うーん、列に並んでね、としか。
韓国、CPTPP加入検討 米関税に対応、日本の支持期待
2025年09月03日18時18分
韓国の李在明政権は3日、包括的および先進的な環太平洋連携協定(CPTPP)への加入を検討する方針を表明した。
時事通信より
しかしどういうロジックなんだろうねぇ、日本は支援しないけれども。
理想と現実の間で
貿易の多角化
韓国はどうやら貿易の多角化を狙っているようだ。
トランプ米政権の関税政策で輸出減少が懸念される中、貿易の多角化が急務と判断した。日韓関係の改善を背景に、韓国与党内では協定を主導する日本の支持を期待する声も上がっている。
時事通信「韓国、CPTPP加入検討」より
浮かんでは消えていく韓国のCPTPP加入なのだが、多角化ねぇ。
順位 | 輸出相手国名 | 輸出額(米ドル) | 輸出シェア(%) |
---|---|---|---|
1 | 支那(本土) | 約1,330億ドル | 19.5% |
2 | アメリカ合衆国 | 約1,284億ドル | 18.8% |
3 | ベトナム | 約583億ドル | 8.5% |
4 | 香港 | 約350億ドル | 5.1% |
5 | 台湾(中華民国) | 約340億ドル | 5.0% |
順位 | 輸入相手国 | 輸入額(米ドル) | 輸入シェア(%) |
---|---|---|---|
1 | 支那 | 約1,386.2億ドル | 22.5% |
2 | アメリカ合衆国 | 約736.6億ドル | 11.9% |
3 | 日本 | 約546.4億ドル | 8.9% |
4 | オーストラリア | 約329.1億ドル | 5.35% |
5 | サウジアラビア | 約242.7億ドル | 3.9% |
韓国の貿易相手は、5位までに金額ベースで輸出(約55%)も輸入(約52%)も半数を占めていて、支那とアメリカが如何に重要な貿易相手かがこの表からも分かる。
このデータは2024年の取引ベースで纏めたものだが、金額ベースで比較すると、アメリカとの貿易は黒字、支那との貿易は赤字になっている。
今後、対アメリカの輸出に関税がかかってくるために利益が目減りする可能性が高い。更に、輸出品の競争力が相対的に低下しそうなので、アメリカとの貿易は今後かなり厳しい展開が予想されている。
韓国はこうした実情を「多角化」によって打開したいと考えているという意味だ。
実現可能性はどうなの
では、これが本当に成功するのか?という話をすると、たぶんこのブログの読者の多くが「駄目なんだろうな」と感じているのだと思う。直感的にはわかるが、では具体的にどんな事になりそうなのか、言及していこう。
報道では「GDPが数百億ドルも押し上げられるかも」と書かれているんだけど、安心して欲しい。いつもの薔薇色回路だ。
CPTPPのルールってそんなに甘くない
CPTPPに加入したらどうなるのか?という話の前に、加入できるのか?というところが問題となる。
ザックリ、加盟にあたって必要な事項を纏めると次のような感じになる。
- 加盟申請と承認
既存加盟国全員の同意が必須。承認まで数年かかることも。 - 関税・非関税の自由化
ほぼ全品目の関税撤廃。規制や認証などの障壁も緩和が必要。 - サービス・投資の開放
金融・通信などのサービス分野の市場開放。外国投資家保護(ISDS)も必須。 - 知的財産権の保護
特許・著作権・種苗など高水準での保護が求められる。 - 労働・環境・企業規範
労働基準の順守、環境保護、国有企業・政府調達の透明化が義務。 - 国内制度の整備
CPTPPルールを国内法に整備できなければ加盟承認は得られない。
見ていただければ分かるが、韓国にはまだまだクリアできていない課題が多く、簡単には加盟できないのが現実だ。なので、お手軽に「GDPが数百億ドル増えるカモー」とかいう試算は、かなり楽観的だと言わざるを得ない。
抱えている課題
韓国の貿易に関する実情は極めて厳しい。
こちらにレポートされているように、2025年の輸出・輸入は何れも減少すると見込まれている。輸出は韓国国内総生産(GDP)の約4割を占める経済の「屋台骨」であるので、それが揺らぐ事態を迎えているのだ。
既に内需も厳しい状況になることは分かっていて、韓国政府は予算を増やさざるを得ない。
韓国政府 26年度予算8%増の728兆ウォン 拡張編成へ
Write: 2025-08-29 13:48:15/Update: 2025-08-29 17:53:44
韓国政府は29日、閣議を開き、2026年度の予算額として、ことしに比べて8%以上増額した728兆ウォンを編成し、財政拡張の政策姿勢を示しました。
KBS WORLDより
税収は減るけど経済を回さねばならないので、政府負債を積み上げるしかない。来年は141兆ウォンを積み上げて、政府債務残高が1415兆2000億ウォンになると予想されている。企業債務も家計債務も積み上がり続けているので、ちょっとくらい上がったところで騒ぐことはないのだが、このままではジリ貧であるのは間違いない。
