スゴイ、攻めているなぁ。
李大統領 施政方針演説で「自主国防」強調=南北対話へ「大局的に努力」
2025.11.04 11:49
韓国の李在明大統領は4日、来年度(1~12月)の政府予算案に関する施政方針演説を行い、「人工知能(AI)技術が防衛産業の構図を変えている」として、「通常兵器システムをAI時代に合わせて最先端兵器システムとして再編し、スマート強軍へと迅速に転換する」と表明した。そのうえで、「国防力を画期的に強化し、私たちの念願である『自主国防』を確実に実現する」と強調した。
聯合ニュースより
来年度予算は77兆円規模(728兆ウォン)でスタート。正直「聞き間違いだろ」と驚愕するレベルだったが、どうやら本気らしい。
強気が功を奏するのか
異次元の予算編成
予算案自体は、8月末に報じられている。他人事なので傍観していられるが、「大丈夫かよ」とは思っちゃうね。
韓国、来年の予算728兆ウォン…国家債務142兆ウォン増(1)
2025.08.30 09:56
李在明政権が来年の予算を728兆ウォン(約77兆円)規模で編成した。今年より総支出が50兆ウォン以上増える過去最大幅の増額だ。前政権とは違い拡張財政の道に進むという確実な「Uターン宣言」といえる。財政で急激な成長鈍化を防ぎながら、未来の産業にも投資するという意図が込められた。ただ、支出拡大に傍点を打ったことで国家債務は1年間に140兆ウォン以上も増える。
これはもう「異次元の予算」と言って差し支えない。
2025年度の予算677兆4000億ウォンを上回る驚きの予算で、政府負債を更に積み上げる結果になる。
GDPに対する政府負債 47.2%で最高値を更新
Write: 2025-09-17 11:22:49/Update: 2025-09-17 13:10:30
韓国のGDP=国内総生産に対する政府負債の比率が47.2%となり、1990年に統計が作成されて以降、最も高くなりました。
BIS=国際決済銀行によりますと、ことし3月の第1四半期末の時点で、韓国のGDPに対する政府債務の比率は47.2%でした。
韓国のGDPに対する政府負債の比率は、2020年第1四半期に初めて40%を超えて以降、着実に上昇し、35年ぶりに最高水準となりました。政府債務の規模は1212兆ウォンに達し、過去最大でした。
~~略~~
韓国の中央銀行にあたる韓国銀行の李昌鏞総裁は、「財政が一定の役割を果たす必要はあるが、国の債務が増え続ける方向は望ましくない」と指摘しました
KBS WORLDより
きっと、韓国銀行総裁は頭を抱えていることだろう。
AIや防衛産業に投資
方針としてはAIや防衛産業への投資を加速するということで、狙いは分かる。
李大統領は「北のGDP(国内総生産)の1.4倍に達する国防費を使っているが、世界5位の軍事力と評価される韓国が国防を外部に依存するというのは国民のプライドの問題」と指摘。AIや防衛産業など先端戦略産業分野の技術開発のための研究開発(R&D)投資を過去最大の35兆3000億ウォン(約3兆7800億円)に19.3%拡大したと説明した。
聯合ニュース「李大統領 施政方針演説で~」より
AIへの投資はこれから伸びていく分野で、韓国としてはそれなりに自信を持っている分野でもあるのだろう。10兆1,000億ウォンを配分したことからも、強気で攻める姿勢であることも分かる。
防衛産業は実際に輸出も伸びており、ここに投資すること自体は理屈としては分かる。
ただ、短期集中の“勝負の年”としては、額が案外小さい。しかも、すぐ成果が出る類の話ではない。
特にAIに関しては技術開発の必要性はあるものの、アメリカや支那のような巨額の投資が出来るわけでなし、技術的アドバンテージがあるわけでもなし。ニッチな分野を狙って開発するしかない。(支那のAI投資額は4300億元(約600億ドル)で、米国の3870億ドルに次ぐ世界第2位の規模なので、韓国の投資額は1桁足りないのでは?と)
しかも韓国兵器の多くは“輸入技術の組み合わせセル”が基本構造で、利益率はそもそも高くない。これ以上防衛産業が伸びたところで、利益率が上がるとも思えないので、成長産業としては弱い。
とってつけたような方針
更にこんな方針を掲げているのだが、これがまた荒唐無稽だ。
