色々言ってきているな。
「日本のレーダーも感知」 中国メディアが報道
12/9(火) 22:40配信
中国国営中央テレビ系の交流サイト(SNS)アカウントは9日、中国軍機による自衛隊機へのレーダー照射を巡り「中国側も日本機のレーダーを感知していた」と報じた。中国の空母「遼寧」での発着艦訓練について事前に現場レベルで通告していたとした上で、自衛隊機が訓練区域に入り中国軍機の50キロの距離にまで接近したとしている。
Yahoo!ニュースより
もはや、日本国民は支那が何を言ってきているのか、正確に理解していないのではないだろうか。論点ずらしの手法を使っているけれど、多くの人は「そんな話してたっけ」と疑問を持っていると思うんだが。
外交部と人民解放軍の狙いは異なる
支那側の主張の変遷
さて、一応、どんな経緯を辿っているか、一通りまとめてみよう。
支那側の主張(発言)の時系列整理
2025年12月6日(事案発生日)
- 支那海軍: 海上自衛隊の護衛艦に対し、空母「遼寧」での飛行訓練の実施を無線で通告した(と主張)。
2025年12月7日
- 支那国防省・外務省: 声明を発表し、事案の原因は「日本の戦闘機が中国の正常な軍事活動を妨害したこと」にあり、日本側が問題を煽っていると非難。
2025年12月8日
- 支那外務省 郭嘉昆 副報道局長:
- 記者会見で、支那軍によるレーダー照射は「飛行の安全を確保するための正常な操作だ」と主張した。
- 「日本の戦闘機が支那の訓練区域に勝手に侵入し、軍事活動を偵察し妨害した」と述べ、日本側に責任があると反発した。
- 日本が事実を歪曲し、支那を非難していることに対し、強い不満と断固たる反対を表明し、厳重に抗議した。
2025年12月9日
- 支那国営中央テレビ系メディア「玉淵譚天」および中国軍:
- 支那軍が訓練を事前に通知したとする現場の無線交信の音声データをインターネット上で公開した。
- 支那側も自衛隊機からのレーダー信号を感知していた」と報じた。
- 日本の行動が「挑発」であり、この問題は「日本が茶番劇の仕掛け人」であると非難した。
- アメリカ国務省の批判(参考): 支那側の行動は地域の平和と安定に資さない」とアメリカが批判した。
2025年12月10日
- 支那外務省 郭嘉昆副報道局長:
- 日本の小泉防衛相が「事前連絡はあった」と認めた発言を捉え、「以前の説明と矛盾している」と批判した。
- 「国際社会は真実を見極めて、日本側にだまされないでほしい。日本の同盟国は特に警戒してほしい」と国際社会に呼びかけた。
- 日本が先に意図的に妨害し、デマを流して騒ぎ立てた」と改めて主張した。
この整理は、あくまで支那側が「どの時点で何を主張したか」という発言内容の記録である。
危険行為があったのかなかったのか
ただし、今回の問題で非常に大きな問題となったのは、支那戦闘機が日本の航空自衛隊機をロックオンしたかどうか、という点である。
この点に関しては既にこちらの記事で議論したように、おそらくは「ロックオンされた」という事実は疑いようがなかろう。
そして、もう1つ。日本側は事態発生後に緊急時のホットラインを使おうとしたが、支那側は出なかったようだ。
レーダー照射、日本側からの「ホットライン」に中国応じず
2025年12月8日 21:00
中国軍機が自衛隊機にレーダーを照射した6日の事案で、日中防衛当局が緊急時に使う専用回線「ホットライン」を日本側が使おうとしたことがわかった。中国側は応じず、軍事対立を回避するための対話枠組みが機能しなかった。
日本経済新聞より
相手側は対話する気はさらさらないのだ。
とにかく「俺の言い分が正しい」というのが、彼らの立場であり、事実は何だって良かったと言うことのようだ。
更に言えば、おそらくは今回の件、どちらかというと現場の独断で行ったような形であり、外交部としても対応に苦慮している節がある。
そういう意味でも危険行為はあったのだ。
支那の狙い
さて、この様な無理筋の主張をせざるを得ない状況になってはいるが、この話の本筋は、支那空母「遼寧」が「何をしたかったか」だ。
こちらが統合幕僚監部が出している資料で、トラブルがあった後にも随分な動きをしている。

この公表されている図だけでは分かりにくいので、もう1つ。

日本の主張する排他的経済水域(EEZ)の様子を示す。2つの図を見比べていただければ、「延長大陸棚」の領域で「遼寧」が活動している様子が分かる。
ここで延長大陸棚とは、国連海洋法条約に基づき、沿岸国が領海基線から200海里を超える海底(大陸縁辺部)を、地質学的・地形的連続性を根拠に自国の大陸棚として設定し、海底資源の開発権などの主権的権利を有するとの主張であり、ピンク色の部分はそういう海域なのである。