で、輸出を増やさねばならず、多角的な輸出先を増やしたいので、CPTPPに加入とか言い始めたのである。
だが、韓国が狙う輸出品目は半導体、自動車、石油化学、家電あたり。でも、関税がちょっと下がったところで、中国製品や日本製品に勝てる保証はない。要するに、CPTPPはすぐに輸出が増える“魔法の杖”ではない。
立ちふさがる障壁
実際に韓国が立ち向かうと想定される課題は以下の通りだ。
1.加盟申請と承認
- 課題:加盟には既存加盟国全員の承認が必要。特に日本の承認が最大のハードル。
- 理由:福島水産物輸入規制や種苗法の知財問題、過去の産業スパイ事件など、不信要素が多く、日本が簡単に承認する可能性は低い。承認まで数年かかる見込み。
2. 関税・非関税の自由化
- 課題:農業や一部製造業、サービスで既存保護制度が多く、関税・非関税障壁の撤廃が困難。
- 理由:国内既得権との摩擦が大きく、法律・規制の改正には時間と政治的調整が必要。現実的に全分野で自由化するのは容易ではない。
3. サービス・投資の開放
- 課題:金融、不動産、通信などの市場参入制限を緩和する必要がある。
- 理由:特に不動産市場や金融市場は家計債務が高く、海外資本流入による過熱リスクがある。投資ルールの開放はマクロ経済リスクを伴う。
4. 知的財産権の保護
- 課題:特許、著作権、種苗などの知財保護制度をCPTPP水準に引き上げる必要。
- 理由:韓国は過去に技術流出や特許紛争の問題があり、高水準の知財ルールを遵守しなければ他加盟国の信頼を得られない。
5. 労働・環境・企業規範
- 課題:労働基準、環境規制、国有企業・政府調達の透明化を実施する必要。
- 理由:国内の既存制度や慣行との調整が必須で、特に国有企業や政府調達の優遇慣行を改めるのは政治的に難しい。
6. 国内制度の整備
- 課題:CPTPPのルールを国内法に整備し、実務レベルで運用可能にする必要。
- 理由:上記すべての改革を反映した法律・制度整備がなければ加盟承認は得られず、実務上は数年の時間と政治的労力が必要。
丁寧に説明したが、要はCPTPPが課している加盟ハードルは、韓国にとって非常に高い上、承認までに数年以上かかると見られる。
特に日本の抵抗は大きいと予想される
「石破政権下であれば、或いは」と、ミョンミョンは甘く見ているとは思うのだが、実際に韓国がCPTPPに加盟する為に一番高いハードルは日本になる可能性がある。
歴史問題ガーとか、そう言うレベルではなく、構造的に難しいのだ。
日本は、韓国に対して「福島水産物の輸入規制」や「種苗法・知財問題」、さらに「過去の産業スパイ事件」など、不信要素が山積みです。貿易には関係ないが、火器管制レーダー照射事件という重い課題も抱えている。
したがって、正直、日本が簡単に「OK」を出すとは思えないし、安易に認めればCPTPP全体の信頼を損なうことになる。
韓国も甘い考えを持って入るが、ある程度は分かっていることだろう。
経済より外交のカード
まとめると、韓国のCPTPP加盟検討は、経済効果よりもむしろ外交カードとしての意味が大きいのだろう。
- 米中依存の緩和 → 経済的安全弁
- 日本との関係改善 → 外交的アピール
- 国内向け自由貿易のアピール → 景気演出
こんな感じで、現実の経済効果は限定的。数年かかる加盟交渉と制度改革を考えると、「すぐに経済が好転する」と期待するのは、かなり甘い見通しだと言わざるを得ない。
しかしミョンミョンはそこまで甘い男ではなく、冷徹な機会主義者の側面はあると思う。
だから、おそらくは「CPTPP加入検討」は韓国産業界への見せカードの1枚なんだろう。韓国のために交渉を頑張ってるんだぜ、俺、という演出の可能性が高い。本格的に解決する気はなさそうだけどね。
コメント
こんにちは。
今から列に並んだとして、承認が先か、国が亡くなるのが先か、チキンレースっすね。
※承認直後に亡くなるという事も。
※わーくにがアホンダラ政権になって、横入りを許すようだと、もうCPTPP自体が無意味になりますね。
こんばんは。
とりあえずは良さそうだからCPTPPにコナかけてみた、程度のことだと思いますよ。
TPPの時にはアメリカとか他の諸外国とFTAがあるから貿易経済圏(笑)で世界屈指の国だって言っててTPPには興味が無いって言ってたのにw
アメリカがFTAでブチ切れたり、中華の方が輸出が多くなって青色吐息になってからCTPPにすり寄るあたりが韓国っぽいw
まあまずはルールを良く読み返して順守した上で列の最後にお並び下さいませ
あー、ありましたね。
そして、アメリカが抜けた時に「ザマーミロ、間抜けめ」と大喜びしていましたっけ。
「判断が遅い!」と殴ってもらわないと。
(どこかに韓国が強行突破可能な抜け穴がないか探ってみましたが) ムリです。
まあ、なんというか支那や韓国が入り込めないルール作りが目標でしたし。
逆にCPTPPに入れるのであれば、それだけ自由化されたってことで、害がなくなるんですよね。