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高市・メローニ会談が示す日伊準同盟化で実る果実

外交
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あまり日本のメディアは取り上げないのだが、「中革連」の些末な炎上ネタよりも余程夢のある大切なニュースである。

高市氏、イタリアのメローニ首相と会談 重要鉱物の供給網などで連携強化

2026年1月16日午後 1:29

高市早苗首相とイタリアのメローニ首相は16日に官邸で会談し、重要鉱物のサプライチェーン(供給網)強化などで連携を強めることで一致した。高市氏は会談後の共同記者発表で「二国間の関係を特別な戦略的パートナーとしてさらなる高みを目指すこととした」と語った。

ロイターより

イタリア初の女性首相が来日し、日本初の女性首相と会談したこと自体もそうだが、今回の合意内容を見ると、かなり踏み込んだものであることが分かる。

これはニュースとして押さえておくべき会談だろう。

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日英伊で同盟が結べるか

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準同盟国への第一歩

ポイントはいくつかあるので、整理して見ていく。

  • 「特別な戦略的パートナーシップ」への格上げ: 両国の関係を従来の「戦略的パートナーシップ」からさらに一段階引き上げることで一致
  • 経済安全保障と重要鉱物: 支那による「経済的威圧」を念頭に、電気自動車(EV)やハイテク製品に不可欠な重要鉱物のサプライチェーン(供給網)強化に向けた連携を確認
  • 防衛協力: 日伊英の3カ国で進める次世代戦闘機(GCAP)の共同開発における協力深化を確認
  • 新分野での協力: 新たに宇宙協議を立ち上げることで合意し、経済・安保両面での多角的な協力を推進
  • 有事の際の連携: 有事の際に液化天然ガス(LNG)を融通

ご存じGCAPの話が出るのは想定内だったが、全体として見ると、イタリアを事実上「準同盟国」と位置づける方向性を明確にした内容になっている。

既にイギリス、オーストラリアとは準同盟的関係にあるが、そこにイタリアが加わる意味は小さくない。地理的距離はあっても、欧州における確かな足場を一つ得たと言える。

タイミングとしても、イタリアが支那とのデリスキングを真剣に検討し始めた段階なので、非常に良い。一帯一路から離脱した次なる一歩の欲しいイタリアは、日本との協力強化という成果は案外大きいと思う。

また、有事におけるLNG確保はイタリアとしても頭の痛い部分。日本がオーストラリアと協定を結んで、日本が技術をオーストラリアが原料を提供する延長線上に乗っかることのできる意味はかなり大きい。

重要鉱物の供給網強化

重要鉱物の話は、直近の支那の輸出管理強化を見れば、極めて現実的なテーマだ。位置づけとしては、鉱物安全保障パートナーシップ(MSP)の延長線上にある。

日米など「鉱物安全保障パートナーシップ」創設 レアアース安定供給へ

2022/6/15 19:21

外務省は15日、鈴木貴子外務副大臣がカナダで14日に開催された鉱物資源に関する閣僚級会合に出席し、レアアース(希土類)などの重要鉱物の安定供給に向けた米国主導の新たな国際的枠組み「鉱物安全保障パートナーシップ(MSP)」の創設に支持を表明したと発表した。

産経新聞より

この関連技術で日本が高度な技術を持っていることは知られていて、最近の支那のレアアースの輸出管理の話を受けて、イタリアとしても支那依存を減らすための協力が欲しかったところ。

その先にあったのが、G7の会合の話であり、今回の合意なのだ。

日本にとっても、イタリアの賛同を得ることで、枠組みの実効性を高められる。共同研究や技術連携の拡大は双方にとって利益があり、サプライチェーン強化はまさにウィンウィンの関係だ。

地理的表示(GI)の相互保護

そして、余り語られない部分ではあるが、地理的表示(GI)の相互保護もそれなりに意味がある。

イタリア南部は農業が盛んで、日本同様に小規模農家が多い。高品質な地域ブランドを守るため、GI制度は重要な政策手段になっている。

日本はこれまで支那や韓国による模倣・横取りに悩まされ、種苗法改正などの対策を打ってきたが、十分な成果を上げているとは言い難い。一方で、GIによる輸出先での保護は、実務的にはかなり効く。

キャベツの嬬恋でイタリア野菜、女性農家5人が地域の魅力向上へ挑戦

2025年9月22日 5:00

農産物の多くは地域の名前と結びついてブランドになる。群馬県嬬恋村のキャベツはその代表例だろう。国内有数のキャベツの産地であるこの村の可能性を広げようと、イタリア野菜の生産グループが誕生した。

グループの名前は「Fresca(フレスカ)」。イタリア語で「新鮮な」を意味する。会長の土屋美絵さんは「新しい野菜で嬬恋村の魅力を高めたい」と話す。

日本経済新聞より

こういった取り組みへの保護にも繋がるため、案外、日本とイタリアとの相性は良いのかもしれない。

イタリアにとっても南部振興は重要な政治課題であり、「成果」として国内に持ち帰れる点も大きい。

そして、既にフランスやイギリスはGI関連に一方的に煩く言ってきているが、EU全体に日本側からのGIを認めて貰う一歩として、イタリアは結構重要だと思う。

まとめ

日本は産業技術だけでなく、食文化に対しても異様なまでの拘りを持つ国だ。その意味で、パスタの茹で加減で内戦寸前まで行きかねないイタリアとは、意外なほど相性が良い。

日本とイタリアで、ピザやパスタで争いが起きる可能性はありそうだが、海産物の活用や地域ブランドの思想では共通点も多い。そういう意味でも、今回の会談は単なる首脳外交ではなく、長期的に効いてくる「地味だが重要な一手」だったと言えるだろう。

