今週はこの関係のニュースを取り上げる機会が多いのは、申し訳ない気がするのだけれど、今回もまた韓国の話である。
米国は3回の警告状…韓国政府と国会は黙殺した(1)
2026.01.28 08:49
トランプ米大統領の「関税復元」は理由のない急発進ではなかった。米国ビッグテック企業の不利益につながりかねない韓国の立法に対する公開的な懸念表明、韓国政府を相手にした公式書簡発送に続き、バンス米副大統領が金民錫首相に直接問題を提起したのに、韓国政府と国会は深刻な兆候ということを認知できなかった。結局トランプ大統領が伝家の宝刀と考える関税カードを切った背景だ。
中央日報より
去年の夏頃から大騒ぎしていたのに、議会通せなかったばかりか黙殺ですか。
牛歩戦術は功を奏するか
アメリカによる対韓関税交渉の整理
まずは、これまでの経緯の整理から入る。
昨年4月頃から、米国による関税強化が現実的な問題として浮上した。米国向け輸出で利益を得てきた韓国にとって、関税率が25%まで引き上げられる事態は、どうしても避けたい展開だった。
そのため8月いっぱいを使って右往左往した末、トランプ氏を韓国に招いた段階で、ようやく「合意に向けた道筋」を付けたとされている。
ただし、この米韓合意の文書作成には難航したため、最終的な決着は11月にずれ込んだ。
これが去年の展開である。
合意の要点
改めて項目立てすると、合意内容は次の通りだ。
- 関税に関する合意
- 相互関税の引き下げ: 当初予告された25%の相互関税(IEEPAに基づく)を15%に引き下げ(日本やEUと同等の水準に)
- 自動車・部品関税: 自動車および同部品への関税も、25%から15%へと引き下げ
- 特定品目の関税撤廃・上限: 航空機部品やジェネリック医薬品の関税を撤廃。また、木材製品や医薬品、将来的な半導体の関税も最大15%を上限とする決定
- 韓国側による大規模投資と購入
- 3,500億ドルの対米投資: 今後数年間で計3,500億ドルの投資(造船、エネルギー、半導体、AI、量子コンピューティングなどの戦略産業)
- 投資の主導権: この投資プロジェクトの選定権は米国側(トランプ大統領)が持ち、韓国は資金を拠出する
- エネルギー購入: 2028年までに、LNG(液化天然ガス)を含む米国産エネルギー製品を1,000億ドル分購入
- 非関税障壁の撤廃と市場開放
- 自動車輸入規制の緩和: 米国基準の自動車を韓国へ輸出する際の年間上限(5万台)が撤廃
- デジタル・農業分野: デジタルサービスに関するデータのクロスボーダー移転の円滑化や、米国産農産物(バイオテクノロジー製品等)の承認プロセス簡素化などが盛り込まれる
- 安全保障協力の強化
- 原子力潜水艦の共同建造: 貿易交渉と並行して、原子力潜水艦の共同建造計画に関する協議が進められるなど、防衛協力の深化もパッケージに含まれた
こうして見ると、韓国側の負担は相当なものである。
韓国議会は承認したくない
ところが、現時点でこれらの約束は履行されていない。理由は単純で、韓国国会が承認していないからだ。
トランプ大統領は「議会」を3回取り上げて不満を吐露した。「韓国の議会が米国との取引を履行しないでいる」としながらだ。また、李在明(イ・ジェミョン)大統領と2度の会談にわたった合意点を強調しながら「なぜ韓国の議会はまだこれを承認しないのか」と反問した。
中央日報「米国は3回の警告状~」より
トランプ氏はいたくお怒りである。
与党 韓米の関税引き下げの履行向け対米投資特別法案提出
Write: 2025-11-26 11:50:05/Update: 2025-11-26 13:42:01
与党「共に民主党」は26日、韓米の関税交渉の合意を履行するための、対米投資に関する特別法案を国会に提出しました。
今回提出された法案はアメリカへの投資を行うための法的根拠となるものです。この「韓米の戦略的投資管理のための特別法案」には、▲戦略的投資の推進体制の構築 ▲韓米戦略投資基金の創設 ▲韓米戦略投資公社の一時的な設立などが盛り込まれています。
KBS WORLDより
提出は11月末にされているのだが、この記事、不穏な文章が含まれていた。
また、共に民主党は、与野党の協議を通じて法案の完成度を高めるとしていて、議決の期限を定めず、慎重に審議する方針です。
KBS WORLD「与党 韓米の関税引き下げの履行向け~」より
あー、この時点で放置する気満々だったんだ。韓国議会がどのような審議をしているのかは不明なのだが、どうやらこの件は一度も審議されずに2ヶ月間放置されている状態。
今後3ヶ月は無理?
