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熊害対策に機動隊を動員か

環境技術
この記事は約6分で読めます。

間に合わせとはいえ、機動隊投入か……。

機動隊の派遣計画策定を要請 クマ対応で警備強化―自民PT

2025年10月31日15時52分

自民党は31日、党本部でクマ被害対策に関するプロジェクトチーム(PT)の初会合を開き、政府側出席者に機動隊の派遣計画策定などを要請した。

時事通信より

……それは本当に大丈夫なのだろうか?

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戦略はやっぱり環境省にやってもらわないと

ライフル使用で警察官に白羽の矢が

熊害の話は先日も触れた。

木原官房長官によれば、必要な訓練を受けた警察官がライフル銃を使ってクマの駆除に当たることを検討しているという。装備面・法的根拠の整理を急ぐ方針らしい。

クマ駆除、訓練受けた警察官がライフル銃で対応検討 木原稔官房長官が表明

2025/10/30 16:30

木原稔官房長官は30日の記者会見で、クマによる人身被害が各地で深刻化していることを受け、必要な訓練を受けた警察官がライフル銃を使って駆除に当たることを検討していると明らかにした。木原氏は「装備資機材の整備なども含め、ライフル銃を使用したクマの駆除について早急に対応していく」と語った。

産経新聞より

ライフルを使用するという観点から、「自衛隊よりも警察の方が適当」と判断されたようだ。

判断としては理解できる。だが――機動隊だって熊害専門部隊ではない。彼らの本来の任務は「対人制圧」であり、野生動物の制圧ではない。

機動隊なら

警察庁は、拳銃ではクマの駆除は不可能だが、機動隊が保有するライフルであれば法的にも技術的にも対応可能と判断したとのこと。

クマに警察官がライフル使用へ 北海道と東北6県を念頭に準備急ぐ

2025年10月30日 20時15分

クマによる被害の深刻化を受け、警察庁は、警察官によるライフルを使用したクマの駆除に乗りだす方針を決めた。ライフルをもつ機動隊が担当する。まず東北6県と北海道の警察を念頭に、訓練など実施にむけた準備を急ぐという。

~~略~~

被害が深刻化する中、警察庁は緊急に新たな対応ができないかを検討。地域警察官らがもつ拳銃ではクマの駆除は無理だが、都道府県警の機動隊が保有しているライフルであれば威力の点からも駆除が可能で、法的にも体制面でも問題ないと判断した。警職法の「必要な限度において武器を使用できる」や「危害防止のために必要な措置を命じ、または自ら措置をとることができる」といった規定が根拠になるという。

今後、関係の県警などが実際の運用方法などを検討する。例えば、ハンターが行うクマの駆除の様子を実際に見て、学ぶことなども想定している。

朝日新聞より

警職法の「必要な限度で武器を使用できる」という条文を根拠にしているという。

なるほど、法の枠組み上は最も現実的な選択なのだろう。
だが、野生生物への対処を機動隊に委ねるのはやはり無理がある。ハンターの見よう見まねで現場対応を求められても、限界がある。
そもそも、機動隊員はライフル訓練を日常的に受けているわけではないはずだ。

短期的な緊急措置としては理解できる。

だが、長期的にはやはり環境省主導での専門チーム設置が望ましい。法整備が必要なのは承知のうえで、それでも「将来的な議論」として避けて通れない。

シカが原因なのか?

ここで、少し視点を変えてみよう。

「人を食べるクマ」を山から街に追い出している“意外な動物”の正体とは?

2025年10月30日 8:30

いよいよ「怪獣退治」のようなムードになってきた。

秋田県内でのクマによる人身被害が50人を超えたことを受けて、鈴木健太県知事が自衛隊派遣を要請したところ、小泉進次郎防衛大臣が派遣の方向で調整をしているというのだ。

~~略~~

わかりやすく言えば、300万頭のシカたちが樹木を枯らして背の低いササやシダを消滅させ、土壌を壊すことで、いたるところにハゲ山をつくっているというのだ。なぜあんな可愛らしい動物が、そんなエグい自然破壊をするのかというと、「なんでも食う」からだ。

《イネ科草本からササ類、広葉草本、樹木の葉、堅果類(どんぐり)まで1000種類以上の植物を採食》(同上)

