さて、最初にまずお詫びをしておかねばならない。
今年の始め、特に7月頃までに習近平体制はコレで終わるのではないか。もしかしたら9月には引退させられるのでは?という予測を出していたのだが、完全に外したかもしれない。
中国軍の最高幹部9人、党籍と軍籍を剥奪…現役の政治局員や台湾を担当する司令官ら
2025/10/17 19:22
中国国防省は17日、中国軍の最高指導機関・共産党中央軍事委員会の何衛東副主席や、同委メンバーで政治工作部主任を務めた苗華氏ら軍幹部9人について、「重大な党の規律違反」により党籍と軍籍の剥奪処分を受けたと発表した。
讀賣新聞より
こちらの記事は、いわゆる支那の「政治的粛清」なんだけど。これは今年前半に既に動向が把握できなくなった何衛東氏や苗華氏が党籍剥奪されたって話を伝えている。
繰り返される支那の歴史
習近平体制下で続く「異常な粛清の連鎖」
先ずは、予想を外した時の関連記事を。
この時は、習近平氏の政治基盤を支える人材が居なくなったことで、政治構造が変化して習近平氏は失脚していくんだろうと予想し、集団指導体制に回帰するのでは?と思っていたんだよね。
ところがそうでもなさそうなのだ。先ずは状況を整理しよう。
2023年末以降、中国軍・政府要職の処分が相次いでいる。特に目立つのは以下の動きである。
- 2023年7月:李尚福国防相が突然失脚(衛星発射事業の汚職疑惑)
- 2023年末:前外相・秦剛氏が党籍を剥奪
- 2024年~2025年:ロケット軍・装備発展部門で幹部多数を粛清
- 2025年10月:政治局員を含む9名の党籍剥奪(今回の処分)
わずか2年ほどの間に、中央政治局員や国防相クラスが複数消えるというのは、近年の支那政治では異例である。粛清の対象は軍・外交・装備など、いずれも「習近平の安全保障政策を支える中核部門」に集中している。
権力の安定ではなく、「恐怖による再統制」
中国共産党はこれらを「反腐敗運動」の一環と説明していて、習近平氏の支持基盤の毀損のように見えていたんだけれど、実際には、習近平氏に対する忠誠度を再確認する“政治的踏み絵”の色が濃いのでは?という疑いが出てきた。
2012年以降の「反腐敗」は、確かに当初は汚職是正の要素を持っていた。しかし現在は、政敵・潜在的対抗勢力の排除ツールとして機能している。
たとえば何衛東氏は、台湾有事を想定する東部戦区の司令官であり、政策失敗というより「指導部との距離」が処分理由と見られている。
習近平政権の構造的リスク:意思決定の硬直化
近年の粛清ラッシュが示すのは、単なる汚職摘発ではなく、「政策失敗を報告できない体制」が定着したということだろう。
最近で一番印象的だったのが、武漢ウイルス感染症対策についての紆余曲折であった。
2019年12月、湖北省武漢で原因不明の肺炎が報告された際、 現地の医師たちは早期に警鐘を鳴らしていた。しかし、その多くが「デマの流布」として処分される。李文亮医師もその中の一人だった。
この段階で中央に迅速な報告が届かなかったのは、官僚システムが「リスク報告よりも政治的安定を優先」したためと言われている。地方政府は「感染拡大」を認めることで評価を落とすのを恐れ、上層部も「春節前の混乱」を避けるために封じ込めを選んだ。
その結果、感染拡大が制御不能となり、2020年1月末に全国的な封鎖という極端な手段に至る。その後も極端なロックダウン政策を選んで経済を疲弊させたことはよく知られている。
それ以後の政策もこんな感じである。
- 経済政策では「共同富裕」路線が市場を萎縮させ、成長率は公表値以下と見られる。
- 外交では「戦狼外交」により、欧米・アジア諸国との距離が拡大。
- 技術分野では、半導体やAI開発への投資が巨額化する一方で、成果は不透明。
いずれの分野でも共通するのは、現場から上層部への“悪い報告”ができなくなっている点だ。習近平氏はおそらくコレをさらに推し進めようとしている。
毛沢東時代との比較:再び「修正不能の国家」へ
中国の政治構造は、歴史的に「個人独裁 → 虚報連鎖 → 政策破綻」という周期を繰り返してきた。毛沢東時代の「大躍進政策」や「文化大革命」は、その典型である。
いまの習近平体制も同じ構図を辿りつつある。
- 政治的忠誠が経済合理性を凌駕
- 政策失敗を指摘できる人材の排除
- 統計改ざん・実績誇張が常態化
こうした兆候は、「国家規模の自己検閲体制」を意味している。
つまり、破綻が表面化するまで修正が効かない仕組みになっているのだ。
結論:習近平体制は「安定ではなく、危うい停滞」である
冒頭で触れた軍幹部9人の異例の処分は、習近平体制の権力構造に明確な変化が起きていることを示している。しかし、トップに君臨する習近平氏の露出は依然として極端に減少しており、国際舞台での存在感は乏しい。これは単なる健康問題や外交戦略ではなく、国内統治の安定を優先し、習自身を象徴的存在として封印する戦術と見るのが自然だろう。
そうすると表面上は権力の集中が強化されたように見えるが、実態は、恐怖と沈黙によって維持される「不安定な安定」である。官僚も軍も、政策を提言する主体ではなく、もはや「習思想を体現する装置」と化している。この体制硬直は、経済・外交・安全保障のいずれの領域でも重大な誤判断と制御不能を引き起こすリスクを孕んでいる。
言い換えれば、習近平体制は「強権による安定」ではなく、外からは安定に見えるが、内側からは崩壊の種を抱えた危うい停滞状態なのだ。毛沢東時代の大躍進や文化大革命と同じく、制度が自己検閲化した体制では、修正が効く前に破綻が表面化する可能性が高い。
コメント
こんにちは。
>完全に外したかもしれない
予定は未定であり決定ではありませんから。
周体制は、いつかは終わります。
「あなたは必ず死ぬ!」って予言される程度には。
早いに越したことは無い(傷が浅くて済む)のですが、この手の支配者で命根性汚くなかった例はありませんから。
問題なのは、権力を移譲する先がよく分からないこと。
ナンバーツーが左遷されまくってると聞きます。
有能なヤツの首を斬り始めたら、その政権は末期。
いつ寝首を掻かれるか、本人は戦々恐々なんでしょうね。
かつての中華王朝の終末を、リアルタイムで見れるのですから、これはこれで見物ですね。
こんばんは。
4中全会が終われば分かるのではないでしょうかね。
ナンバーツーなどいないので、大荒れになると思います。