そして、この期に及んでこんなことを言っている始末。
韓国与党「共に民主党」は、「12月の租税審議と李恵勲長官候補の1月の人事聴聞会で個別の法案審議をする余裕がなかった」(27日、鄭泰浩財経委幹事)という立場だが、これまで政府与党で「速度調節」の気流も感知された。具潤哲経済副首相兼企画財政部長官は22日、ブルームバーグとの電話インタビューで「投資資金が今年上半期中に執行されるのは難しいだろう」と話した。
中央日報「米国は3回の警告状~」より
色々言っているが、要は後回しにしたのである。その結果、今年の上半期中に執行されるのは難しいらしい。
これではトランプ氏が業を煮やすのも無理はない、25%に戻すのはほぼ確定だろう。
与党はいまになりあたふたと立法手続きを急いでいる。「共に民主党」の韓貞愛政策委議長はこの日記者らと会い、「対米投資特別法はしっかり審議すれば問題なく1-3月期中に十分に通過させられる」と話した。「簡易公聴会」まで取り上げながらだ。ただこれは言い替えればトランプ大統領が関税爆弾を投げる前でも立法は十分に可能だったともいえる。
中央日報「米国は3回の警告状~」より
ただ、この話は韓国にとって急いだところでメリットがないという判断だったみたいなんだよね。
その理由は、トランプ氏自身が関税を弄るのは憲法違反だと訴追されているからである。
それは憲法違反なのか
この話は、8月頃にも少し触れている。
基本的には関税交渉の担当は通商代表部(USTR)や商務部、財務省辺りになるので、大統領にその権限はないのだ。
ところが、トランプ氏はこれを押し通すために国際緊急経済権限法(IEEPA)を利用することにした。彼のロジックによれば、今、アメリカは非常事態なので、非常事態の解消を図るために関税プログラム導入を大統領権限で行うという。
トランプ米大統領、世界共通関税と相互関税課す大統領令を発表
2025年04月03日
米国のドナルド・トランプ大統領は4月2日、「相互関税による輸入制限により、米国の巨額かつ恒常的な財貿易赤字に寄与する貿易慣行を是正する」と題する大統領令を発表した。また同日、ファクトシートも公開した。
JETROより
これが大統領令で正式手続きを踏んだのだから、各国とも外交交渉をせざるを得なくなった。
ただ、これが憲法に反するという話が出ているんだよね。
◇違憲関税判決の影響の可能性
別の分析によると、トランプ大統領は、通商拡大法または国際緊急経済権限法(IEEPA)を用いて相互関税を課すことの合憲性に関する米国最高裁判所の差し迫った判決を前に、韓国の米国への投資を確定させようとした可能性がある。西江大学のホ・ユン教授は、「トランプ大統領は、相互関税の法的効果を無効にする最高裁判所の判決が出る前に、韓国の投資を確定させようと焦っていたのかもしれない」と述べている。トランプ大統領は、最高裁の判決を前に、関税は国家安全保障と経済に有益であると一貫して強調してきた。
THE CHOSUNより
で、2月20日にその判断が出る可能性があるとのこと。
米最高裁、20日もトランプ関税で判断示さず-次の機会は1カ月後
2026年1月21日 at 0:48 JST
米連邦最高裁は20日も、トランプ大統領の関税措置に関する判断を示さなかった。これにより次に判断が示されるのは、少なくとも1カ月先になる見通しだ。
最高裁は近く、4週間の休廷期間に入る。通常の意見公表手続きに基づけば、関税を巡る判断が示され得る次の機会は2月20日となる。
Bloombergより
ただ、1月の時点で判断が出なかったことを考えると、2月20日に判断が出るかどうかもちょっと分からない。判断が遅れると25%関税に戻され、韓国の不利益となる。
引き延ばし作戦は本当に有効なのだろうか?
まとめ
結局、散々批判を浴びた自民党の赤澤氏だが、早期にトランプ氏との交渉を決めて関税率を決めた。早期妥結によって、他の国に先んじて15%の関税率での貿易交渉を行うことができ、利益を得ることに成功した。
仮にこれが違憲であるという話になったにせよ、自動的に関税率が戻るかどうかも不明だし、何処まで違憲の判断がされるかも不明。そして、支払った関税差額は戻る可能性が指摘されているが、その関税差で生まれた遺失利益は戻ってくる可能性はない。
遅延戦術が成功すれば儲けもの、失敗すれば高関税という博打に出た韓国は、なかなか厳しい立場に追い込まれつつあり、その選択の是非は、結果でしか評価されない。
追記
トランプ氏は待ってくれない。
米、全方位で関税圧力 「25%賦課、官報準備中」
Posted January. 29, 2026 10:28, Updated January. 29, 2026 10:28
トランプ米政権が、韓国に対し25%の相互関税や自動車関税を課すための実務作業を進めていることが分かった。トランプ大統領は関税引き上げ圧力を強めた翌日の27日(現地時間)、取材陣に「我々は韓国とともに解決策を用意する」と述べ、交渉の余地を示唆した。しかし水面下では、実際に関税を課すための手続きに着手し、韓国への圧力を強めている。
東亜日報より
着々と準備を進めているのは、韓国議会とは好対照だね。
トランプ氏は「やる」といったら実現していく人物なので、舐めていたら痛い目に遭うと思うぞ。
関税引き上げが効力を持つには、大統領の大統領令署名、官報掲載などの手続きを経る必要がある。トランプ氏は前日、韓国製品への関税を従来の15%から25%へ引き上げる方針を明らかにしたものの、実施時期には言及しなかった。
東亜日報より
この感じだと、官報掲載の準備はしておいて相手の出方を待つ戦術のようだ。実際、韓国側は担当官をアメリカに派遣したようで、29日には交渉が行われると記事には出ている。
韓国もせっかちではあるが、トランプ氏の方が輪をかけてせっかちなんだろう。「舐めてるんじゃねーぞ」と、脅しをかけてきたわけだ。







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