近況は「お知らせ」に紹介するようにしました。「注意して下さい」もお読み下さい。

日本単独の石油備蓄放出を宣言 高市首相の“市場メッセージ”

スポンサーリンク
安全保障
この記事は約4分で読めます。

狙っているのはインフォメーション効果だろうね。

高市早苗首相、石油備蓄の放出を表明 日本単独で16日にも

2026年3月11日 19:36

高市早苗首相は11日、中東情勢の悪化を受けて16日にも備蓄している石油を単独放出すると表明した。民間備蓄15日分を放出するとともに、1カ月分の国家備蓄を放出すると説明した。備蓄を放出することで供給量を増やし、原油価格を抑える狙いがある。

日本経済新聞より

ただ、今回は日本単独での備蓄放出を口にしたことはちょっと新しい。

早々に備蓄放出を口にした理由

スポンサーリンク

備蓄石油放出オペレーション

このニュースは、恐らくはこちらのニュースのカウンターとして当てられたものだと思う。

ホルムズ海峡で商船三井所有のコンテナ船が攻撃と英紙報道 一部が損傷、ほかにも2隻被害

2026/3/11 18:16

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は11日、商船三井のコンテナ船「ワン・マジェスティ」が中東のホルムズ海峡で攻撃を受けたと報じた。船舶の運航情報などを提供するサイト・マリントラフィックによると、同船は日本船籍で、インドのムンドラ港に向けてホルムズ海峡を通過していた。

産経新聞より

このニュースもちょっと眉唾物なのだけれど、詳しいことが分かっていないので断定的に何かを言うのは避けておきたい。

何が気になるのかというと「今月10日にはイランが同海峡に機雷を敷設したと米メディアが報じていた」という一文である。今どき、機雷を撒く戦術をやるかね。

過去にそういう話は何度も出たことがあるけど、海峡封鎖にしても機雷敷設にしても、実現したことはない。

一方で、備蓄石油の放出は何度か過去にやったことがある。

<民間備蓄の放出>

  • 1991年:湾岸戦争 中東情勢の緊迫を受け、初めて民間備蓄が放出された
  • 2005年:ハリケーン・カトリーナ 米国の製油施設が被災した際、IEAの要請に基づき実施された
  • 2011年:東日本大震災 国内の石油不足に対応するため、民間備蓄の放出が行われた
  • 2011年:リビア情勢悪化 内戦による供給不安を受け、IEA協調のもと実施された

今回予定されているのは民間備蓄15日分。

<国家備蓄の放出>

  • 2022年:ロシアによるウクライナ侵攻 IEA加盟国と協調し、国家備蓄と民間備蓄を合わせて放出した。
  • 2021年:価格高騰対策(初の国家備蓄放出) 岸田政権下で、米国などと協調し、価格高騰を抑える目的で国家備蓄の余剰分を初めて売却・放出した。

そして、国家備蓄から1ヶ月分を放出するとしている。

ただ、今回は、国際エネルギー機関(IEA)と連携した国際的な備蓄放出ではなく、単独でもやると強いメッセージを出している。

過去の放出

民間備蓄放出の一番新しい2011年のリビアの事案では、当時の経済産業大臣である海江田氏が備蓄放出を発表している。

一方、国家備蓄の放出は、IEA主導の形ではあったけれども、両方とも当時の首相であった岸田氏により発表されている。

だから国家備蓄の場合であれば、首相からの発信があっても不思議ではない。

だが、今回はIEAの決定を待たずして、高市氏は出すと明言した。

首相公邸で記者団に答えた。1978年の国家備蓄の制度創設後、初めての単独放出となる。首相は「国際エネルギー機関(IEA)と連携した国際的な備蓄放出の正式な決定を待たず、備蓄放出を行うことを決定した」と強調した。

日本経済新聞「高市早苗首相、石油備蓄の放出を~」より

もちろん、1979年の第2次石油危機に対応するための備蓄放出は単独で行っているので、一度も単独放出は無かったというわけではないのだが、国際的な決定を待たずに出すという姿勢を見せるのが今回の目的だったように思う。

LNGも不安視

日本の原油の9割がホルムズ海峡を通過すると言われるものの、備蓄は半年分以上あって、直ちに問題になるわけではない。だが、LNGの方は少しだけ不安な面はある。

日本のLNG輸入量のホルムズ海峡依存度は6.3%、LNG生産停止中のカタールのシェアは5.3%

2026年03月11日

イスラエルおよび米国は2月28日、イランに対する攻撃を開始し、これに対しイランは中東諸国の米軍基地や空港、民間施設などへ反撃を行っている。

~~略~~

発表によると、ホルムズ海峡を経由するLNGの年間輸入量は約400万トンと、日本全体の6.3%であり、現在、電力・ガス会社はこの年間輸入量の約1年分に相当する400万トン弱の在庫を有している。短期的に電力・ガスの安定供給に支障をきたす状況にはないものの、事態が長期化・深刻化するリスクも想定し、対応していく必要があるという。

