コメントで教えてもらったが、日本企業はホーチミンでもメトロを作っていたのか。マニラメトロを作っていたのは知っていたのだけれど。
ホーチミン:メトロ新路線2本を計画、投資総額5600億円
2025/08/19 15:16 JST配信
ホーチミン市人民委員会はこのほど、新たな都市鉄道(メトロ)路線2本の整備に向け、同市メトロ管理委員会(MAUR)を事業主体に指定し、プロジェクトの準備を開始する方針を明らかにした。
VIET JOより
あまり日本で報じられた記憶はないが……、これもJICAがやらかした件なんだよね。そういう伝え方をするのはやや悪意があるかもしれないが。
- JICAは国際協力の実績を持っている一方で、それなりの頻度でやらかしている
- 国際協力に当たって現地調査をしているのだから、リスクコントロール・リスクマネジメントはしっかりやるべき
- JICAの成果を第三者機関によって評価すべき時代が来ている
海外支援事業は大切だが
国際協力機構(JICA)
さて、ここ数日でJICA絡みの記事を幾つか書いた。
偶然ではあるのだが、何れも日本の国際協力機構(JICA)絡みの案件で、何れもやらかしている。JICAの業務は開発途上国への技術協力が中心で、円借款をするのもJICAを通じてだし、技術支援するにしてもJICAが絡んでくる。
金も人もJICAが絡んでくるので、なかなかの利権の集中っぷりである。
JICA情報漏えい、懲戒処分を1年2か月公表せず…「事実関係の照会に時間」
2025/01/01 05:00
フィリピンでの政府開発援助(ODA)事業の入札を巡る情報漏えい問題で、国際協力機構(JICA)が、漏えいした職員の懲戒処分を昨年7月まで約1年2か月にわたり公表していなかったことがわかった。JICAは就業規則で懲戒処分を「原則その都度公表する」と定めるが、今回のケースに関しては、取材に「事実関係の照会などに時間を要した」などと答えた。専門家は「処分の経緯も含め疑問点が多く、詳細に説明すべきだ」と指摘する。
~~略~~
一連のJICAの対応からは、国民に対する情報公開に後ろ向きな体質がうかがわれる。有識者の検証委員会には、再発防止に向け、徹底した調査が求められる。
讀賣新聞より
そして、割と内部は腐敗している。中の人にも噂を聞いたことがあるが、決して風通しの良い公明正大な組織ではない。
確かに、国際貢献をする立派な組織という側面があるのは事実ではあるが、それは税金で運営されていることを忘れてはいないだろうか?
現地調査もJICAの仕事
で、ホーチミンメトロの話になるのだが、実は随分と建設に時間がかかってしまったのだ、この地下鉄建設には。
日本支援で開業「ホーチミンメトロ」盛況は続くか 初の「都市鉄道」、渋滞の街で利用は定着する?
2025/05/09 4:30
ベトナム最大の商業都市・ホーチミン市(HCMC)では、急速な都市化と人口増加に伴い、交通渋滞や大気汚染といった課題が深刻化していた。これらの問題を解決すべく、日本の国際協力機構(JICA)の支援のもとで始動したのが都市鉄道(メトロ)建設プロジェクトだ。
~~略~~
このプロジェクトはJICAの円借款を通じて、日本の建設会社やエンジニアリング企業が大きく関与している。地下区間(CP1a)は三井住友建設とベトナム企業のJV、高架区間(CP2)は住友商事が統括し、システム関係(CP3)は日立製作所が受注。車両はすべて日本で製造され、東京メトロが現地職員への訓練プログラムを実施するなど人材育成も行っている。
東洋経済オンラインより
プロジェクトは2007年に始動し、当初の開業予定は2018年だったが、実際に運行が始まったのは2024年12月で、17年もの歳月を要した。
計画は5年も遅れたのだ。
不幸にも、武漢ウイルス感染症拡大による影響があったのは事実なのだが、計画通りであれば感染拡大以前に開業が可能であったはずだ。
事業予測や見通しの甘さ
つまり、ホーチミンメトロの建設はかなり見通しが甘かったと言わざるを得ない。
思えば、インドネシア高速鉄道の建設だって、時間をかけて現地調査を行い、見積もりを出してはいたが、そのまま建設していたら開通遅れの責任を取るのは日本企業であったはずだ。
「ホームタウン」事業もそうだ。果たして本当に相手国との意思疎通がしっかりとれた計画だったのだろうか?「誤解であった」「しっかり説明していく」と意見表明してはいたが、果たして事前調整はキチンと出来ていたのだろうか。
JICAは責任を取らない体質であることは、情報漏洩や勝手な処分を行ったことからも明らかである。
もちろん、JICAが毎年の事業実績説明やレポートを出している事実はあるが、事業評価を第三者機関に任せることはない。日本の行政全般に言えることだが、失敗構造を明らかにせず、誰も責任を取らない。税金を使っているという意識が薄いというべきか。
