熊かー、熊なぁ。
秋田県の鈴木知事、自衛隊派遣の検討を要望へ 相次ぐクマ被害受けて
2025年10月26日 掲載 2025年10月26日 更新
秋田県の鈴木健太知事は26日、県内で相次ぐクマの人身被害を受け、防衛省に自衛隊派遣の検討を要望する考えを明らかにした。
秋田魁新報より
気持ちは分かるけど、現行法制では全く無理だよね。
組織立ち上げて法整備が急務
実は猟友会が一番装備が整っている
ネットを見ると、意外に「自衛隊に出てきて貰おう」という意見に賛成する人が多い印象なんだよ。でも、このブログでも何度か扱ったけれども、現行法制では無理なんだよ。
秋田県知事の鈴木氏の意図は、熊駆除やそのクレーム対応まで行政に任されるのは困るから、全部自衛隊に押しつけようというもの。
なかなか浅ましいことではあるが、気持ちはわかる。
でも、無理なんだよね。過去の記事でも言及したように、今の警察や自衛隊にも対応は出来ない話なんだよ。その辺りを少し整理していこう。
先ずは猟友会なんだけど、熊撃ち用の猟銃を持っている方はいて、そのノウハウがある人もいるんだよね、今のところは。ところが以下のような問題がある。
- 猟友会依存の構造 現状では、クマ駆除は基本的に警察の許可を得た猟友会に頼る形で熊の駆除が行われる。しかし、猟友会は市街地での発砲は大きな制約があり、危険な地域では対応できない。
- 費用負担の不明確さ 駆除にかかる必要経費はハンター自身が持ち出すケースが多く、行政からの手当も不十分。出動しても赤字になるため、現場としては「頼まれても引き受けられない」という状況になる。
- 行政と現場の齟齬 地元自治体は「駆除してほしい」と要請しますが、実際に対応する人員・体制・予算が整っていない。このため、法的・経済的に現場が動けないまま、クマ被害が続く悪循環が生まれている。
結局、猟友会って趣味の延長で、そのスキルもノウハウも人によって様々である。熊撃ち出来る地域というのは意外に少ないので、地域性があるのも問題なんだよね。それでも、猟銃を持っている人はいるので、「お願いする」というのが現状の熊害対策なんだよね。
警察では対応できない
では、警察が対応できるかというと、これは難しい。
- 発砲の制約
- 市街地や住宅密集地では安全上の理由で発砲できない。
- だから、クマが市街地に出没しても実質的に駆除できない。
- 装備・訓練の不足
- 警察の装備は基本的に人対人の治安維持向けで、野生動物駆除向けではない。
- クマに対する安全かつ効果的な対応が難しい。
- 警察官の個人防護具(防弾チョッキなど)は人間相手の仕様で、クマの攻撃にはほとんど無力。
- 人的リソースの制約
- 現場対応にあたる警察官の負担が大きく、恒常的な駆除体制を維持するのは困難。
端的に言うと装備がないのが警察の問題で、SAT(Special Assault Team)という対人特殊部隊がいるのだけれど、対人治安維持・制圧に特化しているため、熊害対策に有効な装備があるとは言い難い。
相次ぐクマによる人身被害、自治体が対策拡充…襲われた住民に見舞金・猟銃用ライフル射撃場の整備も
2024/12/14 05:00
クマによる人身被害が相次ぐなか、各自治体がクマの市街地出没や被害を減らそうと、対策を拡充させている。警察官の防護装備の導入、果樹の伐採、ハンター用のライフル射撃場の整備など、地域の事情に応じた取り組みに力を入れる。
読売新聞より
こんな報道もあったけれども、フルフェイス型ヘルメットや防護衣と手袋などが導入されたところで、対した対策にはならない。結局、ライフルの配備と射撃訓練は不可欠なのだ。
自衛隊にも無理
では、冒頭の記事にあるような自衛隊への要請はどうなのか?というと、これも難しいのが現状である。
自衛隊がクマ駆除に対応する場合の問題点
- 法的制約
- 自衛隊法や鳥獣保護法の制約により、原則として駆除任務には出動できない。
- 過去に事例はあるものの、法制度が不十分で恒常的な対応は困難。
- 市街地での活動リスク
- 自衛隊の装備・戦術は軍事用途向けであり、市街地での安全な駆除作業には適していない。
- 指揮系統・責任の不明確さ
- 自衛隊が駆除を行った場合の責任や報告・許可ルートが明確でない。
- 法的責任や事故発生時の対応が不透明。
- 現場投入のハードル
- 自衛隊を動かすには防衛省・自治体間の調整や政治的判断が必要で、迅速対応が難しい。
- 恒常的対応の困難
- 仮に出動しても、駆除のために継続的に自衛隊を投入することは現実的ではない。
保有している装備は野生動物駆除に使えるようなチョイスになっておらず、訓練も行われていない。法制度も装備も熊害対策になり得ないのが実情なのだ。
スペシャリストを養成せよ
というわけで、僕自身のこの問題に対する結論は、短期的には特別予算をつけて猟友会に参加して貰うようお願いして、中・長期的には専門チームを作れということだ。当然、法整備も必要である。
この手の分野の管轄は環境省なので、環境省直下の組織として野生生物対処チームを作るべきだろう。
現在、害獣駆除という立ち位置で立ち回れる組織は存在しないので、こうした生物の調査・駆除をメインとした組織を作るべきだと思う。全国各地に飛び回るような一元管理する組織を1つ置いて、地方自治体と連携して害獣駆除を行っていくというスタンスの組織を作るべきだろう。
アメリカには、USDA-APHIS の Wildlife Services という連邦政府直轄組織があって、野生動物による被害に対応しているので、こうした組織が参考になるだろう。
とはいえ、既にその必要性に気がついて特定非営利活動法人Wildlife Service Japanという組織が立ち上げられているんだけどね。この非営利団体が機能しているかはよく分からなかったので、改めて別の組織を立ち上げるべきなんだろう。
いずれにしても、環境省直下の組織として予算措置をし、クレーム対応の窓口なども含めて整備する必要があるんだと思う。そして、それとは別に教育・予防・地域指導担当を置いて、問題のある地域に指導をしていくようなスタイルを確立していくべきではないだろうか。




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