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経済崩壊と独裁国家

国際ニュース
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ロシア経済の苦境を示すようなニュースではあるが、これについて「ロシア経済はいつ崩壊するのか」と揶揄するコメントが付いていたのに気がついた。

ロシアの自動車販売店が一斉に閉鎖し始めた

2025年9月11日

ロシア自動車市場の危機は自動車販売店にも打撃を与えている。年初から9月1日までに、国内の販売店とショールームの数は9%減少し、7284店となった。しかし、人口100万人以上の都市では、閉鎖率がさらに高かった。

モスクワタイムスより

これに関しては「支那経済崩壊」やら「韓国経済崩壊」「北朝鮮経済崩壊」なども同じパターンがあって、「経済崩壊」という言葉を使うと、「未だ崩壊していない」という反論が出ることがままある。

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経済崩壊の意味

実体経済はどうなっているのか

だが、そもそも「経済崩壊」をどう定義しているのだろうか?

ジンバブエで発生した、ハイパーインフレみたいな分かり易い状況を想定しているか、或いは政府の財政破綻(デフォルト)が起こって、政権維持が不可能になることだろうか。あれも経済崩壊の一態様ではあるが、大体、「○○経済崩壊」という言葉が使われるケースで、意図することは、経済の持続性が失われたということであって、分かり易いパニックのような状況が生まれるとは限らない。

ロシアも支那も「延命可能な状態」ではあるが、既に以前の経済状況に戻れるポイントはとうに過ぎている。長期的な復元力まで考慮して、復活が可能か?で評価が分かれるとは思うが、ロシアも支那も北斗の拳風に言えば、「オマエは既に死んでいる」状態だ。

だから「いつ崩壊するの?」という問いに対しては、「もう崩壊している」と言わざるを得ない状況なんだけど、目に見えておかしな状況ではなく経済状態が小康状態で続いているので、「いつ崩壊するのか」という話になるんだろう。

僕に言わせれば、「死んでいないだけで生きているとは言えない」という状況なんだけどね。

150歳まで

先日、こんな面白いニュースが流れた。

習主席とプーチン大統領の会話 ロイター通信が配信取りやめ

2025年9月9日 13時27分

ロイター通信は先週、中国の北京で行われた軍事パレードなどに出席した習近平国家主席とロシアのプーチン大統領が長寿に関する会話をしている様子だとして伝えた映像について、提供元の中国の国営テレビから使用が禁止されたとして配信を取りやめました。

~~略~~

この中では、プーチン大統領が通訳をはさんで「臓器移植によって不老不死は実現できる」と話したのに対し、習主席は「今世紀中に人類は150歳まで生きられるようになるかもしれない」などと応じていました。

ロイター通信は、提供元の国営の中国中央テレビから許可を得て映像を配信していましたが、中国中央テレビからこの映像の使用が禁止されたとして5日に配信を取りやめました。

NHKニュースより

雰囲気的には、悪代官が「お主も悪のよう」と言い、三河屋が「お代官様ほどではございません」と笑うシーンにも見えるのだが、状況を変えてみるとかなりシュールなシーンに映る。

支那国営テレビから「不適切だ」と報道取りやめを求められたという話だが、臓器移植の話は実際に存在するだけに笑えない。支那の医療技術は実例に支えられて発達していて、特に臓器移植技術は世界トップレベルである。そうした事実を踏まえて考えると、なるほど適切とは言い難いだろう。

