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恒大、資産売却で幕引き? 不動産危機の“終わらない後遺症”

中華人民共和国ニュース
この記事は約9分で読めます。

負債発覚から随分と引っ張ったが、とうとう恒大集団の精算が認められたようだ。え?違う?

中国恒大の資産2.55億ドルを売却、25日に香港上場廃止=清算人

2025年8月13日午前 7:26

中国不動産開発大手・中国恒大集団の清算人は12日、国内最大の債務清算手続き開始から18カ月が経過する中、同社資産のうち約2億5500万ドルを売却し、同社子会社100社以上を掌握したと発表した。

ロイターより

世界一の負債額を誇った恒大が、資産のわずか0.5%ほどを換金して幕引きとするらしい。事実上の倒産は去年の1月なのだから、やっと上場廃止ということになった。

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恒大崩壊は何を意味するのか

清算人が何を選んだか

まずは、ニュースを見ていこう。

清算人は提出書類の中で、総額450億ドルに上る債権者からの請求を受けたと明らかにした。2022年に開示された負債額275億ドルを大幅に上回っている。

オフショア投資家によれば、会社の規模と複雑さを考えると、同社の清算には10年以上かかる可能性がある。

ロイター「中国恒大の資産2.55億ドルを売却~」より

引用部分には、「負債額275億ドルを大幅に上回っている」と、している。これが最初に開示された額らしいのだが、しかし、ここがもう色々な報道と食い違っている。

負債総額は3,000億ドル相当?!

例えば、AP通信ではこんな感じの報道をしている。

China Evergrande to be delisted from Hong Kong stock exchange following debt woes

Updated 11:05 PM JST, August 12, 2025

HONG KONG (AP) — The severely indebted real estate developer China Evergrande, already in the process of liquidation, said on Tuesday it will be delisted from Hong Kong’s stock exchange on Aug. 25, another setback to mainland China’s property sector.

Evergrande was the world’s most heavily indebted real estate developer, with over $300 billion owed to banks and bondholders, when the court handed down a liquidation order in January 2024.

APより

ところが、2023年の報道ではこんなニュースが。

「中国恒大集団」の負債総額47兆円、債務超過に転落か

2023/07/18 00:38

経営危機に陥っている中国の不動産大手「中国恒大集団」は17日、2021年12月期と22年12月期の連結決算を発表した。22年12月期の負債総額は約2兆4300億元(約47兆円)に達し、債務超過に転落した模様だ。

讀賣新聞より

あれ、2.43兆元だ。ドル換算だと約3,400億ドルなので、やや上振れしている。これは負債が利上げなどの影響で膨れ上がっているとか、金利の影響だとか色々言われているが、ハッキリしない。だが、何れにせよ早い段階での精算をしたほうが有利であることは間違いないのだ。

清算人が回収できたのはたった2.55億ドル

ところが、発覚から即時倒産は認められず、2024年1月29日、香港高裁が恒大に対し清算命令を出すまでは恒大集団側は身動きが取れなかった。

そして、18ヶ月をかけて売却した資産はたった2.55億ドル(債務総額3,000億ドルとした場合の0.085%)なんだとか。

コレがどういう事なのかを、説明する前に精算スケジュールを示しておこう。

中国恒大集団・清算命令後18カ月の出来事

日付出来事補足
2024年1月29日香港高等法院が恒大本体に清算命令を発令。清算人としてAlvarez & Marsalを任命。再建案提示の失敗を受け、法的清算手続きに移行。これが18カ月の起点。
2024年3月〜6月清算人が国内外の資産調査を開始。主要子会社の財務状況を精査。中国本土の資産処分は地方政府の許可が必要なため進捗は限定的。
2024年8月香港の一部不動産(オフィスや商業施設)を売却。オフショア資産売却の初期段階。売却額は数千万米ドル規模。
2024年11月28日清算人が恒大子会社Tianji Holdingに対して清算申立(winding-up petition)を実施。オフショア債務保証を担う中核子会社。香港高裁で2025年1月審理予定。
2025年1月15日Tianji Holdingの清算申立審理開始。子会社レベルでも清算手続きが本格化。
2025年3月〜6月国内外の資産売却が続く。海外の金融資産や香港不動産を中心に現金化。中国本土の不動産は依然売却困難。
2025年8月12日清算人が18カ月の進捗を報告。総額約2億5500万ドルの資産売却、100社以上の子会社を掌握。債権者からの請求総額は約450億ドル。香港証券取引所は8月25日に恒大株を上場廃止予定と発表。

とまあこんな感じである。つまり、資産売却の大部分は海外やオフショア資産で、中国本土資産の処分は依然として難航中。記事にもあるけど、「清算には10年以上かかる」というのは国内資産の整理に時間がかかるという意味だね。

上場廃止の意味

で、このニュースで一番注目すべき点が、この「上場廃止」というところ。

提出書類によると、同社の株式は上場規則に従って取引が再開されなかったため、25日に香港証券取引所の上場を廃止となる。

株式は香港高等法院(高裁)から清算を命じられた24年1月以降、取引が停止されていた。

ロイター「中国恒大の資産2.55億ドルを売却~」より

恒大は昨年1月の清算命令で既に法的には破産しており、今回の上場廃止は“市場からの退場”にすぎない。支那経済への象徴的打撃は、この倒産が正式に市場から消えることで改めて浮き彫りになった。

名実ともに倒産したってことだ。そして、不動産バブル終焉のサインとなり、ここからが本当のトリガーに。まあ、こうなりたくなかったからこそ、今まで引き伸ばしてきた感じなんだけど。

