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経済不満から体制否定へ イラン抗議活動が示す崩壊の兆候

中東
この記事は約7分で読めます。

イランの混乱は激しくなっているようだね。

イラン抗議活動で25人死亡、拡大の様相=人権団体

2026年1月7日午前 3:11

イランの通貨安や物価高騰への不満から首都テヘランで始まった抗議活動は6日、開始から9日目を迎えた。イランのファルス通信によると、市場(バザール)で店主らの抗議が続き、約150人が経済の改善を訴えた。抗議活動は西部、南部の都市へと拡大しており、抗議内容も広がりつつある。

ロイターより

イラン国内の抗議活動は、もはや一時的な経済不満ではない。体制そのものを揺るがす段階に入っていると見るべきだ。

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イランの体制崩壊リスク

拡大する抗議活動

年明けにネタにしたのだが、国内の抗議デモが革命防衛隊の働きで鎮圧されるという動きだと思っていた。

しかし、その読みは外れつつある。抗議活動は沈静化するどころか、むしろ拡大している。

現時点で把握できる状況を整理すると、以下の通りだ。

  • 死傷者は確認出来るだけで36人に
  • 拘束者は2,000人以上
  • 現段階でイラン全31州のうち26州80都市に拡大
  • 宗教指導者そのものへの不満が顕在化

割と深刻な事態だ。

イラン全土で抗議続く これまで少なくとも36人死亡と人権団体

2026年1月7日 13:05

昨年末からイラン全土で続いている抗議活動で、過去10日間に少なくとも36人が死亡したと、人権団体が6 日、報告した。

イラン国外に拠点を置く人権活動家通信(HRANA)によると、確認された死者のうち34人が抗議参加者で、残る2人が治安部隊関係者だという。

BBC NEWSより

鎮圧出来る目処が立っていない印象なので、当面は拡大傾向が続く可能性が高い。

亡命の噂

前回の追記でも触れたが、体制の不安定さを象徴する噂も出回っている。

イラン指導者、ロシアへ逃亡準備か 抗議デモ鎮圧失敗なら―報道

2026年01月05日17時55分配信

英紙タイムズ(電子版)は4日、情報筋の話として、イランで各地に波及している抗議デモが激化して鎮圧に失敗した場合、最高指導者ハメネイ師が家族ら約20人と共にロシアへ逃亡する計画を準備していると報じた。

~~略~~

イランでは昨年12月28日以降、深刻な経済低迷に抗議するデモが拡大し、人権団体によれば、これまでの死者は16人に達した。

時事通信より

5日時点では死者16人とされていたが、その後さらに事態は悪化している。ハメネイ氏の亡命の噂も真実味が増している。

シリアのアサド氏が2024年に亡命している前例もあり、可能性を完全に否定できない状況だ。

同日、パフラヴィー王朝の最後の皇太子レザー・パフラヴィーは、即座にペルシア語で動画メッセージを発信し、「この体制が存続する限り、経済状況は悪化し続ける」と述べて抗議活動への支持を表明した。この投稿は24時間以内に数百万回再生され、ソーシャルメディア上では「パフラヴィーは帰還する」という言葉がトレンド入りした。

JB Pressより

以前の体制の指導者であったパフラヴィー氏のメッセージが支持されている一方で、現体制の求心力低下を示す兆候も目立つ。

しかし、注目すべきは、体制の最強の実力組織であるIRGC(イスラム革命防衛隊)本体が、いまだ大規模な制圧作戦を展開していない点である。この抑制的対応に関し、IRGC内部で何らかの計算が働いているか、あるいは体制内部で亀裂が生じている可能性もある。

JB Pressより

革命防衛隊は治安維持には動いているものの、大規模な制圧作戦には至っていない。これまでの傾向から初期消火に力を割くことが多かったのだが、抗議活動拡大に追いついていないのが治安維持側の動きだ。

最高指導者の亡命が囁かれ、それを強く否定し切れていない現状は、体制の脆弱さを鮮明にしている。この点が、革命防衛隊の抑制的対応に影響している可能性は高いだろう。

弱気な体制側

抗議活動の背景には、イランの経済的行き詰まりがある。

特に、通貨暴落やインフレ問題に対応する能力の低下は著しく、大統領が音を上げる始末である。

これまで体制側は「経済改革アジェンダ」の再活性化を目指してきたが、国民の要求はもはや体制の完全な変革へと進化してしまった。ペゼシュキアン大統領も、1月6日のテレビ演説で、通貨暴落やインフレ問題に関し、「我々は政府がこれらの問題を全て一手に引き受けると期待してはならない。政府にはその能力がない」と述べ、政府の限界を自ら認めているほどである。

JB Pressより

これでは、経済問題を発端とした抗議活動を抑え込むことは難しい。

むしろ問題なのは、抗議の焦点が体制批判そのものへ移行している点だ。

興味深いのは、イラン各地でイラン・イスラム共和国の国旗が燃やされる一方で、緑、白、赤の三色旗の中央にライオンと太陽を描く王政時代の国旗が公然と市民によって掲げられていることだ。これは、イラン国民が「イスラム共和国体制」をもはや正統な統治体制として認めないということを象徴している。

JB Pressより

最後の皇太子パフラヴィー氏の人気が高まって「王政復古」の動きが出ているというのは興味深い動きだが、逆に言えば現体制が正統性を失いつつあることを意味する。

何より、体制改革そのものに言及する動きが抗議活動を通じて高まっていることが、宗教指導者の指導力の低下を印象づけている。

現指導者のハメネイ氏は、前指導者のホメイニ氏のようなカリスマに欠けると言われているが、何より高齢である。その上で、後継者と目される人物の不在が現体制を揺るがしている。