そして、ここに集まった三カ国のことを考えると、更に別の側面も見えてくる。

各国の状態

ロシア経済の話

大枠で低迷

しかし、これは経済の話に通ずるものがある。

現状のロシアはこんな感じになっている。

  • ルーブルは不安定ながらも流通している
  • スーパーに品物は並んでいる
  • 政府の統制が強く、社会秩序も維持されている

こんな状況なので、崩壊しているように見えないのは事実だが、内実は延命措置の積み重ねに過ぎない。

  • 制裁による孤立化:西側の金融・ハイテク・資本市場から切り離され、技術更新が停滞 → 戦争終結後も制裁解除は当面見込めず、経済的安定は危うい。
  • エネルギー依存:石油・ガス収入に頼る体質がさらに強まり、価格変動に脆弱 → 経済制裁の影響を色濃く受けた結果であるため、この状況も回復は難しい。
  • 人口・人材流出:若年層やIT技術者が国外に流出、労働力が戦場へ流出 → 戦争終結後も当面回復の見込み無し
  • 軍事費負担:ウクライナ戦争で国家予算の多くが軍事に吸われ、民生分野が圧迫 → 戦費捻出のために債務を積み上げているので、これを清算する見込みが立たないウチは経済への悪影響は避けられない
  • 戦時から平時への切り替えが困難:現在は戦時経済で国家予算の3割が軍事費に当てられていて、歳入は先細りの状況にある

特に原油の輸出などで混乱

石油やガス収入に頼る状況を迎えていたのは2024年の話で、外貨獲得のために努力していた原油・石油製品輸出は2025年に入ってから低迷気味である。

ロシアの原油・石油製品輸出が伸び悩み、生産能力維持に疑念-IEA

2025年7月14日 14:01 JST

ロシアによる原油・石油製品の輸出が伸び悩み、同国の生産能力維持に疑念が生じていると、国際エネルギー機関(IEA)が11日公表した月報で指摘した。

Bloombergより

輸出が伸び悩んだ理由は主に3つ。

  • 西側諸国がロシア産原油を輸入しないように各国に働きかけたこと
  • ウクライナの空爆によって最低でも17%の製油能力が失われている
  • 輸出用のタンカーの確保が難しくなってきている

そして、これまでは輸出向けに国内需要分を振り返る形で原油の確保を行っていたのだけれど、国内のガソリンが高騰し始めたので、遂に輸出を絞らざるを得なくなった。

ロシア、8月にガソリン不足の可能性 輸出禁止でも=関係筋

2025年8月4日午前 11:56 GMT+92025年8月4日更新

ロシアは8月にガソリン不足に直面する可能性があると、複数の関係筋が1日明らかにした。輸出禁止措置にもかかわらず、国内在庫の減少、季節的な需要のピーク、国内製油所の補修作業などが影響を与えるためという。

ロイターより

ロシア国内でのガソリン需要は輸出分より遙かに多いので、輸出禁止したところであまり意味はないようだが、それでも輸出を禁止せざるを得ない事態に追い込まれたのである。

それが、冒頭に紹介したディーラーの話に繋がる。

ロシア自動車販売協会(ROAD)のアレクセイ・ポドシェコルジン会長は、既に閉鎖が進んでいるのはそれだけではないと指摘する。ディーラーの約3分の1が深刻な財政難に陥っているか、廃業寸前だ。同会長によると、新車需要の低迷は損失と利益の減少につながり、販売コストが上昇しているという。「ロシアでは、地方ディーラーの年間販売台数はわずか220~250台、首都圏では約400台だ。ちなみに、米国ではこの数字は年間約1000台だ。

モスクワタイムス「ロシアの自動車販売店が~」より

国内のインフレ基調による購買意欲の低下は、燃料費の高騰という側面からも悪影響が出ているという意味だ。

継続性どころか回復の兆しすらない

というわけで、総合的に見ると、歳入の先細りは確定的であり、その回復も見込めず、人材の枯渇という点も勘案すると、ロシア経済の回復の可能性は低いとみるしかなく、「もう崩壊しているのでは?」というのが僕の感想である。

支那経済の話

成長モデルの破綻

では、支那はどうか?というと、こちらも大枠で考えるとかなりヤバイ。この辺りの話はこのブログでも散々やったので、簡単に済ませておく。

  • 世界第2位のGDP規模があり、製造業と輸出力は依然として強大
  • 失業や物資不足で社会が成り立たない「全面的な崩壊」には全く至っていない
  • 国家統制が強く、危機的局面では「強制的に抑え込む力」を発揮

