朝日新聞が嬉しそうに報じているニュースで、トランプ氏の発言は高市氏を擁護していないような印象の扱いをしている。
トランプ氏、「首斬る」発言を批判せず 中国と「うまくいっている」
2025年11月12日 16時28分
トランプ米大統領は台湾有事をめぐる高市早苗首相の国会答弁と、それを受けた中国の外交官による発信について問われ、中国側への批判を避けた。10日夜に放送された米FOXニュースのインタビューで答えた。
朝日新聞より
なるほど、確かに日米首脳会談の時には友好を演出してくれたのに、掌返しのようにも見えるね。
アメリカの対支那方針は決め手に欠ける
トランプ政権は切るカードがない
さて、アメリカが支那に仕掛ける貿易戦争というのは、関税戦争の様相になったのは多くの方がご存知であると思う。
アメリカにとって対支那貿易赤字は困ったことであるし、それ以上に技術的なアドバンテージを失って製造業が壊滅的な状況になっていることに困っている。
目下、地政学リスクとして注目される動きの1つが米中関係だ。そこでこの記事では、米中間の貿易を軸に、貿易の変化を追う。
まず、米国の貿易統計によると、2023年の米中間の貿易額(輸出額+輸入額)は5,750億ドル。過去最高だった前年(6,903億ドル)から16.7%減少した。内訳は、米国の対中輸出が4.0%減(1,478億ドル)、中国からの輸入が20.3%減(4,272億ドル)だった。輸入の減少幅は、過去10年間で最大。米国にとって中国は、2003年から2022年まで最大の輸入相手国だった。しかし2023年は、メキシコが首位に浮上、中国は2位だった。
JETROより
一応、依存度は低下しつつあるみたいだけど、それでも大幅赤字であることは変わらないのである。
そして多くの人が気が付いている通り、関税カードは実のところアメリカにとって対支那貿易戦争の盤面では強いカードではない。
追加関税をさらに重ねると、 ・アメリカの輸入価格が上がる ・インフレ懸念が再燃する ・企業活動へ悪影響
こうした内政リスクが跳ね返ってくるため、強く出たくても出にくい。実際、その弊害の1つがNYのアレだから。
支那依存の“逆風”が無視できない
実際のところ、アメリカは支那依存から脱却することが難しい。
特に、
- 生活消費財
- 低価格帯の工業製品
- 電気機器部品
などは依存度が高く、代替コストが大きい。更にレアアースなどでも揉めているわけだが、ここもなかなかクリティカルな部分なんだよね。
米中、レアアースでなお合意に至らず-貿易「休戦」の成果に不透明感
2025年11月14日 23:55 JST
中国のレアアース(希土類)輸出規制の緩和を巡り、米中がなお詰めの協議を続けていることが事情に詳しい関係者の話で分かった。ホワイトハウスはこれまで貿易戦争「休戦」の合意がレアアースの輸出再開に道を開くと説明していた。
Bloombergより
綱渡りしているんだよね、結構。
安全保障でも“決定的な上から目線”が取りにくい
じゃあ、軍事的にどうかというと、アメリカの圧倒的な優勢というわけじゃないんだよね。実際のところアメリカは支那と直接対決したいわけじゃないのだ。既に各種長距離ミサイルを保有している支那との軍事バランスは、直接殴り合って負けることはないにしても、強硬な姿勢を貫けるほどでもない。
つまり対支那外交のシーンでは、アメリカとしては切りにくいのが軍事力カードなので、軍事力では脅せないし、既に切った関税カードをチラチラさせるくらいしか手がない。
「支那との関係が良好だ」というトランプ氏の発言は、そういった背景があると理解するとなんとなく分かり易い。
まとめ:そもそもアメリカは肝心な時に頼りにならない
トランプ氏が常々言うように、彼の国は常に「アメリカン・ファースト」であって、アメリカの利益にならない時に日本にコミットしてくれることを期待するほうが間違いなのである。
そうすると、台湾有事に発展した時にアメリカがすぐに動くとは限らない。
台湾海峡が封鎖されてしまうことは、アメリカにとっても都合が悪い面があるので最終的には動く。動くけれどもアメリカの利益になる形で動き出すので、初動で日本が単独で動く可能性は、冷静に想定しておいたほうがいい。
そのための準備というのは派手なものではなく、南西諸島の即応体制やサイバー防御、 サプライチェーンの耐久性といった“日本側で出来ること”を積み上げていくしかない。
結局のところ、トランプ氏の発言に振り回されても意味はない。日本は日本で、粛々と手を打っていくしかないのである。
追記
支那は怒るのに忙しいらしい。
アメリカ 台湾へ約510億円相当の武器売却を承認 中国「強烈な不満を表明」反発
11/16(日) 10:21配信
台湾問題を巡って、中国がトランプ政権を牽制しました。 中国外務省 林剣副報道局長 「台湾問題は中国の利益の中の核心であり、中国とアメリカの関係において第一の越えてはならないレッドラインです。中国側は強烈な不満を表明し、断固としてこれに反対します」
Yahoo!ニュースより
これ、先日のF16戦闘機の部品など、台湾へのおよそ510億円相当の武器売却を承認した件に絡んでなんだけれども、台湾もこのF16に関しては怒っていたんだよな。2019年にF-16V改修が決定してから、何年掛かっているのやらという話。

アメリカの生産能力が低下している証拠でもあるんだけど、それでも至近距離の島に高性能な戦闘機が揃うのは、支那としては面白くないのだろう。
高市氏が「存立危機事態になるか検討する具体的なケースだ」位のことを言った程度で、「首を叩き落とす」とか言っていたくせに、アメリカに対してはコレなんだよなぁ。



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