ホーチミンメトロは、JICAの有償資金協力案件で、案件形成の段階ではJICAが基礎調査・詳細調査を主導している。詳細調査に関しては日本のコンサルタント会社を使っているが、事業性調査などはJICAの責任の範疇であるはずだ。
ホーチミンメトロの案件では、以下のような問題があったとされる。
制度・行政面の遅延
- 用地取得の遅れ:補償交渉や立ち退き問題で年単位の停滞。
- 行政手続き:ベトナムでは外資建設プロジェクトに多段階の承認が必要で、手続きの煩雑さと遅さが最大のネック。
- 予算執行の遅さ:円借款を使うにも、相手国側の手続きや予算承認が必要。
技術・契約面の問題
- 現地施工体制の不足:先進国型の地下鉄建設ノウハウが現地ゼネコンに乏しい。
- 契約管理の難しさ:複数の工区を国際入札で分けるため、施工業者間の調整でトラブルが発生。
- 仕様変更:詳細設計で決めた計画が、施工段階で「安全基準や都市計画変更」により修正され、遅延に直結。
他にも資金敵要因や政治的要因があったようだが、幾らなんでも遅れすぎである。それも、遅延はホーチミンメトロだけのことではないのだ。既に何度も繰り返してきた話で、JICAもそれなりに気にして改善は試みているようだが、一向に改善されない。
これはJICA自身がこの手の案件について「責任を取る立場にない」と考えているに他ならない。
リスクを十分に調査すべき
このホーチミンメトロの案件では5年の期間延長によって、それなりに損害が発生している。
そして訴訟にまで発展しているのだが、これは本当にホーチミンメトロ管理委員会(MAUR)が相手なのかちょっと怪しい。
さらにこんな状況にも発展した。プロジェクトの長期化に伴い、日立製作所は2023年4月、工区工事の遅延による追加費用の補償を求め、ホーチミンメトロ管理委員会(MAUR)を相手取ってベトナム国際仲裁センター(VIAC)に申し立てを行っている。請求額は4兆ベトナムドン(約156億円)に上るとされる。契約上の工期延長とそれに対する補償責任を巡って、発注者と請負側の間で現在もなお係争が続いている。
東洋経済オンラインより
こういったリスクヘッジをするのは、本来、初期段階で調査を行っているJICAなのでは?と感じる。
しかし、有償乗車に移行してからの状況はいかにもお粗末だった。自動券売機の設置はなされているものの、それをバックアップするデータセンターの建設が遅延し発券システムが使えないため、マスターカードのみ対応のタッチレス決済、あるいはQRコード入り乗車券の手売りが臨時措置として採用された。
タッチレス決済で電車に乗れるといった文化そのものが浸透せず(そもそもカード保持者の割合も低い)、多くの市民が切符を買い求める列に並び、筆者が試乗した1月下旬には、購入完了まで1時間以上かかっていた。その上、自動改札機を初めて使う人々も多く、切符をどのようにかざしたら改札を通れるのか理解できていないといった状況も数多く目にした。
東洋経済オンラインより
運用面でもどうにもお粗末な部分が拭えず、これもある程度は見越しておくべきトラブルである。
もちろん、走り出してから考えた方が効率が良い面もあるだろうが、どうにも摺合せ不足が否めない。
それを強く感じたのが、「ブラジルのホームタウン」事件である。あれって、しっかり先方との意思疎通していれば起きなかった話で、今となってはJICAではなく外務省案件になりつつあるが、事前の調整をやっておくべきところがやっていなかったことが大きい。
成果はJICAに
なお、この記事はこんな風に結んでいる。
この点について宮崎氏は「日本政府・JICAへの感謝の言葉は明確に伝えられた」と式典を振り返り、メトロのプロジェクトについて「日本は共に山を登ってくれる存在として、現地政府にとっても大きな信頼の対象だった」と話す。
東洋経済オンラインより
成果は日本政府とJICAに捧げられたわけだ。
だが、この建設遅延の責任はベトナム側にだけあるのだろうか?制度不備や政治的なトラブルがあったのは事実だし、ベトナム側に責任の大半があるも事実だ。
だけど、海外事業の経験豊富なJICAは、ある程度予測できなかったのかな。過去のやらかしからも学んで欲しい。
ホーチミンメトロの話に戻せば、まだまだ地下鉄網の計画はあるし、利便性を高めるためにはある程度損益を被っても建設を進めるべきなのだ。だからこそ2号線も3号線もどんどん建設は進めて欲しいと思っているし、日本の技術や鉄道管理の運営方法についても伝えていくべきだと思ってはいる。
そういう面でJICAが素晴らしい仕事をしているのは事実だが、すべてが素晴らしいというわけではないんだ。反省すべきはしていくべきだろう。だって、税金を使って国益を追求する事業なんだぜ?効果測定をして、無駄な働きしているところはコストカットしていく時代だと思うんだ。
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