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【コラム】インドネシアで膨張するアルミ精錬と支那の国内事情

インドネシアニュース
この記事は約5分で読めます。

ちょっと意味が分からない記事だったので、少し調べてみたのだが……。

中国企業、インドネシアでアルミ生産拡大 供給過剰懸念高まる

2025年10月28日午前 11:18

中国企業がインドネシアでアルミニウム生産の大幅な拡大を主導する中、来年は世界のアルミ市場が供給過剰となり、価格が下落すると予想されている。

ロイターより

また厄介なことになりそうだよ。

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終わらない過剰生産

計画性のない計画経済

過去に支那経済に関して触れた中で、支那が国内生産が過剰で海外にダンピング輸出しているという話をしたことがあったと思う。

色々書いたが、そのものずばりの記事がなかったのでこちら。

これはUSスチール関連のニュースで、アメリカの鉄鋼業が安値の海外製品が入ってくることで滅びそうだったので、日本製鉄が買収するよという趣旨の話だった。

この安値の海外製品というのが支那製の鉄鋼だったりアルミニウムだったりするわけだ。

米232条鉄鋼・アルミ関税、約400品目の派生品を追加、8月18日から適用開始

2025年08月19日

米国商務省産業安全保障局(BIS)は8月15日、1962年通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミニウム製品に対する50%の追加関税に関して、約400品目を適用対象に追加する官報を公開した。米国東部時間8月18日午前0時1分以降に通関した商品に適用する。

JETROより

支那は共産党が特定分野の増強方針を掲げると、投資する企業や地方政府が殺到し、雨後の竹の子のように工場ができる。その結果、過剰生産に陥るという構造的課題がある。

国内の鉄鋼が余ると不動産開発問題や高速鉄道の不良債権化なども引き起こされ、余剰は海外に「一帯一路構想」として輸出される。EV市場やロボット開発でも似た構図が見える。

海外生産拡張の狙い

ところが今は「環境政策にも配慮」というのが支那共産党の方針となった。

その結果、支那国内では鉄鋼やアルミニウムの生産は抑制されつつある。老朽化した高排出設備は廃業や縮小の対象となり、電力消費・排出規制の厳しい工場は稼働を制限される。

しかし、支那企業は国内規制に従う一方で、海外では規制の緩い国を舞台に生産を拡張している。インドネシアはまさに打ってつけだ。石炭火力が豊富で規制も緩く、企業にとっては安価に精錬できる環境が整っている。

過剰生産で材料は余り気味ではあるが、未だにEVは人気があるしロボットの開発が目指されているので、需要にも期待が出来る。だからインドネシアで安いアルミニウムを大量に精錬しようということになったわけだ。

この支那共産党の二層構造の狙いは明白だ。国内では排出を抑え、国際的なイメージや政策目標を達成。海外では余剰生産を消化しつつ、経済的・政治的影響力を拡大する──政策の柔軟性は見事だが、国内失業やグローバル排出増加との矛盾はどうしようもない。

インドネシアにとっては天佑

一方のインドネシアだが、これから経済発展をしようとする国家で、外国からの技術移転は大歓迎である。特に鉄鋼やアルミニウムなどの素材は採掘が出来る上、国内で素材加工できるようになれば、製造業における国際協力の強化に繋がる。

政治家は特にそうした生産力の増強には歓迎ムードで、生産業を国内に囲い込みつつあるが、そこに支那特有の問題も絡んできて、今はインドネシア政界は汚職で大揺れ。

ゴールドマン・サックスは、インドネシアのアルミ地金生産が2025年の81万5000トンから26年に160万トン、27年には250万トンに増加し、世界のアルミ市場の余剰が26年に150万トン、27年には200万トンになると予測。アルミ価格については26年第4・四半期に1トン=2350ドルまで下落すると予測している。

ロイター「中国企業、インドネシアでアルミ生産拡大~」より

歓迎していたアルミニウム精錬も、工場の過剰生産によって後に大変な事態を引き起こす可能性が高いことには思い至らないらしい。

更に問題なのは、発電力不足である。アルミニウム精錬には莫大な電力を使用するので、産業の発達のスピード以上に電力需要が生まれているのだ。

実は過去に日本が石炭火力発電(IGCC)などを輸出して環境問題に配慮しつつ発電力を強化しようという提案をしたことがあったのだが、それは国際政治的理由から駄目になってしまった。

しかし、その代わりに支那からの石炭火力発電が輸入されて、発電所が各地に建設されているという。支那の石炭火力発電所は世代が古く環境配慮など「何それおいしいの」程度の代物である。

これはアメリカとの関税戦争にも関係していて、インドネシアからアメリカにアルミニウムを輸出すれば支那から輸出するより摩擦は少ない。まさに一石二鳥だね。

環境規制は本当に「環境のため」か

この様な事情から、インドネシアでのアルミニウム精錬を支那企業が行うという話は、実は国際事情が色々絡んだ話になっている。

支那国内での環境規制強化は、単なるメンツや見栄だけではない。過去の大気汚染の深刻さは社会問題になり、健康被害や市民の不満も無視できない。さらに国際的な評価も気になる。つまり、政治的正当性+社会安定+国際評価+環境改善の複合的理由で規制が強化されている。

その犠牲になったのがインドネシアやそのほかの東アジア諸国なのである。

自国では二酸化炭素を出さず、環境悪化にも対応する一方で、海外のことは知らんという姿勢が透けて見える。

つまり、支那が国内規制と海外生産拡張を同時に進める結果、グローバルな排出削減にはほとんど寄与しない結果が生まれつつあるということだね。

まとめ

良くも悪くも支那の政治的問題が海外の政治にも大きく影響した結果が、インドネシアでのアルミニウム精錬増産に繋がった。

しかし、インドネシアでのアルミニウム生産量は過剰になることが危惧され、これがまた国際情勢に影響しかねないと目されている。つまり、インドネシアの国内事情のように見えて、かなりの部分支那の政治問題に踊らされている可能性が高いという意味だ。

日本にとっては実に迷惑な話ではあるし、環境問題に火をつけて回っている団体に資金供与しているのが支那という構図を見ると腹立たしくもある。

こうした支那の影響を日本が排除するためには、インドネシアへの政治的なチャンネルを使っての働きかけと共に、別のベクトルでの技術提携、つまり環境技術と生産性を両立できるようなロードマップをパッケージで提案する必要があるのだろう。

コメント

  1. 軍事オタクより より:

    インドネシアも懲りないですね
    中国の新幹線導入して大赤字になってるのに
    中国の火力発電所導入したら環境汚染が凄いのにアルミニウムは精錬時に大量の電力が必要で日本の火力発電所だったら環境汚染も少ないのに困ったものですね

    • 木霊 木霊 より:

      懲りないですねぇ。

      高速鉄道に関しても最新石炭火力発電所に関しても、日本側から打診があったケースだけに、それを袖にしている時点で「お察し」なのです。
      今回はサプライチェーンに打撃を与えそうな話に繋がりかねないので、注意深く見守りたいと思います。

  2. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    インドネシア、どうしてこう、「付ける薬」がないのだろう……
    韓国もやっかいですが、インドネシアも『東南アジアの一番弱い鎖』なのかも?
    心証的にはレッドチームです。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      インドネシアは某韓国のように「他人の振り」するのもちょっと都合が悪いというところが困ったものです。
      心証的にレッドチームなのは僕も同じでして、でも、無碍にもできないんですよね。