近況は「お知らせ」に紹介するようにしました。「注意して下さい」もお読み下さい。
スポンサーリンク

インドネシアで反政府デモ拡大

インドネシアニュース
この記事は約8分で読めます。

あらー、結構大変なことになっているね。

デモ暴徒化、政権に試練 大統領、議員手当見直し表明―インドネシア

2025年09月01日07時02分

インドネシアで反政府デモが拡大している。一部は暴徒化し、放火や国会議員宅の襲撃・略奪といった暴力行為が相次ぐ。事態収拾に向け、プラボウォ大統領は31日、国民の批判を招いている国会議員手当の見直しを表明。昨年10月に発足した政権は大きな試練を迎えている。

時事通信より

インドネシアの話題、このブログでは偶に登場するのだけれど、大抵、高速鉄道ネタを擦ってしまって申し訳なくは思う。ただ、本日は違う。

スポンサーリンク

政治と金問題

切っ掛けは国会議員への待遇

インドネシアの反政府デモは、暴動に発展しつつある。

デモのきっかけは、国会議員がジャカルタ首都圏の月額最低賃金の10倍近い住宅手当を受け取っていることへの反発だった。プラボウォ政権が学校無料給食など大統領の肝煎り政策に予算をつぎ込み、他の事業費を削減する中、国会議員の特権的な待遇への批判が噴出した。

時事通信「デモ暴徒化、政権に試練」より

インドネシア大統領は、ジョコ氏からプラボウォ氏に後退したのが去年のこと。ジョコウィ政権の時には、インドネシアの防衛大臣を務めていた人物だが、軍人出身の脳筋気味の人らしい。

現政権開始時から、学校無料給食などちょっと常軌を逸した方針を採っていたが、あっという間に株価が下がる始末。

その後どうなっていたかは気にはなっていたんだ。インドネシア経済は比較的好調だと聞いていたから、「黄金のインドネシア」政策くらいでは揺らがないとは思っていた。

だけど、バラマキ批判はあったようで、その上で国会議員への特権的な待遇として高額な住宅手当を受け取っていたことが発覚して炎上。

死亡事故を切っ掛けに暴徒化

それに輪をかけて困ったことになったのは、こちら。

これを受け、学生らは25日にジャカルタの国会付近で大規模なデモを実施。続く28日のデモの際、バイクタクシー運転手の男性が警察車両にひかれて死亡したことで、抗議運動は激化した。

デモは国内各地に波及。複数の都市で地方議会庁舎が放火され、29日にはスラウェシ島マカッサルで議会職員ら4人が死亡した。30、31両日には、ジャカルタなどで暴徒化した市民がムルヤニ財務相や国会議員の家に押し入り、家財を略奪・破壊した。

時事通信「デモ暴徒化、政権に試練」より

まあまあ酷いことになっているらしい。

この状況で、流石に外交日程をこなすことが出来なくなって、訪日もキャンセルしたという報道があった。

インドネシア、抗議デモ激化で首都に軍配備 重要施設には狙撃手

2025年9月1日 18:25 

インドネシア各地では1日、議員手当など政府の経済政策に抗議するデモが続き、治安確保のため首都に軍が配備される中、一部デモには数千人が参加した。抗議は激化し、これまでに6人が死亡している。

1日午後、ジャカルタの国会議事堂周辺で行われた抗議集会には、少なくとも300人が参加し、兵士数十人が監視に当たった。AFPの記者によると、スマトラ島パレンバンでは数千人、ボルネオ島バンジャルマシンやジャワ島の主要都市ジョグジャカルタでは数百人が抗議に加わった。

AFPより

これに対して、議員手当てを撤回するなどの対策を検討しているようだが、既に軍隊など出動する事態になっているので、簡単には収まりそうにない。

今のところ警察中心で動いてはいるが、自国の国民に対して銃を向けるような事態になって欲しくはないし、そうなってしまうと更に問題はややこしくなるだろう。

軍の権限拡大も影響か

ちょっと懸念しているのは、プラボウォ氏自身が軍人だった経験もあって、今年の3月に軍の権益拡大をやらかしているんだよね。

インドネシア、軍の権限拡大か 検察にも出向、民主化後退の懸念

3/16(日) 14:59配信

インドネシアのプラボウォ政権が国軍法改正による軍の権限拡大に乗り出した。現行法は約20年前、独裁政権崩壊後に民主化に向け軍の力を抑えるため制定された。プラボウォ大統領は軍出身。政府提出の改正法案は現役軍人の検察庁や海洋・水産省への出向を新たに許可する内容で、民主化の後退を招くと懸念が広がる。

Yahoo!ニュースより

この時も、民主化後退の懸念があるという懸念は出ていたが、軍政に戻る懸念を抱かせてしまっているだけに、今回の問題が拗れるとまた不安な事態を迎えかねない。

今回も治安維持を理由に軍を動員しているだけに、今後この問題は拗れていく可能性が高い。

市場もそう見ているようで、株価が下がっているようだ。

同氏はプラボウォ氏の警察と軍に対する指示を「明らかに抑圧的で威圧的」だと述べた。

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルのインドネシア支部は声明で、プラボウォ氏が反逆やテロといった言葉を使ったのは「過剰」だと述べた。

