「超戦闘国家イスラエル!」という印象の記事をみつけて、思わずため息である。当然、イスラエルにはイスラエルの事情がある。
イスラエル軍、隣国レバノンに地上侵攻か イスラエル国防相は支配地域拡大を指示
2026年3月3日 19:54
イスラエル軍が隣国レバノンとの国境沿いの一部で地上侵攻を開始しました。イスラエルの国防相は、軍に対し、支配地域を拡大するよう指示を出しています。
ロイター通信によりますと、イスラエル軍は3日、隣国レバノンとの国境沿いの一部で地上侵攻を開始したということです。
日テレNEWSより
ただ、その事情を第三者が理解できるものかどうかはまた別なのだけれど、報道はその辺りまでは触れて欲しいものである。
この報道の仕方だと、どうしてイスラエルが「今」のタイミングでレバノンを攻撃したのかが全く不明。危ない国家のように映ってしまう。危ないのは否定しないが、理由があったのは事実なのだから。
中東の事情
事実関係の整理
日本のメディアには余り期待できないので、CNNのニュースを参照しよう。
イスラエル軍、テヘランとベイルートを「同時攻撃」
2026.03.03 Tue posted at 18:50 JST
イスラエルはイランの首都テヘランとレバノンの首都ベイルートで「同時攻撃」を実施していると発表した。
イスラエル空軍は3日午前の声明で、攻撃の標的はイランの政権並びに同国が支援するレバノンの親イラン武装組織ヒズボラに関連する「軍事目標」だと述べた。
CNNより
こっちの記事の方がもっと過激だった?!
いや、そりゃ同時攻撃なんだろうけれど、レバノン侵攻はテロ組織ヒズボラに対抗するためなんだよね。記事にも書かれているけれども。
ハメネイ師死亡の報道、イラン首都で歓声と祝福の声 「イスラム共和国に死を」と唱える女性も
2026.03.01 Sun posted at 09:38 JST
イランの最高指導者ハメネイ師が死亡したとの報道を受け、首都テヘランの一部地域では28日夜、歓声や祝福の声が上がった。
CNNより
こちらの記事にもあるように、イラン国内、首都テヘランでもハメネイ氏の死亡を喜ぶ声があったのは事実だ。
先ずは、事実関係を整理しよう。
- イスラエルがアメリカと組んでイランを攻撃
- 最高宗教指導者のハメネイ氏を殺害と発表
- イスラエルは隣国レバノンにも空爆+地上侵攻開始
と、こんなところだ。
イランの政治的な失敗
ハメネイ氏がイスラム教の最高指導者だったとはいえ、イラン国民にとって素晴らしい人物だったかと言えば、そうではなかったようだ。
イランにとって、イスラム教の最高指導者は政府の上に位置する存在。だから、イランの政治的な失敗は、一重にハメネイ氏の指導の失敗と言うことになる。

こういう政治体制になっているのだから、イランにおいては神の代弁者的な立ち位置なのだ。
で、こちらの記事にも言及したが、イランは今、深刻な水不足に陥っている。これが気候変動要因によってだけなら、イラン指導部が批判される謂われはないかもしれないのだけれど、どちらかというと革命防衛隊の暗躍もあって治水が疎かにされたことの方が問題視されている。
特に、大統領のマスウード・ペゼシュキアン氏の無能っぷりときたら……。いや失礼、実際は有能な人物かもしれないが、対策もろくにせずに「首都移転」を口にしたのだから、その誹りを受けても仕方がないとは思うんだ。
当然ながら、大統領の失敗だけでなく最高指導者の判断力も問われる問題なのだ。
テロ組織ヒズボラ
一方で、レバノンに根を張るテロ組織ヒズボラと、ヒズボラを支援するテロ支援国家のレバノン。
ヒズボラは、イラン革命防衛隊に育てられたテロ組織なので、イランとも関係が深い。
ヒズボラが報復参戦 イスラエルも反撃、30人超死亡
2026年03月02日19時08分配信
イスラエル軍によると、同国北部で2日、レバノンから飛翔(ひしょう)体が撃ち込まれた。イランの支援を受けるレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは、イラン最高指導者ハメネイ師殺害への報復としてミサイルや無人機で攻撃したと主張した。イスラエル軍はレバノン各地のヒズボラ関連拠点へ反撃し、レバノン国営通信は31人が死亡したと伝えた。
時事通信より
それ故に、テロ組織ヒズボラは、イスラエルがハメネイ氏を暗殺したとして、報復を宣言し、イスラエルにミサイルを撃ち込んだ。そして無人機を飛ばして攻撃を仕掛けている。
イスラエルとしても、イランを攻撃すれば当然、恨みを買うだろうことは分かっていたので、即時反撃をしたというのが今回の話なのである。
ヒズボラはイランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」の指導の下に創設された民兵組織。イスラエルは先月、米イランの軍事衝突にヒズボラが介入すれば、レバノンを攻撃すると事前警告していた。ヒズボラは2024年11月からイスラエルと停戦していたが、イランの非常事態に際し支援しない選択肢はないと判断したもようだ。
時事通信「ヒズボラが報復参戦~」より
イスラエルとヒズボラの間にも、深い因縁がある。
2024年9月には、イスラエル軍がレバノンの首都ベイルートを空爆してテロ組織ヒズボラの最高指導者ナスララ氏を殺害。
ポケベル事件を起こしたイスラエル軍にとって、宿敵とも言える相手の首魁を討ち取った話だが、ヒズボラにとっては忘れられない事件だろう。で、今回は自分たちを支援してくれる革命防衛隊のトップまで殺害されてしまった。そりゃ、復習する動機は十分というわけだ。
こうやって整理すると、中東やアラブ諸国にとって国家とは一体何なのか?と思ってしまうよね。
復讐するは我にあり
そんなわけで、血の気の多いイスラエルが隣国レバノンにも襲いかかったという構図で理解するのは正確とは言えない。
乱暴な整理だが、理解としては部族単位の対立構造と見た方が良い。国家の枠組みは体裁程度で、実際は仲の良い部族が手を結び、仲の悪部族同士が争う。宗教的な対立もラベリング程度に考えた方が良いだろう。
イスラエルのカッツ国防相はヒズボラの最高指導者カセム師も「標的だ」と表明。攻勢を強める構えを示した。ザミール参謀総長も「戦闘に加わったヒズボラにエスカレーションの責任がある」と非難。軍はレバノンの南部や首都ベイルートでヒズボラの幹部や武器保管庫などを攻撃したと明らかにした。
時事通信「ヒズボラが報復参戦~」より
中東の争いはまた、過激さを増すだろう。
アメリカはこちらにどれだけ荷担する気があるのかは知らないが、イスラエルとしてはとにかく敵を一掃するつもりでいるのだろう。
パレスチナの問題も、イスラエルとパレスチナという国家対立という構図でみるから、「侵略戦争だ」と勘違いするのだが、彼らにとっては部族間対立の延長にある話。暴力団同士の抗争のようなものだと説明した方が、分かりやすいかもしれない。
まとめ
日本のメディアはもうちょっと構図を丁寧に説明して欲しいものである。
そして、中東の国家同士の争いという風に見ると、今回の話はイスラエルという国家の暴走のようにも映るのだが、イスラム社会の構造的に部族社会の抗争が常に行われていて、彼らの主眼が勢力拡大なのだという整理の仕方をすれば、分かりやすいと思う。
だから、正義がどちらにあるかとか、そういうことを考えても意味はないのだ。






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