不動産依存モデルの限界

中国経済の30%近くが不動産関連に依存

さて、この辺の情報はおさらいになるので、サクッと触れていこう。

中国経済のV字回復不発 GDPの3割占める不動産不況が衝撃

2024/1/17 18:00

中国国家統計局が17日発表した2023年の実質国内総生産(GDP)は前年比5・2%増だった。政府目標の「5%前後」は何とか達成したものの、新型コロナウイルス禍の終了に伴い期待されていたV字回復は不発に終わった。不動産不況の長期化が景気回復の足かせとなった形だ。不動産業界は産業の裾野が広く中国のGDPの3割程度を占めるとされ、中国経済への影響は大きい。

産経新聞より

未だにGDPの3割を占めるとされている不動産開発業は、アイコンとなっていた恒大集団の倒産で急激に悪化している。

中国 1~2月主要経済統計 消費プラスも不動産開発大幅マイナス

2025年3月17日 12時25分 

中国のことし1月と先月の2か月分の主要な経済統計は、政府の景気対策の効果もあって消費の動向を示す指標が去年の同じ時期と比べ4.0%のプラスとなりましたが、不動産開発への投資は大幅なマイナスとなっています。

NHKニュースより

もはや経済構造を変化させ、不動産開発に依存する体質を変えないことにはどうしようもない。

投資・雇用・地方財政への波及

で、この不動産開発不況というのは、より深刻なのが地方である。

中国、地方政府隠れ債務のスワップ進める-200兆円超のプログラム

2024年11月8日 19:04 JST

中国は8日、地方政府の債務借り換えを目的とした10兆元(約213兆円)規模のプログラムを発表した。

Bloombergより

この話はなかなかに深刻で、融資平台と呼ばれる金融組織が隠れ債務として問題化したので、中央政府から「なんとかしろ」という指導が入ったんだけど……。

「財源は罰金?」中国地方政府"ご乱心ぶり"の根因
中国地方政府が深刻な財政難に陥っている。どうにか資金を集めようと、奇妙な行動まで見られるようになった。昨年8月、重慶市璧山区政府が「砸鍋賣鐵」(ザーグゥオマイティエ)班という、新たな課を立ち上げたこ…

まあなんというか、そんな簡単に解消するわけもなく。

恒大以外にも深センや広東のデベロッパーで連鎖危機

そもそも不動産開発業全般がヤバいので、あっちこっちで連鎖倒産的な何かが始まってしまっている。

恒大集団だけでもかなり問題で、関係団体だけでも恐ろしい数の業者が関わっている。これで支払いでお手上げとなってしまったので、大量の失業者が出ていると思われる。

当然ながら、不動産開発業界全体がそんな状況なので、不景気になるのは避けられない。

中国の若年失業率、3月は16.5%に低下
中国の若年層の失業率が3月は低下に転じたことが17日公表の公式統計で示された。習近平指導部は若者の雇用促進への取り組みを強化するとしている。

失業率も数字は出ているけれども、それを信用していいかどうかは不明。支那政府はバラマキから局所支援にシフトするという話もあったが、その投資先がねぇ。

ハイテク産業への足枷

EV失速

この話も既にこのブログで結構ツッコミを入れたので簡単にしておきたいが、「次に来るのはEV」と言われて久しいが、世界的には減速傾向にある。

このブログではEVに関しては結構扱っていて、無数にある支那のEV企業がかなり過当競争をやっていて、それを率先しているのがBYDだという現実がかなりやばいというような話はした。

これが安売りをBYDが率先してやっているのだから、世も末である。

と、そんなわけで、切磋琢磨してEVの発展に貢献というより、足の引っ張り合いの様相を呈しているので、ちょっと先行きが怪しくなっている。支那政府としてもこの分野に随分と投資しているので、ここでコケるとかなりやばい。

AI、半導体分野

今力を入れているのがロボット、AI、半導体あたりのハイテク分野だが。

中国AI企業、アライアンス結成 新製品も披露 上海の世界大会

2025年7月28日午後 5:49

中国の人工知能(AI)企業は、国内エコシステムの開発を目指し、新たな業界アライアンスを2つ発足させたと発表した。対外依存度を減らし、米国の半導体輸出規制に対抗する。

上海で開催された世界AI大会(WAIC)で明らかにした。

新たに発足した業界アライアンスの1つは「モデル・チップ・エコシステム・イノベーション・アライアンス(模芯生態創新連盟)」。中国の大規模言語モデル(LLM)開発企業とAI半導体メーカーが参加する。

ロイターより

なにかアライアンスを組んで、シナジーを生み出そうとしているようなんだけど、自前の技術だけで何か対抗しようとするのは、なかなかリスキーだと思うよ。

おそらくはこの分野が一番有力なんだよね。ただし、AIや半導体が短期で不動産に代わるGDP比率や雇用を生み出すのは難しい。つまり、この分野を頑張っても支那経済が回復するかというと怪しいというのが実情である。

まとめ

というわけで。

  • 恒大は法的倒産済み、上場廃止で市場からも退場
  • 不動産依存モデルは限界、地方経済や雇用に深刻な影響
  • EV・AI・半導体への投資は進むが、旧経済の穴を埋めるにはまだ時間が必要
  • 恒大倒産は「旧エンジン終焉」の象徴。経済回復の道は依然として不透明

こんな感じなんだけど、冒頭のニュースはその状況と戦う最初の号砲になるかもしれない、と、そういう話なんだね。

コメント

  1. 砂漠の男 より:

    恒大の香港株式市場上場廃止が決まりましたが、上海Aのほうはどうなんでしょう?
    恒大は、巨大不動産企業なので、支那共の上のほうと繋がっているでしょうから、やすやすと清算させてもらえないかもしれませんね。「清算に10年以上」は確実でしょうか。
    恒大清算が前進した背景には、紅皇帝の権力低下が関連しているのかもしれませんね。