さて、ここまで言えばもうお分かりだろう。冬眠前のクマが痩せこけて、露天風呂にいた人間を襲うようになったのも、人里に下りてきてエサになりそうなものがないかと徘徊するようになったのも、つきつめていけば「山や森にある1000種類以上の植物を食べ尽くすシカが300万頭以上に激増した」ということが原因である。シカに山や森林を荒らされ、木の実を食い尽くされて、人里に下りざるを得なくなっているのだ。

DIAMOND onlineより

DIAMOND onlineの記事では、クマ被害の背景として「シカの増えすぎ」を指摘している。

要約すると――300万頭のシカが森の植物を食い尽くし、ササやシダが消え、森が荒廃している。その結果、エサを失ったクマが人里へ下りざるを得なくなっている、という構図だ。

実はこの鹿害の話は、もう30年ほど前からずっとなのだ。令和5年の森林における鳥獣被害の割合で、鹿がダントツトップである。

森林鳥獣被害面積グラフ(R5)
林野庁のサイトより

1980年代以降、シカやイノシシが増え、下層植生が失われ続けている。狩猟者の減少も拍車をかけた。

スギ人工林におけるシカの剥皮害の写真

こうした背景を踏まえると、「熊害の裏に鹿害あり」という見方もあながち間違いではない。

「撃つ」ための理と責任

最近は狩猟者が減ってしまったことで、更に鹿の個体数が増えている。

環境省も鹿害対策には取り組んでいるが、成果は芳しくない。
民間ハンター頼みの「ハンターバンク」方式では、どうしても現場主導の限界がある。

環境省は鹿害の問題に関しても把握しているはずで、実際に対策に乗り出してはいるのだけれど、あまり成果は芳しくない。まあ、ハンターバンクなどを活用した民間頼みの部分があって、どうしても積極的なコントロールが難しいらしい。

だからこそ、熊害への対応も専門的な国家チームを作るべきだと思う。

調査も駆除も、いずれも高度な技術と判断力が求められる。環境省にはその知見が蓄積されており、最も太い情報ルートを持っているはずだ。

まあ実のところこの意見、ハンターやっていた叔父さんの受け売りなんだけども。

まとめ

熊害対策の緊急性は否定できない。

だからこそ、当面は機動隊が出動するのも仕方ないだろう。ただし、地元ハンターとの連携は欠かせない。自治体単位で片づけられる規模の話ではないのだから。

短期的には警察。
中期的にはハンター支援。
そして長期的には――環境省直下の専門組織を作るべきじゃないかなぁ。

追記

なお、自衛隊も支援で動く模様。

【クマ対策】自衛隊が“箱わな”運搬の支援実施へ…すでに訓練開始し「最大限協力」農水相は「捕る」「守る」「寄せ付けない」の3本柱

2025年10月31日 金曜 午前10:57

小泉防衛大臣は、秋田県からクマ被害の対応を要請されたことについて、箱わなの運搬を実施する方向で調整していると明らかにしました。

小泉防衛相は閣議後の会見で、「(秋田)県からは、箱わなの運搬に伴う輸送支援などの依頼を受けており、自衛隊としても、これを実施する方向で調整を進めています」と話しました。

陸上自衛隊は、30日、秋田県内で箱わなを輸送する訓練をしています。

FFNプライムオンラインより

箱罠の運搬と、多分、捕獲した熊の搬送なんかはやらされるかもね。

コメント

  1. 砂漠の男 より:

    クマも雑食性なので、クマにシカやイノシシの味を覚えさせて、食糧にさせればいいと思っていたんですが、本土に多いツキノワグマは圧倒的に植物食生活らしく、むしろシカやイノシシは生存競争相手なのだとか..絶句。
    今回知って驚いた意外な事実です。 

    街中でのクマ被害は喫緊の問題なので、いまは対処するしかないですが、政府と自治体で猟友会を支援する新たなしくみをつくり、時間をかけて積極的なシカやイノシシの狩猟をやるべきだと思います。

    本件は環境省と国土交通省で対応すべき森林の資源管理問題じゃないですか。森林や里山を放置してきた結果、クマが街に出てきちゃったんでしょう。

  2. 匿名 より:

    今迄現場周辺の警備だけで安全地帯で傍観しているだけだった警察が現場に送り込まれても一朝一夕で熊と相対するって無理じゃないかと。
    環境省の元で専属ハンターを育成して展開する案は賛成ですね。今ならまだ新人に対する技術伝承も出来るし、後は市街地に降りてくる熊に対して殺傷力重視じゃなくストッピングパワーの有る装薬・弾頭を配備しないとアカンかなと思いますね