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韓国の例に学ぶ虚偽情報規制の罠

大韓民国ニュース
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どうした?報道の自由は。

虚偽情報制裁を強化 与党主導で情報通信網法改正案が可決

Write: 2025-12-25 11:46:10/Update: 2025-12-25 15:34:33

虚偽やねつ造された情報を故意に流した場合に、懲罰的損害賠償を科すことを可能にする情報通信網法の改正案が、国会で可決されました。

KBS WORLDより

お隣韓国の出来事であり、一見、問題ない話のように見える。

ネットには虚偽情報が溢れ、社会的混乱を招いているのも事実だからだ。

しかし、この手の法律は成立した瞬間ではなく、運用が始まってから本性を現す。日本で同じ仕組みが導入された場合を想像すると、かなり危うい。

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権力者のツールとして機能するか

虚偽情報対策という「正論」

韓国政府は、改正の理由として次の点を挙げている。

  • 選挙や政治・社会問題を巡り
  • YouTubeや一部オンラインメディアを中心に
  • 虚偽・ねつ造情報が急速に拡散し
  • 名誉侵害や社会的混乱が拡大している

なるほど、これらの問題に対して現行法では対応できず、実効性がある制裁を用意するということになったのだね。

「共に民主党」は改正案の背景について、最近の選挙や主要な政治・社会問題をめぐり、ユーチューブや一部のオンラインメディアを中心に虚偽やねつ造された情報が急速に拡散し、個人の名誉侵害や社会的な混乱が拡大していると指摘したうえで、現行法では責任追及に限界があり、実効性のある制裁手段が必要だと説明しています。

KBS WORLD「虚偽情報制裁を強化~」より

一見すれば、正論に見える。

改正法の中身――どこが危険なのか

不安を覚えるのは以下の内容である。

改正案では、報道機関やユーチューバーなどが違法な情報や虚偽・ねつ造情報を意図的に流した場合、被害額の最大5倍まで懲罰的損害賠償を請求できるようにしました。損害額の算定が難しい場合でも、最大で5000万ウォンまで賠償額を定めることができます。

また、裁判で虚偽・ねつ造情報と確定した内容を2回以上、繰り返し流した場合は、放送メディア通信委員会が最大10億ウォンの課徴金を科すことができるとして、虚偽の事実で他人の名誉を傷つけて得た利益を没収・追徴する規定も盛り込まれました。

KBS WORLD「虚偽情報制裁を強化~」より

この辺りの話は、「日本でも導入した方が良い!」と快哉を叫ぶ人も少なくないだろう。

今回の改正法のポイントは以下の通りだ。

  • 虚偽・ねつ造情報を意図的に流した場合 → 被害額の最大5倍まで懲罰的損害賠償
  • 被害額の算定が困難な場合 → 最大5000万ウォンまで賠償
  • 裁判で虚偽と確定した内容を2回以上繰り返し流した場合 → 最大10億ウォンの課徴金

制裁規定はかなり強めで、「何が何でも規制する」という意思が透けて見える。

が、本当の問題は別にある。

それは、「何をもって虚偽とするのか」を、誰が決めるのかという点だ。

事実でもアウト

「誰が」「どんな風に」虚偽・捏造情報だと判定するのかが、かなり怪しいのである。

Pro-Government Factions Demand Veto of Media Gag Law

2025/12/26

~~略~~

当初、民主党は改正案から「事実に基づく名誉毀損」条項を削除したが、委員会審議中に復活させた。同党は当初、虚偽情報による名誉毀損に「告訴事件」原則を適用する方針だったが、この規定は後に削除された。告訴事件とは、被害者の捜査・起訴・処罰の請求を必要とする事件を指す。与党系議員団はこれを「報道に対する刑事リスクを残したまま、懲罰的損害賠償を強化するもの」と批判した。

THE CHOSUNより

問題視されている中身の1例として、「事実に基づく名誉毀損」条項がある。これ、例えば韓国大統領のミョンミョンに対して「あいつは前科4犯だ」と指摘したとする。これは事実なのだが、この法律だと確実にアウトだ。