研究開発(R&D)予算も歴代最大水準の19.3%増の35兆3000億ウォン規模で編成された。まず「A(人工知能)、B(バイオ)、C(コンテンツ)、D(防衛産業)、E(エネルギー)、F(製造)」先端産業分野別の核心技術開発に10兆6000億ウォンを投資することにした。
中央日報「韓国、来年の予算728兆ウォン~」より
どうして、あいうえお作文みたいな投資対象を選んでしまうのかよく分からない。AIと防衛産業には既に言及したし、危ういけれどもそれなりに理はある。
だけど、バイオやコンテンツ、エネルギーや製造にアドバンテージがあるのか?というとそんな話を聞いたことはないのだ。
エネルギー分野に至っては、「韓国が強みを持つ発電方式」なんて聞いた覚えがない。原発の輸出の話だったら、ウエスチングハウスから、「輸出したら売り上げの何割かを渡せよ」ということになっている。製造って……。
ま、まあ、何か自信があるんだろうね。
地方への手厚い保護
他にも、面白い方針を掲げている。
そして、地方創生の一環として、来年から児童手当の給付額が首都圏は10万ウォン、非首都圏は10万5000ウォン、過疎地は最大12万ウォンが支給されます。農漁村地域6か所には、毎月15万ウォンを支給する「農漁村基本所得制度」を試験導入する方針です。
また、今回の予算案には、公共交通運賃を支援する政策が含まれ、毎月5万ウォンから6万ウォンの「公共交通機関定額パス」を購入すると、最大20万ウォン分の公共交通機関を利用することができます。
KBS WORLDより
なるほど面白い発想だね。
こういった政策は日本でも検討しても良いかもしれない。だが、韓国はソウル一極集中が過ぎるので、もっと地方への給付額を増やした方が良いかもしれない。
なぜならば、地方には仕事がなく圧倒的に賃金が安い(不思議なことに最低賃金は全国一律である)のだ。子育て給付でこの額の差ではインセンティブとしては低いと言わざるを得ない。
……まあ、そもそも“その余力があるなら”の話だけど。
GDP比政府債務、47.2%で過去最高
何故かというと、韓国は政府債務がかなり積み上がっているからだ。
韓国、今年上半期の国家財政赤字94.3兆ウォン…歴代4番目の規模
2025.08.14 12:03
今年上半期(1~6月)の韓国の国家財政赤字が94兆3000億ウォン(約9兆9870億円)を記録し、歴代4番目の大きな規模を示した。100兆ウォンを越えた昨年同期よりは多少減ったが、依然として大幅な赤字だ。
中央日報より
財政赤字自体は歴代4番目だが、GDP比政府債務は過去最高の47.2%である。
政府債務だけでなく、地方自治体の債務も隠れ債務として存在する上に、企業債務や家計債務も積み上がっている。
どこもかしこも赤字だらけなのが韓国の実態で、これで景気が良ければまだマシなのだが、残念なことに貿易面でも苦しい展開が続いている。
また、MOUの作成に未だ難航しているようだが、対米投資年間200億ドル、総額3,500億ドルは既に決定している。
この投資額は韓国のGDP増加には寄与しないんだよね。つまり、韓国内の産業は痩せていくばかり。投資額調達を含めて、不安要素の方が大きい。
国有資産売却禁止
更にこんな話も出ている。
韓国、国有資産売却を緊急停止 安価懸念で李大統領が命令
2025年11月4日午前 10:39
韓国の李在明大統領は3日、全ての国有資産の売却を停止する緊急命令を出し、政府各部門に現在進行中または検討中の資産売却を再調査するよう命じた。
ロイターより
これも、前大統領のユンユンが出した方針を転換する形で、積弊精算の意味合いが強いようだ。尤も、国有資産が不当に安く売却されている実態も確認されていることを鑑みるに、「緊急停止」「再調査命令」というのは妥当ではある。
ただ、そもそもユンユンがどうして国有資産を売却したかという点を考えると、安易に停止するのは良いのか?という懸念もある。政府債務が膨らみすぎて、国有資産を売却してその返済の足しにしようとした動機もわかるからだ。
強火の予算編成には「痺れる」としか言いようがないね。
まとめ
とまあ、全体的に強気の予算を積み上げた印象だが、どうにもリスクヘッジを怠っている気がしてならない。
つまり、将来への投資の意味合いが強すぎて、短期的に韓国経済の悪化が避けられないのではないかという懸念があるのだ。
まあ、他国のことなので心配しても詮無きことではあるが、それでも失敗して泣きつかれても迷惑なんだよね。通貨スワップだけは絶対に御免だ。



コメント