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韓国武装体系を強化させた3600トン級潜水艦「蔣英実」進水…国産技術の集大成
2025.10.22 14:47
北朝鮮の金正恩国務委員長が原子力潜水艦の建造推進など海軍力強化に拍車をかける中、韓国海軍の初の3600トン級潜水艦「蔣英実:張保皐Ⅲ バッチⅡ」が進水した。蔣英実は、武装体系と潜航力を大幅に強化しており、韓国軍の水中キルチェーン(Kill Chain=先制打撃体制)の核心戦力として活躍する見通しだ。
中央日報より
最近、少し見逃しているニュースが多いので、気を引き締めなければ。
より大型化し性能強化
新型潜水艦の登場
で、韓国の新型潜水艦が進水しましたよ、というだけのニュースだ。
ただ、張保皐Ⅲのバッチ1は終了して、バッチ2に移行した点は新しい。ちょっとわかりにくいのでこの系列の潜水艦の整理をしておく。
島山安昌浩級潜水艦(張保皐Ⅲ)バッチ1
- 1番艦SS-083:島山安昌浩 2018年9月進水、2021年8月就役 水中排水量3800トン、SLBM 6セル、魚雷発射管8門、AIP搭載
- 2番艦SS-085:安武 2020年10月進水、2023年4月就役
- 3番艦SS-086:申采浩 2021年9月進水、2024年4月就役
蔣英実級潜水艦(張保皐Ⅲ)バッチ2
- 1番艦SS-087:蔣英実 2025年10月進水、未就役 3600トン級、SLBM 10セル、魚雷発射管8門、AIP+リチウム電池搭載
戦力増強しました!という姿がありありと分かる。
命名ルール変更?
ちょっと気になったのが、韓国潜水艦の命名ルールだ。これまではテロリストでないと駄目という謎基準があったらしいのだが、今回はどうやら科学者の名前らしい。
流石に、テロリストの名前が枯渇したか。
蔣英実は中世李氏朝鮮(1383年~1450年)の科学者らしく、日時計とか水時計とか製造した人物のようだ。
自撃漏なる水時計が有名らしい。何か、水時計と連動して人形が水が減ったことを知らせてくれる仕組みを導入したのだとか。

この仕組みを再現できたというニュースも見かけたので、構造としては成立するものだったのだろう。なかなか優秀な人物だったらしいのだが、どうしてこの人物の名前が採用されたかは不明だな。本当に人材枯渇が深刻なのかもしれない。将来的には歴代大統領の名前が検討される可能性もあるね。
これまでの命名ルールが「韓国独立のために戦った英雄」という縛りだった結果、テロリストだらけになったことを考えれば、マシな方向転換だと言えよう。
性能強化
で、今回の目玉は大型化ということもあるが、更に武装強化図られた点だ。
何よりも、“拳”にあたる武装体系が強化された。潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射できる垂直発射管(VLS)を既存の6セルから10セルに増やした。また、潜水艦の頭脳にあたる戦闘体系、そして目と耳にあたるソナー体系も従来の艦艇よりも情報処理能力・標的探知能力・地上目標打撃能力を強化した。平壌など北朝鮮の中枢部を奇襲攻撃できる能力が高まったという意味だ。
中央日報「韓国武装体系を強化させた3600トン級潜水艦~」より
韓国の潜水艦に搭載されたVLSは、潜水艦の予備浮力の少なさから懸念されていた話ではある。
6セルから10セルに増やしたのは、デカくなったから体積が増えたので搭載スペースが確保できたってことになるんだろうけれど。でも、そもそもバッチ1の試射テストに関する報道は非常に限られている。
- 1回目の試験(2021年9月):島山安昌浩級1番艦「島山安昌浩」から、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の水中発射試験が実施され、成功したと発表された。ただし、この試験が、潜水艦の浮力・トリム制御に問題がなかったか、詳細なデータは公表されていない。
- 2回目の試験(2022年4月):1回目の試験から約7か月後に、2発のSLBMを20秒間隔で連続発射する試験に成功したと発表された。連続発射は、浮力・トリム制御の難易度がさらに高まるため、成功すれば大きな成果。ただし詳細は不明。
報道ベースではこの2回しかテストを確認出来ず、本当に様々なシチュエーションを加味出来ているのかは不明。

この他に、水中バージからの発射テストをやった旨も報じられているけれど、これも1回のみ。
姿勢制御のための高度なバラスト調整が行われているとも言われているが、それには結構な電力も食うし、静粛性も犠牲にする。
電力不足をどう補うか
とすると、VLS発射後には現場海域から高速離脱するか高速潜行する必要がある。何しろ、自分の位置をVLS発射でバラしてしまうのだから、現場海域から速やかに離れるのが定石である。
この為に、この戦術をとる潜水艦の多くは原子力動力を採用しているわけで。
張保皐Ⅲバッチ2の場合は、VLS発射にもその際の浮力変動のための姿勢制御のためのバラスト調整にも結構な電力を食うと思われる。そのためにリチウムイオン電池が必要であったという思想はなんとなく理解できる。
だが、同時にVLSの本数を増やす上、リチウムイオン電池を搭載したことで潜水艦の体積を占有する場所も増えたことに。これが吉と出るか凶とでるか?それは事故が起きたときに明らかになってしまうのだが……。潜水艦事故は助かるケースが少ないので、出来るだけ見たくないなぁ。
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