まあ、表面的には問題ないように見えるわけだ。

しかし、「成長モデルの破綻」が深刻であるのもまた事実。

  • 不動産バブルの崩壊:恒大集団など大手が破綻し、膨張させた住宅需要が大幅に縮小 → 実質上破綻しているが、多くの企業を倒産を許されていないので不良債権処理が進まない
  • 地方政府の財政難:土地売却収入に依存してきたが、不動産不況で財源が失われている → 融資平台による資金調達ロジックが崩壊し、債務だけが積み上げられたため、この債権処理をしなければ負債が膨らむ一方である
  • 人口減少:労働力が減り、高齢化が急速に進行 → 先進国はどこも似た状況ではあるが、世界最速の韓国に次いで酷い数字である。ただし、数字が信用出来るかはまた別
  • 外資撤退・技術制約:米国の規制で半導体などハイテク分野で自給できず → 時々、自前で供給可能という話は出るが、続報が聞こえない程度には苦戦している。
  • 国内需要不足:若年層の失業率が高く、消費マインドが冷え込んでいる → 若年失業率の実態は5割に近いという分析も

不動産開発の失敗

支那の場合は、これに尽きる。

  • 不動産バブル崩壊で、未完成マンション=事実上の廃墟予備軍 が大量に存在。
  • 資金を突っ込んだ共産党員や地方政府は、損失を認めると自らの破滅を招くため「先送り」するしかない。
  • 表面化すれば、銀行システムを巻き込む金融危機に直結。 → つまり「死んでいるのを隠している」状態。

GDPに匹敵する不良債権の規模

この不良債権の額なんだけれど、少額であれば「悪い部分を切除」という対処方法がとれる。多額の借金を抱えていても、「良い部分だけ活かす」ことで、延命措置は可能だ。実際、日本はそれをやってその後長く苦しんだ。

ところが、支那の場合はこれが巨額である。

  • 支那全体で数百兆元レベルの債務が積み上がっているという推計もあり、これは日本の国家予算を軽く超え、支那GDPの半分〜同等規模に迫る可能性がある
  • これだけの「死に金」を抱えた経済は、外見上の成長率に関わらず、内側から腐敗が進行している

処理する方法が無いという絶望的な状況なのだ。

「技術覇権」での逆転可能性は?

で、こういった実態はある程度は支那共産党の指導部は把握しているのだけれど、じゃあこれを産業を発展させることで覆すことができるかというと、これがまた怪しい。

  • EV:国内補助金頼み、欧米では規制・反発
  • 半導体:米国の規制で先端技術にアクセス不可、自前開発も限定的
  • 電池:技術的な強みはあるが、安全性にかなり懸念があるために市場を席巻出来るレベルには至らない
  • AI:データ規模では強みがあるが、基盤ハード(半導体)が詰んでいる
  • ロボティクス:産業用ロボットの年間設置台数で世界トップだが、国内需要が殆どで外国への輸出にはハードルが高い → 技術での「ジャンプアップ」シナリオはほぼ封じられた

大雑把な判定なんだけど、こんな状況だ。いずれかの分野で大幅にシェアを伸ばす可能性は否定しないけれど、それで経済回復ができるかといえば、不可能だろう。

特に、人口減少が始まっているというのがキビシイ。少なくとも内需拡大はかなりキビシイ。

詳しくは言及しないが、韓国も似たような状況だね。

北朝鮮経済の話

既に崩壊

北朝鮮の経済についてはもはや論評する必要性も感じない。簡単に纏めておくか。

  • 市場経済が正常に機能せず、国営配給制度も事実上破綻。
  • 慢性的な食料不足やインフラ不全。
  • 外貨収入源(石炭輸出、労働者派遣、武器輸出)が制裁で大幅に制限。
  • 経済統計が公開されないため正確な数字は不明だが、通常の意味での「経済成長」や「安定」は存在しない