俗っぽい話をすれば、結局のところイラン経済の低迷が支持率悪化を招いていると言っても良く、それは経済制裁が功を奏していることや、ロシアや支那といった東側陣営全体の揺らぎと無関係ではない。

外国勢力からの介入可能性

当初、トランプ氏の介入示唆はベネズエラ対応に忙殺され、現実性は低いと見ていた。 しかし、その見方も修正が必要かもしれない。

抗議活動が続くベネズエラ作戦を受けてトランプ大統領が行動を警告、イランは緊張

2026年1月7日午後2時19分

~~略~~

トランプ大統領とその支持者による最近の発言は、テヘランの懸念を払拭するほどの効果はほとんどなかった。マドゥロ政権の作戦前日、トランプ大統領はイラン政府に対し、「平和的な抗議者を銃撃し、暴力的に殺害する」場合、米国は「準備万端で、いつでも出撃できる」と警告していた。

L.A. Timesより

現時点では噂の域を出ないものの、「準備ができている」というメッセージが繰り返し発せられている点は無視できない。

すでにその兆候は見られる。水曜日、イラン陸軍司令官アミール・ハタミ少将は先制軍事攻撃を警告した。国営通信社IRNAが伝えた演説で、ハタミ少将は「イスラム共和国は、イラン国民に対するこのような言辞の激化を脅威とみなしており、対応せずに放置することはない」と述べた。

L.A. Timesより

イスラエルの動きも注視すべきだ。国内事情は不安定だが、対イラン工作を継続している以上、情勢次第では連携する可能性はある。

恐らく、ハメネイ氏を引きずり下ろす動きなら、喜んで動くはずだ。そういう意味では、スンニ派諸国もある程度は介入する可能性はあるのだろう。

一方で、関係者であるロシアや支那は動く可能性は低そうだ。

3つの破滅シナリオ

イランは地域紛争にも深く関与しており、その崩壊は世界情勢に大きな影響を与えかねない。

イランの破滅シナリオは、複数の専門家や報道で指摘されている最悪シナリオを整理すると、3パターンに分類できる。

1.内戦と「権力の空白」による国家分裂

現体制が急速に崩壊し、後継体制が整わない場合に懸念されるシナリオ。

  • 軍・治安部隊の派閥争い: 革命防衛隊(IRGC)や軍の内部で、利権や思想の違いから派閥が分かれ、武力衝突(内戦)へ発展
  • 重要インフラの争奪戦: 油田、港湾、国営放送局などの支配権を巡り、武装勢力が各地で拠点を築くことで、イランが「シリア化」へ

2.イスラエル・米国による「軍事介入の連鎖」

デモの混乱に乗じて、外部勢力が決定的な攻撃を加えるシナリオ。

  • 核施設への最終攻撃: 2025年6月のイスラエルによる攻撃でイランの防衛網は弱体化しているが、混乱が極限に達した際に、イスラエルや米国が核施設を完全に破壊するための軍事介入
  • 米軍の直接介入: トランプ大統領は「介入」を明言しており、ベネズエラと同様にデルタフォースなどの特殊部隊による指導部拘束(斬首作戦)が行われれば、体制は一気に崩壊。同時に周辺地域(イラク、レバノン等)を含めた広範囲な混乱を招く

3.周辺諸国への「混乱の輸出」と中東全体の不安定化

イランという巨大な軸が失われることで、中東全体のパワーバランスが崩壊するシナリオ。

  • 代理勢力の暴走: 資金源や指導力を失った「抵抗の枢軸」(レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派など)が、生き残りをかけて自暴自棄な攻撃を周辺国に仕掛ける
  • 湾岸諸国の対立再燃: イランという共通の敵が消えることで、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などの湾岸諸国間で主導権争いが激化し、地域内の新たな軍事衝突に繋がる

いずれも碌でもない展開だが、中東の混乱は避けられそうにない。

まとめ

中東情勢の激震は、確実にオイルマネーに影響を与える。また、ヨーロッパ諸国の不安定化にも寄与する可能性があり、世界的にも混乱を招くリスクがある。

こちらの記事でも追記で言及しているのだが、「地政学的な不確実性が高まっている」と表現されていて、ドイツの諜報機関からの発信を引いてテロの理由がロシアからの工作の可能性を指摘したのだけれど、中東からの影響ということも更に拡大する可能性が高い。

イランの混乱は、もはや中東の一国の内政問題ではない。

エネルギー、治安、同盟関係の全てに波及する「連鎖点」として、今後の動きを注視する必要がある。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    イラン、ガザ、ベネズエラが実は線で繋がっていて、その線をたぐると中国に行き着く、というXの書き込みを目にしました。
    真偽はともかく、説得力はあって、頭の片隅に残しておくべきかと。
    ※その線を断ち切るためにトランプ氏が動いている、というのが要旨でしたが。

    ※見つけました、これです。
    https://x.com/search?q=%E3%83%99%E3%83%8D%E3%82%BA%E3%82%A8%E3%83%A9%E3%80%80%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%80%80%E3%82%AC%E3%82%B6&src=typed_query

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      血塗られた「民主活動家」ですか。血塗られた国家にいれば、それも無理はないのかなと言うのが、僕の感想なんですけどね。
      ただ、補助線を引くことでイラン・ガザ・ベネズエラが繋がるというのは、分かります。また、そこに支那が繋がっているのも間違いない。厄介な構図ですね。