JETROより

せいぜい1割程度がホルムズ海峡通過する程度ではあるが、備蓄が難しいのがLNGである。1割とはいえいきなり別のところから調達しようとすると、これが結構難しい。

だから、原油だけがクローズアップされているが、色々な物流が止まる可能性があるので、直ちに影響はないとはいえ、この事態は早く解消して欲しいものである。

まとめ

高市氏は自身の人気も理解しているので、強い決断を打ち出すことで経済に対する安心感を与えるアナウンス効果を狙った、それが僕の見立てではあるが、状況は流動的なのでこれが吉と出るか凶と出るかすら良く分からない。

ただ、リーダーがしっかりとしたメッセージを市場に出せたということは、良かったのではないか。

あと、原発の再稼働ももうちょっと急ごうね。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    本件、まず最初に糾弾すべきは、危機を煽るマスゴミでしょうね。

    で、それは置いておいて。
    とにかく、このように即断即決出来る内閣は頼もしい限りです。
    もちろん、決断が間違ってる可能性も含みますが、過去の(特に直近の過去の)、決められない政治が続いた後となると、もうね……って感じです。

    イラン自体に反撃能力はもうほぼ無いはずで、時間稼ぎのゲリラ戦しか出来ないでしょうけれど、明確に民間を狙った攻撃はもうテロ以外の何者でも無い。
    商船を襲ったのがドローンかミサイルかに寄りますが、発射地点と再発射能力は徹底的に拝辞して欲しいし、機雷なんてアホなものバラ撒く前に海岸沿いを更地にしてほしいものです。

    で、これを機に、原発を一斉再稼働してもらえると、本当に嬉しいのですが……

    • 木霊 木霊 より:

      こんばんは。

      オールドメディアの問題はさておき、今回のアナウンス、直ぐにアメリカも乗ってきたので、結果的には国際協調的な話になりましたね。
      決断が早いことは良いことだと思います。

      革命防衛隊はホルムズ海峡を通過する場合には通行料を支払えと脅しているようで。

      • 七面鳥 より:

        革命防衛隊は、正規軍とテロ組織の中間的な存在と認識してます。
        正規軍なら、指揮系統潰せば終わる。
        テロ組織は、統一された意思決定システムがない。
        なので、指揮系統を潰された革命防衛隊は「群雄割拠の内戦状態」と余り違わない、手足が勝手に動き回って「脳が最後に出した命令」に従って自己主張している(その結果として自分が指揮権を取ることも視野に入れている)。
        結論として、手足すら動けないくらいにすり潰すしかないのですが……
        ※革命政権(この言葉は嫌いですが)が立って、革命防衛隊を反体制派と認識してパージする、というのは今のイランにはまだ求められそうにないですから。
        米海軍が、やっと行動プラン策定したみたいなんで、今後に注目ではありますね。

        • 木霊 木霊 より:

          革命防衛隊そのものは結構しっかりした組織みたいなのですが、利権と結びついた暴力団的な性質があるようで、指揮系統が複数ある感じです。
          統一した意思決定システムは、最高指導者を挿げ替えてしまった結果、崩壊している感じですね。
          手足が勝手に動き回っているというのは、実に厄介ですね。

          米海軍が動き出したというニュースは見ましたが、果たして何処まで機能するのやら。

  2. 砂漠の男 より:

    日本政府としては、石油備蓄を放出してインフレ緩和を期待するくらいしか打つ手がなさそうですが、やらないよりは遥かに良いでしょう。
    イランにとってホルムズ海峡封鎖は戦争政策でしょうが、ホルムズは国際海峡であり世界経済のチョークポイントなので、どんなに言い訳しても後々報復されるでしょう。
    このイラン戦争の現状も見通しも、すべての国が正確にわからないと思います。日本は、たとえわずかでも米国、豪州、カナダとの原油・LNGシーレーンを構築したほうが良いですね。

    • 木霊 木霊 より:

      色々状況が動いていますから、この判断が良かったかどうかは分かりません。
      ただ、「状況を見て直ぐに判断出来る」という姿を見せたことは良かったのではなかったのかと。

      ご指摘の通り、日本はシーレーンの再構築を急ぐしかなさそうですね。