ちょっと最近、支那の話題が多すぎるんだけど、習近平氏、なかなか凄いことを言い出して驚いので記事にした。
習主席、成長率の数字水増しする当局者を処罰と明言-人民日報
2025年12月15日 at 10:45 JST
中国の習近平国家主席は、経済目標達成を目指す中で成長率の数字を水増ししたり、無謀な行動を取る当局者を処罰すると明言した。14日付の共産党機関紙・人民日報が先週の中央経済工作会議での習氏の演説の抜粋を伝えた。
Bloombergより
流石にちょっと無理があるんじゃないの?
統計というのは単年度の数字だけでは成立しない。過去データとの連続性があって初めて意味を持つわけだが、その「過去の数字」はどうするつもりなのか。
正しい数字を追い求めたところで
大躍進政策再び
支那国家統計局が出してくる数値について、支那人民自身が「正しい」と信じていない、というのはもはや定説だ。あの国の統計は、基本的に“盛ってある”前提で読むのが常識である。
そもそもメンツを最優先する国家において、数字が信用できないのは今に始まった話ではない。
典型例が大躍進政策(1958~1961年)だ。農作物と鉄鋼製品の増産目標が上から降りてくると、それを達成するために成果は水増しされ、報告上は倉庫に入りきらないほどの生産が行われたことになった。
だが現実には、粗悪品が氾濫し、農業は破壊され、結果として大規模な飢餓が発生した。
背景には、ルイセンコ農法という疑似科学が真顔で導入されたことや、材料も技術もないまま製鉄を命じられ、調理器具や農機具が次々と鋳潰されたという狂気がある。

これは1982年時点の支那の人口ピラミッドだが、1959年から1961年生まれの世代が、他の年と比べて異様に少ない。
国土が戦火に包まれた第2次世界大戦期とほぼ同水準という、極めて珍しい歪みである。
その後、一人っ子政策によってさらに人口構造が壊されていくのだから、まさに追い打ちだ。
全ての計画は現実に立脚すべし
習近平氏が毛沢東を尊敬していることはよく知られている。
しかし、かの大悪人は過去に大躍進政策(少なくとも1,500万〜4,500万人の餓死者が出たという主張がある)と文化大革命(犠牲者数1,000万~2,000万人だという主張がある)という大失敗を犯している。
他にも、土地改革(1947年〜1952年)、鎮反運動(1950年〜1953年)などで多数の犠牲者(計500万人程度)を出し、労働改造所(1949年~)では毛沢東時代に限定しても2,500万人程度の犠牲者を出したといわれている(つまり、1億人弱の犠牲者を生み出した指導者なのだ)。
ところが近年、習近平体制下では、これらは「自然災害による被害」であり、むしろ毛沢東は被害を抑えた偉大な指導者だった、という評価に書き換えられつつある。
これらの出来事は「偉大な国家を創るための、避けられなかった不運な実験過程」なんだそうな。
その一方で、習近平氏はこう語ったという。
同紙によると、習氏は「全ての計画は現実に立脚する必要があり、水増しされた数字ではなく実質的な成長を重視すべきだ」とし、「現実を無視し、無謀な行動を取り、過大な目標を設定し、盲目的な拡大を追求する者については厳しく責任を追及する」と演説で語った。
Bloomberg「習主席、成長率の数字水増しする~」より
うーん、スゴイ。色々な意味で。
数字が把握できなければ?
確かに、実態把握できていなければ経済対策など打てないというのは、多くの人々の共通した認識であろうし、その声が習近平氏の耳にも届いたのかもしれない。
中国の自主的イノベーションについて、習氏は「経験が証明しているように、われわれを締め付けようとする試みは成功しない」と述べた。
Bloomberg「習主席、成長率の数字水増しする~」より
だが、肝心の認識がこれでは、正直言って望みは薄い。
2026年-30年の国政運営のマスタープランとなる第15次5カ年計画については、効率的な投資を条件に、準備が整ったプロジェクトに早期着工を認める柔軟な姿勢を示した。
地政学的な問題については、習氏は「世界的な混乱」に直面しても「戦略的に揺るがない姿勢」を維持するよう求めた。
Bloomberg「習主席、成長率の数字水増しする~」より
結局のところ、マスタープランありきで計画は進められ、「成功は前提」という扱いになる。そうでなければ、習近平氏自身が「指導の失敗」を認めることになってしまうからだ。
問題は、そのマスタープランが“まともな数字”を前提に作られているのか、という点だが、そこには精神論が大量に混入している可能性が高い。歪んだマスタープランを指標に何処に向かおうというのか。
大躍進政策の失敗
過去の政策の失敗で、最も多くの犠牲者を出した歴史があることは既に言及した通りである。
では何が問題だったのか?といえば、前述したようなマスタープランの存在と、生データが死滅するプロセスが存在したことだ。
生データが中央に届くまでに何度も「加工」される仕組みは、残念なことに今も健在なのだ。
- 一次改竄(企業・末端): 地方当局からの圧力を受け、企業が生産額を水増しして報告
- 二次改竄(地方政府): 各部局が数値を集計する際、省や市の成長目標に合わせて「調整」を加える
- 最終調整(中央): 国家統計局(NBS)の段階でも、国際社会や市場への影響を考慮した「政治的に正しい数字」へと丸められる。その結果、IMFなどの外部機関が予測する下方修正値 と、公式発表値の乖離が拡大し続ける
国家統計局の出す数字は信用できないと言ったが、それは生データが届くプロセスにも問題がある。誰も「正しい数字」を認識していないのだから、正しい対策を立てるのに使えるハズもない。
大躍進期には、実際には収穫できない「1ムー(約6.7アール)あたり数万キロ」という虚偽の農作報告がまかり通り、その捏造写真として「稲の上に子供が乗る」姿が報じられたという。荒唐無稽な話だが、まさにそう言うことなのである。
尤も、今やその数字の傾向すら信用できないなんて言われつつあるんだけどね。
まとめ
結局のところ、支那は建国以来の宿痾から逃れることはできず、優れた指導部によって国家を成功へ導くという看板を掲げている以上は、大きく変わるものではない。
同紙は別の記事で、習氏が一部地方政府の姿勢を批判し、「一部地域は現実を無視し、最新の流行を盲目的に追い求めている。他の地域が半導体産業に参入すると、一斉に追随する」と指摘したと伝えた。
Bloomberg「習主席、成長率の数字水増しする~」より
Bloombergも皮肉を込めて「最新の流行を盲目的に追い求める」という部分を引用しているが、まさにそうあらねばならないというのが支那の実態なのだ。
習近平氏のスローガンは立派だが、土台が変わらない以上、結果もまた同じところに落ち着くだろう。習近平氏の目指す大躍進はこれからも続くのである。
追記
また凄いこと言い始めたなぁ。これで1つの記事が書けそうだなんだけど、まあいいか。
中国、「元高容認」論が急浮上-元高官らが輸出依存脱却へ提言
2025年12月16日 at 13:53 JST
中国国内の有力者の間で、人民元の持続的な下落が経済成長の足かせになっているとの見方が強まっている。輸出主導型経済からの転換を図り、低迷する個人消費を刺激し、貿易摩擦を軽減するためには、人民元の上昇が必要だとする声が元中銀当局者や中国人エコノミストから相次いでいる。
Bloombergより
人民元が高いことを容認する、ねぇ。