中国のバイトダンスが所有するTikTokは、インドネシアでのライブ機能を数日間停止したと発表した。

南スラウェシ州マカッサルの地元災害対策当局によると、日曜日の死者数は5人に上った。同当局によると、オンラインバイクタクシーの運転手が、諜報員だと非難する暴徒に殴打されて死亡したという。

ロイターより

それとこちらの情報がまたきな臭い。オンラインバイクタクシーの運転手が、暴徒に殴打されて死亡したと報じていて、冒頭のニュースと内容が違う。警察が手を出したという報道だったはずだ。

情報が錯綜しているのか、別件を扱っているのか。

インドネシア経済

実体と経済成長の乖離

さて、インドネシアの経済は、割と好調だといわれている。

インドネシア4〜6月GDP、消費刺激で5.1%増 産業育成に課題

2025年8月5日 16:49 (2025年8月5日 17:01更新)

インドネシア中央統計局が5日発表した2025年4〜6月期の国内総生産(GDP)は、物価変動の影響を除いた実質で前年同期比5.12%増えた。景気刺激策を受けて家計消費が回復し、成長率は1〜3月期の4.87%から高まった。足元では安価な中国製品の流入などで解雇が増えており、成長持続には不透明さが残る。

日本経済新聞より

ただ、8月の日本経済新聞の記事に指摘されるように、家計消費は増えているものの物価も上がっていて、にもかかわらず賃金上昇は鈍いようだ。

その原因が支那であるというのは笑えない冗談のような話だが、実際に、鉄鋼や家電製品など、安価で粗悪な製品がインドネシアに溢れているようだ。これは支那製品が粗悪と言うより、粗悪なものが流入し易い環境になっているという意味だ。

マクロ経済とミクロ経済

全般的には経済は安定成長をしているようには、見える。ただ、社会の不満はかなり溜まっているようで。纏めるとこんな感じ。

マクロ的には「安定成長」

  • 成長率:2024年のGDP成長率は約5%前後。資源価格の底堅さや内需拡大で東南アジアの中でも安定。
  • インフレ:比較的抑制され、通貨ルピアも大きな暴落は避けてきた。
  • 投資:インフラ・EV産業・ニッケル関連で外国直接投資が増加。

それでも国民が不満な理由

  1. 実質賃金の伸びが鈍い → 経済全体は伸びても、中間層以下の所得増加は緩慢。 → 特に都市の生活コスト上昇が早く、体感的には「暮らしが楽にならない」。
  2. 格差感の拡大 → ジャカルタなど都市部と地方の差、富裕層と庶民の差が目立つ。 → その象徴が「議員手当」の高さ。
  3. ポピュリズム政策の副作用 → 無料給食などは恩恵を受ける層もいるが、「持続可能性への不安」や「結局は税金でしょ」という冷ややかな見方も存在。

とまあ、こんな感じで「都市部の優遇が大きい」と感じているところへ、光学議員手当ての支給が発覚。お陰であっという間にデモが燃え広がった感じなのだ。

対米路線変更の影響

ただ、やや陰謀論めいた話が含まれてしまうが、昨今、アメリカとの関税交渉において、随分とインドネシアはアメリカとの関係改善を目論んだ。

これはアメリカ側の意向が強いのだが、インドネシアはニッケルなどの資源国であり、かつ今後成長の見込まれる国である。したがって、アメリカが支那との分断工作をしかけて、関税率を低く抑えた。

インドネシアと米国が19%で関税合意、両国大統領がそれぞれ発表

2025年07月22日

インドネシアのプラボウォ・スビアント大統領は7月16日、海外5カ国歴訪からの帰国後、記者団に対し、米国のドナルド・トランプ大統領との直接協議を経て両国が関税引き下げで合意に達したと明らかにした(7月16日付インドネシア大統領府プレスリリース)。トランプ大統領も7月15日(米国時間)、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、インドネシアからの輸出品に対する米国の輸入関税を19%に設定することで合意したと発信した。従来表明していた32%からの大幅な引き下げとなる。正式な協定文や共同声明はまだ発出されておらず、今後、詳細が確認される見通しだ。

JETROより

しかし、インドネシアの最大の貿易国は支那で、ニッケル、石炭、パーム油などを輸出する代わりに、スマートフォン、コンピュータ、家電など完成品や工業用機械、発電設備、電気部品など全般を輸入している。他にも化学製品や医薬品、繊維の原料など多額の輸入品がある。

だからこそ支那依存が強かったのだが、ここ最近、支那の経済が不調でインドネシアからの輸出品をあまり買ってくれなくなったこともあって、アメリカとの関係構築に傾いているんだよね。

ザックリ纏めるとこんな感じだ。

  • 米国との関税交渉で妥協 → 経済的に対米関係を修復。
  • 日本・豪州との安全保障連携強化 → 中国一極依存を回避。
  • 国内向けポピュリズム政策(無料給食など) → 中国資金頼みではなく、国内政治的支持を固める狙い。

こうした方針転換が、今回の騒ぎに影響している可能性は否定できないんだよね。現時点では証拠もないけれど。

上に触れたように、情報の錯綜っぷりがどうにも工作の可能性を臭わせる。もちろん、こんな混乱した状態では情報も錯綜するのが普通ではあるので、コレを根拠とするのもおかしいんだけどね。

コメント