これだけ見れば、もう破綻していると言っても過言では無いだろう。

だが、独特の延命メカニズムがあるので、生きながらえている。

  • 軍事優先体制:「国防・軍需」を最優先にして資源を振り分けることで政権を維持。
  • 非合法経済:密輸、暗号資産ハッキング、武器輸出などで外貨を得ている。
  • 支那からの支援:最低限の貿易と食糧・燃料供給がある。
  • 統制社会:情報封鎖と強権支配で、不満が爆発するのを抑えている。

そして、上で指摘してきた通り、支那も援助する余裕がなくなってきていて、持続性?ナニソレ美味しいの?という状態なのである。

独裁国家だからこそ

もう自分の努力ではどうにもならない

というわけで、三カ国それぞれ言及して(途中韓国の話題を挟んだが、それは割愛する)みたが、何れも、もはや自国だけで復活を遂げるのは不可能な状況を迎えている。

既に、北朝鮮やロシアはかなりの部分、支那による支援に頼る部分がある。だからこの2カ国に関して言えば、このような評価が適切だろう。

  • 経済としての自立性はほぼゼロ。
  • 国民生活は「ギリギリ餓死しない程度」で維持されている。
  • 本質的には「すでに崩壊しているが、政治体制がそれを隠蔽・固定化している」と表現するのが適切。

ロシアの方が資源があるだけまだマシかなぁ。

外資を導入しないと

ちなみに、支那も外資を呼び込もうと必死だ。

外資の24年対中投資、3年で99%減 中国離れ止まらず - 日本経済新聞
【北京=塩崎健太郎、多部田俊輔】中国国家外貨管理局が14日発表した2024年の国際収支によると、外資企業の直接投資はピーク時の21年と比べて99%減少した。経済減速やスパイ摘発への懸念で外資の中国離れが止まらない。24年の対中直接投資は45...
中国、外資企業の国内再投資奨励・支援策を発表(中国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース

しかし、一旦チャイナリスクに気がついてしまった外資は、もはや投資どころではない。特に、アメリカとの関税戦争に巻き込まれるのはゴメンなのと、投資回収が難しいことに気がついてしまったことが大きい。

ここで冒頭の臓器移植で延命の話を思い出して欲しい。

ロシア、支那、北朝鮮の何れも、経済的に新しい血肉を外国から呼び込まないことにはもはや先が見通せない状況になっている。意図的なのか、そうでないのかは分からないが、「延命」ということの意味が違って見えたということは、そういう意味である。

経済崩壊したかどうかは、定義によるので人によってはその言葉を否定したくなるのも分かる。見た通りであれば、「まだ」だしね。ただし、継続不能かつ長期に渡り回復を見通せない、問題解決のためには一度壊さないとどうしようもない状況が見えてしまうと、あれはもう崩壊状態だよねと、そう思うわけである。

コメント

  1. 匿名 より:

    ロシア連邦中央銀行総裁はクリミア半島占領後のロシア経済立て直しを評価されていた
    ウクライナ本土進攻後に辞表を出したが却下されている
    次の辞表を出したらスメルチされそう

    • 匿名 より:

      PS
      日米関税交渉で日本はドルに対して円安固定、円金利に対してドル金利高固定の連環の計に持ち込んだのかな?

  2. 匿名 より:

    実はロシアにはアフトワズという自動車メーカーがあり、ロシア国内ではまあまあ売れています。旧ソ連の名残ではありますが、一応は自動車を製造する下地はあるみたいですね。

  3. 砂漠の男 より:

    ロシア経済は相当苦戦中。トルコやカザフスタン経由で工業必需品を迂回輸入してますが、
    原油・天然ガスの取引で溜まってしまった人民元をオフショアで換金して支払いに充てたり、
    金(Gold)やプラチナもかなりの量を支払いのために売却したようです。
    支那はBRICSを中核に、人民元建ての経済ブロックを創設したいのかもしれませんが、胴元の経済力が落ちてきたので、昔ながらのバーター取引が増える気がしています。