地方経済の深刻度は更に増していると。支那の経済の回復は未だ未だ先の話になりそうである。
中国住宅販売15.9%減 1~2月
2026年3月17日 2:00
中国国家統計局が16日発表した1~2月の新築住宅販売面積は前年同期を15.9%下回った。前年割れした2025年の傾向が26年も続く。販売不振により新規開発が減れば地方政府が頼りにする土地収入にも影響し、地方予算を圧迫しかねない。
日本経済新聞より
まあ、そりゃそうなんだけどね。何しろ、不良債権の処理から逃げ回っているのだから。
救済は先送りである
万科企業救済される?
今年の始めに、万科企業の話に触れている。
流石にお金を工面するのは難しいのでは?と思っていたのだけれど、気が付かないうちに万科企業に融資が行われていたようだ。
中国不動産の万科、計1300億円の社債の一部償還 デフォルトは回避
2026年1月27日 22:32
中国不動産大手の万科企業は27日、本来の償還期限を過ぎて猶予期間に入っていた2本の社債について、計57億元(約1300億円)の元本の一部を返済すると発表した。残りは返済を1年延期することで債権者の了承を得た。
今回の措置により、デフォルト(債務不履行)はいったん回避した形となる。
日本経済新聞より
ただ、一部に融資されただけで1年間の延命が果たされたに過ぎない。でも、90日延長とか繰り返すよりは余程マシではある。
この記事は、会員限定なので読めていないのだが、筆頭株主である深圳市地鉄集団(深鉄集団)から最大23億6000万元の低利融資を受けることでデフォルト回避したのである。

1月初めにはこんな風に分析されたので、「結局延命したのかよ!」と、突っ込んだに違いない。
深圳市地鉄集団の資金繰りは火の車
だが、深圳市地鉄集団の事業が順調かというと、そんなことはない。
中国地下鉄が採算悪化、広がる値上げ・本数減 不動産不況響く
2025年7月30日 17:15
中国の地下鉄の採算が悪化している。各地で収支を改善するための本数削減や値上げが広がる。不動産市場の悪化で関連収入が減っているためだ。さらにおよそ80兆円分の拡大計画があり、ただでさえ苦しい地方財政を圧迫するリスクは増す。
重慶市の地下鉄は30日から値上げに踏み切った。初乗り料金2元(約40円)で6キロメートル分を乗れたのを4キロに縮める。
日本経済新聞より
実は支那全土で鉄道事業は不採算事業になっているのだが、地下鉄はかなりヤバい。地下鉄もというべきかもしれないが。
だが、地下鉄の利用率は実は増えている。
「深圳」地下鉄の1日平均利用者、1188万人で記録更新
2025.01.15
深セン地下鉄集団によると、昨年12月31日(火)24時の市鉄道交通(路面電車含む)の1日の総利用者数が初の1100万人を突破。駅入場者数も660万の大台に乗り、いずれも最高記録を更新した。
YUWA LIFEより
利用客が増えているのに何故赤字になるのか?といえば、そもそも乗車賃が低い。初乗り40円相当(2元)は流石に安い。
利用客が増える理由は、実はデフレも関係していて、地上で自家用車を使うよりもコストが安いので利用客が増えているという側面もある。この利用客をさばくために本数を減らせない。ところが電気もガスも水も安く維持している。
つまり、街の発展のために公共料金を極力安く抑える設定になっているのだ。それはそれで、狙いとしては良いだろう。しかし、成長局面でしか通用しない話でもある。実際、地下鉄は運行すればするほど赤字が膨れあがる状態なのだから。
深圳を食いつぶすBYD
というわけで、万科企業は深圳市地鉄集団の融資によって救われたが、深圳市地鉄集団は赤字を垂れ流し続けている。もちろん、地下鉄料金を大幅に上げる訳にもいかない。
そもそも深圳市の事業モデルは、公共費などを安く維持する代わりに、発展を続ける企業から莫大な税収を得るという構造である。ところが、それが逆回転を始めてしまった結果、膨れ上がる赤字を吸収できなくなりつつある。
万科企業だって優良企業だと言われていたし、深圳市地鉄集団が枝を伸ばして駅を作った所にマンションを作って売る。それで事業収入を補填する様な構造だった。これが破綻してしまった。沈みゆく船から溺れた人にロープを伸ばすかのように、万科企業に融資をするが、その事業モデルは完全に破綻している。
