に覚書 「将来にわたって主力船」
2024/5/15 21:28
南シナ海で中国と対峙するフィリピン沿岸警備隊は15日、全長97メートルの大型巡視船5隻を日本から政府開発援助(ODA)の円借款で追加調達する覚書を17日に交わすと発表した。ガバン長官は15日、共同通信の取材に「将来にわたって主力船になる」と強調。南シナ海の平和と法秩序の維持に向け「日本の協力にとても感謝している」と述べた。
産経新聞より
これまでこの手の船を持っていなかったフィリピン沿岸警備隊は、そりゃ大喜びだろう。そして今回の一件があったというわけで……。
これは追加発注ありそうだな。
フィリピンとの関係が深まることは、意義深いことだと思う。
追記2
面白いニュースが。
米駆逐艦を「追い払った」、南シナ海スカボロー礁付近で=中国軍
2025年8月13日午後 3:56 GMT+92025年8月13日更新
中国軍は13日、南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)付近を航行した米駆逐艦を監視し、「追い払った」と発表した。これに対し米軍は国際法に則った行動だったとの見解を示した。
同礁の海域内で米軍の活動が明らかになるのは少なくとも6年ぶり。前日には、同礁付近で中国船が「危険な行動と不法な妨害」を行ったとしてフィリピンが深刻な懸念を表明していた。
ロイターより
支那人民解放軍の暴れっぷりを示唆する話なのだが、随分と鼻息が荒いな。
追記3
これは追記1の後追いの話なのだけれど、コメント頂いた件の補足である。
JICA:沿岸警備隊の新しい97メートルMRRVは、国と地域の海上安全に不可欠
2022年6月13日
JICAの支援を受けたフィリピン沿岸警備隊(PCG)の2隻目で最後の97メートル多目的対応船(MRRV)の就役は、フィリピン海域におけるさまざまな海上課題に対応する能力の向上とみられている。
「フィリピン共和国海上保安能力向上プロジェクトフェーズ2」の一環として運輸省( DOTr)が実施したJICAの政府開発援助(ODA)借款事業「フィリピン共和国海上保安能力向上プロジェクト フェーズ2」に基づく2隻のMRRVのうちの2隻目となる。
JICAのサイトより
こちらはJICAのサイトの引用で、今回登場したフィリピン沿岸警備隊の巡視船「スルアン」と同型艦の2番艦引き渡しのニュースである。なお、2番艦は「マラブリゴ」で「スルアン」は5番艦となる。
この新型MRRVは日本の技術を用いて日本で建造され、15日間の任務を遂行でき、荒天下でも航行可能です。アーサー・P・トゥガデ運輸長官は、新型MRRVの納入により「フィリピン海事局(PCG)の海上捜索救助、法執行、人道支援、災害対応活動における対応能力が大幅に向上する」と述べています。トゥガデ長官は、このMRRVはフィリピンの海洋資源を保護する海洋環境法の執行においても非常に貴重な存在となるだろうと付け加えました。
JICAのサイトより
「フィリピンは大喜び」的な記事で、JICAの円借款事業「PCG海上保安能力向上プロジェクト」は大成功だという内容である。
というわけで、コメントで訂正いただいたように新造船であるという点は間違いない。
中古巡視船の話はおそらくはこちら。
海保の巡視船、マレーシアに引き渡し
2017/3/21 19:05
マレーシア北部ランカウイで21日、日本の海上保安庁からマレーシア海上法令執行庁(MMEA)に供与された大型巡視船の披露式が行われた。~~略~~
これまで日本は、フィリピンなどの海上保安当局に新造船を提供してきたが、海保の中古巡視船が供与されたのは初めて。建造に3年以上かかる新造船に比べ、短期間での提供が可能となった。
産経新聞より
この他にもベトナムにも巡視船を供与しているので、これから支那包囲網は更に拡大していくのだろうね。
コメント
フィリピン巡視船が高速蛇行しながら、支那艦船の同士討ちを狙ったのかもしれません。
フィリピン巡視船「スルアン」は、日本供与の旧海保巡視船のひとつのようです。
お役に立てているようで何より。
確定情報ではありませんが、この衝突事故で、支那海警船側に死傷者が出たようです。
そうですねフィリピン巡視船は、映像を見る限り蛇行しているように見えますから、052D型駆逐艦「桂林」の前を横切るようなルートをとったことは考えられますね。
死傷者情報は、現時点では確定できませんでした。
もしかすると「スルアン」と同型艦は、海保のお古でなく、新造船で提供されていたかもしれません。↑コメが間違っていましたら、謝罪の上訂正致します。
今回の支那艦船同士の衝突事件では、フィリピン沿岸警備隊は、支那を”出し抜いた”としており、「スルアン」艦長以下乗組員を表彰したそうです。
https://shorturl.at/oY6f9
フィリピンは溜飲を下げたでしょうが、支那はメンツを潰したので、報復してくるかも知れませんね。米国はそれを警戒して、艦艇を派遣したと思いますが。
確認しておきました。
新造船ですね。
10隻が納品されていて、追加で5隻なので結構まとまった戦力に。
これから争いは更に厳しくなると思いますが、それはフィリピンの巡視船が強化されたからということかもしれません。数が増えれば無法なシーンに当事者として登場する回数も増えますからね。
一方的な領海宣言してる中国に損傷船の曳航、救助を申し出ることによって
フィリピンこそが海域を仕切る当事国である旨を世界に公明正大に発信
中国、赤っ恥もいいところですね
いやー、なかなか大笑いの出来事でした。
いや、失礼。もしかしたら支那側に死者が出ている可能性もあるので(未確認)、あまり不謹慎なことはいけませんな。