追記1:エネルギー戦略に転換はあるか

コメントをいただいて少し調べたのだが、確かにイタリアはかなり電力問題に苦しんでいるようだ。

ウクライナ侵攻で電気代高騰 イタリア3倍、日本3割上昇 - 日本経済新聞
政府が6日に閣議決定した2022年度のエネルギー白書によると、日本の23年1月の電気料金は20年1月から3割上昇した。欧州連合(EU)は5割上昇、イタリアは3倍になった。ロシアのウクライナ侵攻が世界の電気代高騰に拍車をかけた。再生可能エネル...
有名なヨーロッパのホテルチェーンが閉鎖を余儀なくされ、電気代は500万ユーロに達した。
イタリアのホテルチェーン「カロリ」は、ここ数日、法外な電気代とガス代に見舞われています。エネルギーコストの高騰を受け、起業家のアッティリオ・カプート氏は、イタリアのリゾート地サレントにある5軒のホテルを閉鎖することを決定しました。9月の電気...

そういう観点から見てみると、共同記者会見では興味深い部分が含まれている。

両国間では、インフラやエネルギー分野の協力も着実に進展しており、これを歓迎します。昨年、当局間で署名されたガスに関する協力覚書に基づき、有事の際の液化天然ガス(LNG)の融通に関する協力も進めていきます。こうした具体的な取組が、今の国際情勢の中、日本・イタリア関係の深まりを象徴する、時代に合った協力です。

科学技術分野の協力も有望な分野です。特に、両国が知見を有する宇宙分野については、新たに宇宙協議を立ち上げて協力をしてまいります。国際宇宙ステーションにおけるミッションや地球観測、産業間協力、防災・災害監視での衛星利用といった、具体的な成果を共に目指してまいります。

首相官邸のサイトより

「有事の際のLNG融通」とあったので、ウクライナ侵略の影響のような話を想定していると勝手に理解していたが、どうも「インフラやエネルギー分野の協力も着実に進展しており」という部分、電力問題を想定している可能性がありそうだ。

でも、2024年には支那と協力する話になっていたような……。

中国とイタリア、EVで協力確認 習氏「産業を相互補完」

2024年7月29日 19:32(2024年7月29日 21:14更新)

中国の習近平国家主席は29日、訪中しているイタリアのメローニ首相と北京で会談した。両首脳は電気自動車(EV)や人工知能(AI)を巡る協力を確認した。中国国営中央テレビ(CCTV)が伝えた。

日本経済新聞より

そして、スペインの大停電。

スペインとポルトガルの大停電から学べ、イタリアのエネルギー転換と原子力再開の議論
2025年4月28日、スペインとポルトガルで大規模停電が発生 影響はイベリア半...

とまあ、イタリアとしても今の方針に不安を感じている状況は間違いなく、方針転換を迫られている。公式発表では正確なところは読み取れなかったが……、電力関連でも協力が出来ることがあると良いよね。

追記2:きっちり仕事はしていく

なるほど、当然、詰めていくわけだ。

メローニ伊首相が三菱重工・日立・三井物産幹部らと意見交換 鉱物調達や投資巡り

2026/1/17 21:39

訪日したイタリアのメローニ首相は17日、都内で日本の大手企業17社の幹部らと面会した。重要鉱物の調達などを巡って意見交換したほか、イタリアの企業誘致政策などについて説明し、投資拡大を呼びかけた。

イタリア首相府によると、参加したのは三菱重工業や日立製作所、三井物産などのトップら。

産経新聞より

首相会談をする段階で、ある程度話は決まっているわけで。当然、企業ともしっかり話をしていく。

……あれ?韓国の大統領とは何したんだっけ??

コメント

  1. 砂漠の男 より:

    イタリアの”高すぎる”電気代は昔から有名です。(いまはドイツのほうが高いかも知れませんが。)そこに、日本の発電・ガス周りの技術協力が得られるとすれば、イタリアにとって棚からぼた餅くらい有り難い話でしょう。
    逆に、日本はイタリアからブランドの作り方や守り方を学ぶべきです。特に、日本発のアニメや漫画の海賊版対策は必要で、ジャパニメファンのメローニ首相に協力してもらえると良いですね。

    • 木霊 木霊 より:

      イタリアの電気代、高かったんですね。
      あまりそんな認識がなかったので、教えてもらって調べて、結構深刻なんだなと。
      日本からの技術供与ができれば良いんですけどねぇ。

      イタリアはブランドを守るやり方はかなりしっかりやっていて、まあ、欧州はこの手のブランドを守る技術に長けていますから、学ぶべきところは多いでしょう。
      そういえばメローニ氏、原哲夫氏と会ってパネル貰っていましたね。ああいった外交もありですね。

  2. 砂漠の男 より:

    メローニ首相は日本の産業界トップたちともミーティングしたようですね。
    特に、三菱重工と日立製作所への期待は大きいはずです。
    日本政府の後押しで、日本の産業界はイタリア市場を拡大できそうです。

    余談ですが、昨年陸自の第1空挺団がイタリア主催のNATO共同演習に初参加していました。
    https://www.youtube.com/watch?v=SxyOw8bdAbw
    そういえば、昨年には横須賀にイタリアの空母(F-35B搭載)がやってきていましたね。
    両国間で「物品役務相互付与協定」も締結したそうなので、今後軍事提携も進むのでしょう。

    • 木霊 木霊 より:

      兵器産業の代表格であり、原子炉の技術を持っているのが三菱重工と日立製作所ですから、何にせよ連携がとれるような顔見せをするというのは大切なことだと思います。
      イタリア市場との連携というのは、意外に日本にとっても大きいことかもしれませんね。

      ACSAの締結は準同盟国になるには必須ですから、着実に一歩先に進んだという意味で大きいと思います。