日本でも名誉毀損と判断されるケースの1つに「事実に基づく名誉毀損」はあるのだが、割と厳格に判断される。阻却事由(適用されないための条件)として、以下の内容がある。

  • 公共の利害に関する事実であること(社会全体の関心事か)
  • 専ら公益を図る目的であること(私怨ではなく世の中のためか)
  • 真実であると証明される、または真実と信じるに足りる相当な理由があること

これらの阻却事由によって、前科4犯の指摘に関しては名誉毀損に当たらないことになるんだが、韓国のこの法律では国家がこれらの認定をする構成になっている。

司法と政治の距離という致命的問題

「裁判で虚偽・ねつ造情報と確定した内容」は駄目だよということになっているが、韓国の場合は司法もかなり怪しく、このブログではOINKと揶揄される事例についても幾つか紹介した通り、司法判断が政権の意向に沿った内容になりがちである。

つまり、与党を批判した個人やメディアは、この法制度によって容易に罰則対象になり得る。合法的に批判者の口を塞ぐことが可能なのだ。

この法律は異論を唱えるメディアやユーチューバーを封殺し、独占的なメディア企業を育成することを目的としている」と指摘。「民主党の行動が左派独裁政権を彷彿とさせるという懸念が高まっている」と付け加えた。

THE CHOSUNより

まあ、国会を通過してしまった以上は、ミョンミョンが大統領の権限で拒否するとは考えにくく、成立してしまうのだろうね。

結果としてどうなるか。

  • 与党を批判したメディア
  • 政権に不都合な情報を発信する個人
  • 空気を読まないユーチューバー

これらが、「合法的に」排除される仕組みが完成する。

日本にとって他人事ではない理由

視点を日本に戻そう。

「日本でも」と言ったが、ネットに溢れる虚偽情報などに関しては、一応対策は考えられている。

ネットの情報が国民生活に影響を与えているのは事実だからだ。

4月1日施行!情プラ法施行で変わる?SNSの運用ルール

2025.06.20

2025年4月1日から施行される「情報流通プラットフォーム対処法」(通称:情プラ法)は、インターネット上の誹謗中傷や権利侵害情報への対応を強化するために制定された新しい法律です。

DXPO Collegeより

誹謗中傷や権利侵害を抑制する為に、プラットフォーマーに対して削除申請を受け付けるような窓口を作り7日以内に判断・通知が義務づけられている。

このほか、偽情報対策についても検討は進められている。

尤も、現状ではこれらの対策はまだまだ不十分で、ネットに書き込まれて誹謗中傷や権利侵害を行う書き込みは割とありふれているし、デマ情報も溢れている。ネット黎明期に良く言われたことだが、「嘘を嘘と見抜けない人」には利用してはいけないというのが原則だし、煽り耐性がない人には「半年ROMってろ」とか。アレはそれほど間違ってはいないんだよね。

話は逸れたが、虚偽情報というのは何処の世界でも問題にはなっているのだ。

そして、メディア自らが「フェイク判定者」を名乗り始めており、それはそれで「お前が決めるのか」と言いたくなる状況だ。

結局、誰が「正しい情報」を決めるのかという問題は、どの国でも共通している。

だからこそ、複数の対立する情報を受け取り側が取捨選択できるように、というのが望ましい。でも、多くの人は最初に触れた情報が正しいと思いがちなんだよね。

まとめ

表現の自由や報道の自由が無制限であることは、確かに健全とは言えない。しかし、規制する側の暴走にも、同じだけ警戒が必要だろう。

虚偽情報対策は、社会を守る盾にも、権力を守る棍棒にもなり得る。その境界線が曖昧なまま成立した法律は、往々にして「後者」として機能する。

報道の自由を叫ぶメディアが、自ら情報をねじ曲げているのだから、日本だって他人事ではないんだよ。

自由は、失うときほど静かに奪われるのだから。

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