デフレなのに、それを容認するの?と思ったら、記事の中で突っ込みがあったよ。
野村ホールディングスのチーフエコノミスト、陸挺氏は、不動産市場や消費の安定化策なしに元高が進めば、輸出が鈍化し、デフレが悪化する恐れがあると警告する。「元高による貿易黒字削減は最善策ではない。まずはデフレ脱却によって『実質的な元レート』を引き上げるべきだ」と指摘する。
Bloombergより

貿易黒字が増えていると示しているけど、それ、現実から目を背けているだけなんだよ。

輸入額と輸出額のバランスも意識しようぜ。長くなっちゃうので、解説はしないけど元高依存は必ずしも幸せになるとは言えないよ。円高が進行した日本人なら実感できるとは思うけど。



コメント
キンペイは何を言っているのかな?
水増し報告が当たり前のお国柄なのに
処罰したならあんたも処罰の対称ですよね
志那の役人はほとんど処罰の対称です
そんな事したらクーデターが起こりそうですね
衝撃的な記事でしたよ。
まあ、演説の全体像は不明ですから、違う文脈で言っているかもしれませんが……。
裸の王様ですよね。
中南海の常務委員会定例会議で、習近平が常務委員たちの緊張を解そうと、「今日はなにか話し合うことがあるかな?」とにこやかに笑いながら冗談を飛ばすと、李強首相が「もちろんなにもありません。すべて上手く行っています。」と笑いながら冗談で返した。
最近Tiktokに流れていた政治ジョークだそうです。
紅皇帝が突然おかしなことを言い出しましたが、心当たりがありすぎますね。
紅皇帝は敵も側近たちも斬ってしまい、もはや裸同然だとウワサされているそうです。
実際ありそうなシーンでジョークとして笑えません。
進歩のない国なんですね。
こんにちは。
「お前は何を言っているんだ?」もしくは「はっはっは、ご冗談を」
どっちのAAをご所望なんでしょうか……
とりあえず、自爆発言だって事は分かりました。
とりあえず、スズメを根絶やしにするところから再開すると良いんじゃないでしょうか?
※習近平の父親は、大躍進時代に地方に下放された青年官吏だったと聞きますが、それが1周まわってこの体たらく、親は草葉の陰でどう思ってるんでしょうね?
こんにちは。
後者「はっはっは、ご冗談を」を採用します!
というか、もうどうやって突っ込んだら良いか分からないレベルですわ。
大躍進を目指すんだと、個人的には思っています。