そして問題はBYDだ。ここも優良企業だったのだが、最近のヤバさはこちらで言及した通り。
ここで非常にヤバイことに気がついた。
実は、深圳を支える発電能力は、ある意味世界最強である。
中国の大亜湾原発拠点、電力供給量が累計1兆kWh超す
2025-05-02 16:22:15
中国の原子力大手、中国広核集団(CGN)はこのほど、広東省深圳市に位置する傘下の大亜湾原子力発電拠点について、発電ユニット6基の電力供給量が4月29日時点で累計1兆キロワット時を突破したと明らかにした。
大亜湾原子力発電所は中国本土初の大規模商用原発で、1994年に商業運転に入った。中国広核集団はさらに、深圳市に嶺澳原子力発電所第1期、第2期として発電ユニット4基を設置。これにより、大亜湾原子力拠点には総設備容量600万キロワットを超える加圧水型原子力発電ユニット群が形成され、世界最大の加圧水型原子力発電拠点の一つとなった。
新華社通信より
これは深圳の工業団地を支える潤沢な電力供給網と言えるのだが、ここに打撃を与えようとしているのが、BYDである。
5月までに1,000箇所の充電拠点を作るとぶち上げた話は、前の記事で言及した通り。それが、大量の電力を恒常的に使うことになり、送電網にも負担をかけることになる。原発1基分にもなる充電拠点の急造が、果たしてどの様な負担になるのか。
もちろん、足りる計算なのだろうが……。
需給バランスが崩れるとブラック・アウト待ったナシである。充電拠点には大量の二次電池を抱えているので、少しずつ溜めて一気に充電というタイプにはなるんだけど、使いたい時に使えないとBYDとしても胸をはれないわけで。売上に関わる事態になりかねない。
何しろ、電力供給網の構築は一朝一夕には行かないし、原発だって直ぐには作れない。急に電力需要を増やすというのは困難である。
流石に警戒はしているはず
とはいえ、「大丈夫だから充電設備」を造るという話のハズで、危ういバランスの上に成り立つ話かもしれないが、流石にブラック・アウトするような事態を招かないだろうとは思うんだ。そんな事になってしまえば、深圳にある製造工場がダウン。データサーバーなどにも悪影響が出かねない。
多くの企業はバックアップ電源を持っているとは思うけど、全部が全部というわけでもあるまい。北海道のケースでは、何日も停電が続く事態になったけど、そんなことになれば被害は計り知れないからね。
そして、BYDの充電設備の拡充の話、本当に電源計画の上に乗ったオンスケジュールの計画だったか?という点が非常に怪しいというのが、現状の評価。
無理をしなければ利益が怪しいBYDが無理をした結果、深圳全体の利益に影響するような話になりかねないというリスクを背負っているのではないかと。
言い換えれば、BYDは「泳ぎ続けなければ死ぬサメ」のようなものだ。拡大を止めた瞬間に、収益構造そのものが崩れかねない。
そして深圳市は、言ってしまえば「自分の足を食べて生き延びるタコ」に近い。不動産収入が細る中で、インフラと財政を削りながら延命している。
問題は、この2つが同時に存在し、どちらが絶命しても生き残れない構造だってことだ。
まとめ
結局のところ、深圳が直面している問題は個別企業の問題ではない。
万科企業の延命も、深圳市地鉄集団の赤字も、そしてBYDの急拡大も、すべては同じ構造、「成長し続けること」を前提に設計された都市モデルの上に乗っかっている。
不動産が売れ続けることを前提に財政を組み、企業が拡大し続けることを前提にインフラを整備し、人口が増え続けることを前提に公共料金を抑え込む。
だが、その前提が崩れた瞬間、すべてが逆回転を始める。
赤字は吸収されず、インフラは重荷となり、成長企業ですら「リスク」へと転じる。
BYDは深圳を支える存在であると同時に、深圳の脆弱性を露呈させる存在になりつつある。
そして厄介なのは、この構造は簡単には止められないという点だ。公共料金は上げられず、インフラは止められず、企業の拡大も止めれば景気が死ぬ。
つまり、「進んでも地獄、止まっても地獄」という状態に入りつつある。
この都市は、果たして「次の成長」で救われるのか。それとも、「成長前提モデルの限界」として転落していくのか。少なくとも今は、その分岐点に立っているように見える。





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