公海でもあるので、航行すること自体には問題はないのだが、そもそも空母がこの海域で訓練するということは問題が多い。
そういう海域をうろうろしているということと、その見ている先に何があるのか?といえば、沖ノ鳥島である。こちらの記事でも書いたが、最近、注目されているのだ。
そして、支那もそれについて気にしていることは、過去の事例を見ても明らかなのである。
つまり、支那空母「遼寧」を始めとした船団は、沖ノ鳥島へのアクションを試している可能性を考えねばならない。
この海域で「遼寧」から戦闘機を発進させた場合に、どの程度の時間で対応してくるかを試していたと。

これだけの艦種があって、艦載ヘリによる発着艦が約180回確認されている。
台湾有事と同時に発生する可能性
先日からの「台湾有事」に関する話もあったが、支那が過敏に反応している様子は日本国民も広く知るところではある。
今回の作戦は、台湾への海上封鎖作戦をやったうえで、同時に沖ノ鳥島方面にもアプローチする。そうした時に自衛隊にどの程度の能力があるのかを計測する必要があったと見て良いと思う。
更にこちら。
海上民兵の動員訓練をやっているので、フィリピン方面にも影響力を展開して、どの程度の負荷がかけられるのかを見ている可能性がある。
また、海底ケーブルに対してちょっかいをかけているのも、人民解放軍の一部であると見られている。
こういった工作は世界のあちこちで行われているんだよね、残念なことに。
また、非常に危険なことに、支那の海軍の規模を考えると、これらを同時展開できるだけの能力がある。指揮系統が機能するかは良く分からないが。
右往左往する外交部
支那の外交担当
というわけで、支那外交部のおかしな言説をいちいち相手にしていても仕方のない部分はあるのだが、おかしな部分はともかくとして、狙いは別にあることは理解しておくべきだろう。
そもそも、「外交部」と名前は付いているが、広報担当をしている部隊は外交を行っているわけではない。外交機能に関わっているのは王毅氏だけ。
中国が最後通告の時に使った用語、日本に突きつけた
2025.12.10 15:10
中国が隣国との戦争直前に“最後通告”として使ってきた外交用語を、日本に対して突きつけた。高市早苗首相の「台湾有事介入」発言に対して、中国が空母打撃群を日本の海域近くに送り込み、100回以上にもわたり艦載機の離着陸訓練を行うなど、武力示威のさなかに出てきた発言だ。
中央日報より
中央日報のこの記事なんかは結構面白いのだが、多くのメディアは「日本が支那の怒りの導火線に火を付けた」というような流れにしたいようで、「金でも貰ってるのかな?」と疑ってはいる。
だが、事実はそんな話は全く関係なくて、高市発言以前から着々と人民解放軍は活動を積み上げている。
そして、王毅氏の外交なんだけど。
- 2025年10月:支那国内での活動や電話会談が行われる。
- 2025年11月: 北京で英国首相国家安全保障担当顧問であるティム・パウエル氏と会談
- 2025年12月2日:ロシアとの戦略安全保障協議(北京)に出席
- 2025年12月3日:ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と会談、フランスのジャン=ノエル・バロ欧州・外務大臣と会談
- 2025年12月8日:支那を訪問中のドイツのヨハン・ワーデフール外相と会談
- 2025年12月9日:北京で「習近平外交思想学習研究座談会」に出席し、演説
報道で拾う限り、12月に入ってからのスケジュールが詰まっている感じ。予定通りのスケジュールのようだが、内容的には結構告げ口外交に終始している感じに見えるね。つまり、スケジュールを崩してまで対日姿勢を強めたいということでもないようだ。
戦浪外交担当がキャンキャンやっているのとは別に、外交は淡々と進められているってことだよね。
冷却サイクル
こんな状況なので、日本と支那との外交も直ぐには回復するとは思えない。
日中緊張の高まり:過去からの洞察と未来への展望
2025年12月5日発行
11月7日、高市早苗首相は国会質疑において、台湾に対する「軍艦による武力行使」は日本の「存立危機事態」につながりかねないと発言した。中国政府は、この発言を極めて挑発的だと捉えた。
~~略~~
中国が次にどのような決断を下すにせよ、日中間の緊張がすぐに解消するとは考えにくい。たとえ関係が修復されたとしても、中国政府は今回の危機を機に日本に対して自国の利益を主張する可能性が高い。
CSISより
記事にも言及があるが、日本と支那との関係は安定的な時期と冷却期間を繰り返して来ている。数ヶ月から数年の回復期間を要し、完全には回復しない状況が続いている。
CSISの分析では段階的に悪化しているということになっているが、支那の姿勢がそうなのであって日本が努力したら良い関係になると言うことではない。支那はそういう戦略で動いてきているのだから。
まとめ
日本は支那との関係改善を狙うというのは、現時点ではあまり現実的ではない。何故なら、相手は日本との関係を改善しようとは露ほども考えていないからだ。
一方で、あまり過熱するのも困るとは感じているようで、対日制裁のメニューがいちいちショボいのもご存じの通りだろう。
要はこれ、プロレス的な側面もあるのだ。
そうすると、大切なのは偶発的なトラブルが発生しないように調整することで、ポイントオブノーリターンを超えさせないようにこちらからコントロールしていく必要が。だからこそ、政府は冷静に丁寧に相手の言説を潰していくくらいしか出来ることはない。
国民としても、冷静に事の推移を見ていく必要があるだろう。
追記
おっと、日本側の公式の発言が出ているのに、貼るのを忘れていた。
フルで引用しておこう。
先ほどレーダー照射事案に関する中国国営メディアの報道について、臨時記者会見を開きました。内容は以下の通りです。
——————————
12月6日(土)に発生したレーダー照射事案に関する中国国営メディアの報道について、4点申し上げます。
第1に、中国側が行ったとする通報の内容について申し上げます。中国国営メディアが報じた音声の一つ一つについてコメントすることは差し控えるべきですが、レーダー照射事案があった12月6日(土)、中国海軍艦艇から海上自衛隊の護衛艦に対して、飛行訓練を開始する旨の連絡があり、その内容を聞き取りました。 一方、空母「遼寧」の艦載機がどのような規模で、どのような空域において訓練を行うのかという具体的な情報は自衛隊にもたらされておらず、また、訓練を行う時間や場所の緯度・経度を示すノータム(航空情報)もなく、船舶等に示す航行警報も事前に通報されていません。その結果、危険の回避のために十分な情報がありませんでした。
第2に、自衛隊によるスクランブル発進は適切かつ必要な活動であるということです。空母「遼寧」が所在した海域周辺には、沖縄本島、北大東島、南大東島、沖大東島などがあり、その領空の保全と国民の生命財産を守る責務を有する防衛省・自衛隊が、空母から発艦した艦載機に対し、対領空侵犯措置を適切に行うことは訓練に関する事前通報の有無にかかわらず当然です。
第3に、6日に対領空侵犯措置を実施していた航空自衛隊F-15戦闘機が中国空母「遼寧」の艦載機に対してレーダーを使用したという事実はありません。
そして、第4に、最も重要な点として、問題の本質は、我が方が対領空侵犯措置を適切に行う中において、中国側が約30分にわたる断続的なレーダー照射を行ったことだということです。中国側に対しては、こうした航空機の安全な飛行に必要な範囲を超える危険な行為について、その再発防止を、引き続き、厳重に求めてまいります。また、長時間にわたりレーダー照射を受けるという極めて緊張を強いられる状況において、冷静に任務を遂行した自衛隊のパイロットと、パイロットを支える地上クルーを誇りに思います。防衛省・自衛隊は引き続きこのようなプロフェッショナリズムを発揮し、冷静かつ毅然と対応してまいります。
同時に、先般の日中防衛相会談で私(小泉大臣)から董軍(とうぐん)国防部長に対して伝えたとおり、日中間では、具体的かつ困難な懸案から目を背けず、むしろ懸案があるからこそ、率直な議論と意思疎通を粘り強く重ねることが必要不可欠です。防衛省としては、我が国周辺海空域における警戒監視活動に万全を期していくとともに、引き続き、防衛当局間においても、しっかりと意思疎通をしてまいります。
冷静に対応できているようで、何よりである。
- 事前通告(訓練を行う時間や場所の緯度・経度を示すノータム)はなかった。
- 自衛隊によるスクランブルは適切に行われた。
- 航空自衛隊F-15戦闘機が支那戦闘機にレーダー照射をした事実はない
- 約30分にわたる断続的なレーダー照射があったことが本件の核心
要は「危ない活動は止めろ」と。









コメント
志那は軍拡の速度に指揮官と兵士がついて行ってないでしょう
自衛隊と保安庁の方々の心労が大変です
どうして隣国はこんな国ばかりなのでしょうか?
いつか護衛艦とか保安庁とか妨害したから体当たりしたとか自衛隊機に警告射撃しそうですね
一般人の私ははらわた煮えくり返っているんですが
隣国に恵まれないのは、本当に。
もうちょっと「国際法を勉強しろ!」と。
追伸
小泉防衛大臣はイタリアの国防大臣やNATO(北大西洋条約機構)の事務総長と相次いでテレビ会談を行い、中国軍機のレーダー照射事案などについて説明しました。
小泉大臣中々頑張ってますね
広報官としては、本当に優秀ですね。
そして、「天才子役」と呼ばれるだけあって、舞台度胸もスゴイ。
シナリオ担当が優秀であれば、ここまで変わるという好例ですな。